2月13日、衆議院本会議で、安倍首相にたいし、2020年度地方財政計画、地方税法、地方交付税法に関して質問しました。
以下、大要を掲載します。
安倍首相と高市総務大臣の答弁の書き起こしも載せています。
文末には、沖縄に関する安倍首相のごまかしの答弁の問題点について書いていますので、ご高覧ください。
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私は、日本共産党を代表して、地方財政計画、地方税法、地方交付税法について総理に質問します。
「住民の福祉の増進を図る」役割を担う地方自治体は、今、相次ぐ災害から命と財産を守る問題、子育て、介護など住民の暮らしを支える問題、地元産業の振興、様々な課題に直面しています。しかし、安倍政権が、地方に自治体リストラを求め、深刻な疲弊と破たんをもたらしているのが実態です。
第一に、地域医療を支える公立病院の問題です。
厚生労働省は、公立・公的病院の再編・統廃合の検討を求める病院名リストを公表しました。自治体の首長、議会、病院関係者からは「地域医療を守ってきた努力を軽んじている」「地域の実情を無視している」と怒りの声が噴出しています。大学病院の医師派遣の引きあげや内定した看護師の就職辞退まで引き起こしています。採算やデータだけでははかれない地域医療の役割があると思いませんか。地域の実情を踏まえないリストは、撤回すべきです。(総理)
また、政府はこれまで「公立病院改革ガイドライン」にもとづき、ベッドの稼働率70%以下を理由にして、リストラを押し付けてきました。しかし、赤字の主たる原因は、医師不足があるのではありませんか。これでは地域医療を維持できないことがあきらかです。
地方交付税の算定では、公立病院への一般会計からの繰入れが多いほどマイナス補正の対象となる措置もつくっています。地域医療を守るために、地域の実情を無視したやり方はやめるべきです。(総理)
地域医療を困難にしているのは、医師不足です。今でも4割の医師が、過労死ラインを超えています。単なる偏在是正策ではなく、OECD水準を目指す医師の大幅増員こそ必要です。医学部の地域枠削減もやめるべきです。(総理)
第二に、自治体リストラによる公共サービスの質の低下が問題となっています。
政府は、指定管理者制度の導入や公共サービス改革法、公共施設等総合管理計画など、民間委託を推進してきました。2015年の骨太の方針では、窓口業務などの外部委託を拡大する方針を掲げ、地方自治体に検討を迫ってきました。こうした中で、民間委託をすすめた自治体でさまざまな問題がおこっています。
介護保険認定事務を、全市一括で外部委託化した名古屋市では、委託当初から事務の大幅な遅れが続き、介護度が決まらないために暫定プランでサービスを開始し、後日、認定が低く出たために足りない報酬分を利用者や介護事業者が被る事態が起こっています。問題が起きても、民間委託のために行政は直接介入できず、役所の職員が実態や制度を知らないなど、相談含め質の低下を招いています。
民間丸投げでは、公共サービスの質が維持できないのではないですか。民間委託の実態を総括し、公設公営に戻す選択肢も含め、地方自治体を支援すべきです。(総理)
第三に、職員減らしが深刻なマンパワー不足をもたらしています。児童虐待やいじめなど、深刻な環境におかれた子どもたちと向き合う児童福祉司や教員、保育士などの増員がとりわけ重要です。さらに、相次ぐ災害対応でも、自治体職員の不足が浮き彫りになっています。総理、住民を支える職員、マンパワーの不足が危機的状況だという認識はありますか。職員不足のこの危機的状況をもたらしたのは安倍政権の政策が原因であり、その責任は重大です。(総理)
来年度以降、地方交付税の「行革努力」算定から職員削減率を削除したのは、リストラ・職員減らし政策の破たんを示すものではありませんか。経常的経費など他の算定項目も含めて、職員の削減率を交付税算定に反映するやり方はきっぱりとやめるべきです。(総務)
4月から導入される会計年度任用職員制度では、期末手当を支給する代わりに月給を引き下げる、手当の支給対象としないために勤務時間や日数を減らすなどの事案が各地で起こっています。すべての非正規職員の待遇改善に必要な財源の確保を、国が責任をもって行うべきです。(総務)
