もとむら伸子(日本共産党衆議院議員)-
くらし守る

【議事録(2)】今注目の国会参考人質疑―児玉龍彦東京大学アイソトープ総合センター長、沢田昭二名古屋大学名誉教授などの衆議院厚生労働委員会参考人質疑(2011年7月23日)

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(参考人質疑議事録のつづき)

○牧委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山口和之君。

○山口(和)委員 民主党の山口和之と申します。福島県出身です。
 たくさんのお話、ありがとうございました。いろいろな方がいろいろなことを言うので、実際、どこが正しく、どこが安全で、どこが大丈夫で、何が大丈夫かと、全く国民と同じ目線になっている自分がいます。
 まず、少しずつお聞きしたいんですけれども、一つとして、今回は出ませんでしたけれども、ホルミシス効果という話が出たりします。例えば、一万人のデータをとって、ある程度の線量の放射線を浴びた場合、逆に健康であるという話があるんです。
 まず、これを肯定されるか否定されるかというのをお聞きしたいんですけれども、まずは明石先生と児玉先生にお聞きしたい。よろしくお願いします。

○明石参考人 私どもは、動物の実験ではホルミシスというのは確かに認められるのではないかというふうに認識しておりますが、人間のような高等動物について確かな科学的なエビデンスはないというふうに認識をしております。

○児玉参考人 私どもから見ますと、先ほども申し上げましたように、放射線や何かを当てると、例えばp38というMAPキナーゼだとかNFkBというシグナル系の分子が動きます。それで、これは短期的にはさまざまな効果をもたらしまして、それを健康にいいとか悪いとかいう議論はさまざまあります。
 しかし、こういう状態を長期的に続けますと、我々が慢性炎症と呼んでいる状態になりまして、慢性炎症は、例えばがんの前提の条件になったり、さまざまな病気の原因になるということがよく知られています。

○山口(和)委員 ありがとうございます。
 もしよろしければ今中先生にもお聞きしたいんですけれども、データ上、今までそういう話がありましたでしょうか。

○今中参考人 ホルミシスについては、私自身も勉強をしたつもりですけれども、よくわかりません。ただ、非常に興味深いのは、自然放射線バックのレベル、それをちょっと超えるレベルで我々生物が何らかの応答をしているということがあるんだろうと思います。
 それで、例えば、最初、ホルミシス等の話が言われましたのは、随分前のデータですけれども、ゾウリムシの増殖について、自然放射線をカットすると増殖が減る。ですから、鉛を入れて、トンネルか何かに入れたら増殖が減るんですよね。それで、自然放射線を当てたらふえる。すなわち、自然放射線がいい効果をしているのではないかというようなことですけれども、では、それが刺激になることが果たしてゾウリムシにとっていいのか悪いのかというのは私自身もわかりませんし、非常に興味深いのは、そういう低線量レベルで我々の細胞が、単なるDNA折損というのではなくて生理的に何らかのレスポンスをしているという意味で、私は興味深いデータだと思っています。

○山口(和)委員 どうもありがとうございます。
 大概は、放射線による害の方があるだろうというふうに、皆さんの意見はそう思いましたけれども、そうしますと、線量の問題が先ほど来出ておりました。あとは内部被曝という話が出ておりましたけれども、まずは線量のところでお聞きしたいんです。
 明石先生それから唐木先生等は、大丈夫だ、安心できますよという話だったんですけれども、児玉先生の方からはああいうお話がありました。唐木先生と明石先生の話はデータに基づいて出ていまして、ある程度低いところでは埋もれてわからないところが出るんでしょうけれども、それ以降については有意な差があって出ているということがありました。それに対する何か御意見みたいなのを児玉先生がお持ちだったらお聞きしたいんですけれども。

○児玉参考人 放射線が人間の遺伝子を傷害します。そのときに、人間には二万五千の遺伝子がありますが、一定の数のDNA修復に関係する遺伝子、DNAの保護にかかわる遺伝子というのがあります。それで、普通は、これがやられないと低線量のものは大体問題なく修復されるということがわかっています。だけれども、先ほどは、例えばアルファ線でやられているp53だとか、それから、我々、最近、がんゲノムシークエンスというので、肝臓がんやさまざまなものを、遺伝子配列全体を決定して、いわゆるドライバーミューテーションという、最初にがんをつくっていく方向に起こってしまう変異が何で起こるかというのを研究しておりますと、例えばp53のような、最初の、DNAを守っていったり、そういうところにかかわる遺伝子を壊すとがんになるということがわかっています。
 そうしますと、実際には、二万五千の遺伝子の中でどこがやられるかということは、極めて確率論的になってきます。ですから、一般にわかるのは、統計学的に、非常にたくさんの人を集めて、例えば、チェルノブイリのときの甲状腺のように、最初は、多分長瀧先生の方が御存じだと思いますが、笹川財団で調べたときに、五万人ぐらいまで調べたときに、有意な差がないと言われたんです。ところが、それが今になっては、コンセンサスとして、六千人の甲状腺がんと十五人の死亡例が生まれているというふうに変わってきています。
 私、もともとこういう問題に興味を持ちましたのは、自分はコレステロールの方が専門でして、コレステロールの薬をつくるときにもたくさんの論争がありました。それで、私は医学者として今一番感じておりますのは、このどこの線量が安全かという議論と国の政治的なかかわり方を分けていただいて、国は、要するにコレステロール論争のときに一番大事だったのは、コレステロールを下げる薬をやって心筋梗塞が減るかどうかという問題でした。
 それで、きょうの厚生委員会でも考えていただきたいのは、学問論争に対して厚生委員会で結論を出したり考える必要は、私はないと思っています。
 国民の健康を守るためにどういうことができるかというときに、まず、セシウム137というのは、自然界には一九四五年以前に存在していないものです。原発と原爆で生まれて、それが一九六〇年代の初めに水爆実験によってピークになったものであります。そのときに、猿橋勝子さんという女性研究者が、海水のセシウム濃度が百倍になっているということを微量線量計で確認して、これでアメリカへ行って、公開実験というのをフォルサム博士とやって、これが大気圏内の核実験禁止の大きな学問的根拠になりました。その後、セシウムはずっと減ってきていたのが、またそれをはるかに倍する量に今上がろうとしているときであります。
 そうしますと、その線量議論の問題を言うよりも、元来自然界にないセシウム137というのが膨大にまかれて、ガンマカウンターで簡単にわかるような量に散らばっている。しかも、それが広島原爆の二十倍の量まかれているという事態に対して、国土を守る立場から、ぜひ積極的な対応をお願いしたいというのが基本的なお願いです。

○山口(和)委員 どうもありがとうございました。
 結論づけるつもりはないですし、県民、国民はどうしていたかというと、一番不安な、一番危険なところを聞いて動いているというのが今実態じゃないでしょうか。だから、安全だと思っている方もいらっしゃいますし、中には、線量が少ないところであっても、子供を連れて県外に避難されている方もたくさんいらっしゃると思うんです。やはり不安でしようがないと思うんです。
 避難区域の住民が戻れる条件、今、避難区域になっていますけれども、先生方で、こういう条件にしたら避難区域に戻れるだろう、今でも十分戻れるよという場合もあるでしょうし、先生方によって違うでしょうが、避難区域に戻れる条件を少し教えていただきたいんですが、ちょっと時間がなくて、聞きたいことがたくさんあるので、簡潔にいただければと思うんですけれども。どなたでも結構です。

○児玉参考人 私が一番申し上げたいのは、住民が戻る気になるのは、行政なりなんなりが一生懸命測定して除染している地域です。ですから、測定も除染もなければ、安全だ、不安だと言われても、信頼できるところがありません。ですから、この数値が安全、この数値がどうということではなしに、行政の仕組みが、一生懸命測定をして、その測定に最新鋭の機械を投じて、除染に最新鋭の技術を持って、そのために全力でやっている自治体が一番戻るのに安心だと思います。

○山口(和)委員 そのほか、ございますでしょうか。

○今中参考人 戻るか戻らないかは、最後は行政なり個人なりいろいろな価値観、判断が入るんですけれども、やらなきゃいけないことは、今、児玉先生もおっしゃったように、徹底的に測定して、一軒一軒、その村なりの汚染のマップをつくって、そして、そこに住むことによってどれくらい被曝するのであるかということは客観的な評価としてできますので、それは最低限の作業だろうというふうに思います。

○山口(和)委員 よければ唐木先生からもお聞きしたいのですが。

○唐木参考人 私の資料の中で、百ミリシーベルト以下の放射線のリスクがどのぐらいなのかということをお示ししました。これは、ないわけではないけれども極めて小さいということです。そのリスクを避けるために避難をする、その避難によって起こるリスクがどのぐらい大きいのかを考慮すべきだという話を、ICRPの話の中で長瀧先生がされました。
 私も、一番大事なことは、リスクを比較する、放射線の量だけで判断をしない、それを避けるために、出ていることでどれだけのリスクがあるのか、戻ることによってどれだけのリスクがふえるのか、その辺を冷静に判断するような材料を住民の方に十分差し上げて、考えていただくことが大事だと思っております。

○山口(和)委員 済みません。もう一度なんですけれども、そのリスクは右肩上がりに上がっていくわけですから、どのラインでというふうに考えておられるでしょうか。

○唐木参考人 ICRPの考え方は、百ミリシーベルトに向かってがんの確率は少しずつふえていきます。しかし、どこかで避難をというふうに設定したら、そこの方は全部避難しなくてはいけない。避難によって起こるリスクがあります。そうすると、がんを下げるために基準をきつくする、そこのメリットと、それから、避難をしなくてはいけない、それによって起こるデメリット、そこのバランスをとってくれということですので、これはケース・バイ・ケースで考えなくてはいけない、また個人の考え方もあるだろうと思います。

○山口(和)委員 ありがとうございます。
 もう一つ、牛についてなんですけれども、今問題になっていますけれども、先ほど、五十歳を超えていると大体九十日ぐらいでなくなるということでした。チェルノブイリでは、何か三カ月、安全なえさを食べ続けていたら三カ月でセシウムがなくなったという話があるんですけれども、その辺につきまして、どなたかお願いできますでしょうか。

○唐木参考人 人間の場合は、我々の年だと三カ月ぐらいで半分になる、また次の三カ月で半分になるというふうなデータがありますが、牛の場合は、精密なデータはありませんが、チェルノブイリの経験からいうと、現在、汚染されたえさをとめて、汚染されていないえさを食べさせれば、何カ月後かには汚染はなくなるということだろうと思います。

○山口(和)委員 人間の年齢と牛の年齢を比べると、牛の年齢は随分若いわけですけれども、そうしたらば、場合によっては、セシウムが早くなくなれば普通に出荷できるんじゃないかなと思ってしまうんですけれども、その辺はどうでしょうか。

○唐木参考人 現在汚染された地帯に牛がたくさんおりまして、獣医師の仲間がその牛を使ってそういった研究を今やっておりますので、その結果は何カ月後かには出てくるだろうと思います。

○山口(和)委員 どうもありがとうございました。
 牛の基準であったり、お米はこれから作物をつくっていかなきゃいけないし、果物の基準とかもありますけれども、今は厚生労働省で基準をつくって、これぐらい食べても五ミリシーベルトを超えなければ大丈夫ですよという先ほどのお話があったかもしれませんけれども、一つ、農家で米をつくるとか果物をつくるとかという、何かそういったところの、つくる段階での基準みたいなものというのはございますでしょうか。どなたか、お願いできますでしょうか。

○唐木参考人 私の知る限りでは、基準は先ほどの食品の基準だけであって、つくる方の基準ということは、土壌の基準あるいは肥料の基準、そういったものでしょうか。でしたら、それは私はないだろうと思います。

○児玉参考人 入り口の方で基準を決めるというのは非常に厳しいと思っています。生物学的濃縮というのは、さまざまな元素が体に入ると、トランスポーターとか結合たんぱくというので極めて特殊な集積の仕方をしますので、ですから、やはり出てきた農産物をきちんと見るという仕組みを徹底的につくっていかなくてはならないと思います。
 そうすると、やはりラインのような格好で、どんどんイメージとして農産物の汚染量がチェックできるような仕組みというのが実際にはあるんですが、まだほとんどこういうものの測定に使われていませんので、そういうものを全国の産地に緊急に整備していかないと、今回の稲わらのように、想定外の場所での濃縮というのは自然界においては山ほど起こります。ですから、やはり出口の、食物の出ていくところでのチェックというのを緊急に物すごくよくするということが大事になると思います。

