日本国憲法をくらし・政治・外交に生かそう!と宣伝
5月3日は、憲法記念日。
午前中は、千種駅で八田ひろ子元参院議員と一緒に日本国憲法のすばらしい条文を紹介しながら、「平和的に生きる権利を保障している日本国憲法を暮らし、政治、外交に生かしていこう!」と宣伝しました。
自民党や大阪維新の会などが、戦争はしない、武器は持たないと誓った憲法9条を変えようとしていることなどもお知らせしました。
「がんばってよー」と声をかけてくださったり、握手を求められたりと温かい街ゆく皆さんに元気をいただきました。
愛知憲法会議主催「憲法施行65周年記念―市民のつどい 新しい国のかたちを問う」に参加
午後は、「憲法施行65周年記念―市民のつどい 新しい国のかたちを問う」に参加しました。
来賓としてあいさつされた愛知県弁護士会の纐纈和義会長は、被災地での復興は、憲法を生かした人間の復興が行わなければならないこと、各政党が憲法改定案を出しているが、人間の尊厳がないがしろになる危険性があり、9条も骨抜きにされようとしていることは見過ごすことができない問題があると指摘。こうした動きには「的確に対応していく」と語られ、頼もしく思いました。
「一人ひとりを大切に~憲法から東日本大震災や原発事故を考える~」と題する講演をされた伊藤真さん(伊藤塾塾長・弁護士)のお話は、日本国憲法の根本がよくわかる講演で深みがあるものでした。
法律家を目指す皆さんが通われる伊藤塾カリスマ塾長の伊藤さんは、法律家や公務員は憲法の価値を実現することが使命であり、そうした人材を育成するために日々努力され、1年間100本程度、日本国憲法のすばらしさを講演するために全国を回っているそうです。
以下は、講演メモです。
●1票の不平等をなくす運動も展開。
鳥取県の人を1票とすると、愛知県の人は0.25票しかない・・・。
※神奈川県は0.20票、北海道、大阪府は0.21票、東京都0.23票
1人1票に賛成でない判事は国民審査で罷免を。
●今の社会は、一人ひとりが大切にされていない社会、マスコミに流されてしまいがちな社会など指摘。マスコミの関係では、凶悪犯罪が増えているかのように報道されているが、実際の死者数は1950年3532人、1975年3056人、2010年996人と減っている。
●情報公開―イラク戦争の際の情報公開は最初黒塗りだったが、政権交代後に出てきた。航空自衛隊が、武装したアメリカ兵を1万7000人運んでいることなど明らかになった。憲法に反する行為を日本は行った。名古屋高裁も自衛隊が行った行為は憲法違反と認定。
●2011年3月11日以降、死者・行方不明者は18916人(4月18日現在)、避難者は344477人(4月5日現在、昨年12月1日より11786人増)となっており、今こそ憲法の理念にそった生活再建を求めなければならない。
●震災時の自衛隊の活動について、自衛隊だけが突出した活動したわけではなく、消防、警察、海上保安庁、民間企業、ボランティアなどそれぞれが奮闘した。
また、アメリカ軍の「トモダチ作戦」についても、震災への支援と米軍の日本駐留(特に普天間)の問題は全く別のもので、共同軍事訓練を実施したという側面がある。
●震災を機に、憲法に国家緊急権(非常事態条項)がないから、政府の対応が遅れたという議論があるが、憲法は早急な対応を制限していない。憲法に国家緊急権(非常事態条項)を入れることになれば、権力分立、人権保障という2大本質をもつ近代立憲主義を停止させてしまうことになり、権力の乱用の根拠を与えてしまう危険性がある。憲法改正では国民の生命は守れない。
●日本国憲法は生存権を保障している。しかも憲法前文では、「われらは、全世界の国民がひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と明記し、世界中の人々の権利として保障している。名古屋高裁の判決のなかでもあきらかなように「平和的生存権」は裁判で具体的に主張できる権利であると認められた。「平和」は、戦争がないというだけではない。貧困、飢餓、病気のない社会、災害、放射能などの恐怖から自由である社会を言う。
●国家安全保障というが、国家が存立しても個人が存立できなければ意味がない。国連が提唱している「人間の安全保障」という視点が大事。すべての人の生存、生活、尊厳を確保する。野田首相は、海外では人間の安全保障というが、日本では聞いたことがない。
●復興のあるべき方向性は、財界のための復興ではなく、憲法の保障する人間中心の復興であるべき。被災者の皆さんが、尊厳を持って、誇りをもって人間らしく生きていけるように。それが、日本国憲法の考え方。
●日本は日本国憲法がつくられる前、71年間、戦争し続けてきた。戦前は軍国主義、戦後は原発主義。
○戦前の軍国主義
―政官財(軍需産業)の癒着
―国策としての戦争への批判は許さない。批判者は弾圧
―大本営発表の情報統制によって国民を支配
―戦争責任の所在が不明確で総括できず
○戦後の原発主義
―政官財(電力会社)の癒着
―国策としての原発推進への批判を許さない。批判者は排除
―マスコミを利用した情報統制
―事故の責任が不明確で総括せず
●明治憲法から日本国憲法へ 憲法価値の転換へ
〈戦前の日本〉 →〈戦後の日本〉
天皇主権 → 国民主権
71年間戦争し続け国→ 戦争しない国(9条)
教育を利用した国 → 教育内容に介入しない国
宗教を利用した国 → 政教分離
徹底した中央集権の国→ 地方自治を保障する国
障がい者、女性、子どもを差別した国→ 差別のない国
貴族・財閥・大地主のいる国→ 格差を是正する国
自己責任を強いる国 → 福祉を充実させる国
