5月26日、衆議院総務委員会で耳がきこえない方々、耳がきこえにくい方々が、手話・文字オペレーターを介して電話を利用することを公共インフラとして整備する「電話リレーサービス法案」(聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律案)の審議が行われ、私も質問に立ちました。
【よかったこと】
◇長年、聴覚障がいがある方々が求めてこられた公共インフラとしての電話リレーサービスが、いよいよ本格始動する見通しがついてきたこと!!!!!
◇野党が提案してきた修正案を土台に与野党が協議して一部ですが、全会一致で可決されました!!!!! 内容は、法律に基づく基本方針に聴覚障がいがある方々の意見の反映の明記。
本当はもっと修正したかったです。
しかし、閣議決定された法律案の本文の修正はなかなかないことです(附則修正はそれなりにあります)。 全日本ろうあ連盟の皆様の意見書に明確に当事者参加の法案修正のご要望が書かれており、ゆるがないご意見が政治を動かしました。
皆様のご尽力に心から感謝申し上げます。
◇質疑の中での前向きな答弁①
“私たち抜きに私たちのことを決めないで”という障がい者権利条約の要の精神を位置づけるように求め、法に基づく基本方針を決める時も、サービス提供機関の事業計画、運営、サービス支援機関の諮問委員会、法を見直す際、通訳オペレーター養成などあらゆる段階で、「障がい者と緊密に協議し、障がい者を積極的に関与させる」【障がい者権利条約 第4条 (締約国の)一般的義務】ことを求めました。
高市早苗総務大臣は、「電話リレーサービスの利用環境を一層整備していくという観点から、必要に応じて、当事者を含めた関係者の方々のお声を伺う場も設けてまいりたい」と答弁しました。 パブリックコメントだけで終わらせようとしているのではと疑っていましたので、少し安心しました。
◇質疑の中での前向きな答弁②
電話リレーサービス提供機関は、24時間365日サービスを提供し、警察、消防、海上保安庁などの緊急通報を含め行い、命、人権、プライバシーにもかかわる内容を通訳する重要な業務を担う機関。その提供機関において聴覚障がいがある方々の声を反映する仕組みが必要と質問しました。
高市早苗総務大臣は、「当事者の声をサービス内容に反映させるということは重要だと考えております。電話リレーサービス提供機関の運営につきましては、総務大臣が、聴覚や発話の障害のある方を含めた関係者の御意見もしっかりと踏まえながら、適切に監督を行ってまいります。」と答弁しました。
また、谷脇局長は、「総務大臣が定める基本方針におきまして、利用者と直接接する電話リレーサービス提供機関が利用者からの苦情などに適切に対応することを記載することを想定しております。 また、委員お尋ねの総務省におきましても、サービス利用者からの苦情や相談などについて、体制のあり方を含め、適切に対応してまいりたいと考えております。」と提供機関と総務省に相談・サポート窓口も設置する方向であると答弁しました。
また、支援機関の諮問委員会の議事録は公開されると答弁しました。
◇質疑の中での前向きな答弁③
「国や地方、行政から手話通訳事業に充てられる予算は非常に少額だ」との指摘を紹介し、手話通訳、要約筆記を担う方々をふやすためにも、国が数値目標を持って、今から十分な予算をつけて養成するべき、予算の増額を求めました。
橋本岳厚生労働副大臣は、「しっかりと予算が確保できるように私たちも頑張っていきたい」と答弁しました。
◇質疑の中での前向きな答弁④
手話通訳士については、平均年齢が55.3歳、男女比約1対9、給与水準が低く平均月16万6783円で手話通訳士だけで生計を立てられない現実があります。手話通訳士の試験に合格するまでの学習年数は平均10.5年が必要なのにもかかわらず、資格を生かした職についている人が少ないという実態があり、将来に向けて通訳者が十分に確保できる環境が整備されているとまでは言えない状況であるとワーキンググループの報告書でも書かれています。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査の賃金の中で、一般労働者の賃金を見てみますと、2019年は月30万7700円、平均年齢43.1歳、勤続が12.4年で、一般労働者と比べ、10万円以上の開きがあります。 電話リレーサービスのオペレーターに、24時間365日、責任を持って稼働していただくためにも、最低でも夜勤のある専門性の高い職種の平均賃金は保障しなければいけない、正規でしっかりと生計が立てられるように、ぜひとも平均賃金は保障できる単価を設定して保障するべき、と質問しました。
高市早苗総務大臣は、「通訳オペレーターの賃金につきましては、電話リレーサービス提供機関において適切に検討されると考えております。総務省としては、交付金に係る総務大臣認可を通じて、通訳オペレーターの方々の人件費を適切に確保するといったことなど、厚生労働省とも連携しながら、通訳オペレーターの処遇にはしっかり配慮をしてまいります。」 「(電話会社の)負担金の額につきましても、通訳オペレーターの人件費を確実に担保することができますように、総務大臣認可を通じて定めることとなります。」と答弁しました。