○山口(和)委員 ありがとうございます。
 沢田先生にお聞きしたいんですけれども、福島県では健康調査を三十年間やるということを言っているんですけれども、果たして本当に三十年間の調査でよろしいのか。子供の問題もあるでしょうし、先生はどうお考えでしょうか。

○沢田参考人 健康調査をするということなんですけれども、私は、特に子供たちに対する影響が大きいということになりますと、三十年は短過ぎて、実は、私が報告した図の中にありますけれども、広島、長崎の被爆者の場合は原爆手帳というのを持っています。それによって、毎年、健康診断をやっています。その結果、爆心地から一キロメートル以内の被爆者を除きますと、その他の被爆者は日本人の平均よりも死亡率が低いわけです。ということは、がんなんかを発症する率は非常に高いわけですけれども、健康診断をやって早期にがんを発見するということによって死亡率が低くなるということ、これは広島大学の原医研の研究でも明らかになっているわけですけれども、ぜひ、健康管理をきちんとやるシステムをやっていただきたい。
 そのためには三十年ではなくて一生、特に子供たちは、四十年、五十年でも、先になってがんになるということが大きく考えられますので、そういう意味では期限を設けないでやっていただきたいということと、今調査が行われているのは、健康がどうなってきたかという調査じゃなくて、どのような行動をとったかというだけの調査が今行われているんですけれども、そうじゃなくて、やはり健康がどういうふうに変化したかということも含めてきちんとした調査をやっていただいて、将来、そういう医学は進歩しますから、医学が進歩した成果を、放射線によって被害を受けた人たちのそういうダメージをできるだけ少なくするようにやっていただきたいと思います。

○山口(和)委員 ありがとうございます。
 ぜひ、三十年とは言わず、しっかりとデータを集めて、これは世界へ発信すべきことだと思うんですね、日本だけのことではないので。そう考えれば、しっかりとしたデータを集めて、健康を守っていくということが大事なんだと思います。
 明石先生にちょっとお聞きしたいんですけれども、十五日から十六日、SPEEDIで、大量に出たときの測定を加算しなきゃいけないのではないか、積算しなきゃいけないのではないかというふうに感じますが、先生の方はどうお考えなんでしょうか。

○明石参考人 線量評価を正しくするためには、ブランクがあるということは正しい線量評価につながりませんので、私は、そこをきちんと埋めて、行動調査に基づいて線量評価をするべきだろうと思っております。

○山口(和)委員 ありがとうございます。
 長瀧先生にお聞きしたいんですけれども、先ほど、原爆被爆者を持つ日本として、原子力災害に対して、日本のすべてを総合して、政府も一員となって総合的にやるべきだと。全くそのとおり、そう思いますし、英知を結集するべきだと思います。
 これは、日本だけではなくて世界じゅうの科学者の方々がいらっしゃるということで、例えばチェルノブイリで沢田先生の話が評価されたとか、これは世界じゅうの科学者の方が集まって議論しながら安全な方向へというのがないと、経済的なもの、いろいろなもののファクターを持ちながら、それで判断してくださいと言われても県民や国民は判断できないから、一番安全な方法として逃げるということをするわけなんですね。もちろん除染もしっかりやるということなんでしょうけれども。
 そういったときに、やはり国際的に、WHOも何もすべてのところが結集してやるべきだと思うんですけれども、そういった体制というのはなかなかできないものなんでしょうか。先生は、やった方がいいのか、それとも、まあ日本の科学者で何とかなるとかいうことなんでしょうか。ちょっと教えていただければ。

○長瀧参考人 私はいつも気になっておりまして、現在の混乱といいますか、これはもう専門家が勝手なことを社会に対して直接話している。したがって、もう一ミリシーベルトでも移動しなければならないという話から、百ミリシーベルト以下は大丈夫だ、それがそのまま社会に発信されているということが一番の混乱の原因だろうと思いますし、これは専門家の側の責任でもあると思います。
 やはり、社会に対しては、専門家あるいは学者、科学者、科学の世界から社会に対して出すメッセージ、提言というのは一本になっていないと社会は混乱する。現在は、それぞれの専門家がそれぞれに意見を直接社会に出しているということが非常によくない。
 ですから、おっしゃったとおり、チェルノブイリの場合も、いろいろ議論をした上で、結局、国際的な科学者のコンセンサスというものができてきて、それをもとにということで事態が随分改善されたということがございます。私が最初に行きましたときには、もう本当にパニックの状況で、それぞれ外から来た報道の方も含めて、NGOの方も含めて、危険だというお話がいっぱいございました。
 ですから、今回も、日本でまず大事なことは、専門家が一つになってコンセンサスをつくって、それを社会に出すというのができれば、それが一番よろしいというふうに思います。

○山口(和)委員 ありがとうございました。多分そうすることが一番安心できることで、国内で落ちついてくることなんだと思います。もはや、もう国内の科学者の先生方だけでは安心できないと思っている方もたくさんいらっしゃると思いますので、ぜひともそういう方向に持っていきたいと思います。
 どうもありがとうございました。

○牧委員長 次に、吉野正芳君。

○吉野委員 自民党の吉野正芳と申します。
 参考人の皆様方、本当にお忙しい中ありがとうございます。
 私の選挙区は福島第一、第二、そしていわき市です。双葉郡といわき市が私の選挙区でありまして、本当に皆様方に大変御心配をいただいていること、この場をかりて感謝申し上げたいと思います。
 私も、原子力を推進してきた一人でございます。私の立場は、正しく理解して正しく放射線を怖がろう、こうしないといつか今日のような事故が起きてしまうのかな、こんな思いで原子力を推進してきた者の一人でありまして、今度の大事故を引き起こしてしまったということは、推進してきた者として本当に大いに反省をし、皆様方に謝罪を申し上げたいと思います。
 さて、いろいろ選挙区を歩いてみますと、不安でいっぱいなんです、特にお子さんを持っているお母さん方。きょうの先生方の話を我々、ここで聞きました。私も六十を過ぎていますから、先生方のお話を若いお母さん方が聞けば安心するのかなと思うんですけれども、きょうのお話を聞いても不安はとれないと思うんです。
 放射線のお母さんに対する影響、子供に対する影響よりも、不安で不安で仕方がない。うちの方の言葉で気をもむというんですけれども、気をもんで精神的に参ってしまうお母さん方、それを見ている子供の方が健康には悪いのかなと思うくらいなんですけれども、幾ら説明してもお母さん方は理解をしてくれないんですね。
 この辺のところをどうすれば、お母さん方、特に若いお母さん方の不安を取り除くためにはどうすればいいのか、明石先生、お願いしたいと思います。

○明石参考人 私自身も福島県のいろいろな場所で住民の方とお話をさせていただいて、お母さん、子供さんが非常に不安になっているという点、どう解決したらいいのかというのは、実は、私たちの中でも最大の問題になっております。
 一つの私どもの考え方としては、やはり科学的なことを与えるということだけで納得はできない。それをどう理解していただくか、どう受けとめていただくかということが一番重要である。そのためには、やはり御自身にも基礎的な放射線に対する理解をしていただくチャンスを与えると同時に、やはり信頼できる方の口からお話をしていただくというのも一つの考え方ではないか。
 つまり、信頼できるというのは、地域でも学校の先生であるとか、先生方もやはり怖がっているということになると、特に子供さんたちは非常に不安がってしまいます。ですから、地域で、やはりオピニオンリーダーであるとか理解のできる人にきちんとした理解をしていただいて、説明をしていただくというのは、一つの方法ではないかというふうに私は思っております。

○吉野委員 現地でも、各小学校単位ごとにそれぞれの専門家の先生方をお招きして、放射線の勉強会、本当に参加の数は何百人、小学校単位ですから何百人という方が来るんですけれども、何回やっても同じなんですね。ですから、これは本当にどうすれば不安を取り除くことができるのかなと。
 例えば、科学的なことを幾ら説明しても、自分の頭で理解しても体がついていかないという、こういう状況下に置かれていますので、もうその方は、避難できる方は避難してください、そして、それに対する支援をしていく、避難できない方は、きちんと家庭での防護策といいますか、それを我々政治の方はやるべきだなというふうに私自身は思っているんですけれども、その辺はいかがでしょうか、熱い児玉先生。

○児玉参考人 要するに、信頼感というのは、言葉で説明を聞いて生まれるのではないと思います。
 私も毎週南相馬へ行っていますが、例えば、南相馬の方たちが本当に汚染している学校やなんかを案内してくれるのは、やはり一回目じゃないんですよね。だから、支援に来ている人がただ一回だけ来て帰っていってしまうみたいなのは、かえってすごく問題をひどくするだけで、やはり本当に持続的にやっていこうとすると、一緒にはかって、一緒に考えて除染していく、避難されたい方は避難を応援する、そういうのがすごく大事ではないかと思っています。
 それで、南相馬へ行って私どもが最初に言われたのは、やはりさっき言った、線量の低いところから高いところへスクールバスで子供が千人移動させられているということで、それで、実際に地域を見ても、一つの学校を見ても、さっきから私、何ミリシーベルトだったら安全ですかという議論は現実味がないと思うのは、例えば二マイクロシーベルトの学校をはかっていても、一カ所に行くと三十三マイクロシーベルトなんです。
 ですから、そのときに一体何ミリシーベルトをその土地とするかという問題が出てきてしまいますから、やはり、高いところがあったら必ず刈り取っていきますよ、はかって一緒にやっていきますよ、不安があったら相談に乗りますよ、農産物があったら最新鋭の科学機器を集めて、最高の検査メーカーが来てやりますよというような態勢がない限り安心できないというのが当たり前ではないか。
 ですから、今求められているのは、最高の施策が福島県民に与えられるように、国会でぜひ考えていただきたいということであります。

○吉野委員 全くそのとおりだと思います。
 今度の二次補正でも、福島県の子ども健康基金という形で九百六十二億、成立しました。この基金を使って、例えばベラルーシの場合、学校単位に、きょう飲むミルクをはかったり、きょう食べる食べ物をはかる、そういう検査機器があるというふうに私はテレビで見たのですけれども、こんな機械も福島県の小学校単位に全部そろえて、本当に自分ではかって自分で安心して納得して食べていく、こんなシステムをこの基金を使ってやっていきたいと思いますけれども、チェルノブイリに詳しい先生方はどなたでしたか。では長瀧先生、お願いします。

○長瀧参考人 お答えいたします。
 チェルノブイリに私どもが最初に参りましたとき、やはり、汚染地の産院に参りました。そうすると、新生児がいっぱいいるわけですけれども、そのお母様方の心配というのは、もう本当に今の福島と同じ状況であります。やはり社会全体として混乱しておりまして、非常に危険だ、すぐにあなたの子供は亡くなってしまうとかあるいは白血病になるとかというのを横で言っている人もいますし、我々が行っている間に、報道の方ですけれども、線量計を持ってきてその病院の草の放射能をはかって、ここも汚染されているから早く逃げた方がいいというふうな方もいる。産院で、もうそこに新生児がいるような状況の人に向かってそういうことを言う人もいる。
 そのときに我々が感じましたのは、やはりチェルノブイリの支援も、その時代は、不安に対してどう対応するかということを一番考えました。そのときにありましたのは、少なくとも、子供が心配なんだから、我々ができることは、お子さんをできるだけたくさん診察して、あなたのお子さんは今病気はありませんということをもう直接お伝えする。周りで何を言おうが、お母様と一対一で、あなたのお子さんは大丈夫だということを言っていくことがこのパニックを防ぐことかと思いました。
 時間がありませんので、一番最後に、チェルノブイリの最後に我々は集まりまして、国際機関としての勧告がございました。それは、住民、国民に信頼されるということが一番大事なんですけれども、国民に信頼されるリーダーがすべての情報を公開する。そして、その公開した情報を専門家が十分な説明をして住民に説明する。それで、それに対してどうするかということは、住民を交えて、住民との対話の上で、行政になりますか、それが決めて対策を練る。その場合に、情報をすべて開示する。そして、その解釈を専門家として一本の形にして住民に説明する。そして、住民の希望を、対話を続けながら対策を決めていくというのがチェルノブイリに関しての我々国際グループとしての勧告でございまして、それは、今の日本にでも非常に大切なことではないかなと思っております。

