3月17日、衆議院総務委員会で、市町村合併による防災力の低下の問題、「圏域」などで市町村から権限と財源を奪うことがないよう求める質問しました。
市町村合併特例法案の採決では反対し、反対討論も行いました。
■■■■■■■■■■■■■■
市町村合併による防災力の低下の問題
■■■■■■■■■■■■■■
市町村合併による防災力の低下の問題を痛感しています。
2018年豪雨の際、被災地に行かせていただいたときに、合併によって面積が大きくなる一方で、地域から職員は削減されるなかで、災害対応、被災者支援は非常に遅れたのではということを痛感してきました。
例えば、
■広域化したことによって、各地の状況が把握されておらず、河川も別のところばかりをみていて、避難指示が遅れ、河川が氾濫して20分以上たってから避難指示が出た事例
■被災された地域にぜんぜん職員が来ず、ずっと被災者の皆様も不安に思わせていた事例
■人手が足りず、支所長が現場の対応で精いっぱいで、災害救助法の仕組みや被災者支援の仕組みが知られておらず、迅速な救済、救援ができていなかった事例
私が痛感しただけではなく、『読売新聞』(2019年6月26日)の記事でも
■合併による市町村の広域化によって、災害時、市役所本庁と支所の間で通信不通になり状況把握ができなかった
■本庁に権限が集約された結果、旧市町村の地域は自己決定力を失い、迅速に対応できなくなった
■支所の職員が減少し、災害対応人員としては少なすぎる
など指摘されています。
こうした問題もやり取りしながら、「合併の災害時の弊害、問題点を総務省は、どう改善しようとしているのか。防災のことや地域の活性化を考えたときに、支所などにも職員を増やし、機能を強化し、各地域のことを考えて働ける状況をつくっていくしかない」と質問しました。
高市早苗総務大臣は、「合併市町村の支所というのは重要な役割を果たしており、実際、住民サービスの維持向上、災害対応などに活用する取組が行われてきております。
これからも、合併市町村に対する必要な支援を適切に行ってまいります。」と答弁しました。
■■■■■■■■■■■■■■■
今後の基礎自治体のあり方
自治体職員半減では災害時、緊急時に住民の皆様を守れない!
■■■■■■■■■■■■■■■
総務省の「自治体戦略2040構想研究会」の第二次報告では、市町村を超えた「圏域」など団体自治、住民自治に反するものが入っています。これも、大問題なのですが、加えて、自治体職員は半分にして、標準化してスマート自治体が目指されている点も大問題です。
AI、ロボティックスに置き換えていくというのですが・・・。
AI、ロボティックスなどは、災害時、緊急時、本当に機能してくれるのでしょうか。
研究会報告には、災害時、緊急時のことは、首都圏の帰宅困難者のことなどはありますが、ものすごく不十分な記述しかありません。
私の地元は、南海トラフ巨大地震の被害想定区域。
こんな乱暴な議論で、自治体が職員削減に誘導されていくということになれば、命を守ることができないと大変な危機感を抱いています。
将来の自治体のあり方を考える場合、災害対応、緊急対応のこともしっかりと位置づけて考えていくべきだ、公立病院改革ガイドラインでも、まちづくりでも、いつでも災害対応、緊急対応のことを頭において、施策をするべきと質問しました。
高市総務大臣は、
「今、第三十二次地方制度調査会で、将来の人口減少社会を見据え、必要となる地方行政体制について調査審議が進められております。防災の視点も含めて議論は行われております。
昨年七月に中間報告が取りまとめられましたが、南海トラフ地震や首都直下地震などが高い確率で発生する見込みであるなど、今後、二〇四〇年ごろにかけて災害リスクの高まりが想定される中で、地域間の協力による災害対応分野における技術職、専門職の確保の必要性、大規模災害への都道府県を超えた協力関係の構築の必要性、自助、共助による防災活動の重要性といった指摘もなされております。今は最終的な答申に向けて調査審議が進められ
ておりますが、この調査会における議論も踏まえて適切に対応してまいります。」と答弁しました。
■■■■■■■■■■■■■■
「圏域」とか言う前に、これまでの合併・広域行政の深い分析、検証を!
