11月25日、「児童養護施設の性暴力を考える~子どもを被害者・加害者にしないために出来ること~三重集会」(みえ施設内暴力と性暴力をなくす会主催)に、岡野恵美三重県議、福沢みゆき亀山市議、大嶽隆司三重県委員長とともに参加しました。
こうした集会が開催された背景には、以下のような理由があります。
「平成25年7月23日、三重県名張市の児童養護施設「名張養護学園」に入所していた女の子(7歳)が、施設内で男の子(13歳)から強制わいせつをされたのは、施設が監護を怠ったためとして、女の子の母親が三重県と加害男児とその実母を被告として、約660万円の損害賠償請求裁判を起こしました。
平成29年4月27日、津地裁で判決がありました。岡田治裁判長は原告の訴えを一部認め、男の子の母親に180万円の支払いを命じ、三重県については請求を棄却しました。 裁判では、“三重県内の児童福祉施設における性的問題を伴う事故報告”が明らかにされました。その事故報告によると、平成20年度~平成24年度の5年間で51件146名もの児童間の性的事故が発生していることが判明しました。 これほどの児童間における性暴力が起きているにもかかわらず、三重県は効果的な対策をとれず、子どもたちは性暴力の被害者・加害者となり続けています。今までは、親権者(実親や施設長)が親告しないため、事件化されずに隠蔽され、被害児は泣き寝入りしてきました。しかし、このたびの刑法改正により、性犯罪は非親告罪となり、事件を知りうるものは誰でも刑事告発出来るようになりました。
また、子ども間の力関係による肛門性交・口腔性交(施設では「性器なめ」と呼ばれていた)は、「強制性交等罪」となり、男子・女子の性別かかわりなく犯罪となります。性犯罪を犯した少年は、犯罪少年(満14歳以上)・触法少年(満14歳未満)として、少年法のもとに送致されることになります。 私たちは、この裁判で明らかになった児童養護施設におけるに性暴力のみならず、過去の児童間暴力・性暴力の事例を学び、児童養護施設で育つすべての子どもが、性暴力の被害者にも加害者にもならない方策を考えるために、児童虐待防止月間に合わせて、集会を企画しました。 集会では、九州大学大学院の田嶌誠一教授をお招きし、施設内暴力・性暴力の防止に絶大な効果をあげている「安全委員会」方式の勉強を行います。 「安全委員会」方式を取り入れた児童養護施設では、子どもたちのおどおどした様子がなくなり、子どもらしい可愛らしさを取り戻し、素直に上級生に甘えることができます。子どもたちは「暴力はしても、されてもいけない」「殴る前に、言葉で言おう」を合言葉に、気持ちを行動ではなく、言葉で表現するように変わります。あわせて、被虐待のトラウマを行動ではなく、言葉で表出できる、副次的効果も出てきます。親から受けた虐待行為を、「してもされてもいけない暴力・性暴力」と捉えなおすことで、暴力・性暴力は絶対にいけないという規範が出来てきます。一般社会では常識の非暴力が、施設の子どもたちの間でもルール化されていきます。 児童養護施設を安心・安全な場所にするために、何を行うべきなのか、一緒に考えていただければと思います。」
集会では最初に、「施設内虐待を許さない会」の方からお話がありました。 実態を告発されながら児童福祉法を改正して、子どもたち同士の暴力・性暴力に関する規定を入れ、日常的予防や早期発見を義務付けること、子どもたちの安全を守るために安全委員会方式が有効である旨のお話がありました。
つぎに、裁判に訴えられたお母さんからのお話です。シングルマザーで、病気で調子が悪く、泣く泣く「安全だ」と言われた児童養護施設に入所しなければならなかったこと、そこで起こった事件のこと、被害にあわれた娘さんの状況などリアルな実態を語られました。 困難をかかえたシングルマザーへの支援の強化も強く訴えられました。
九州大学大学院の田嶌誠一名誉教授からは、
児童福祉施設における暴力は、
2レベル
①潜在的暴力
②潜在的暴力(性暴力のようなすぐにキャッチできないような暴力)があり、
3種の暴力
①職員から入所児童への暴力
②入所児童から職員への暴力
③子ども間暴力
+保護者から職員・入所児童への暴力
があると指摘されました。
安全を確保していくことは、子どもたちにとって根本的な切実な要求であることを認識し、まずは暴力をなくしていくことに真剣に取り組む必要性を強調されました。
施設内暴力・虐待への取り組みで大事なことは、
①施設をあげて2レベル3種の暴力に取り組む
②風通しのいい形で行う、
そのうえで
③子どもたちへの成長へ個別の支援を行う
→モニターしつつ支援する仕組み
こうしたことが大事なことと強調されました。
そのうえで、効果があがっている安全委員会方式についてお話されました。
愛知県内の有識者の方が参加されていましたが、愛知県内でも5つの児童養護施設が採用しているそうです。
児童虐待や貧困などの理由で「保護」されたはずの子どもたちが、児童養護施設などで暴力・性暴力にされされている現実。それでは「保護された」とは言えないとの田嶌先生の指摘が私たちに突き付けられています。
私は、梅村さえ子衆議院議員(当時)とともに、みえ施設内暴力と性暴力をなくす会の皆様と厚生労働省とやり取りをした際に、厚生労働省が、子ども間の性的問題行動の件数も把握していないし、実態調査もしていないし、被害者・加害者にさせないマニュアルもないことが明らかになったことをお話し、今後も国会で取り組んでいく決意を述べました。
大変有意義な集会でした。本当にありがとうございました<(_ _)><(_ _)><(_ _)>