○吉野委員 全く先生のおっしゃるとおりなんです。信頼できるリーダーがきちんと情報を発信する、全国民がそのリーダーの意見は全部信頼できるということが理想なんですけれども、現実は、もう総理大臣から始まってだれも信用できないというのが今の日本の、特に政府の発表、これはもう逆なんです。政府がこう言うのでは危ないなという、そこまで国民は今思っていますので、この状況を本当に信頼できるような形にするのは、我々政治家、また皆様方、地道に、やはり自分で納得できるような形で、先ほどベラルーシの例も言いましたけれども、そういう整備を我々政治がしていくことが大事なのかなと思います。
 さて、福島県は二百二万県民です。私も県民ですから、今聞き取り調査、アンケート調査をします。三月十一日から三月二十五日まで、一時間ごとに、どこにいたか。もう四カ月前です。私も、手帳を見ながらこれから書くんですけれども、もう完全に記憶を忘れているんですね。新聞にも、四カ月前の記憶で本当に被曝線量を皆様方が判断できるのかと書いてあるんですけれども、四カ月前、これは、きちんとした汚染マップというか積算線量がホットスポットも含めてきちんとわかっていないと、そこにいたと書いたって、ホットスポットがわからなければ、モニタリングポスト、いわき市はでっかいんですけれども、たった一個なんですね。その線量で計算されちゃうんです。
 本当に、アバウトスクリーニングなんでしょうけれども、ある程度の線引きなんでしょうけれども、アンケート調査ですから。本当にある程度の被曝量がわかるんですか。
 これはだれ先生に聞いたらいいのかな。では明石先生、お願いします。

○明石参考人 私ども、私自身は福島県の線量評価をするための健康管理検討委員会のメンバーでございます。
 御指摘のとおり、四カ月前の記憶というのをたどっていくのはかなり難しいし、かなりブランク、つまり、どこにいたかわからないというところがかなり出てくるだろうということは想像しております。当然、このような時期に、こんなに遅くなってしまったということについては、私ども専門的機関も反省しなければいけないと思っておりますが、今行える方法としては、例えばそのアンケートの用紙の中に、どこにどんなほかのイベントがあったのかというカレンダーみたいなものを入れて、できるだけ記憶を鮮明にしていただけるということと、それから線量マップでございますが、できるだけ細かく、現在は二キロごとのメッシュを考えております。
 もちろん、それだけで十分なのかという御指摘もございますが、できる限りその二キロの中で住民の方々に御理解をいただく、それから、もし不十分な部分については、こちらの方からお尋ねをして埋めていただけるような努力、それしか今のところすることはできないのではないかと思っております。ただ、できるだけ線量については、とにかく細かく、二キロの四角でくくれるだけの線量率は出したいというふうに考えております。

○吉野委員 アンケート調査で、ある程度の被曝量が出ます。そして、それから詳細調査という形で今度は診察をしていくんですけれども、どの辺のレベルでその線引きをするんですか。詳細調査に行く方々というのは、どの程度の被曝量なんですか。

○明石参考人 現在では、線量によって、これ以上の健康調査、健康診断をしないとかいう線引きをすることは考えていないと思います。ですから、県民の方々には基本的には同じ健康診断、調査をするというのが基本的姿勢だと考えております。

○吉野委員 そうすると、詳細調査と全県民相手のアンケート調査は全く関係ない、こう理解していいんですか。

○明石参考人 済みません。誤解を招くような発言をしていました。
 先行調査は、本調査が本当にうまくいくのか、つまり、どのくらい問題点が出てくるのかというのを調査することで、いきなり詳細調査をやるといろいろ不備な点が出てくる、そこを一番最初にカバーしてしまおうというのが先行調査の主な目的だというふうに私は理解しております。

○吉野委員 はい、理解をしました。
 では、唐木先生にお尋ねしますけれども、唐木先生は、ちょっと前に唐木先生の書いた文章を読んだんですけれども、基準と閾値、いわゆる基準と安心、安全の境は違うんだ、基準はそれよりも物すごく低いレベルなんだということをおっしゃいました。そして、ヨーロッパの例も出して、基準を超えた食べ物であっても、きちんと放射線の評価をして大丈夫であればまた市場に出すんだ、そういう文章を読んだんです。
 日本人、日本で、基準イコール安全の壁と一〇〇%私も理解しているんですけれども、例えば袋に入ったパン、たった一日有効期限が切れても、もう廃棄ですね。特に若いお母さん方は、全部廃棄です。私が子供のころは、もったいない、御飯だってにおいをかいで、においで判断したんです、自分で。ああ、食べられる、食べられない。このくらい私は子供のころおなかがすいていたものですから。でも、今は違います。有効期限をたった一日過ぎても、もうこれは廃棄処分なんです。
 こういう日本人に対して、先生のおっしゃるような形でどうすれば理解ができるのか、何かうまい方法はありますか。

○唐木参考人 今先生おっしゃったのは、化学物質について私が書いたものではないかと思いますが、今、日本はカロリーベースで四割の食料を輸入しているにもかかわらず、そのほとんどぐらいを捨てているという現状があります。その捨てている現状の中のかなりの大きな部分が、基準をちょっと超えただけで大量回収、大量廃棄になっている。この問題は大変大きな問題だと思っております。
 なぜそうなっているかというと、これは食品衛生法に、基準を超えたものは流通させてはいけない、回収しなさい、そういう規定があるからでして、それを何とか変えないといけないだろうと思っております。
 先ほどお話ししましたように、化学物質については全く毒性がない量がありまして、その百分の一以下を一日摂取許容量としまして、その量に達しないように、各食品はもっともっと厳しい規制値をつくっております。ヨーロッパなんかでは規制値を超えたら行政が動き出すけれども、その食品は回収しなくてもいい、なぜならば、一日摂取許容量を超えなければ何の影響もないから、こういう取り扱いをしております。
 私は、できれば日本もそういう法律の取り扱いをすることによって、多くの人が規制値が安全と危険の境目だという誤解が解消できるのではないかというふうに考えております。

○吉野委員 長瀧先生にちょっとお尋ねしますけれども、ICRPのALARAの理念、日本から発信してICRPを変えるという発言がございました。具体的にちょっと、日本がICRPの基準を変える、こう理解してよろしいんでしょうか。

○長瀧参考人 これは、ICRPの規約にしてもすべて今までの経験で書いてございますので、今の福島の事件というのは、少なくともまだ収束していないという世界で初めての状況である。これは教科書にないわけであります、参考書はあるかもしれないけれども。ですから、我々がどう対処するかということを決めていくんだというだけの非常な責任とそれから意欲を持って対処していかなければいけない。
 そのためには、私は自分の立場からいいますと、一番大事なのは、現在汚染地に住んでいらっしゃる方をどう措置するかですね。その方々の希望と十分に対話を尽くしていく中で、今の基準値のようなものも決めていく。むしろ、基準値があって住民をどうするというのではなくて、住民の方々との対話から基準値を変えていくんだ、いわく基準値を変えるといいますのは、科学的にわかっている事実はこうである、じゃ、それに従って住民の希望をどこまで取り入れるかということを考えるということが私はICRPを変えるという意味で申し上げました。

○吉野委員 貴重な御意見、ありがとうございました。これから双葉郡の方々が本当に戻れるように、皆様方と私たち政治が一生懸命努力したいと思います。
 本当にきょうはありがとうございました。

○牧委員長 次に、坂口力君。

○坂口(力)委員 先生方にはきょうは大変お忙しい中をお時間をちょうだいいたしまして、こうして貴重な御意見を聞かせていただきましたことに心からお礼を申し上げたいと思います。
 それぞれ貴重な御意見をお伺いさせていただいたんですから全員の先生方にお聞きをしたいわけでございますが、二十分間という制限された時間でございますのでお聞きすることができない先生もいられるかもわかりませんけれども、そこはお許しをいただきたいと存じます。
 まず明石参考人からお聞きをしたいと思うんですが、先ほども、住民は何を目安にしたらいいかなかなかわからずにいる、判断に今苦しんでいるというお話がありました。実はそれは私たちも同じでありまして、どう説明したらいいのか判断に苦しんでいるわけであります。きょう先生方のお話を聞いたらかなりすっきりするかなと思ってここへ来たんですけれども、かえって何か難しくなったような気もするわけでありまして、なかなかこれはそうもいかないなと。我々政治家の方が、こうしなさい、ああしなさいと言うと、政治家に対する評価というのは低いものですから、政治家が言ってもそれは言ったとおりにしちゃだめだというようなことになってしまう。やはり、ここは専門家の先生方にこうだというふうに言っていただくのが一番なんだろうというふうに私は思っております。
 それで、明石参考人にお聞きをしたいのは、そうした中でありますが、家を遠く離れて生活をしている方がたくさんお見えになります。この皆さん方にできるだけ早く帰っていただかなければならない。帰っていただきますのに、これまた難しい基準ですが、大体このぐらいになったら帰っていただけるという一つの基準と申しますか、判断基準があるんだろうと思うんです。
 先生が、ここを先に片づければ、ここのところを国が優先して解決すれば早くお帰りいただけるようになるのではないかというふうにお考えになっているところがございましたら、ひとつこの際に御発言をいただきたいと思います。

○明石参考人 数字でお示しするというのは、先ほどのいろいろな先生方の御意見もございますとおり、やはり学校で、とある数字で区切ってしまうと学校に行けない、それから学校に行っても外、校庭で遊べないというような、かなり不利益も生じてきてしまうと思います。これは逃げて数字を出さないということではなくて、やはり納得ができる、つまり、学校で遊べるんだ、子供さんたち、お母さん方に公園に行って砂遊びしても大丈夫だという確信というか、そういう安心感を得ていただける状況をつくり出す。
 それは、数字だけではなくて、私自身は例えば一ミリシーベルト、二ミリシーベルトが体に影響が出るというようなことは全く思っておりません。ただ、そこも住民の方々に納得していただけないということであれば別のことを考えなければいけない。ですから、数字であらわすのではなくて、その住民の方々の安心、それから理解、納得でてんびんにかけて、学校で遊べるような状況、それを周り、環境でつくってあげるということが重要ではないかと思います。
 ですから、数字だけで縛るというのはやはりちょっと難しいのではないかというのが私の意見でございます。

○坂口(力)委員 同様なことを唐木参考人からもお聞きをしたいと思うんですが、先ほどこの論文集をちょうだいいたしまして、先生もここで、規制値というのは安全と危険の境ではないと書いていただいてありまして、規制値というのは行政が対策を始める目安であると。
 ただし、先ほども御質問がございましたが、行政が動き始めますと、ここ以上のところはこうだと動き始めますと、もうそれが基準になってしまうと申しますか、国民の側はそれを基準にして、それ以上は危険なんだということになりがちになると私は思うんですね。
 行政が行います方の対策というのは、普通の、危険性からいきますと少し数値の低いところから始めるということになりますから、その低いところがだんだん基準になっていくということになりますが、ここは、行政がやります基準というのも、規制値にできるだけ近いところでやるように指導していただくと申しますか、先生方から言っていただくということも大事じゃないかというような気が私はするんですが、先生の御意見をもう少しお伺いしたいと思います。