■■■■■■■■■■■■■■
市町村合併の弊害はさまざまによって地域間格差が大きくなっていると痛感します。
例えば、愛知県愛西市では、旧役場が、総合支所となり、その後、単なる支所にされ、機能が縮小し、なんでも遠い市役所まで行かなければいけなくなりました。
この10年で合併した愛知県西尾市でも、旧一色町では、旧役場だった支所も縮小し、健康センターも老人福祉センターも統廃合されてしまいました。そして、側溝のふたのこと、道路のことでも遠い市役所にいかなければいけない、不便になったとの声が出ています。
質問では、地方制度調査会でも、全国市議会議長会の委員から、「平成の市町村合併について、政府による総括の重要性」「政府の責任で改めてトータルに評価・検証を加えておく」こと、「評価を行ったわずかな県の調査結果を引用するだけでは不十分」との指摘があります。
全国町村会の委員からは、「新たな圏域行政の推進は、平成の大合併の再来ではないかと大変危惧しています。新た仕組みを検討する前に、広域行政に関する現行制度の検証が不可欠」との発言もあります。
「評価を行ったわずかな県の調査結果を引用するだけでは不十分」との指摘はその通り!表面的に見るだけでなく、しっかりと評価・検証を行うべきと指摘しました。
加えて、日本弁護士連合会の中の公害対策環境保全委員会の皆様方が調査・検討をされた合併したところと合併しなかったところ、類似自治体での調査(※)で、
合併したところの方が合併しなかったところよりも人口減少が急激になっていることや2017年12月に、まち・ひと・しごと創生本部事務局が「移住・定住施策の好事例集(第一弾)」を出していますが、合併しない自治体の方が移住・定住施策の好事例が多いことなどの総務省としての検証・深堀も求めました。
高市早苗総務大臣は、「これからの基礎自治体のあり方の検討に当たりましては、これはもう本村委員御指摘のとおり、市町村合併や広域行政の現状や効果、課題を把握した上で行う必要があると考えております。」と答弁しました。
_______________________________
(※)日本弁護士連合会の中の公害対策環境保全委員会の皆様方が調査・検討をされた合併したところと合併しなかったところ、類似9自治体での調査では、以下のことが指摘されている。
■合併した旧市町村における、役場の人数・機能への影響
訪問調査した9町村では、合併した旧市町村におかれている支所は、従来の役場よりも人数が大幅に削減され、地元出身者も本庁に所属するなどし、さらに職務が限定されることによって、従来の役場が有していた機能への影響を指摘する声があった。
■小中学校の生徒数・廃止、保育園の休園への影響
合併したところは、小中学校の生徒数減少が著しいものもあり、小学校や中学校がなくなった例や保育園が休園したりなくなっている例もみられた。
■役場の人数や機能と住民サービスとの関係
合併しなかったところでは、住民と行政がお互い面識ある状況のもとで、きめ細かな住民サービスが展開されているところがあると思われる一方で、合併したところでは、役場の人間が少なく、公的な住民サービスが困難になっているとの声も聴かれた。
■地域の産業振興への影響
合併しなかった生坂村、西粟倉村、大川村、小値賀町はいずれも、地域振興で成功している様子もうかがえた。
■■■■■■■■■■■■■■
「圏域」など市町村から権限や財源を奪うようなやり方はやめよ!
■■■■■■■■■■■■■■
最後に、自治体と国は対等な関係なはずであり、国が一方的に市町村の権限や財源を取り上げて、新たな制度をつくるということがあってはならない。名前は「圏域」でないにしても、実質的に市町村から権限と財源を取り上げる、そんなことは絶対にあってはならないと強調しました。
高市早苗総務大臣は、「第三十二次地方制度調査会では、今後の人口減少、少子高齢化を見据えた地方行政体制のあり方について調査審議が進められておりますが、この専門小委員会では、市町村間の広域連携は地域の実情に応じた自主的な取組として行われるものであることを前提として議論が進められております。
よって、広域連携に関して、圏域のような何か別の行政主体を設けて、そこに市町村の権限を移譲するような方向の議論はなされておりません。」と答弁しました。
引き続き、民主主義の質の向上と人権保障の強化に資する地方制度を求めて頑張ります!
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
市町村の合併の特例に関する法律の一部を改正する法律案への反対討論(大要)
私は、日本共産党を代表し、市町村の合併の特例等に関する法律の一部を改正する法律案に対し反対の討論を行います。
合併特例法は、国、都道府県主導で合併を押し付ける仕組みを導入するなど、「平成の大合併」をすすめる役割をはたしました。
住民合意をとる過程で、合併後の公共施設等の存続などを約束して世論を誘導し、結局、その約束が守られない事例もありました。
強引な合併押し付けに対する批判を受けて、2010年の改正で、国、都道府県による市町村への積極的な関与等の文言は削除されましたが、有権者の50分の1以上の署名で合併発議できるとした住民発議権や、合併協議会設置が議会で否決されても首長の請求もしくは有権者の6分の1以上の署名により合併協議会設置の住民投票請求ができる特例はそのまま残されました。
合併という自治体と住民にとってもっとも重要な問題について、合併推進側だけに有利な仕組みが残されたのは問題です。
2010年以降、現行合併特例法のもとでは、7件の合併事例がありますが、そのなかには合併協議会設置を議会が否決しても、住民発議・住民投票の仕組みを利用して合併に至った事例も含まれています。
本法案は合併推進にだけ有利な仕組みを変えずにそのまま延長するものであり、反対です。
以上を申し述べ、討論といたします。
以上