少なくとも死亡・重大な児童虐待事件をおこさないために!―認定NPO法人CAPNAの岩城正光副委員長の講演をお聞きしました
愛知県内で児童虐待を防止するためにがんばっている認定NPO法人CAPNA(キャプナ)の皆さんの講演会に参加させていただき、岩城正光副委員長の講演をお聞きしました。
2011年10月に名古屋市名東区で起きた児童虐待死亡事件について、名古屋市は「名古屋市児童虐待事例検証委員会」を設置し、この5月に報告書が公開されました。
※名古屋市児童虐待事例検証報告書→http://www.city.nagoya.jp/kodomoseishonen/cmsfiles/contents/0000035/35899/kensyouhoukokusyo.pdf
岩城正光さんは、この「名古屋市児童虐待事例検証委員会」の委員でもあります。
岩城さんは、検証しても現場・行政・政治になかなか反映されないもどかしさで、精神的にまいってしまうこともあると胸のうちを語ってくださいました。
しっかりとこの報告書が生かされるように私たちも努力をしていきたいと痛切に思いました。
名東区の児童虐待死亡事件の検証で、明らかになった問題点と課題は以下の通りです。
(1)児童相談所長の兼務による組織的対応力の悪化
(2)児童記録票の記録方法のずさんさ・・・背景には欧米に比べても担当する子どもの人数が多すぎる問題があります。
(3)児童相談所に派遣された警察官の活用・・・派遣された警察官が家庭訪問によってDVについての疑念を申告していたが、DVについての対応を全く検討していない。
(4)児童福祉司の担当ケース数の見直しの必要性・・・児童福祉司一人あたり約70件の児童虐待等にかかるケースを抱えている。児童福祉司の増員とともに児童心理司の増員も必要。
(5)児童相談所における児童虐待防止の専門性の乏しさ
(6)児童相談所における情報収集力の不足
(7)児童相談所のケースを「見立て」る力の不足
(8)児童相談所と区役所との連携
(9)児童相談所と警察との連携
(10)児童相談所と学校との連携
(11)問題の本質の理解
(12)一貫性のない援助方針
(13)家庭環境の悪化
(14)すみやかな一時保護の実施と的確なリスクアセスメント
(15)一時保護期間中の調査・情報収集の徹底
(16)一時保護解除後の援助方針
提言も以下のように書かれています。
1 児童相談所の専門性の向上
(1) 児童虐待対応の専門性
(2) 専門職としての職員採用の導入
(3) 一時保護の積極的実施
(4) 基礎的な知識、技能習得の徹底
(5) 研修の体系化と充実
(6) 外部有識者の活用
2 児童虐待への組織的対応力の強化
(1) 組織的対応の強化
(2) 児童心理司の増員
(3) 児童福祉司の増員
3 各関係機関の独自性と連携
(1) 区役所と児童相談所の連携
(1)貧困家庭とDV
(2)援助方針
(3)子どもサポート区連絡会の機能
(4)社会福祉事務所の役割
(5)データベースモデル事業
(2)警察と児童相談所の連携
(3)学校と児童相談所の連携
(4)地域・民間団体と児童相談所の連携
(5)医療機関、保健機関などと児童相談所の連携
(6)市役所本庁主管課と児童相談所の連携
4 児童虐待防止に関する総合的な実践研究
報告書の最後には、こんな言葉が書かれています。
「虐待であるにもかかわらず判断を誤って保護せずに生命を落とした子どもに謝罪するくらいなら、虐待ではないのに間違って保護してしまったときに親に謝罪する方がまだましである。」
児童虐待問題に取り組む研究者の方との懇談
講演後、児童虐待問題に取り組む研究者の方と懇談しました。
居所不明児童(行方不明の小中学生)の問題や児童虐待をなくしていくための有効な方策などについて意見交換しました。
居所不明児童(行方不明の小中学生)の問題では、児童相談所にも協力を得ることによって、ある程度、子ども達の行方がわかる可能性もあることなども教えていただきました。
また、少なくとも児童虐待で死亡するあるいは深刻な状況になるケースを防ぐために有効な事業として、「こんにちは赤ちゃん」事業を充実していくことで効果が得られることもわかりました。
貧困など困難をかかえる子育て家庭には、丁寧に半年くらい訪問することによって(週1回くらいがよい)、親御さんの気持ちの余裕もでき、深刻な虐待ケースになる事例が少なくなるそうです。碧南市の事業が参考になると教えてくださいました。
とにかく児童虐待で死亡事件をださないために、児童相談所により一時保護や里親制度を積極的に活用する必要性についても語ってくださいました。
子どもたちの命を守るために、多くの皆さんと力を合わせたいと思います。