11月26日、設楽ダムの再検証のための「第1回 設楽ダム建設事業の関係地方公共団体からなる検討の場」が豊橋市民センター(カリオンビル)で行われ、傍聴に行きました。
検討主体は、国土交通省中部地方整備局で、「検討の場」の構成員は、片桐愛知県副知事、豊橋市長、豊川市長、蒲郡市長、新城市長(当日は代理で副市長)、田原市長、設楽町長です。
国土交通省中部地方整備局からは、「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」(国土交通省内)が9月27日に「中間取りまとめ」をまとめ、9月28日に国土交通大臣から中部地方整備局長に個別ダムの検証にかかる検討を予断をもたずに行うようにと指示があった旨、説明されました。
検討主体が、これまで40年近く一貫して設楽ダム推進でやってきた国土交通省中部地方整備局で、しかもダム推進派の人ばかりを集めての「検討の場」では、客観的・科学的な検証は望めません。住民参加型の第三者機関で設楽ダムの必要性について再検証すべきです。
会議のなかで愛知県片桐副知事は、“ダム建設が一番合理的と、長年、立場を愛知県はとってきた。この考え方は終始一貫しているつもり。この立場は揺るぐことはない。設楽ダムはすべていろんなデータ最新のものでやっているので検証は早期にできる。検証結果を出来るだけ早期にしてほしい。H24年の予算に反映すると伺う。確実に検討の結果が、遅くともH24年度予算には反映するということですすめていただきたい”と述べました。
再検証の会議の最初から、愛知県が、設楽ダム建設が一番合理的で揺るぐことはない、と宣言したことは、本当におかしいと思いました。
客観的・科学的な検証をする気がないのではないかと疑わざるを得ませんでした。
しかも「最新のデータでやっている」といったことにも驚きました。
どこが最新なのかわかりません。どのデータのことを最新と言っているのでしょうか?
設楽ダム計画の元となっている「豊川水系河川整備計画」や「豊川水系における水資源開発基本計画」の根拠となるデータは見直さないという布石でそのような発言をしたのでしょうか・・・。
「豊川水系河川整備計画」や「豊川水系における水資源開発基本計画」の根拠となるデータは、しっかりと検証をしなければ、検証をやったとは言えません。
2010年6月30日、名古屋地方裁判所における「設楽ダム公金支出差止請求事件」の判決のなかでは、「豊川水系フルプランの基礎となった愛知県受給想定調査の水道用水及び工業用水の需要想定には、平成27年度における実際の需要量がその需要想定値に達しない可能性が相当高いという問題があることは確かである」と過大な水需要を見込んでいることを認めています。
この問題などしっかり検証するべきです。
豊橋市長は、国土交通省出身の方です。地方自治体の皆さんの意見は、当然聞かなければなりませんが、やはり、第三者による検証が必要だと思います。
設楽町長からは、1973年、愛知県から設楽町に設楽ダムに関する調査の申し入れがあったときからさまざま苦労されたことや、“その時々の政策で、簡単に国の考え、方針がかわり、今までの国の考え、方針のあり方に疑問を感じる。今までわれわれに言ってきたことは、なんだったのか。軽いものだったのか、と憤りすら感じる”、“後戻りできないし、前に進むしかない”との発言もありました。
設楽町の皆さんは、本当にご苦労をされ、水没予定地にくらす住民の皆さんは、何十年とダム問題で「蛇の生殺し」状態になって、新たな設備投資や住宅改修、森林の管理なども十分にできずに損害を被ってきたと思います。
私たちは、設楽ダムの建設の有無に関わらず、水没予定地にくらす住民の皆さんへの生活・営業支援、損害賠償を行うことを求めています。そして、設楽ダムを中止にした場合も財政的な裏づけをもって、設楽町の活性化のために支援を行うこと。そのためにも「公共事業の中止に伴う住民の生活再建・地域振興を推進する法律(仮称)」を制定することを国に求めています。
国の政策によって、農業や林業では食べていけなくなり、過疎化、高齢化が進む中で、ダムのことも受け入れることになったのではないか、農業や林業で若い人が食べていければ設楽町の皆さんもダム反対のままだったのではないか、と思います。
いずれにしても、国の政策に翻弄されてしまったのではないかと思います。
豊川市長は、“設楽町長の話は、身につまされる。現在、設楽ダムは、予算でいうと23%の進捗率。進めてきた以上、見直しは、水源地の皆さんを冒涜すること。ダム推進でやっていただきたい”と発言しました。
進捗率23%と言っても実際の関連工事は、ごくごく一部です。今なら中止をしても間に合います。無駄なダムは、早急に中止をし、新しい設楽町を私たちも応援していきたいと思います。
蒲郡市長からは、“(設楽ダムについて)もうやってくれということ。一体なにを検討するのか”というお話がありました。
例えば、以下の内容などの検証、見直しをすることが求められていると思います。
○「豊川水系河川整備計画」や「豊川水系における水資源開発基本計画」の根拠となるデータの再検証をしっかりと行うこと。
○2002年3月に完成した豊川総合用水事業や2003年3月に完成した幸田蒲郡送水管の利用など既存施設の総合的な運用を行い、過大な水需要見込みについての見直しを行うこと。
○ダムをつくって、流水を遮断することは河川が本来もっている「流水の正常な機能」を壊すことになるとの視点から、流水の正常な機能の維持のために6000万トンの容量が必要という異常な設楽ダム計画を見直すこと。
○すでに環境が破壊された宇連川側の瀬切れについては、大野頭首工地点の維持流量の設定と森岡導水路の活用など設楽ダムにたよらない環境改善の努力をすること。
そもそも、この「検討の場」は公開と言いますが、第一回は11月26日に開催という情報をマスコミに広報されたのは11月22日で、新聞で一般住民が知ったのは11月23日の朝刊新聞です。「公開」と言いながら、県民の皆さんに開催を知らされたのは直前であり、知らせるのが遅すぎると思います。早く知らせて傍聴席も増やしていただきたいと思います。
マスコミの記者さんからは、「検討するといっても有識者もいない」とのつぶやきがありましたが、ダム推進派ばかりでは、客観的、科学的な検証は無理です。住民参加型の開かれた第三者機関をつくるべきです。
今回の問題点などは、12月20日の政府交渉でただしていきたいと思います。