◇質疑の中での前向きな答弁⑤
聴覚障がいがある方々のことを議論しているのに、今回、インターネット中継に手話通訳、要約筆記、字幕を入れることができませんでした。技術的に難しいというのです。国会全体の問題として、できるように議院運営委員会にも要請するように総務委員長に求めました。
総務委員長は、「議院運営委員長にも、聴覚障がい者の方に対する配慮等についての対応についても、私の方から、この理事会や、また先生御指摘のことについてはお伝えをしたいと考えております。」と答弁。 委員会終了後、すぐに議院運営委員長に申し入れをしてくださったそうです。
国会のバリアフリーを何としても前進させなければなりません。
以下は、質問のやりとりの書き起こしです。
ぜひご高覧いただき、またさまざまご教示いただければ幸いです<(_ _)><(_ _)><(_ _)>
【2020年5月26日 衆議院総務委員会での質問の書き起こし】
○大口委員長 次に、本村伸子君。
○もとむら伸子
日本共産党の本村伸子でございます。 どうぞよろしくお願いを申し上げます。
24時間365日、救急も使える電話リレーサービスの実現は、聴覚障がいがある方々を始め関係者の皆様方の御尽力で実現する運びとなった法律案だというふうに思います。心から敬意と感謝を申し上げたいというふうに思いますし、この公共インフラとしての電話リレーサービスを国がしっかりと整備をするということは非常に重要で、私どもも賛成でございます。
今、聴覚障がいの方々がどういう状況なのかということで、新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う視覚障がい者、聴覚障がい者が抱える困難に関する緊急アンケートというのを、ダイアローグ・ジャパン・ソサエティという団体の皆様が行っております。
聴覚障がいがある方の声なんですけれども、仕事がなくなってしまったという方のことも、資料で出させていただいておりますけれども、書かれております。 また、マスク着用によるコミュニケーションの難しさ、筆談もペンの貸し借りをしないように気をつけているという筆談への遠慮ということで、コミュニケーションをとることが困難になっている実態がわかるわけでございます。
こういうときに体調を崩したりけがをしても、ほとんどが電話対応のため、病院などはどうすればいいのかわからないというお声や、あるいは、実際に、家族が体調不良で、新型コロナウイルス感染症のおそれを感じて、ファクスで聴覚障がいがあることも伝えた上で問合せをしたのですが、返信が二日後でした、その間不安でした、さらに、ようやく届いたファクスに書かれていた内容の最後に、「悪化した場合は電話で御相談ください」という一文が書かれていたときにはがっくりしましたというお声も書かれておりました。
また、電話リレーサービスを使ったが、いつもより対応業者が少なかったというお声もございました。
感染症の影響で聴覚障がいがある方々にこういう実態があったということはしっかりと把握をして、例えば、電話リレーでも、こういうときもしっかりと使えるように危険手当を出すですとか、国の施策に生かしていかなければいけないというふうに思っております。
特に、電話対応で困っている事例では、この公共インフラとしての電話リレーサービスが充実、普及していくということで、困ることがない国に前進していかなければいけないというふうに思っております。
また、聴覚障がいがある方々に対する理解、合理的配慮、まだまだ前進させていかなければならないということを痛感をしております。
新法ですから、本来であれば、参考人として、聴覚障がいの当事者の方々、あるいは手話通訳の方々、要約筆記の方々、関係者の皆様からお話を直接聞いて審議をするというのが筋なんですけれども、今般の感染症の防止の観点から、今回は参考人質疑はできなかったということで、本当に残念でならないというふうに思います。
この感染症の問題が落ちつきましたら、基本方針も定められますので、ぜひ参考人質疑をお願いしたいというふうに思います。
また、ほかの、与野党を超えた委員の皆様方からも、手話通訳、要約筆記、字幕など、委員会質疑でインターネット中継できるようにということでお声がございますので、委員長、議院運営委員会の皆様方にもぜひ要求していただきたいということを、改めてお答えいただきたいと思います。
○大口委員長
委員御指摘のとおりでございまして、今回につきましては、参考人については、会議録に参照掲載するという形をとらせていただきました。
今後も、参考人については理事会で協議させていただきます。
さらに、議院運営委員長にも、聴覚障がい者の方に対する配慮等についての対応についても、私の方から、この理事会や、また先生御指摘のことについてはお伝えをしたいと考えております。
○もとむら伸子
御丁寧な御回答、ありがとうございます。