第四に、災害対応の問題です。
住民の安全な避難を確保するために避難所を早期開設することは欠かせません。市町村が必要と判断した場合、災害救助法をすみやかに適用することで、市町村が財政負担の心配をせず、被災者支援がおこなえるようにすべきではありませんか。(総理)
避難所の生活環境について、温かい食事をだすための炊事場の確保や炊き出しスタッフの雇いあげ、プライバシーの保護等に必要な経費を災害救助法の対象としていますが、現場ではそうなっていません。その原因をどのようにつかみ、どのように打開するつもりですか。(総理)
また、被災者生活再建支援法の「半壊」「一部損壊」世帯までの対象拡大、一世帯からの適用と支援金の引上げを一刻も早く行うべきです。(総理)
最後に、基地と人権、地方自治の問題です。
全国知事会は、米軍基地の存在が住民の安全安心を脅かしていると指摘し、「日米地位協定の抜本的見直し」を求めています。政府はこの声にこたえるべきです。(総理)
辺野古新基地建設反対の圧倒的な民意を踏みにじって、工事を続ける政府の姿勢を絶対に許すことはできません。新基地建設を断念し、普天間基地の閉鎖・撤去を求めます。6年連続の一括交付金の削減は、今すぐやめるべきです。(総理)
以上、申し述べ、質問を終わります。
内閣総理大臣(安倍晋三君) それでは、お答えいたします。 公立・公的病院の再編についてお尋ねがありました。 高齢化が急速に進む中、地域の医療ニーズの変化に合わせた地域医療体制を確保するため、地域医療構想の実現に向けた取組を進めています。 お尋ねのリストは、それぞれの地域において、構想の実現のために、医療機関が今後の医療機能のあり方を考える際の材料としてお示しをしたものであり、病院が将来担うべき役割やあり方を機械的に決めるものではありません。 政府としては、地方団体の御意見も十分伺いながら、こうした点について関係者に丁寧に御説明し、地域において、その実情を踏まえながら、将来あるべき医療提供体制の議論を深めていただきたいと考えております。 地域の医師不足についてお尋ねがありました。 公立病院については、深刻な医師不足や人口減少に伴う患者数の低下などにより厳しい経営状況にある中、地域における持続可能な医療提供体制を確保すべく、各自治体において、公立病院改革プランを策定し、再編・ネットワーク化などの経営改革を進めているところです。 政府としても、公立病院が僻地における医療や救急、小児、周産期などの不採算・特殊部門に係る医療を提供する重要な役割を担っていることを踏まえ、必要な地方交付税措置を講じております。 また、御指摘の地域の医師不足への対応としては、医師の偏在是正が重要であることから、これまで、地域枠を中心として臨時的に医学部定員を増員してきており、人口当たりの医師数は、令和七年には現在のOECD加重平均の水準に達する見込みです。 医師偏在に引き続き対応するため、令和三年度まで地域枠をおおむね維持することとしております。令和四年度以降の医学部定員については、都道府県の実情に留意しつつ、議論を進めてまいります。 地方自治体における民間委託についてお尋ねがありました。 民間委託は、地方自治体が質の高い公共サービスを効率的、効果的に提供するための有効な手法として活用されており、実際に、民間委託によるさまざまな効果が見られていると承知しております。 各地方自治体においては、地域の実情を踏まえ、民間委託の効果が見込まれる業務を適切に選定するなど、自主的、主体的に取り組んでいただきたいと考えております。 自治体の職員不足についてお尋ねがありました。 地方公共団体の定員管理については、地域の実情を踏まえつつ、各団体において自主的に御判断いただくものと認識しています。 これまでも、地方公共団体においては、総職員数を抑制する中においても、例えば児童相談所等の職員や防災対策に携わる職員等は増加するなど、それぞれの行政需要の変化に対応し、必要な人員配置を行っていると承知しています。 引き続き、各地方公共団体において、効率的で質の高い行政の実現に向け、適正な定員管理の推進に取り組むことが重要と考えています。 被災者支援についてお尋ねがありました。 