○唐木参考人 ありがとうございます。
 まず、規制値をもう少し緩い方に持っていくとというお話がありましたが、先ほどお話ししましたように、規制値というのはなるべく厳しくしておいた方が、食品全体、何か、どこかがおかしいぞということを見つけるためには非常に有効なので、これを動かすのはなかなか難しいだろうというふうに思います。
 それではどうしたらいいのかというのは、私は、教育が一つあるだろうと思います。それは、私の近くにスーパーマーケットがありますが、大体、主婦の方は奥に手を突っ込んで、奥の方から牛乳をとっている。なぜですかと言ったら、奥の方に賞味期限、消費期限の長いものが置いてあって、手前は賞味期限、消費期限が近いものが置いてある。それは、ヨーロッパでも日本でも同じだそうです。ですから、主婦の方は奥からとるということですが、ヨーロッパの方に聞いたら、ヨーロッパの方は手前からとるんだそうです。それは、牛乳は、きょう、あした、あさってぐらいで飲む、だから手前からとってもいいと。ただ、ずっと長い間置いておく人は、奥からとる人もいると。これはなぜなのか。それは教育なんだそうです。日本はそういった教育が一切行われていない。ただ賞味期限が長ければいいだろうというふうに皆思い込んでいるところがあります。
 したがって、同じように規制値についても、量と作用の関係というものも、これは非常に単純な理科の教育で済むものですから、これは小学校、中学校のときからきちんとやることによって状況は随分変わるのではないかと私は考えております。

○坂口(力)委員 ありがとうございました。
 唐木参考人に、もう一問だけお聞きをしたいと思います。
 国内の安全対策が大事だということを御指摘になりまして、その安全対策をやっていきますのに、先生の食品のところに限っていただいても結構でございますが、ここを徹底的にやっていきますためには、現在の日本の中の対策のための施設なりあるいはまた人なり、そうしたものはまだ足りない、もっとここは増強しなきゃいけないということなんでしょうか。他の分野から急に連れてきてできるものでもないと思いますけれども、できるものならそうした方法もあると思いますが、お聞きしたいと思います。

○唐木参考人 私の資料の最後のところに食品の安全を守る仕組みという四段階の図がございますが、目標の設定と規制というのは、厚労省、食品安全委員会が行います。
 それから、二番目の、安全を守る努力と規制の遵守、これは、農場から食卓までと言われる食品の生産から流通加工、それから消費までかかわるすべての方が努力をしないといけない。ここのところが、だれが失敗しても食品は危険になってしまう。ここで一番大事なのは、教育訓練だろうと思います。ここが一つ足りないことがあると思います。
 三番目の、検査と違反の発見、これをやるのは保健所で働いている食品衛生監視員そのほかの関係の方々です。ここの数が決定的に足りないということもあります。これがユッケの事件なんかの裏側にもある問題だろうと思います。
 したがって、日本の食品の問題というのは、添加物や農薬あるいは今回のセシウムではなくて、決定的に微生物による食中毒ということは御存じのとおりで、公式の統計だけで年間三万人、そこに隠れている数からいうと、それの百倍、二百倍の食中毒患者が毎年出ていると言われておりますので、そこを何とかするためにも、やはり食品衛生の強化というのは絶対必要だろうと私は思っております。

○坂口(力)委員 ありがとうございました。
 それでは、長瀧参考人に一つお伺いをしたいと思います。
 先生は、チェルノブイリの方にも随分御活躍をいただきまして、そのことにつきましては書物等で拝見をさせていただいております。
 先生のきょうのお話の中で、晩発影響と申しますか、ずっと後になってきましてから影響が出てくるというお話を聞かせていただいて、これはなかなか手ごわいことだなと。今回、福島で起こりました原発の事故におきましても、当面の問題につきましては皆一生懸命やっているわけですけれども、二十年先、三十年先にどんなことが起こってくるかというところまでまだ思いが至っていないという気もするわけですね。そこを、このチェルノブイリのところから先生がごらんになりまして、もう少し警告をしていただくことがあれば、教えていただく。
 そして、そうした晩発的な影響が出るというのは、継続的な放射能に対する暴露があったときに起こるのか。それとも、継続的ではないですけれども、一時的だけれども大量に暴露されたところに起こるのか。その辺のところもあわせてお聞かせいただければありがたいと思います。

○長瀧参考人 本当に、非常に大きな、大事な御質問でございます。
 晩発影響にしても、私自身は、確実に、科学的な結果がどこまでわかっているかということをはっきりさせることがやはり大事だろう。そうすると、放射線の晩発影響について世界で一番たくさんの人をフォローしたというのは原爆でございますので、原爆の影響から何年後に何が起こるかということを推察するということが現在わかっていることでございます。チェルノブイリに関しても、もう二十五年たちまして、それなりの結果がわかっておりますので、それも科学的にわかった。
 そういう科学的にわかった事実と、それから、いろいろな生物学的な研究によって推測できるといいますか、がんの発生のメカニズムであるとかそれに関するいろいろな研究がありまして、賛成、反対をまぜますと、本当に賛成も反対もいろいろある。現実に、低線量の晩発影響に関しまして、アメリカの科学アカデミーとフランスの医学アカデミーが全く違う見解を出しているという状況でございます。
 それは、科学的にと言うときに、どこまでデータがわかっているかというのをはっきりする。それと、その科学的なデータをもとにして、これはポリシーでありますけれども、ポリシーとしてどこまで基準を決めるか。ですから、今我々が議論している一ミリシーベルトや五ミリシーベルトというのはポリシーに基づいたものでありまして、科学的な技術というと、先ほど申し上げましたUNSCEARも言った、疫学的には百ミリシーベルトまでしかわからないし、そのレベルはこれぐらいだと。
 ですから、基本は、その違いをやはりわかっていただくということ。ですから、先ほどございました、今から一番の問題は、今から帰れるのかという人たちにとっては、帰りたい、帰りたいけれどもどれぐらいの危険があるのかという、物すごい葛藤に悩まされると思うんですね。そのときに、専門家が何も考えないでいきなり、五ミリシーベルトならいいだろうとか、一ミリシーベルトならいいだろうかということが一体専門家は言えるんだろうか、それだけのデータがあるんだろうかということをやはり謙虚に科学者、専門家は考えなきゃいけない。
 ですから、幾つかの国際的な会合で、我々は、百ミリシーベルトまでは世界じゅうで、みんな影響があるということはわかっている、それは一瞬の被曝である原爆が主になっておりますけれども。それ以下に関しては、むしろ科学者はわからない分野である、不確実な分野だということで、積極的にそれを出して、その範囲は、住民の意思なり政治的な意思なり、その場の人間の社会で決めていくということも科学者、専門家としての一つの方法ではないかというふうに思っております。

○坂口(力)委員 ありがとうございました。
 いろいろな角度から考えていかなきゃならないという、示唆に富んだお言葉だったというふうに思います。
 次に、沢田参考人に一つお聞きをさせていただきたいと思います。
 先ほど、ガンマ線、ベータ線のお話をしていただきまして、そして作用が異なることもお話しいただきました。これは広島の原爆のときにもそうなんですけれども、今回の福島の場合でも、いわゆる中心地から何メートルというのが一番問題にされておりまして、そして、風向きだとか雨の降った量だとかというようなことよりも、何メートルかというのが一番優先されているわけなんですね。
 先生の先ほどのお話を聞いておりますと、例えば原発なら、原発の中心地から何メートルのところということよりも、それ以外のこともかなり考えていかないといけない、必ずしも距離だけの話ではないんだなということを感じたわけですが、今回の原発の場合にも、何メートルという、ぐるっとコンパスで円をかいてというようなことが行われておりますが、その辺のところをきめ細かくもう少しやっていかなきゃならないんだったら、こうだというお話をちょうだいできればと思います。

○沢田参考人 先ほど広島原爆の話をしたわけですけれども、広島原爆の場合は、火の玉ができまして、それが上空に急速に上がっていって、一万六千メートルぐらいまで上がっていったところが、雨が降ってくる。ですけれども、途中、一万メートルぐらいのところで圏界面に沿って横に広がったところがあります。ここは雨粒が小さくて、途中で蒸発して放射性微粒子になるわけです。それはほとんど測定されなかったわけです。そして、それは風で流されてきましたので、後で知ろうと思えば被爆者の中でどういうことが起こったかということから逆算しなきゃいけないんですけれども、そうやって逆算してみますと、かなり遠距離まで影響があったということがわかったわけです。
 今度の福島の場合は、そんなに上空まで上がらないで風で流されていきましたので、気象による影響というのが極めて大きいわけです。その点で大きな違いがあるんですけれども、しかし、放射性微粒子の降下の影響と、それから福島原発のいろいろな放射性物質の影響とは共通性があります。
 ただ、広島や長崎の場合は、そういうことで、距離とともにかなり精密に影響がはっきりわかってきているということですから、そちらの研究をちゃんとやっていくということがすごく大事になってくると思います。つまり、被爆者が受けたいろいろな影響というのは、かなり精密にたくさんいろいろな調査結果がありますから、そういう貴重なデータをきちんと科学的に解析して、とりわけ遠距離の放射性降下物による被曝ということを科学的に明らかにして、それは主に内部被曝ですから、今回の福島原発の事故の影響を評価することにつながっていくと思います。
 ですから、いろいろなことで意見がどうなっているか、科学者の意見もいろいろ分かれているということなんですけれども、その一番大きな理由は、そういう放射性降下物の影響、内部被曝の影響をきちんとこれまで十分研究してこなかったということで、これは科学者としても責任を持たなきゃいけないと思いますけれども、そこのところを科学者が協力して明らかにして、そして、福島原発の事故に対してもきちんと対応できるような、そういうデータを提供するという責任があるんじゃないかというふうに思っています。

○坂口(力)委員 ありがとうございました。
 時間が来てしまいまして、児玉参考人や今中参考人は熱弁を振るっていただきましたので、ぜひお聞きをしたいと思っていたんですけれども、時間がもう来てしまったものですから、また次回に譲らせていただいて、また個人的な御指導を受けたいというふうに思っております。
 これで失礼させていただきます。ありがとうございました。

○牧委員長 次に、高橋千鶴子さん。

○高橋(千)委員 日本共産党の高橋千鶴子です。
 きょうは、六人の参考人の皆さん、本当にお忙しい中おいでをいただきまして、また貴重な御意見を賜りましたことを心からお礼を申し上げます。全員に質問したいと思っているんですが、先ほど来そうであるように、時間の関係でなかなかたどり着かないかもしれませんが、その点は御容赦いただきたいと思います。
 きょう、まず最初に伺いたいのは、食品安全委員会の問題ですけれども、昨日、ワーキングチームが、通常の一般生活で受ける放射線量を除き、生涯の累積線量百ミリシーベルト以上で影響が見出されるという評価書を了承したということが報道をされました。
 私は、この食品安全委員会の食品安全基準の問題については、六月一日の本委員会で質問しております。これはあくまでも事故直後の、本当に緊急を要するということで暫定基準という形で食品の安全基準が示されたわけで、データも非常に不足していたことや、食品安全委員会の議論の中でも、例えば発がん性の問題、胎児への影響の問題、子供の内部被曝ですとか、あるいはウラン、プルトニウムなどの評価がないじゃないかということも議論があって、ワーキングチームが継続して検討されていた。ですから、非常に注目をしていたわけですけれども、正直、拍子抜けというような気がします。
 要するに、では生涯というのをどう受けとめたらいいか。それを一年に割ると結構厳しいじゃないかというふうな記事もあるんですけれども、人生半分過ぎた人がそれをどう見ればいいのかということですとか、実際に知りたいのは、個々の人たちが本当に普通の食生活をしていく中でどういう影響を見ればいいのかということが知りたいわけであって、食品安全委員会の今の到達、これをどう評価し生かすべきかということで、明石先生と唐木先生に伺いたいと思います。

○明石参考人 昨日の百ミリシーベルトでございますが、私ども、実際現場で住民の方とお話をさせていただくチャンスが多いんですが、多分、意味を一〇〇%理解していただける状況ではないと私は思います。
 といいますのは、先ほども少し私のお話でも申し上げたんですが、内部被曝の線量について、どういう計算の仕方、どういう考え方をしているのかということをまず御理解していただく、それで外部被曝とミリシーベルトで比較した場合、リスクは同じだけれども、考え方が違う、計算の仕方も違うということをぜひ理解していただいて、その上で住民の方がいろいろな方々の御意見を伺うということをまずすることが私は一番重要で、そうでないと、また数字のために規制されたというような理解を住民にされてしまう。これは、数字のひとり歩きということで、一番怖いことになってしまうと思います。
 ぜひいろいろな機会を設けて、この数字の意味、それから体内被曝、体内汚染、食べ物からの被曝線量の数え方ということを十分理解していただくチャンスをまずつくる、そこから議論が始まるのではないかというふうに私は思っております。