資料で提出をさせていただいておりますけれども、全日本ろうあ連盟の皆様方や、あるいは全日本難聴者・中途失聴者団体連合会の皆様と全国要約筆記問題研究会の皆様方が連名で、衆議院の総務委員会宛てに、法案への意見という御意見をいただいております。ほかにも、関係団体の皆様方から独自にヒアリングなどを行いまして御意見を伺っておりますので、しっかりと審議に生かしていきたいというふうに思います。
この電話リレーサービスをよりよいものにしていくために、先ほども山花委員からもお話がありましたように、障がい者権利条約の大事な柱でございます、私たち抜きに私たちのことを決めないでということがしっかりと貫かれ、そして、聴覚障がいがある皆様の意見があらゆる場面でしっかり反映できるものにしなければならないというふうに思っております。
障がい者権利条約の第四条、一般的義務のところに、「締約国は、この条約を実施するための法令及び政策の作成及び実施において、並びに障がい者に関する問題についての他の意思決定過程において、障がい者(障がいのある児童を含む。以下この3において同じ。)を代表する団体を通じ、障がい者と緊密に協議し、及び障がい者を積極的に関与させる。」こう書かれております。日本も批准しておりますので、締約国としての義務を果たさなければなりません。
これを前提とした上でこの法案を見てみますと、そのことをちゃんと意識されてつくられたのか、私は非常に疑問に思いました。
単にパブリックコメントで意見を聞くということだけではなく、障がい者の皆様方と緊密に協議をして、そして積極的に関与していただくということが必要でございます。
そこで確認なんですけれども、この法案が成立した後につくられる基本方針を決める際に当たっても、そして、提供機関の事業計画とか運営、支援機関の諮問委員会、そして法の見直しの際にも、オペレーターの養成なども含めて、あらゆる段階で、聴覚障がいがある方々、利用者、手話通訳、要約筆記の方々の御意見が反映される仕組みが必要だというふうに思いますけれども、これは大臣にお願いしたいと思います。
○高市早苗総務大臣
公共インフラとしての電話リレーサービスの実現に当たりましては、本法案をお認めいただきました後、利用に係る料金などを定める基本方針の策定時に加えて、交付金の額の算定方法などを定める省令の制定時においてもパブリックコメントを実施することによって、当事者である聴覚や発話に障がいのある方も含め、幅広く国民の皆様、利用者の皆様の御意見を伺ってまいります。 さらに、電話リレーサービスの利用環境を一層整備していくという観点から、必要に応じて、当事者を含めた関係者の方々のお声を伺う場も設けてまいりたいと存じます。
○もとむら伸子
具体的に見ていきたいというふうに思いますけれども、全日本ろうあ連盟の皆様方からの御意見でもありますように、法案には、電話リレーサービス提供機関や電話リレーサービスの支援機関に当事者である聴覚障がいの皆様方の意見が反映できる仕組みが明記をされておりません。 電話リレーサービス提供機関は、24時間365日サービスを提供し、そして、警察、消防、海上保安庁などの緊急通報を含め、法案には聴覚障がい者等とありますけれども、耳の聞こえない方、聞こえにくい方と耳の聞こえる方の意思疎通を担い、また、命、人権、プライバシーにもかかわる内容を通訳していただくということで、とても重要な業務を担っていただく機関でございます。
しかし、そこに、提供機関において聴覚障がいがある方々の声を反映する仕組みが明記されていないということで、提供機関におけるコンプライアンス、ガバナンス、個人情報保護の観点からも、当事者が参画をして利用者の声を反映させる、そういう仕組みが必要だと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○高市早苗総務大臣
本村委員がおっしゃいますとおりに、当事者の声をサービス内容に反映させるということは重要だと考えております。電話リレーサービス提供機関の運営につきましては、総務大臣が、聴覚や発話の障がいのある方を含めた関係者の御意見もしっかりと踏まえながら、適切に監督を行ってまいります。 電話リレーサービス提供機関は、サービスの適正性を担保する観点から、総務大臣が定める基本方針に従う必要がありますので、しっかりとここは見させていただきます。
○もとむら伸子
本来、当事者の声を反映できる仕組みを法文に書くべきだったと私は思いますけれども、今総務大臣がお答えいただきましたように、総務大臣が、あるいは総務省が責任を持って当事者の皆様方の声を提供機関に届けていただくということで御答弁いただきましたので、確認をさせていただきたいと思います。
日本財団さんが現在行っている電話リレーサービスのモデル事業では、専用のサポートセンターを設けて、聞こえない方、聞こえる方から月平均700件ぐらいの問合せがあるというふうに伺っております。新たな法律に基づくこの電話リレーサービスにも、サービス提供にかかわる相談窓口が必要だというふうに思います。提供機関にも必要ですし、そして、総務省にも、人をふやして相談窓口の設置が必要だというふうに思います。
総務省なんですけれども、特別定額給付金でも、夜中まで本当に頑張ってくださっていて、私、人が本当に足りないというふうに思っております。人をふやして、そうした機関をつくるべきだと思いますけれども、大臣、御答弁いただきたいと思います。
