6月12日、衆議院総務委員会で2012年度、2013年度のNHK決算に関し、上田良一会長や野田聖子総務大臣に質問をしました。
2012年度NHK決算については賛成しましたが、2013年度の途中に会長に籾井勝人氏が就任し、その就任会見で「政府が右というものを左とはいえない」との発言を行うなどNHKの信頼を失墜させる重大問題があり、2013年度NHK決算は反対しました(反対討論は後述)。
質問の冒頭、2013年7月、NHK記者だった佐戸未和さんが過労死されたことにたいし、心から哀悼の意をささげました。
佐戸未和さんのお母様は、熱心に国会や官邸前にもこられております。
5月31日衆議院で強行され、参議院で審議されている「働き方改革」一括法案に、全国過労死を考える家族の会の皆様とともに強く反対を訴えられています。
「未和は私の宝、生きる希望、そして支えでした。過労死でわが子に先立たれるのは、地獄の苦しみです。もう二度と心から笑えなくなりました。私たちと同じ苦しみを背負う人を増やしたくない」
「労働時間を管理しない高度プロフェッショナル制度は、過労死しても労災認定が難しくなる。“自由に働ける”なんて机上の空論です」
「『過労死促進法』と言われている法案を成立させるわけにはいかない」
お母様の声を紹介し、野田大臣には内閣の一員として、そして与党の議員にも、こうしたご遺族の悲痛な声に応えて、強行はやめ、廃案にするべきだと強く申し上げました。
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2013年度の年度途中、2014年1月に籾井氏がNHK会長に就任し、その就任会見で「政府が右というものを左とは言えない」と発言し、大問題になりました。。
今の上田会長は、当時NHK経営委員でしたが、経営委員会として3度にわたって異例の厳重注意(※)を籾井会長(当時)にしています。
(※)①就任会見の発言に対する注意、②経営委員会での発言に対する注意、③ハイヤー利用をめぐる経理処理に対する注意。
NHKのすべての役職員が「放送ガイドライン」を胸に番組制作にあたっているとのことですが、「放送ガイドライン」の冒頭には、
「NHKは公共放送として、憲法で保障された表現の自由のもと、正確で公平・公正な情報や豊かで良質な番組を幅広く提供し、健全な民主主義の発展と文化の向上に寄与する。この役割を果たすため、報道機関として不偏不党の立場を守り、番組編集の自由を確保し、何人からも干渉されない。ニュースや番組が、外からの圧力や働きかけによって左右されてはならない。NHKは放送の自主・自律を堅持する。
全役職員は、放送の自主・自律の堅持が信頼される公共放送の生命線であるとの認識に基づき、すべての業務にあたる。」
と書かれています。
こうしたことも紹介しながら籾井会長時代にNHKへの信頼を大きく傷つけられた事態のもとで、いまなお信頼回復の途上であるとの認識をもつべきと質問しました。
上田会長は、「NHKがよってたつところは、視聴者・国民の皆様の信頼であり、NHKが信頼を得るための取り組みに終わりはなく、不断に追及すべきもの。NHKは放送法や放送ガイドラインに則り、自主自立、公平公正、不偏不党を貫いて放送にあたっておりまして、今後ともこの姿勢に変わりはありません。
また、公共放送のトップである会長、私には高い倫理観と説明責任が求められているということであり、この点をよく自覚し、引き続き自らも厳しく律して行動してまいりたい」と答弁しました。
そのうえで、今、森友学園の疑惑や加計学園の疑惑をはじめ、国政の私物化と権力の乱用など、国の民主主義が根本から問われる事態になっているなか、森友学園疑惑で貴重なスクープをしてきたNHK大阪放送局の記者の考査室への人事異動についての報道があり、国民の皆様が疑念をもつに至っています。
この件で、元NHK経営委員の方を含む研究者・弁護士有志の方々がNHK会長あてに「権力監視報道に立ち戻り、報道現場の委縮克服を求めます」との要請書を6月1日に提出しています。
そこには、
「受信料で支えられる公共放送機関としてのNHKは、権力から独立して自主自律の放送を貫くなか、権力を監視し、国民の知る権利に応える放送を続けているという視聴者の信頼を得ていることが大前提です。NHKが日々の報道でも人事においても、こうした前提を自ら壊すような言動は視聴者への背信行為であり、現に戒めること」
「NHK報道局の上層部は取材・番組制作の現場の職員を委縮させるような人事権を含む権限の濫用を斥け、事柄の核心に迫ろうとする意欲的な取材、番組制作への職員のモチベーションを支え、高めるような役割と職責を果たすべき」
など書かれています。