○唐木参考人 御質問がありましたように、昨日の、生涯の線量が百ミリシーベルトという食品安全委員会の答えにつきましては、戸惑っている方々がたくさんいらっしゃるだろうと思います。
 私は直接その審査には加わっておりませんが、食品安全委員会のお手伝いをしている一員としまして考えていることを申し上げますと、食品安全委員会の委員は、この短い期間に、放射線の健康影響に関する膨大な文献を調べました。我々が、食品安全委員会が知りたいことは、食品を介して摂取する放射線についての情報、これが食品安全委員会の使命です。しかし、調べてみると、食品を介した健康影響に関する文献はほとんどなかったということです。食品安全委員会というのは科学だけを根拠にして結論を出すところですので、データがないことを言うわけにはいかないということで、残念ながら、今回はそのような形になったということでございます。
 しかし、疫学調査そのほか、今までいろいろなお話がありましたように、百ミリシーベルト以下のリスクというのはあるけれども、それは極めて小さい、百ミリシーベルトでたばこの受動喫煙程度ということを考えると、それより小さいリスクであるということから、現在の五ミリシーベルトというのは極めて安全な値であるというのを前回出しております。同様に、前回の議論の中で、十ミリシーベルトでも安全であるということは出しております。
 今回はそういった議論はもう前回やりましたので出ておりませんが、これから先は、厚生労働省がその生涯の百ミリシーベルトの内訳をどういうふうに食品に割り振っていくのか、そういう作業が始まるだろうというふうに思っております。

○高橋(千)委員 なかなか難しい、答えが見つからない問題かなと思います。これを、しかし厚労省が基準に落とさなければならない。そして、その基準が目安になって出荷制限云々ということになるわけですから、それを行政が、我々がどう受けとめていくべきかということで、非常に難しいなと、ちょっと今お二人の御意見を伺っても、ではその次がどうなるかということで、非常に悩ましいところでございます。
 もし、ほかの先生方で、追加で御意見があれば伺いたいと思います。

○唐木参考人 一言追加をさせていただきますと、福島の事故の直後に、暫定基準で五ミリシーベルトという基準をつくりました。その後、食品安全委員会で、五を十に変えてもいいのではないかというような議論が随分行われました。そのときに、それを非難するメールが山ほど参りました。やはり、けんかを始めてからルールを変えるというのはなかなか世間には理解されないだろう、そういう現実もあるだろうと思いますが、これは食品安全委員会の立場ではなくて、厚生労働省のお立場を私が推測してお話ししたことでございます。

○沢田参考人 きのうの議論の結果、特に、子供たちにどういう影響があるかということについて触れていないということに対する不満がたくさんありました。そういう資料がないということでお答えになっていたようですけれども、私が承知していますのは、広島大学の原医研で、かなり丹念に、年齢別にいろいろな種類の晩発性障害についての死亡率を研究されています。早川さんたちが中心になってやったんですけれども、現在は、多分、そこにいらっしゃる方で、そのデータをもとにして、ちゃんと明らかにすれば、子供たちに対してどういう影響があるかということが年齢ごとにわかっていくような、そういうデータがそろっていると思いますので、それをぜひ委員会などでも検討していただければいいんじゃないかというふうに思います。

○高橋(千)委員 ありがとうございました。
 逆に言えば、今回の事故が起きてから基準値を初めて検討しなければならなかったと。でも、本当であれば、今沢田先生もお話しされたように、この間の、原爆以来のいろいろな経験を通して、データをとってきた方たち、研究してきた方たちはたくさんいたわけですから、そうした英知を結集して、もっと早い時期にそうした基準についても検討しておくべきであったのではないかということは一つ言えるのかな、このように思っております。
 そこで、この食品安全委員会も、あるいは随分世間をお騒がせした校庭の二十ミリシーベルトの問題なども、やはり土台にはICRPの基準があり、そしてさらにその土台には、やはり広島、長崎の原爆のデータということがあったのかなと思っております。
 どの先生方も、やはり、百ミリシーベルトを超えた場合ははっきりと関連性がわかるけれども、それ以下ではなかなかわからないと。しかし、ないわけではないということははっきりしていると思うんです。そのことと、もちろん少ない方がよいということもはっきりしているのではないかということで、やはり、きょうのお話を聞いて、もっともっと原爆の被爆の経験を詳細に学ぶべきではないかということを改めてお話をしたいなと思っています。
 それで、六十五年以上たった今日でも原爆症の申請はございます。また昨年は、一年間で五千人がこの認定が却下された、こういうこともございます。ですから、まだまだ、何年たってもやはり問題が起きてくるというこの放射線の障害という特異な性格ということをまず受けとめて、その上でのさまざまな議論が必要なんではないか、このように思います。
 直接この問題に取り組んでこられた沢田参考人と、被爆者と接して研究をされてきた長瀧先生にもぜひ伺いたいと思います。

○長瀧参考人 私、昨日のことに関しましては、きょうの配付した資料の一番最後に書きましたけれども、やはり日本全体として総合的に考えなければいけない。例えば、食品についての規制値を出してしまいますと、先ほど御質問のありました、では一たん移転した方がまた戻るかどうかというときの規制値にまで響いてくるようなものでありますので、国として、食品だけでいきなり規制値を出してしまってということが必ずしもいいのかどうかということ。規制値を決めるためには、現地の人たちのこともやはり一番先に考えて、そして、むしろ日本の社会における条件のすべてを考えた上で基準値が出てくるというぐらいの方向でもいいのではないかなと。それほど自信を持ってこれぐらいだということを先に言えるだけの科学的な確実なデータはない、不確実である、その線で、やはり社会的なデータを、これはALARAの精神のとおりであります。

○沢田参考人 私が先ほど報告の中で示したのは、実効的な被曝線量という意味で理解していただきたいんですね。主に放射性降下物の影響というのは内部被曝だと申し上げたんですけれども、外部被曝の方は測定ができるわけです。しかし、内部被曝の方はなかなか測定というのは難しくて、外部被曝と同じ影響を与える内部被曝線量という表現しか現在のところできないと思っています。
 例えばホール・ボディー・カウンターで内部被曝がわかるんだということで、今、セシウム137の出している放射線をはかっています。でも、実際にはかっているのは、セシウム137が崩壊するのはバリウム137の励起状態にベータ崩壊をするわけです。そうすると、最初のセシウム137による被曝はベータ線による内部被曝なわけですね。そして、そのバリウム137の励起状態がバリウム137の基底状態に落ちるときにガンマ線を放出するわけです。そのガンマ線をホール・ボディー・カウンターで測定しているわけですね。それで、そのガンマ線によって内部被曝の線量がわかるというふうに言われているんですけれども、最初の方のベータ崩壊によるすごく密度の高い内部被曝の影響というのははかられていないんですよね。
 ということを考えますと、ベータ崩壊の方ではすごく高い被曝影響を与えているはずなわけですけれども、残念ながら、国際放射線防護委員会なんかの採用している、ベータ線もガンマ線も、グレイという吸収線量に掛ける線質係数というのは両方とも一にしてあるわけですね。ガンマ線とベータ線が全く同じ被曝影響しか与えないという仮定をしているわけですけれども、これは、外部被曝によってガンマ線が体の中に入ってくる、それからベータ線が体の中に入ってきますけれども、ベータ線は余り体の中に入ってきませんから、悪性腫瘍とかいろいろなことを引き起こさないという影響がその中に入っているので、結局両方とも一になっているわけですけれども、内部被曝の場合はこれは全く違ってくるわけですね。だから、これを同じように適用するというのは科学的ではないということが私の先ほどの説明でもおわかりいただけたと思います。
 ということで、内部被曝についての評価を外部被曝と全く対等に考えていくというやり方は正しくないと思います。そういう研究をきちんとやっていこうとすると、これから福島で起こることと広島、長崎で起こったことをきちんと比べながら評価していくことがこれからますます大事になってくる。ということで、内部被曝については、かなり慎重に科学的に検討していかなきゃいけない、そういうことが今問われているんだというふうに思います。

○高橋(千)委員 ありがとうございます。
 原爆症の認定訴訟の中でもこの内部被曝の問題がなかなか評価をされなかったこと、後からの入市被爆の問題ですとか、そうしたことをずっと議論する中で、先生がきょう紹介された貴重なデータを、本当に遠距離であっても放射性降下物による影響があったんだということがきょう御紹介されたと思いますし、また、そのことと今回の福島の第一原発の被曝との関係を、やはり共通性を見出しながら生かしていくべきだ、そういうお話だったかと思います。
 そこで、先ほど、時間の関係で、途中、一言で終わったと思うんですけれども、レスボス宣言の意義についてもう少し補足していただければと思います。

○沢田参考人 レスボス宣言は、ヨーロッパ放射線リスク委員会というのが一九九八年だったと思いますけれどもスタートして、そして一貫して、国際放射線防護委員会のいろいろな放射線防護の基準というのが内部被曝の影響を十分考慮していないという批判を続けてきました。
 先ほど、私の資料の中に、医学的な疫学調査をやる場合には比較対照群をどこに設定するかというのが極めて重要なんですけれども、放射線影響研究所は、初期放射線を浴びていない遠距離被爆者や入市被爆者を比較対照群にずっと選んできたわけですね。それはおかしいのではないかということを疑問にされて、日本人平均と比較されました。すると、いろいろな、特に放射線の影響が強いと思われるがんの発症率や死亡率が高い、とりわけ発症率が高いということが示されました。しかし、被爆者の死亡率は日本人平均よりも低いということも明らかにされたわけですね。
 ということで、被爆者にそういうがんの発症率が高い、比較対照群にした遠距離被爆者や入市被爆者が日本人に比べてかなり高いということを先ほどの図で示したわけですけれども、そういうことをちゃんと研究しなかった放射線影響研究所の研究では、そういう一番大事な内部被曝の影響というのが抜け落ちてしまっているという問題があるわけですね。
 だから、私が注目して、先ほどから何度も評価しているのは、広島大学の原医研の研究は、広島県民の中の被爆者と広島県民全体を比較するということで研究されています。その中ですごくいろいろな情報がわかってきていますので、それを大いに参考にしていただいて、とりわけ遠距離の被爆者の場合は内部被曝の影響であるということがその中に含まれていますので、そういうことをきちんとして、内部被曝の影響を引き出すという努力を科学者が一致して一生懸命やっていかなきゃいけない、そういうときに今来ているんじゃないかというふうに思います。

○高橋(千)委員 ありがとうございました。
 最後に、児玉参考人に伺いたいと思うんですけれども、まさしく、きょう内部被曝の問題が随分話題になりました。また、遠距離被爆ということも、今、沢田先生が大分指摘をされましたので、そういう観点でずっと除染作業もやっていらっしゃる先生から一言伺いたいと思います。

○児玉参考人 私、放射線取扱者に一九七七年になりまして、一九九五年から放射線取扱主任として除染と規制にかかわっております。
 それで、今まで、科学技術庁告示、平成十二年から我々がやらされていたことを一つだけ御報告しておきます。
 それは、例えば、妊娠可能の女子については、第五条四号で、内部被曝を一ミリシーベルト以下にする、それから第六条第三号、妊娠中である女子の腹部表面については前条第四号に規定する期間につき二ミリシーベルト、これを規制されて、その規制を守るべく三十年やってまいりました。
 ところが、福島原発の事故で、広島原爆の二十個分の放射線がまき散らされた途端に、このような基準がすべてほごにされている。
 先ほど、福島県の議員から、どのようにしたら安心かという御質問がありました。私は、安全に関しては、基準を決めたら、危機になったらそれを変えていく格好ではだめだと思います。今、ことしできないかもしれないけれども、来年までにその基準に持っていく、再来年までにはこうするということがなければ、住民が安心できるわけがないではありませんか。
 そのためには、最初から申し上げているとおり、広島原爆二十個分の、天然にないセシウム137をまき散らした東電と政府の施策を反省し、これを減らすために全力を挙げる以外に、安心できる解決などあり得ないのです。そのことを抜きにして、どこが安全だという議論を幾らやっても、国民は絶対信用しません。

