名古屋南部地域から大震災・津波対策を考えるシンポジウム
5月27日、「名古屋南部地域から大震災・津波対策を考える」シンポジウムに参加しました。
佐々木憲昭衆院議員の国会秘書の石井さんも参加されていました。
このシンポジウムの主催は、日本共産党4区委員会の皆さんです。
南海トラフ巨大地震がいつ来てもおかしくないと言われている中で、沿岸部の皆さんの命を守るためにとても大事な内容のシンポジウムです。
地域の皆さんが「いい企画をしてくれてありがとう」と言ってくださっているそうです。
パネリストは、マスコミなどでも取り上げられている名古屋大学大学院工学研究科准教授の川崎浩司さん、名古屋市防災局防災部防災室主幹の難波伸治さん、日本共産党名古屋市議会議員・名港管理組合委員の山口清明さんです。
司会・コーディネーターは、西田とし子4区くらし・環境対策本部長。
1回目の川崎浩司さんのお話の概要は、次のとおりです。
●そもそも津波とは、急に沿岸部を襲い、非常に周波の長い波で数キロ~数百キロがひとつの波(名古屋から大阪、名古屋から東京までが一つの波)という巨大なものもある。破壊力が大きい波。
●津波発生の9割が海溝型地震が原因。
●2011年3月11日14:46に地震が発生し、14:49には大津波警報が出されました。名古屋港付近では、15:15に津波注意報が出され、15:30には津波警報が出されていた。
●津波の伝播速度は、水深10メートルで波の高さが9メートルの場合、時速36kmでオリンピックの短距離選手レベルの早さであり、一般の方ではとても逃げられない。
●津波高が2メートルで木造家屋が全壊し、50センチでも自動車が持っていかれること、70~80センチの津波でも足をすくわれて倒れてしまう。
●東海地震は過去の例をみると南海地震、東南海地震と一緒に発生している。1605年、1707年、1854年に発生。1854年以降、150年が経過している。三連動型地震では、最悪の場合、死者は約25000人、経済的被害は約81兆円と想定されている。
●以前、国の中央防災会議で発表された3連動地震の想定域(M8.7)を変えずにM9.0になるように津波を設定し、地震直後に、護岸、防潮堤、水門、堤防等の河川・海岸防災施設が全壊し、初期水位は年間最大推定満潮位と設定。地震による地盤沈下も考慮してシュミレーションを行った。1959年伊勢湾台風による高潮氾濫の地図とほぼ一致した。
●避難・防災にたいする自助・共助・公助
●「稲むらの火」の逸話(安政南海地震)からくみ取る教訓・・・海辺の高台に住む庄屋の五兵衛は、大きな地震のあとには、必ず大きな地震がくることを知っていたために、みんなに知らせるために自分の家を焼きはらった。村の人々が自分の家の火事を消すためにあがってくるだろうことを見こんで火をつけ、村人たちを救った。知識をしっかりもって自分の身の安全は確保し、他の人々を救う。
●自然は過去の習慣に忠実である(寺田寅彦氏の名言)災害は必ずやってくる。
1回目の難波伸治さんの発言の概要は、以下のとおりです。
●東日本大震災と阪神淡路大震災を比較してみると、東日本大震災の方が死者が多いのは、やはり津波の被害。津波から逃げるのも、まずは、地震から身を守ることをしなければ、逃げることもできない(耐震化、家具の固定)。
●名古屋市では、これまで東海地震、東南海地震の2連動で想定していた。津波は地震発生後90分で名古屋港に到達(最大波は250分後と考えていた)。今後は、東海・東南海・南海三連動などの「南海トラフ巨大地震」の想定が必要。
●国の地震対策―中央防災会議の調査会では、昨年9月28日に最終報告を出した。そこでは、2つのレベルの津波を想定した対策が必要との見解が示された。
(1)頻度は極めて低いが甚大な被害をもたらす最大クラスの津波への対策
→住民避難を軸に、取りうる手段を尽くした総合的津波対策が必要
対応例:円滑な避難行動のための体制整備とルールづくり
津波に対する防災意識の向上
迷うことなく迅速かつ自主的に避難する
(2)津波高は低いが発生頻度が高く大きな被害をもたらす津波への対策
→海岸保全施設等の整備を引き続き進めていくべき
対応例:地震、津波に強いまちづくり
●名古屋市としては、今後国が「津波浸水域」、被害想定「直接的被害」、「経済的被害」、「対策の骨子」「対策の取りまとめ」などを公表するので、それを受けて「地震対策専門委員会」名古屋市防災会議で、地震防災対策、地震防災計画を見直していく作業を今年度いっぱいかけて行う。地域防災計画に反映できるのは2013年6月頃か。
●津波避難ビル指定等推進事業 ・・・津波浸水深などの被害想定はまだ出ていないが、いのちを守るために当面行うべき施策として緊急に実施