災害救助法の適用については、従来から各都道府県に対して、多数の方が生命身体に危険を受け、又は受けるおそれが生じる場合等において、ちゅうちょすることなく適用がなされるよう周知を図っております。 また、災害救助法に基づき、避難所の設置を始めとして、救助に必要な費用については国庫負担の対象としており、関係自治体にその旨を通知し、都道府県と市町村が連携して被災者への適切な救助を行うよう促しているところです。 引き続き、災害救助法の適切な運用を図り、被災された方々の適時適切な救助に努めてまいります。 避難所の生活環境の確保についてお尋ねがありました。 避難所における生活環境の改善は、政府としても、被災者を支援する上で極めて重要であると認識しています。
政府としては、避難所における生活環境の改善の具体的方法について、取組指針等を自治体に周知し、適切な対応を求めております。また、災害救助法に基づき、例えば被災者への温かい食事の提供やプライバシー確保に係る必要な費用については国庫負担の対象としており、関係自治体に適切な対応を促しているところです。 今後も、被災自治体の意見をお聞きしながら、災害救助法による救助が適切に行われるよう、しっかりと取り組んでまいります。
被災者生活再建支援制度についてお尋ねがありました。 被災者生活再建支援制度は、著しい被害を及ぼす一定規模以上の自然災害が発生した場合に、住宅に全壊や大規模半壊等の重大な被害を受けた世帯に対して、全都道府県の相互扶助及び国による財政支援により支援金を支給するものです。支給金額の引上げや支給対象の拡大等は、国や都道府県の財政負担等の課題もあり、慎重に検討すべきものと考えますが、全国知事会から提言のあった半壊世帯への対象拡大については、全国知事会と協力して、昨年災害が発生した地域等において詳細な実態把握調査を行うとともに、継続的に意見交換を行っているところであり、今後も、被災者に寄り添う観点から、必要な対応を検討してまいります。 日米地位協定及び沖縄の基地負担についてお尋ねがありました。 日米地位協定は大きな法的枠組みであり、政府として、事案に応じて、最も適切な取組を通じ、具体的な問題に対応してきています。 安倍政権のもとでは、環境及び軍属に関する二つの補足協定の策定が実現しました。国際約束の形式で得たこの成果は、日米地位協定の締結から半世紀を経て初めてのものです。 日米地位協定については、御指摘の諸点も含め、さまざまな意見があることは承知していますが、政府としては、今後とも、このような目に見える取組を一つ一つ積み上げていくことにより、日米地位協定のあるべき姿を不断に追求してまいります。
(注意!実際は使えない環境補足協定の解説を文末に載せています!)
住宅や学校で囲まれ、世界で最も危険と言われる普天間飛行場が固定化され、危険なまま置き去りにされることは、絶対に避けなければなりません。これは、地元の皆様との共通認識であると思います。 日米同盟の抑止力の維持と普天間飛行場の危険性の除去を考え合わせ、検討を重ねた結果が、現在の辺野古に移設するという方針であり、この方針に基づいて着実に工事を進めていくことこそが、普天間飛行場の一日も早い全面返還を実現し、その危険性を除去することにつながるものです。 これからも、地元の皆様と対話を積み重ね、御理解を得る努力を続けてまいります。 令和二年の沖縄振興予算案における一括交付金は、沖縄県が作成したこれまでの事業計画における実績を踏まえ、所要額が確保されているものと確認しています。 今後とも、沖縄振興策を総合的、積極的に推進してまいります。 残余の質問につきましては、関係大臣から答弁させます。
(注意2!普天間基地の危険性をいつまでも取り除かない安倍政権の問題について文末に載せています!)。
○国務大臣(高市早苗君)
本村伸子議員からは、まず、行政改革の取組を反映する地方交付税の算定についてお尋ねがありました。 行政改革の取組を反映する算定に用いる指標については、行政需要の変化に合わせて見直しを行います。 令和二年度においては、児童虐待防止対策の強化を進めていることなどを踏まえ、職員数削減率を用いた算定を廃止します。 一方、極めて厳しい地方財政の現状を踏まえると、不断の行政改革による財政捻出が求められることから、経常的経費削減率などの指標を用いて行政改革の取組を算定に反映することとしています。 次に、会計年度任用職員についてお尋ねがございました。 会計年度任用職員に対する期末手当の支給などに要する経費については、来年度の地方財政計画において、地方公共団体の所要額を適切に計上しており、新制度への円滑な移行に必要な財源を確保しております。