○高橋(千)委員 ありがとうございました。
 時間の関係で、今中先生にも聞きたかったんですけれども、申しわけありませんでした。
 しっかりと皆さんの発言を受けとめて、頑張っていきたいと思います。
 きょうは本当にありがとうございました。

○牧委員長 次に、阿部知子さん。

○阿部委員 社会民主党・市民連合の阿部知子です。
 ただいまの日本は、第二次大戦の敗北以来の大きな危機にある。震災、津波、そして原子力発電所の事故という中で、国会の役割の重要性、各委員からも多々御指摘いただきました。
 きょう私は、皆さんのお話が大変充実したものであったゆえに、手短ですが、質問をさせていただきたいと思います。
 まず、明石先生と今中先生に伺います。
 明石先生は、今回の事故以降、非常に早期から、特に原子炉の事態収拾のために働く現場の皆さんの健康管理にも当たっておられる。私ども委員会で来週視察にも参りますが、今最も大切なことは何であるのか。
 私は、実は先々週、Jヴィレッジにも行ってきたんですけれども、一月に三千人くらいの働く労働者が来ておられて、その方たちが果たしてきちんと被曝管理されているのかどうか、正直なところ、私にはちょっと不安がございました。
 そこで、でも事故は収束させねばなりませんし、安全ということとこの収束ということに向けて、今例えば国会は何をなすべきか。今中先生にも、同じような被曝労働者のデータがございますので、御意見を伺いたいと思います。

○明石参考人 まず、現在、原子力発電所の中で働いている人たちの一番重要なことは、当然のことながら、生命と、それから危険から回避できることと、放射線の防護です。
 まず、放射線の防護という観点からお話をしますと、外部被曝については、必ず個人線量計、それから現場での線量管理、空間線量率も含めた管理を徹底するということで、計画的な被曝線量で抑えるということは必要条件であります。
 一方、内部被曝に関しましては、防護、つまり、マスクそれからその他の防護衣を使うことで体内被曝はゼロに近づけるというか、もっと言ってしまえば、ゼロにしなければいけない。そういう管理をできる環境をつくる。つまり、暑くてマスクをつけていられない、それから防護衣を着ていては熱中症を起こすような、そういう環境をできるだけ回避する。
 つまり、労働条件や労働環境を改善する、その二つが、放射線の被曝をできるだけ下げるということの第一歩であるということ。
 それから、間接的には、先ほどお話ししました、もし体の調子が悪くなるような環境が続けば、たとえそんなに高い線量率のところでなくても、そこで倒れてしまえば被曝線量が高くなってしまう。ですから、働ける環境、それから快適に働ける環境をつくる。その二つを徹底することが不可欠であるし、そうでないと、今の事故の収束に向かうためには余計な時間がかかってしまうのではないかというふうに認識をしております。

○今中参考人 今福島の現場で働いている皆さんのことですが、彼らの被曝というのは、今、きょう議論してきました一般住民の方々と違って、彼らの被曝線量は、いわば急性障害が問題になっている線量です。
 ですから、一つの閾値といいますか、大体、我々の常識では、二百五十ミリシーベルトを一度に浴びるということは、ある意味で、血液像なりなんなりに影響が出てくるだろうというレベルの被曝をしているわけですから、私自身思うのは、今あそこで働いている人たちのレジストリーをきっちりとして、何人か、まだよくつかめていないという方もいらっしゃるようなので、特別のレジストリーをつくって彼らの健康状態をきちっと定期的にフォローしていくというのが多分我々の責任だろうと思います。

○阿部委員 ありがとうございます。
 引き続いて、牛のセシウム汚染を初めとして、けさでしたか、腐葉土にもやはりかなり高濃度のセシウムがあるということで、単に牛だけでなく、及ぼす影響は全食品にかかわってきていると思います。また、海への汚染もありますので、今後、魚への汚染ということも避けて通れないと思います。
 その中で、先ほど唐木参考人のお示しいただきました参考資料の中に、例えば牛についてですけれども、全量、全体、全個体検査や抜き取り検査はかなり困難というか不適切であるというような表現でありましたが、これも二週間ほど前、NHKスペシャルでやっておりましたベラルーシでの取り組みは、チェルノブイリ事故、二十五年たっても、各学校で子供たちのミルクや野菜の放射線レベルを点検するということでございました。
 やはり私は、ここまで食品汚染が広がってきた場合には、なるべく口に入る身近なところで検査するという体制、それがどこまで身近にやれるかはまたあると思いますが、そうした考え方に立つことが重要ではないかと思いますが、この点について唐木参考人と、あと、児玉参考人は先ほど、ラインの測定でずっとフォローしていくような技術も我が国の現状においては可能ではないかというふうなお話でしたので、もう少し御披瀝をいただきたい。おのおのお願いいたします。

○唐木参考人 全頭検査ですが、簡単に、簡便に、短時間でできるのであれば、これはやった方がいいと思います。しかし、現実に、検査機器が、私が知っている限りでは、福島では六台しかない、一頭の肉をはかるのに一時間かかるというような状況で全部の検査を始めたら、今やっている野菜そのほかの検査ができなくなってしまう。そういったことも考えて、現実的にはなかなか難しいだろうというのが、現場の人たち、あるいは専門家の意見です。
 これをどうするのかというのは、消費者、あるいは政治が考えていただくことではないかというふうに思っております。

○児玉参考人 今、恐らくやられているのは、かなり旧式なやり方なんですが、ゲルマニウム半導体というので、周囲を六センチぐらいの鉛で遮へいした中に物を置いてやるのがやられています。
 それで、今日は、半導体の検知器というのはかなり多数の種類が改良されておりまして、私が最先端研究支援でやっておりますのはPETという機械でやるのをやっているんですが、PETで検出するときには、内視鏡の先でも検出できるぐらいの感度の高いものを開発しております。
 そういうものを集めていって、今やられているのは、むしろイメージングに欠いている。ですから、ゲルマニウムの半導体というのは、スペクトラムを出して、長いスペクトラムを全部見るんですが、例えばセシウムに絞ってこの線量を見るのであれば、半導体検知器の検出感度が今ずっとよくなっていますから、画像型にすることが簡単にできています。
 例えばその画像型の一つのイメージみたいなのは、米軍から供与されてヘリコプターに乗って地上の汚染をやるのに、今はいろいろなところで、きょうあたりは茨城県をやっていると思いますが、検知器で地上を映すようなものがずっとやられております。
 それで、農産物をたくさんやろうとする場合には、ライン化したところで多数のものをできる仕組みをやらなくてはなりませんから、イメージングの技術を基礎にして半導体を集めたようなもののセンターをたくさんつくって、流れ作業的にたくさんやれるようにして、その中ではねるものをどんどんイメージで、画像上で、これが高いと出たらはねていくような仕組みを、これは既存の技術ですぐできますものですから、そういうものを全力を挙げてやっていただきたいと思っております。これを生産地にかなりのところでつくる必要があると思っています。

○阿部委員 生産地に伺えば、果樹農園などでも同じような要望が出されますので、唐木参考人にもぜひ、学術会議はいろいろな意味で日本の知の集積点、クラスターですから、御尽力をいただきまして、私も、やはりここまで来たら、はかって安心するということを除いては、幾ら基準値をどうこう言っても、本当の意味で日本が元気になれないと思いますので、唐木参考人の果たしておられる役割も大きいと思いますから、また学術会議内でぜひ今のような御提案も御検討いただいて、また政府にも御助言をいただければありがたいと思います。
 引き続いて、いわゆる内部被曝、それも低線量内部被曝についてお伺いいたします。
 ICRPと、それから先ほど沢田先生がおっしゃいましたヨーロッパでのECRRとの主な違いは、この低線量持続被曝をどう考えるかということにあるのではないかと私なりに勉強して思っております。
 実は、これは科学者間の意見の差ではなくてそうした差を埋めていく作業が今必要で、ICRPは、確かに広島とかあるいはネバダ州での核実験の後に急激に広がったある放射線の被害が主で、それが晩発であろうと、そのとき広がったものが後々どうなるかということも含めて調べており、沢田先生がおっしゃったのはそうでなくて、降下物がたくさん広がったチェルノブイリ型ですね。すなわち福島型の場合に、内部被曝、晩発するであろうものをどう考えていくのかという御指摘です。
 私は、これは科学界としては何も国民に投げないで、ちゃんと論議をして、ここまでわかった、ここはこれからというふうにしないと、何だか、お母さんたちに任されて、いや、私は百ミリでいいわ、私は二十ミリよとやるような世界の話ではないと正直言って思うのであります。
 そこで、長瀧先生は、ずっと広島、長崎の問題からチェルノブイリも経て、やはり我が国でこの世界の第一人者であると思います。ICRPの経験を今度どう低線量持続被曝に結びつけていくか、ここについてのお考えと、沢田先生には、本当に御自身の研究にのっとって、特に消化管障害、すなわち下痢などの分布について、ベータ線の障害をきちんと描き出していただいて、本当に貴重な御研究と思います。これを、今度逆に世界に発信していくときに、ある種の知見として、対立を超えて、本当に共有できるために何をすればよいかということで、おのおのお伺いいたします。

○長瀧参考人 最初に、医者の立場と、それから放影研の理事長だったという立場で御報告します。
 内部被曝の知識がないということが何度かここで話題になりましたけれども、我々が核医学として働く分野では、常に内部被曝を患者さんに投与しているわけですね。それも、しかもわかり切った、ちゃんと素性のわかった放射性物質を患者さんに決まった量を投与して何が起こるかということは十分経験がございますので、内部被曝の知識がないというのはちょっと、医者の立場からいうと十分にわかっている。
 例えば131にしましても、私は一九五〇年代から患者さんに投与しておりますし、今のチェルノブイリの子供たちも、がんになった場合に、転移のために何億ベクレル、がんの治療ですから何億ベクレルの沃素131を一度に投与いたします。それでがんの治療にはなりますけれども、それ以外の臨床症状、影響はないということを、やはり一つの知識として、十分我々は内部被曝の知識があるということを申し上げます。
 それから、国際的なといいますのは、原爆の場合はこれしかありませんので、比較的、国際機関としてアクセプトされやすいということもございますけれども、逆に、そういう意味からいうと、いろいろな国際機関からの批判もございまして、今までの五十年間、そういう批判に耐えながらやってきた。また、内部被曝あるいは初期のフォールアウトに関してのデータも、私自身は放影研として、そのときのデータを確実に解釈していると思いますし、またそれを発表して、先ほど申しました国際機関、UNSCEAR等で認められているというふうに思います。
 ですから、さっき国際的にと言うときに、やはり科学的な確実な証拠、だれもが認める、科学者が認める証拠をつくって国際的に発表して、それを国際機関が認めて、国際機関の合意の中に入れるというのが科学者がやるべき仕事、任務であって、いきなり、まだそこまでいかないものを社会に直接、個人のレベルで発表するのは、社会に混乱をもたらすということで心配ではないかなと。これは私自身の意見というよりは、今のこの状況で、社会に対して科学者は非常な責任を持たなければいけない、そういう意味で申し上げます。