◆指定基準:標高10m以下の地域で下記(1)~(3)を満たす建物
(1)1981年以降の新耐震設計基準により建築された建物、又は耐震診断により安全性が確認されている建物
(2)鉄筋コンクリート、または鉄骨鉄筋コンクリート構造で4階建以上の建物 (多数の避難者が容易に避難ができる屋上をもつ3階建を含む。)
(3)常に出入りが可能な建物
◆対象地域:港区、南区、瑞穂区、熱田区、中川区、緑区
◆2012年3月31日現在、港区・南区で570棟224900人分指定。しかし、まだ人口の半分しか確保されていない。
●地震時の心得
・・・身の安全を最優先に行動。丈夫なテーブルの下や物が「落ちてこない」「倒れてこない」「移動してこない」空間に身を寄せ、揺れが収まるまで様子を見る。
・・・高層階(概ね10階以上)での注意点:揺れが数分続くこともある。大きい揺れもあり、家具などの転倒・落下の危険に加え、大きく移動する危険もある。
●家族防災会議、家具の固定、ラジオや携帯電話のTVなど情報を入手できるような準備、防災訓練、備蓄など大事。
1回目の山口清明さんの発言の概要は、以下のとおりです。
●港区では、区政協力委員協議会など区をあげて、防災署名に取り組んでいる(高潮防波堤及びポートアイランドの機能強化と液状化対策の早急な着手。防波壁の必要な予算の確保、情報伝達体系の確立、石油コンビナート等特別防災区域への関係省庁での必要な対策)。10万筆集まっている。南陽町では、堤防の強化の署名に取り組んでいる。
●「防ぐ」「知らせる」「逃げる」という3つの角度から
●「防ぐ」
◆高潮防波堤は以前から指摘をしてきたが、いざというときに地盤沈下と液状化の危険。しっかりとした対策をとる必要あり(予算はついている)
◆名古屋港には51カ所に水門がある。35カ所が企業の敷地内で企業が開け閉めする。いざというときに機能するかが問題。しかも名港管理組合(堀川、中川運河)、名古屋市(名古屋市)、日光川(愛知県)と管理も縦割りになっており、名古屋市消防局ですべてをつかんでいるわけではない。堀川の水門は、常時開けっ放しで、津波などの際は、波に応じて開け閉めすることになっている。しかし、3・11の津波にあわせた開け閉めの対応ができなかった。勤務は朝9時~17時までだったが、24時間対応になった。
◆コンテナや自動車の流出対策も必要。台風18号の際は、三河港で流れ出した。
◆石油コンビナート対策については、十勝沖地震の際に火災を起こした浮き屋根式のタンクが8つあり、そのうち耐震化ができていないものがある。すべてのタンクあわせると229カ所のうち165カ所耐震化されていて、64カ所が残っている。
●「知らせる」
◆どんな所に住んでいるかよく知ることも必要。977本の電柱にはN.P表示がされている。どのくらいまで津波がくるのかという目安にしてほしい。
※N.P.…名古屋港基準面の略。名古屋港における工事(管理)の基準面であり、港内の潮位、水深又は港湾施設の高さ等を示す基準となる。
●「逃げる」
◆津波避難ビルの指定を促進するためにも、5年間は固定資産税を減免する税制上の特別措置もある。
◆避難訓練について。名古屋港には、1100事業所あり、35000人の労働者が働いている。名古屋港管理組合としても30分、2km圏内に逃げるための施設など整備することにはなっているが、コンテナ車に載っているドライバーのことまで視野に入れた避難訓練をやらなければならない。
◆名古屋市では昨年1年で2600人程度人口が増えているのに、港区では昨年1年間で990人の人口減、南区では815人の人口減。
◆健康と福祉の街づくりをしてこそ、災害弱者の皆さんの命も守ることになる。
一通り、パネリストの発言を終えたのちに、質疑応答の時間。参加者の皆さんから次々と質問・意見がだされました。
☆千年小学校や中学校は、堀川のすぐ近く。護岸もボロボロで心配。在宅介護されている方々をどうやって助けるのかも不安になる。
☆市営住宅の1階で車いすで生活している。その市営住宅自体は、津波避難ビルに指定されているが、どうやってあがったらいいのか。スロープなどつけてほしい。近所の人に協力を依頼するように言われるが、近所の人は、みな高齢者。避難訓練もしているが、消防のホースの出し入れなどの訓練。現実的な内容での避難訓練をやってほしい。
☆障がいをもっている子どもがいる。障がい者の避難所は名古屋市内で一カ所しかないと聞いている。知的障がいでパニックを起こすこともあるので、皆さんと一緒に避難所生活ができるのか心配。
☆小学校の教師をしている。液状化なども心配。子どもたちをどのように避難させればいいのか。
☆うちのあたりは液状化する地域で、過去には水が噴き出したとも聞いている。液状化のなかで車いすを押して逃げていけるのか心配。
