もとむら伸子(日本共産党衆議院議員)-
レポート

【14・05・30】大内裕和先生をむかえての「奨学金(=ローン)に苦しむ大学生の貧困と日本の未来」と題する講演会

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 5月30日、大内裕和先生をむかえての「奨学金(=ローン)に苦しむ大学生の貧困と日本の未来」と題する講演会に参加しました。

 主催をされたのは、日本共産党を応援する愛知県弁護士の会の皆さんで、愛知県日本共産党大学教職員研究者後援会の皆さんが共催されました。

 大内先生は、奨学金問題へ関心をもったきっかけ、奨学金制度の現在と歴史、上昇し続ける大学学費と経済的困難、高卒就職の困難、大学卒業後の就職難の拡大と奨学金返還の困難、奨学金が奨学金として機能していない問題点、2014年度予算における制度改善、奨学金制度改善の方向などなど資料などを使って、縦横に語ってくださいました。

 先生が、各メディアから取材を受けない週はないくらい、この問題は社会問題化され、解決が迫られている問題です。

 大内先生からのアドバイスを生かして、世界一高い学費、巨額の借金を背負わされる奨学金、ブラック企業、非正規雇用など若者の夢と希望を奪う日本のあり方を変えていきたいです!!

 私も一言ご挨拶をさせていただきましたが、長年の運動と国会質問などで、やっと国連人権規約の段階的無償化条項の留保を撤回させましたが、来年か再来年にはまた学費をあげようとしているとのことで怒りでいっぱいです。

 こんな状況を変えていくために、皆さん、力を合わせていきましょう!!

 大内先生、企画していただいた皆さん、参加された皆さん、本当にありがとうございました!!

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以下は、大内先生のお話の概要です。
 
◆1998年度 無利子奨学金39万人、有利子奨学金11万人 計50万人
◆2012年度 無利子奨学金38万人、有利子奨学金96万人 計134万人

 無利子貸与の希望者は、予約採用の段階で近年、毎年約2万人ずつ増加。しかし、採用枠が少ないために、2009年には78%が不採用。

 有利子の奨学金を月10万円借りるとなると、貸与総額は480万円の借金。貸与利率上限3.0%なら返済総額は645万9510円となり、貸与利率1.08%なら返済総額は536万4513円となります。

 返済できなくなると延滞金10%がつき(大内先生などが運動したために2014年度から5%に)、延滞金発生後は、まず延滞金の支払いが優先され、その次に利息で、最後に元本に充当され、元本が少しも減らないというケースも。

 2010年度の利息収入は、232億円で延滞金収入は37億円にも達します。2010年度期末で民間銀行からの貸付残高は、だいたい1兆円で、年間の利払いは23億円。

 サービサー(債権回収機関)は2010年度、約5万5000件を日立キャピタル債権回収など2社に委託し、16億7000万円を回収していて、そのうち1億400万円が手数料として支払われています。

 奨学金が、「金融事業」、「貧困ビジネス」になっています。

 大内先生は、世代によって、学費や奨学金の制度が違い、今の若者がおかれている状況を理解されないこともあるとお話されました。

 2010年、国立大学の初年度納付金は81万7800円、私立大学は131万5666円。
(1969年、国立大学の初年度納付金は1万6000円、私立大学は22万1874円)

 それにたいし、家計年収(中央値)は、1998年544万円➡2009年438万円。

 家計が困難になる中で、奨学金受給者の割合も、1998年23.9%から2010年には学部昼間で50.7%と5割を突破し、2012年には、学部昼間部で52.5%、大学院修士課程で59.5%、大学院博士課程で65.5%となっています。

 
 「そんなに言うなら、高校卒業して就職すればいいのに・・・」など言われることもあるが、新卒高卒者に対する求人数は、1992年3月末では167万6000件あったものが、2010年3月末では19万8000件と最低水準で、高校卒業して就職するという道も困難になっている現実があります。とりわけ、大都市以外の地方自治体では。

 大学就職後の就職難の拡大と奨学金返済の困難さも増しています。日本学生支援機構の奨学金について滞納者は33万人(2010年)。3カ月以上の滞納額は2660億円。返還滞納者の個人情報機関への登録(いわゆるブラックリスト化)は、1万人を超えています。

 裁判所を使った「支払監促」を申し立てられる奨学金滞納者も急増。
 2004年には、わずか200件だった「支払監促」申立件数が、2011年には1万件と、この7年間で50倍に拡大しています。

 奨学金制度の問題点として、
(1) 適格者が無利子奨学金を得ていない。
(2) 卒業後の返還の困難さ➡大学卒業後の生活や人生を左右
(3) 将来の返済不安から奨学金を借りることを抑制
「バイト漬け」生活→「ブラックバイト」問題に。

奨学金制度改善へ向けての運動について、2012年9月1日に「愛知県 学費と奨学金を考える会」がスタート。2013年3月31日に「奨学金問題対策全国会議」結成など全国に広がりつつあります。

 こうした運動の反映もあり、2014年度予算では、
◆延滞金賦課率10%から5%への削減
◆返還猶予期限5年から10年への延長
◆減額返還制度、返還期限猶予制度の基準を緩和
◆延滞者への返還期限猶予制度の適用
◆減額返還制度申請書類の簡素化
◆無利子奨学金の増加(42万6000人➡45万2000人と2万6000人増)
◆有利子奨学金の削減(101万7000人➡95万7000人)

 今後も、改善をせまり、将来的には、有利子奨学金の廃止によって、無利子と給付型にし、最終的には給付型のみの奨学金制度に。

 多くの皆さんに、「愛知県 学費と奨学金を考える会」、「奨学金問題対策全国会議」、大内先生のフェイスブック、ホームページにアクセスしてほしいとのことです。

 そして、各大学、地域で「〇〇奨学金問題ネットワーク」をつくり、幅広く、ネットワークを築いたり、働きかけをおこなっていくことが重要。

 長野県では、2014年度から給付型奨学金制度が導入されました。2015年春の統一地方選挙で大争点にしていくことが大事。

 今後、経済的貧困、学費負担のために若者が、入隊させられ、戦場に送られるアメリカのような事態にもなりかねない、憲法を守る運動の皆さんとも連携していくことの必要性。

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