国家のための個人 → 個人のための国家
↓ ↓
国家・天皇を大切にする→ 一人ひとりを大切にする
●軍事費削って福祉に回すのが日本国憲法の要請
●天皇主権から国民主権→国民の主体性がポイント。そのためには憲法の理解と国民が情報を持つことが不可欠(スピーディのような事態や国家の都合の悪い情報をかくす秘密保全法は許してはいけない)
●国家主義から個人主義へ→徹底した人間性の尊重がポイント。そのためには、9条、社会権が重要
●多数の意見が常に正しいか?情報操作、雰囲気、目先の利益に惑わされる。人間は間違いを犯すことがある。(ex.9・11、イラク戦争、ヒトラー、日本軍国主義・・・)
●多数の意見が常に正しいわけではない。多数意見にも歯止めが必要。多数意見でも奪えない価値(人権・平和)があるはず→それを守るのが憲法
●法律は国家が国民を制限する。憲法は国民が国家を制限する
●自民党の憲法草案は、国民に憲法を守れといい、憲法の根本である権力を縛るという性格を変えようとするもの
●よく権利には義務がともなうというが、そんなことはない。権利の向こう側に義務がある。(ex.AさんがBさんにお金を貸した場合。Aさんにはお金を返してもらう権利はあるが、義務はなにもない。返す義務があるのはBさん)
●憲法とは、国家権力(多数派、強者)を制限して、国民(少数派、弱者)の人権を守るもの。強者による弱者への理不尽を許さない。
●憲法を理解する上で重要なこと→想像力(イマジネーション)(ex.人種差別される側だったら?貧困な家に生まれていたら?お金がなくて大学へいけなかったら?など)。他者への共感。
●米軍基地の騒音問題。普天間第二小学校。45分の授業で84デシベル以上の軍用機の爆音が11回。4~5分に1回。訴訟をやった。勝って損害賠償1億4600万円。それは、1日200円。控訴したら1日400円になった。訓練の差し止め訴訟も行った。午後7時~午前7時までは軍用機を飛ばさないでくださいと言ったが、最高裁は認めなかった。誰かの犠牲の上に自分の幸せが成り立っている社会。米軍基地が本当に必要なら東京に持って行くべき。国会議事堂前には滑走路にちょうどいい道路がある。
●憲法13条には、「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」とある。明日の生命が危うくなるような原発は、憲法に反すると思っている。
●自民党の憲法草案は、「個人の尊重」を「人の尊重」に変えてしまっている。一人ひとりではなく、集団、まとまりとしての人という意味になってしまっている。
●アメリカは、第二次世界大戦のときよりもベトナム戦争に3倍もの武器をつかった。ベトナムの医師に聞いた話では100人に1人の割合で何らかの障がいがある子どもが生まれている。今でも戦争の犠牲になっている。ベトナムの人のなかで、沖縄は悪魔の島だと今も言う人がいる。沖縄からアメリカ軍が飛び立って、ベトナムを攻撃したから。
●パレスチナでは、被害者だったユダヤ人が今度は加害者になっている。そうならないためにも9条がある。
●普通の国の普通の憲法は、その国の安全だけを考える。日本国憲法は、世界中の人々、人類の幸福を考える。非常識と言われるかもしれないが、200年前にアメリカで奴隷制をなくせというのは非常識だった。しかし、今では、奴隷制廃止は常識となり、ファーストレディになっている。理想を持って生きることの意味は大きい。
●今、各政党から改憲の動き。
改憲議論をする際に注意すべき点。
1,改憲に期待しすぎない(冷静になる)
2,どこの誰が利益を受けるのか具体的、現実的に考える
3,改憲によって私たちの生活がどう変わるかを具体的に考える
(1)今よりも安全な生活になるのか
(2)今よりも自由な生活になるのか
(3)今よりも福祉が充実した生活になるのか
●民主主義を機能させるには、1人1票の実現、情報公開の拡充が必要
●憲法がめざす社会へ。一人ひとりがその個性を尊重され、お互いの違いを認め合って、ともに生きることができる社会。世界中の子どもたちが、安全で平和の中で自由に自分らしく生きていくことができる社会。
●どんな状況でも主体的に生きることが大切。
●皆さんへの期待。(1)明日の自分は今日の自分が創る→今を変えれば未来を変えられる。人は実現不可能な夢を思い描くことはない。(2)今を生きる者としての責任を果たす→憲法を知ってしまった者として今できることを。憲法を使いこなす力をつくること。主体的に生きることが大切。(3)Festina Lente(ゆっくりいそげ)
伊藤さんの講演のあとは、ウクライナの歌姫、ナターシャ・グジーさんのコンサートでした。美しい歌声とバンドゥーラという民族楽器の音色を楽しみました。
閉会のあいさつをされた愛知憲法会議の本秀紀名古屋大学教授は、ユーモアを交えながら、日米安保条約発効60周年をむかえる4月28日にむけて、各政党が歴史を逆行させる憲法改定案を出している問題や、日米共同声明で新しく日米動的防衛協力として、グアムや北マリアナで訓練場をつくり日本への費用負担を求めている問題など指摘しました。
また、TPP、消費税増税法案の国会審議入り、原発再稼働など国民の幸福に反する政策をやり、比例定数の削減で民意を削り、秘密保全法で民主主義を壊す方向が出されている。一人ひとりが語りかけ、憲法のこころを実現していこう、Festina Lente(ゆっくりいそげ)と呼びかけました。
伊藤真さんの講演を聞きながら、大学のときの先生の授業を思い出しました。
「人間の尊厳」について毎回力説されていました。
人類の歴史の積み重ねの上にたって、さらに前進・発展させるためにがんばる勇気をもらえる講演でした!!