☆名四や高速道路しか逃げる場所がない。緊急時は車を止めるなどしてほしい。
☆名四国道や都市高速が倒れてこないか心配。近くの公衆浴場に井戸があるが、災害時に井戸を使うことは東日本大震災のときも有効だった。そういう井戸を保全していることなどについても支援できないか。
☆港区で一番たくさんの障がい者施設をやっている。福祉避難所が30カ所あると聞いているが、一般の避難所などではトイレなど問題が発生する。東日本大震災では、身体障がい者が死者の4割と聞いている。施設をやっているものとしてどうやって命を守っていくのか心配している。今度つくる施設は、大震災を想定し、4階建てで、200名の避難所として使えるようにする予定。
☆山崎川の堤防は老朽化しているのではないか。現状と対策を教えてほしい。 ☆マスコミ報道などでもN.Pの理解など正確でないこともある。
☆(南区)豊田には避難ビルがない。
☆学童保育をやっているが、逃げる場所が早い者勝ちという現実もあるようで、どこに逃げるのか心配している。下校中なども心配。
(回答・・・順不同)
→液状化については、難しい面がある。地下水をくみ上げ過ぎると地盤沈下になるので、くみ上げを制限している。地下水のくみ上げを制限すると地下水がためって液状化しやすい状況になる。
→愛知県のホームページに液状化しやすいところが地図上でわかるようになっているので、一度みてみると参考になる。
→千葉県浦安でも液状化問題が深刻だったが、建物によって差があった。公営住宅などは杭を30メートルくらい打っているので大丈夫だった。
→避難の表示については、愛知県とともに進めたい。
→「津波でんでこ」という言葉は、子どもたちが、訓練などして逃げる力を持つようにしているから、親も子どもは大丈夫ということで、さっと逃げることができるという意味。 →マスコミには、口をすっぱくして正確に書くように言っている。
→山崎川の堤防を歩いて観てみたが、老朽化している。対策はとる方向ではある。ハード面はお金と時間がかかるので、その間にも自分たちができることはやってほしい。
→山崎川は測量が終わった。今月で調査終わる。一カ所空洞化もあった。夏に調査結果がでる。 →堀川の護岸もしっかりとやっていかなければいけないと思っている。津波がどのくらい遡上するのかもみていく必要がある。
→中川運河や堀川の水門は津波に強度が耐えられない。門が変形していまう。いそぎましょうと言っている。
→命が助かった割合として自助7割、共助2割、公助1割と言われている。そのことも是非念頭においてほしい。
→周りが高齢者ばかりというお話があったが、救助についても災害弱者の皆さんのことなど優先順位を考えなければいけないかもしれないと思っている。
→名古屋市には20~30カ所の福祉避難所があります。一般の避難所ではトイレ問題というのはわかりますが、まずは命を助けることを優先したい。福祉避難所についても、他の自治体からの支援も含め広域での救助、避難も考えている。
→(南区)豊田には避難ビルがないので、今後、南陽のイオンさんが避難ビルに指定されたようにアピタさんなど民間にもお願いして指定していきたい。
→NEXCOや名古屋高速道路公社とも話し合っている。車を止めるのは難しい。 →応急井戸を登録する制度がある。
→港区、南区の人口は市内の2割。しかし、市営住宅の3割は、港区、南区にある。土地がやすいということで、危ないところにつくってきた。まちづくりから本来は考えなければいけない。緊急時は、車から降りて避難というが、災害弱者が困ってしまう。たとえば、車いすマークやデイサービスの車は、車で逃げてもよいというルールをつくることなども必要かもしれない。避難所になる市営住宅などは、緊急時に車いすでも上に上がれるように太陽光パネルや自家発電機などを備えるなどの対策も必要。
約200名の方々が参加され、時間が足りないくらい活気あるシンポジウムでした。
私も引き続き勉強させていただき、防災・減災対策にがんばっていきたいと思います。
中川区で活動
シンポジウムの開始前と終了後は、中川区で支部の皆さんと活動しました。
日本共産党89周年DVDを観ながら交流した方は、仕事や故郷のご家族が亡くなられて大変ななかですが、「原発や子どもたちのことを思うと、今、本当に日本共産党が大きくならないといけないわね。がんばります」と言ってくださいました。
また、家族の介護でご苦労されている方にお話伺ったり、体調が悪い方の「少し改善してきた」とのお話に安心したり対話を重ねました。しんぶん赤旗を読んでくださる方々が増えました。
皆さんの温かいお支えにしっかりと応えることができるように日々精進してまいります。