【※注意!実際は使えない環境補足協定】
主張 米軍基地周辺汚染 立ち入り調査を阻む壁なくせ
沖縄県の米軍嘉手納基地や普天間基地周辺の地下水などから健康への被害が懸念されている有機フッ素化合物が高濃度で検出されている問題で、県が2016年1月に求めた基地内への立ち入り調査が3年半近くたった今も認められていません。在日米軍に関する日米地位協定を補足するとして締結された「環境補足協定」が、立ち入り調査実現の壁になっているからです。環境汚染の原因究明のために自治体が立ち入り調査を実施したくてもできない事態はあまりに異常です。
米側の通報が前提条件に
沖縄県ではこれまで、嘉手納基地(嘉手納町、北谷町、沖縄市)や普天間基地(宜野湾市)周辺の河川や地下水、湧き水から有機フッ素化合物のPFOS(ピーフォス)やPFOA(ピーフォア)が、米環境保護庁が設定する飲料水の基準値を超えて検出されています。
PFOSとPFOAは、泡消火剤の成分などとして使われてきました。環境省の説明によると、PFOSは哺乳類などの健康への影響が、PFOAについては発がん性が動物実験で認められています。このため、PFOSは国際条約で製造・使用が制限され、PFOAは最近、廃絶することが決まっています。
沖縄県は、PFOSやPFOAが高濃度で検出されている原因が嘉手納基地や普天間基地で使用されてきた泡消火剤である可能性を指摘し、基地内への立ち入り調査を求めてきました。
一方、日米両政府が15年9月に署名した「環境補足協定」は、環境管理の分野で日米協力を強化するとして、米軍基地への立ち入り手続きなどを規定しています。同協定は、環境に影響を及ぼす事故が現に発生した場合か、日本への基地返還に関連する現地調査を行う場合に、日米両政府でつくる合同委員会が立ち入り手続きを定めるとしています。
ところが、実際は、環境に影響を及ぼす事故については、米側から日本政府に通報が行われないと、自治体は現地視察やサンプル採取の申請をできません。環境補足協定に基づいて合同委員会が定めた合意が、「立ち入り申請はアメリカ側からの情報提供が端緒」(河野太郎外相)であることを前提条件にしているためです。
沖縄県が求めた基地内への立ち入り調査がいまだ実現しないのは、米側がPFOS・PFOAの問題を十分認識しているはずなのに通報をしないためです。
安倍晋三首相は、環境補足協定を「日米地位協定の締結から半世紀を経て初めて(の成果)」であり、「事実上の(地位協定)改定とも評価される」などと宣伝してきました。しかし、今回の事態はそうした主張が成り立たないことを浮き彫りにしています。
地位協定の抜本的改定を
環境補足協定に基づく日米合意が自治体の立ち入りを阻む仕組みになっているのは、日米地位協定が米軍に基地の排他的管理権を認めているからに他なりません。
全国知事会は、地位協定を抜本的に見直し、環境法令などの国内法を米軍にも原則適用させることや、自治体の迅速・円滑な基地への立ち入りを保障することを求めています。安倍政権に地位協定の抜本改正を迫る世論と運動を大きくすることが重要です。
(2019年6月7日 「しんぶん赤旗」)
【注意2!普天間基地の危険性をいつまでも取り除かない安倍政権の問題点】
政府は普天間基地の返還について、辺野古新基地(同県名護市)建設を前提にしています。しかし、政府の計画でも完成は2030年代以降。軟弱地盤の問題も抱え、先の見通しがない状況です。辺野古に固執する限り、政府は普天間の危険と沖縄の負担増を押し付け続けることになります。
そもそも、赤嶺政賢衆議院議員が述べている通り、この問題の原点は、米軍兵士による少女暴行事件です。米軍基地があるがゆえの苦しみや悲しみが続いているからこそ、基地を縮小、撤去してほしいと訴え続けてきたのです。その沖縄の方々に、辺野古を受け入れなければ普天間は返さない、なぜそんな理不尽なことが言えるのでしょうか。埋立工事は直ちに中止すべきです