○沢田参考人 先ほど内部被曝の問題についてお話ししたんですけれども、内部被曝というのは極めて複雑なものなんですね。原爆だけではなくて今度の場合もそうですけれども、放射性の微粒子が五ミクロンよりも小さければ、鼻毛にひっかからないで肺の肺胞というところまで入ってきます。そして、一ミクロンよりも小さければ、その微粒子は肺胞の壁から血液の中に入ってくるわけです。そのときに、その微粒子がどういう性格の微粒子であるかによって振る舞いが変わってきます。
 その微粒子が水に溶けたり油に溶ける、そういう性質のものですと、分子や原子のレベルまで全部溶解して、血液の循環とともに体の中、全身を回っていくわけですね。特に、沃素なんかですと甲状腺に集まりやすいとか、ストロンチウムなんかだったら骨なんかに集まりやすい、それからセシウムですと筋肉に集まりやすいとか、それぞれの集まりやすい場所に移動していくわけです。そこで集積されます。沃素なんかですと、甲状腺に三〇%はそういう形で集積されるということがわかっているわけです。
 しかし、水に溶けない、そういう性質のものですと、その微粒子の中で多少壊れたりして小さくなる可能性もありますけれども、そういう小さな微粒子でも、一ミクロンでも、その中に何百万個という放射性の原子核が含まれています。それが循環している間に体の中にどこかに沈着しますと、その沈着した周辺の細胞に猛烈な放射線をずっと被曝させ続けて、その周辺の細胞が死ぬるということにつながっていくわけですね。
 これはホットスポット理論とかそういうことで言われているわけですけれども、国際放射線防護委員会は、こういうホットスポットの議論については否定的な見解をずっと持ち続けています。しかし、実際に例えば劣化ウランの、酸化ウランの微粒子が体の中に入ってくると、ウランはすごく半減期が長いですからそれほど影響はないはずですけれども、しかし、かなりその中に大量のウランの原子核が含まれているといろいろな影響を与えるということがだんだん最近になってわかってきています。
 だから、そういうふうに、内部被曝の問題というのはすごく複雑ですから、それを科学的にちゃんと議論していくということを放射線影響の研究者のレベルでやっていかなきゃいけないのが現在の状況ではないかと思うんですけれども、例えば私がそういう論文を書いて投稿しましても、これを認めると学会の中で大混乱が起こるからという政治的な理由で却下されるという状況が続いています。それはだから、これまでの放射線の影響の研究者たちが長い間考えてきた放射性降下物の影響は少ない、内部被曝の影響は少ない、外部被曝とそんなに違わないんだという思い込みはずっとありまして、そこから離れられないという状況が続いているのが現状だと思います。
 ですから、科学者の中で、私が育ってきた分野は素粒子論研究のグループで、湯川秀樹先生とか朝永先生とか坂田先生、そういう方々はすごく民主的で、一介の大学院生でもきちんとした議論をしていればそれに耳を傾けるという姿勢がありました。私は、学会の民主化というのは極めて重要だと思います。
 そういう意味で、この機会に、放射線の影響の研究者たちの学会が民主的にちゃんとそういうものを踏まえて、事実は何かということを国民の前に明らかにしていく、世界人類のために明らかにしていく、そういうことをやっていかなきゃいけない段階に今到達しているんじゃないかなというふうに思います。

○阿部委員 私も、今先生が言っていただいたように、科学は謙虚にあらねばならないと思います。そして、先ほど児玉先生のお話で、チェルノブイリ膀胱炎と呼ばれるものが二十数年たって初めて疫学的にも有意に出てくるということを見ると、やはり、実は甲状腺がんも、子供の場合もそうでしたが、最初は否定されておりましたから、科学はいつも可能性を否定せずにきちんと向き合うと。
 最後に児玉先生に一つお願いしたいと思いますが、アイソトープセンター、これは全国にございますが、今回の除染に活躍させるために何が必要か。お願いします。

○児玉参考人 五月に全国のアイソトープ総合センター会議というのがありまして、そこでいろいろ議論をしていたときに、文科省の放射線規制室の方がおっしゃっていたのは、福島原発由来のRIはRIではないと。我々は国民の健康に責任を持つという仕事をやっているのではなくて、法律に決められた放射線取扱者を規制することが仕事だというふうにおっしゃっていました。
 ある面では私は非常に違和感を感じたんですが、もう一方では、例えば文科省の規制室の方は、従来の法律の規制に従ってやらざるを得ない。それで、高い線量のものが少量あるということに対応した法律体系はありますが、低い線量のものが膨大にあるという、それをどう除染していくかということに関する法律がほとんどなくて、今も汚泥問題その他、すべて問題になっているのはここであります。
 しかしながら、現在の全国のアイソトープ総合センターや何かは旧来の法的規制のままで、例えば先ほどゲルマニウムの機械が足りないというお話がありましたが、そんなものは全国にたくさんあります。ところが、そこへの持ち込み、持ち込んだ廃棄物の引き取り、こういうのが法律的に全くない。だから、今も東大のアイソトープセンターでやっているのは全部違法行為だと申し上げました。この場合には、センター長である私と専任教官と事務主任の上で審査委員会を設けて、内部でチェックして、超法規行為を勝手にやっているというのが現状であります。
 それで、そういう法律を一刻も早く変えて、測定と除染というのにぜひ立ち上がっていただきたい。それなくして親の安心もないし、しかも、先ほどから長瀧先生たちがおっしゃっている原爆型の放射能の常識というのは、これは原発型の常識の場合には全く違います。
 それから、先ほど長瀧先生のおっしゃった一過性に核医学で治療をやるというのも、これも形式が違います。我々、例えば抗体にイットリウムをくっつけて打つと、ゼバリンという医薬がありますが、あれは一過性にもかなりの障害を起こしますが、それでもがん細胞をやっつけるためにいいからやっているということであって、正常者にこれをやることはとても許されない、無理なものであります。
 ですから、私が申し上げたいのは、放射線総量の全体量をいかに減らすか。これは、要するに数十兆円かかるものであり、世界最新鋭の測定技術と最新鋭の除染技術を直ちに始めないと、国の政策として全くおかしなことになるんです。
 今我々がやっている、例えば幼稚園で除染します。除染して高圧洗浄機でやりますと側溝に入ります。側溝をきれいにしています。しかし、その側溝の水はどこへ行くかというと、下流の農業用水になっています。それで、イタイイタイ病のときの経験は、カドミウムの除染を下手にやりますと二次被害を引き起こします。ですから、国の政策として国民の健康を守るためには、総量の問題をまず考えてください。
 緊急避難、一つ、総量の問題、二つ、これをぜひ議論をよろしくお願いします。

○阿部委員 貴重な御意見、ありがとうございます。終わらせていただきます。

○牧委員長 次に、柿澤未途君。

○柿澤委員 みんなの党の柿澤未途でございます。
 きょうは、六人の参考人の皆さん、本当にありがとうございます。
 早速質問に入らせていただきたいと思います。
 まず、長瀧先生にお伺いをいたしたいというふうに思います。また、同じことについて沢田先生と今中先生にもお伺いをすると思いますので、お聞きをいただければと思います。
 長瀧先生は、三月十一日の原発事故の発生以来、官邸直属の原子力災害専門家グループの一員に任命をされていらっしゃいます。四月の十五日に、「チェルノブイリ事故との比較」というペーパーを佐々木放医研の前理事長と連名でお出しになられております。
 きょう長瀧参考人が提出をいただいたペーパーにもそのサマリーのようなものが書いてあるんですけれども、チェルノブイリ事故においては、原発外の周辺住民について、二十七万人は高線量汚染地居住で五十ミリシーベルト被曝、五百万人が低線量汚染地居住で十から二十ミリシーベルト被曝、いずれも放射線に起因する健康影響のエビデンスはない、こういうふうに書いてあって、例外は、汚染されたミルクを飲んだ子供たちだ、こういうことが書いてあるわけです。
 この「チェルノブイリ事故との比較」という四月十五日のペーパーでは、福島の周辺住民の被曝線量は二十ミリシーベルト以下になっているので放射線の影響は起こらない、具体的検証をしてみると福島とチェルノブイリの差異は明らかである、こういうふうに書いておられます。
 要するに、現状の福島の周辺住民の置かれている状況では、チェルノブイリですら健康影響はエビデンスベースドでいえばないのだから、福島もないであろう、こういうことを四月十五日の時点で発表されているわけですが、長瀧先生は、この見解については現時点でも変わっていないということでよろしいでしょうか。

○長瀧参考人 お答えいたします。
 官邸の一言のときには、短かったものですから十分に意を尽くしていなかったということもあるかもしれませんが、後で足しましたように、あれは私が言っているということではなくて、先ほど出しました、二十年目に、八つの国際機関ということを言いましたけれども、WHO、IAEA、UNSCEAR、とにかくあらゆる国際機関と三共和国が一緒になって、そして一冊の本をつくって、それについてみんなが同意して、これが現在の結論であるということについて本を出しました。それについての質疑もございましたし、それから、原発の二十年目のときに、ウクライナの議会でもそれが承認されたということがございます。
 そして、ことしの二月にまたUNSCEARが独立して報告を出しまして、そのときにもまたコンクルージョンが出ておりますので、あの文章はそのコンクルージョンをそのまま日本語に訳したというものでございまして、私自身の意見というよりは、そういう国際的な合意を紹介したということでございます。

○柿澤委員 御答弁ありがとうございました。
 しかし、私が実は問題にしたいと思っているのは、むしろこのペーパーの末尾にあるコメントの部分であります。もう一度申し上げますが、福島の周辺住民の被曝線量は二十ミリシーベルト以下になっているので放射線の影響は起こらない、具体的に検証してみると福島とチェルノブイリとの差異は明らかである、ここの部分については、長瀧先生、佐々木先生両名のコメントであるわけであります。
 特にこのコメントについてなんですけれども、沢田先生、今までさまざまな形で御研究をされてこられた。今回の福島の事例も、いろいろとその専門的見地からごらんになっておられると思います。四月十五日に官邸の直属のチームとしてこういうペーパーを出す、このことについて、果たしていかがなのかなというふうにも私自身は思うんですけれども、沢田先生、今中先生、どうぞ、もし何かお感じになられることがあったらお願いしたいと思います。

○沢田参考人 私は、広島原爆の遠距離の放射性降下物の影響というのは急性症状を発症させるレベルということで、広島ですと約六キロという一番遠いところでも八百ミリシーベルト、長崎では千二百から千三百ミリシーベルトという被曝をしている。ということは、発症率は低いんですけれども、急性症状を発症しているわけですね。
 その線量から考えますと、福島の原発の場合、先ほど、原発の事故を収束させるために働いている労働者の場合は、二百五十ミリシーベルトを超えて五百ミリシーベルトとかそういう被曝をされていますので、私は、急性症状を発症されるかどうかというぎりぎりのところになっているので、すごく心配をしています。
 しかし、水素爆発でずっと広がっていった広い範囲の住民の人たちはそういう急性症状を発症するほどの被曝はしていないと思いますけれども、問題は、これから長い時間たった後に起こってくる晩発性の障害だと思います。
 先ほどからずっと説明がありましたように、晩発性障害は、百ミリシーベルト以下では具体的にエビデンスをはっきりさせるということは難しいわけですけれども、発症のメカニズムからしましても、ほぼ被曝線量に比例して起こる可能性があるということはわかっていますので、その意味では、影響がないというふうに言い切るのは科学的ではないと思っています。
 ですから、晩発性の障害をきちんと考えて、長期的な影響をちゃんとフォローできるような、そういう体制をぜひ早く確立していただきたいなというふうに思っています。

○今中参考人 私自身、チェルノブイリにつきましては、かなり独自の立場で、何十遍も向こうへ行っていろいろ調べてまいりました。
 はっきり申し上げて、チェルノブイリ事故の場合、事故が起きてから二週間の間に何が起きたか、はっきりしたことはいまだにわかりません。これについてはかなり自信を持っております。
 それで、実は、翌日に原発労働者の町のプリピャチというところから五万人避難したんですけれども、三十キロ圏の住民の方は、大体一週間ほったらかして、四月二十六日に事故が起きて、五月二日の段階で避難するという決定が出されています。それから農民の方が牛や豚と一緒に大体一週間ぐらいかけて避難されたわけですから、その間にかなりの被曝を受けておられると思います。
 それで、長瀧先生がチェルノブイリ・フォーラムの報告で、国際的合意で、この人たちの被曝線量は三十三ミリシーベルトと言われていますけれども、私はちょっと、ふうん、そうかな、かなり、もっとでかかったんじゃないかなということを思っています。
 そして、チェルノブイリの周りでいろいろな影響が認められていないということですが、実は、チェルノブイリのそういった避難者については、きちんとした追跡調査がありません。ですから、この事故直後に避難された十二万人の方、これのレジスターをつくって、ちゃんとして、この二十五年間フォローアップしてきましたというものはないわけですから、ないところには影響も見えないということだと思います。あと、ベラルーシ、ウクライナにおいては、汚染地域住民の数の登録はありますけれども、それぞれの線量とか、メディカルのフォローアップとそれを連結させたような評価はほとんどありません。
 私の知り合いなんかは、そういった非常に限られたデータの中から、一応影響はあるよ、汚染の強いゴメリ州では肺がんがふえているよというデータは、私は知っています。だけれども、それが国際的基準に照らしてアクセプトされるようなレベルの研究になっているかというと、いまだ、残念ながらありません。それできょうは、千二百キロ離れたスウェーデンの汚染の疫学調査、百万人規模の十年間の追跡調査で、これはかなり、疫学としては非常にすぐれたものだと思っています。ただ、これが因果関係があるかどうかについては、私たちは、本人ともいまだに議論をしている段階です。
 ですから、きちんとした調査のないところには影響は観察されないんだというふうに私は申し上げておきたいと思います。