この要請をどのように受け止めているのかを問い、取材・番組作成の現場の職員の皆様が委縮しないように「良心条項」と言われるような経営陣、上層部の編集方針を良心から、専門職能としての価値規範と本人が考えるものからみて、拒否することができる、拒否しても不利益を被ることがないという保障をつくり、仕組みとして、自由にモノが言える雰囲気をつくるべきと提起しました。
上田会長の答弁は、「自主的な編集方針に基づき放送いたしております。公平公正、自主自立を貫き、視聴者の判断のよりどころとなる情報を多角的に伝えていくことが役割だと考えております」というものにとどまりました。
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また、内閣府の規制改革会議の第三次答申では、NHKのインターネット常時同時配信について「早期に結論を得る」と答申したことについて質問しました。
野田聖子総務大臣は「特段のスケジュールは決めていない。国民・視聴者の理解を得ることが重要」と答えました。
規制改革会議第3次答申では、ハード・ソフトの分離については本格的には言及されていません。また、放送法4条撤廃についても懸念されたような言及は見送られています。
しかし、規制改革推進会議の議論では、これらはまだ排除されていないように思えてなりません。
規制改革推進会議の投資等ワーキング・グループが今年4月16日に論点整理(「通信と放送の融合の下での舗装のあり方いついて」)をしましたが、原座長は、「放送法4条撤廃やハード・ソフト分離の議論についても、通信・放送の融合の妨げになるということであれば今後も考えられるのか」という記者の質問に対して、「何がこれからの課題になるかということを幅広く議論していく」と語っています。
放送局における制作と送信の分離や、放送法4条(政治的公平)撤廃の議論の可能性について懸念を表明しました。
そもそも放送法は、国民を戦争に駆り立てる道具になった戦前の放送事業の教訓を踏まえて制定されたもので、「放送による表現の自由を確保する」(1条)と目的をうたっています。そのうえで、4条では、「政治的公平」だけでなく、「公安および善良な風俗を害しないこと」「報道は事実をまげないですること」「意見が対立する問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を放送事業者に求めています。これが撤廃されたら、表現の自由、国民の知る権利が根本から破壊されることになり、これからも注視が必要です。
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【討論】私は、日本共産党を代表して2012年度、2013年度NHK決算に対する討論を行います。
NHK決算にあたっては、当該年度の予算内容の執行状況とともに、視聴者・国民のmナ様の信頼に支えられる公共放送としてのNHKの経営姿勢が、放送法にのっとり、国家権力からの独立、表現の自由の確保という基本姿勢を貫くものであるかどうかが問われます。
2013年度のNHK予算について、日本共産党は受信料値下げの通年化による減収を見込む一方で、営業活動の強化による収支差金ゼロを目指すものであり、公共放送の機能強化や国民負担の軽減につながることを考慮して、その承認に賛成しました。
しかし、年度途中に会長に就任した籾井勝人氏は「政府が右というものを左とは言えない」などと発言し、NHKに対する国民の信頼を深く傷つけ続けてきました。
国民の皆様の信頼が一気に傷つけられる事態となったことは看過できません。
2013年7月、NHK記者だった佐戸未和さんが過労死されました。NHKには、二度とこうした悲惨な事件を起こさないよう長時間過密労働の抜本的な是正を求めます。 2013年10月には、内部通報により、放送技術研究所の元主任研究員が音響機器会社に架空工事を発注し、物品を受領して逮捕、起訴された事実が発覚しました。また、NHK出版の編集長が架空の校正業務を発注して金品を受領していたこと、さらに、NHKビジネスクリエイトの営業部長による売り上げの水増し計上事案が明らかになりました。
こうした不祥事・不正経理事件についても、その原因を究明し、視聴者・国民の皆様に対する説明責任を果たし、解決への具体策を明らかにする責任が果たされているとは言えません。
以上の点から、2012年度決算については賛成、 2013年度決算については反対とします。
くわえて、第186臨時国会以降、NHK決算の審議がおこなわれてこなかったことは重大です。
国民の皆様からの受信料に支えられるNHKの決算であり、適宜、十分な審議することが本来の姿であることを申しのべて、討論とします。