○柿澤委員 児玉参考人から挙手をいただいておりますが、ちょっと時間の関係もありますので。
 では、児玉参考人、もしよかったら。

○児玉参考人 今の御質問を聞いていて、私、思いましたのは、二十ミリシーベルトを超える被曝が既に起こっている方がたくさんいるということを確認したかったのかと思ったのですが。(柿澤委員「いや、そうではないです」と呼ぶ)そうではなくて。済みません。

○柿澤委員 大変失礼いたしました。
 次の質問に移ります。
 きょうは、今中参考人、私が御推薦を申し上げて、参考人としてお見えをいただきました。その心は、今中先生の論文で、チェルノブイリ事故を受けてウクライナやベラルーシがとったさまざまな措置について詳細な論文を書かれている。私は、やはりこのチェルノブイリのケーススタディーが今回の福島においても十分生かされるべきであるというふうに思いますし、その点について、十分生かされているというふうに思えない部分もある、そういうふうに感じているからであります。
 先ほど以来、食品の暫定規制値についての言及がありましたが、今中先生の論文にも言及をされておられますけれども、九七年にウクライナの保健省が、食品と飲用品の中のセシウム137の許容濃度というものを、内部被曝の数値を考慮して決め直しています。これは食べ物によって非常に詳細に決められていて、例えばセシウム137ですけれども、パンだったらキログラム当たり二十ベクレル、野菜だと四十、果物七十、肉二百、魚百五十、ミルク百、卵六、幼児用の食品は四十、こういう形で非常に事細かに、食品の摂取量等に応じてでしょうけれども、許容濃度というものが決められている。一方で、日本の今の暫定規制値は、飲用品、乳製品は二百、野菜、肉、魚、卵、食べるものは何でも五百、こういう数字になっているわけです。
 この数字については、国際的な政府間機関のコーデックス委員会がやっているセシウムの一千ベクレル・パー・キログラムというのと比べれば厳し過ぎる、こういうふうにおっしゃる方もいる。一方で、このウクライナの基準からすれば、余りに大ざっぱで余りに甘過ぎるんじゃないか、こういうふうに言う方もいるわけです。厳し過ぎると言う人と甘過ぎると言う人がいて、どう評価したらいいかわからないというのは、一般国民からすれば当然のことだというふうに思いますが、本来、日本はどれに準拠するのが妥当であると考えるのか、今中参考人、そして、この問題については先ほども御答弁をいろいろお聞きしていましたので、唐木先生にもあわせてお伺いをしたいと思います。

○今中参考人 ちょっとその前に、私の前のコメントにつきましては、「チェルノブイリ事故の「死者の数」と想像力」ということでお手元の方には補足の資料をつけていますので、また時間があったら拝見してください。
 今、チェルノブイリの、ウクライナの食品基準についての御質問だと思いますけれども、チェルノブイリ事故が起きたのは八六年です。そして、その周辺に大規模な汚染があるぞというのが明るみに出たのが八九年のことです。それから規制値をどうするかというので、いろいろな議論が行われました。それで、九一年の終わりにソビエトがつぶれて、それぞれ、各共和国が責任を持つということになったんですけれども、結局、ウクライナが今採用している値、ベラルーシもそうですけれども、いわゆる年間一ミリシーベルトという被曝が基本になって出てきているものだと思います。
 何せ、汚染地帯というのはすべての食品が汚染されているものだという立場に立って、それぞれの食品に割り振っていく。その食生活を考えながら、どれくらいの濃度にしたかということだと思います。
 一方、食品暫定基準というのは、唐木先生の方からお話がありましたけれども、一応、年五ミリシーベルトということで食品に割り振っているということで、ですから、日本国の方が大体それに応じて大きくなっているんだろうと思います。
 あと、コーデックスについてはよく承知をしていませんが、これは食品の輸入取引に関する基準と関係しているのではないかと思いますけれども、そういった場合には、食品全体ではありませんから、輸入食品というのは我々の食生活の中のごく一部を食べるわけですから、大分考え方が違っているんだろうと思います。
 ですから、私の基本的な考え方は、基準というわけではなくて、目安の被曝としては、私は、この間、原子力なり放射線医学なり、ずっと五十年六十年、積み重ねた中で、一般公衆の年間被曝として一ミリシーベルトという値が出てきているわけですから、そこを一つの目安として考えていくべきだろうというふうに思います。

○唐木参考人 平常時一ミリシーベルト、これは守るべきだろうと思います。しかし、今は緊急時です。先ほどから申し上げておりますように、緊急時に一ミリシーベルトを守ろうと思ったら、福島県だけではなくて、もっと広い地域の人を全員避難させることにもなりかねない。そこで、どちらのリスクが大きいのか、これをきちんと評価をして、基準値を決める。これは緊急時です。それで、速やかに平常時に戻すように努力をする。これがICRPの考え方であり、食品の五ミリシーベルトというのも、平常時で五ミリシーベルト、これは考えられない数字ですが、今の緊急時であるから五ミリシーベルトということです。
 しかも、その中の五百ベクレルあるいは何十ベクレルというのは、安全と危険の境目ではないというのは何度も申し上げました。これは、行政が何かの対策を講ずる、その目安であるということです。ですから、それ自体が上か下かでどちらが厳しいという、こういう議論にはならないだろうというふうに思っております。
 以上です。

○柿澤委員 ありがとうございました。
 周辺住民の内部被曝を含めた健康調査についてですが、先日初めて、浪江町における百二十二人の調査の結果が明石先生によって公表されて、尿検査によって放射性セシウムが検出された方もいたけれども、影響としては、非常に、影響が出るレベルよりもずっと低い数値だったというお話がありました。
 しかし、これを受けてNHKが報道していましたが、実際に検査を受けた方のコメントが、やはりこれを聞いても安心できない、こういう話があったと思います。やはり、三カ月以上経過をして調査をしても、結局は、本当のところ、わからないんじゃないのか、もっとうがった見方をすると、そういう意味で、ある程度体外に排出をされるというところが済んでからこの健康調査が始められたということについて、うがった見方すらされてしまっているような状況があるわけです。
 明石先生にお伺いをしたいんですけれども、こういうふうに相当量の内部被曝をしてしまった場合、これを事後的にリスク低減する方法があるのかないのか、ないとすれば、やはり実態を速やかにつかんでおくべきだったのではないか、こういうふうに思いますけれども、いかがでしょうか。お伺いします。

○明石参考人 御指摘のとおり、検査を受けた方々が一〇〇%納得、安心をされていないという点は事実でございます。その一つの理由は、今先生御指摘のように、時期が遅かった、それでもう体の中の半減期を超えてしまって検出できないのではないかというふうに思われた方がいたことは事実であります。それも先ほどお話しさせていただきましたように、確かに遅かったという点は事実で、より早くもしこれが行われていれば、今回の検査の結果でより納得、安心させることができただろうというふうに、今は多少悔やまれるところもあります。
 それからもう一点でございますが、セシウムが体の中に入ってしまったときに、実は、行う治療があります。プルシアンブルーといって、色素をベースにした飲み薬でありますが、セシウムは一たん体の中に入るとカリウムと同じで非常に吸収が早く、吸収されると全身に分布する。その後に、再分泌といって、もう一回消化管の中に出てまいります。それをまた吸収するというある種のサイクルをつくります。その際に、プルシアンブルーという、現在日本では医薬品として認可をされておりますが、そのカプセルを飲んでおくと、消化管に再分泌されたときにそのプルシアンブルーがセシウムを吸着して再吸収を抑えるという薬がございます。
 現在、私どもが知っている限りにおいては、治療をするようなレベルの汚染がないという認識で、治療をする対象はないと思っておりますが、万が一、非常に高い線量になる、明らかに体内にセシウムが多くなる、健康影響が出るというレベルに判断した場合には、投与することを考えております。

○柿澤委員 最後に、一点だけ児玉参考人にお伺いをしたいと思います。
 細野原発担当大臣が、もう既に、避難区域の解除と帰宅ということを就任早々おっしゃられて、今度無人ヘリを飛ばして現地の調査を行って、場合によっては早期に解除して住民に帰ってもらおう、こういう話が出てきています。
 しかし、チェルノブイリの強制移住レベルを上回るような高濃度の汚染地域が東京二十三区全体を上回る八百平方キロに広がっている中で、今の状況でこの避難区域を解除するということが正当化され得るのかということを児玉参考人に御見解としてお伺いをして、終わりたいと思います。

○児玉参考人 まず、二十キロ―三十キロの地域というのは非常にまだら状になっています。それで、私が一番よく存じております南相馬の場合ですと、南北ではなくて東西に線量が違います。飯舘村に近い方は二十ミリシーベルト以上で、現在避難が開始されている地域。こちらの方は、海側の方は、それよりもずっと線量が低いところがあります。それで、こうした場合には自治体が判断した方が、今は二十キロ―三十キロ圏は、病院は休診、学校は休校ということが一応指示となっております。それを、学校を開いて、一番低い線量のところで子供が授業ができるようにするとか、そういう判断はやはり自治体の判断でできるようにした方がいいと思います。
 ですから、今の線引きの問題という話よりも、実際にいかに子供の被曝を減らしたり地域を復興していくかという問題がまず一個あります。
 ただ、そこでもう一つの問題は、地元で聞きますと、商工会や何かから、今は強制避難ですから補償が出ています。だけれども、避難区域が解除されたら補償がなくなってしまうということで、実際に私が南相馬へ行っている間も、住民の中で非常に大きな意見の違いが生まれていて、見ていてとてもいたたまれない思いがいたしました。
 それで、ぜひ避難の問題とそれから補償の問題を分けて、先ほどおっしゃった避難の解除というのは、要するに、どういう問題があるかというと、高い線量のところは除染しないと非常に危険です。それで、今そういう問題になっているのは主に年二十ミリシーベルト以上の被曝を受けてしまう地域であると思いますから、そこに関しては引き続き強制的な避難が必要であると思っていますし、ここの地域をどう除染していくかということは、東電なり、我々科学者なり、日本政府がとてつもない十字架を背負っていると思います。
 そのことを住民の判断だけに押しつけるのはとても難しい問題があると思っておりまして、二十ミリシーベルト以上の地域に関しては、やはりぜひとも国で、ここの避難している人たちの生活の保障と、それから、除染の努力をどのように進めるかという見通しを本当に必死に考えないといけないと思っています。
 それで、二十キロから三十キロという現状の同心円がそれを正確に示しているかというと、今はそうではなくて、むしろ地域復興の妨げになっている面がありますから、地元自治体との相談の上で、そこの地域のさまざまな行政、生活上の問題に関しては、子供やお母さんが一番安心できるようなものにするということを一刻も早くやっていただきたい。
 細野大臣は、ある面ではそういう意見を反映している面があると思います。もう一方では、それを補償問題とどういうふうに結びつけるかという議論がないと、やはりこれはもう一方で非常に大変な問題が生まれてしまいますので、今は、強制避難でないと補償しないとか、住民が被害を立証できないと補償しないという格好はもうまずいのではないかというふうに私は思っております。

○柿澤委員 終わります。ありがとうございました。

○牧委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
 次回は、来る二十九日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時四十一分散会

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