○谷脇政府参考人 (総務省局長)
お答え申し上げます。 総務大臣が定める基本方針におきまして、利用者と直接接する電話リレーサービス提供機関が利用者からの苦情などに適切に対応することを記載することを想定しております。 また、委員お尋ねの総務省におきましても、サービス利用者からの苦情や相談などについて、体制のあり方を含め、適切に対応してまいりたいと考えております。
○もとむら伸子
ありがとうございます。 電話リレーサービス支援機関においても、聴覚障がいがある皆様の声を反映させる仕組みが法文には明記をされておりません。支援機関は、電話提供事業者から負担金を徴収し、そして提供機関に交付金を交付する業務を担うわけでございます。
支援機関には諮問委員会を設置するということになっておりますけれども、その委員には聴覚障がいがある当事者の皆様が参画をするということが法案には明記されておりません。
法案に明記されている委員というのは、電話提供事業者及び聴覚障がい者等の福祉に関して高い見識を有する者その他の学識経験のある者となっております。
負担金、交付金の話というのは、当然、サービスの質ですとか、手話通訳、文字通訳、要約筆記の質、オペレーターの労働条件、利用料金、こういうことにもかかわってくる、大事なことを話すところだというふうに思います。当然、諮問委員会にも当事者を入れるべきだと思いますけれども、大臣、御答弁いただきたいと思います。
○高市総務大臣
本法案におきましては、交付金の支出などを行う第三者機関である電話リレーサービス支援機関に学識経験者などから成る電話リレーサービス支援業務諮問委員会を置き、交付金の額の適正性などについて審議するということになっております。
この際、サービスの直接の受益者である聴覚や発話に障がいのある方をこの諮問委員会の委員とするということは、客観性、中立性を担保する観点から望ましくないと考えております。
一方で、適切なサービス水準の確保に必要となるコストについて審議をしなければなりませんので、聴覚障がい者等の福祉に対して高い識見を有する者などを委員に任命するということにいたしております。
○もとむら伸子
誰のための電話リレーサービスかということをぜひ考えていただいて、当事者を入れるべきだというふうに思います。そして、障害者権利条約の中でも、意思決定過程において、障がい者と緊密に協議し、障がい者を積極的に関与させるという国の義務があるわけですから、ぜひ果たしていただきたいと思います。 この諮問委員会、議事録は公開されますでしょうか。
○谷脇政府参考人(総務省局長)
お答え申し上げます。 議事録については公開をするということで考えております。
○もとむら伸子
ありがとうございます。
次に、電話リレーサービスの通訳オペレーターを担う手話通訳、要約筆記の人材確保について伺いたいというふうに思います。 全日本ろうあ連盟の皆様の御意見の中でも記載されておりますけれども、聞こえない人の命や人権にかかわること等に対応するため、有資格の経験者が必要とあります。専門の養成機関が、オペレーターの養成機関がない現在、当面、通訳オペレーターは手話通訳士、手話言語通訳者の方々又は同等の資格や技量を有する者が必要であるというふうに言われております。
また、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会の皆様方と全国要約筆記問題研究会の皆様方は、通訳をする部分の技術は登録試験合格をもって担保できることから、要約筆記者の活用が望ましいというふうに言われております。 聴覚障がいがある方々が安心して任せられる知識や技量、恣意性が入らないようにするという見識、そういうものがオペレーターには当然必要だというふうに思います。どう担保されるのか、御答弁いただきたいと思います。
○谷脇政府参考人
お答え申し上げます。 電話リレーサービスのオペレーターの質を一定水準以上に保つ必要があることから、手話通訳士などの一定程度の能力を有することを要件といたしまして、総務大臣が定める基本方針に規定することを想定しております。
また、電話リレーサービス提供機関は、この基本方針を踏まえまして、オペレーターに関する具体的な基準を業務規程において規定することとなりますが、この業務規程を総務大臣が認可をすることによりまして、オペレーターの質を担保することとしております。
○もとむら伸子
そもそも、この手話通訳、要約筆記を担う方々の絶対数が少ないという問題がございます。 ワーキンググループの報告書の中では、電話リレーサービスの需要と費用の予測について試算がされておりますけれども、それによりますと、サービス開始の年から10年後、11年目の年ですね、需要予測、利用者4万人から12万人の中利用を想定して検討を進めることが適当というふうになっております。
この予測について、ワーキンググループの委員からは、4倍、12倍と利用者がふえた場合を見据えて、相当速いピッチで通訳者を確保する必要があるというふうに指摘をされております。
しかし、現在、先ほど来質疑がございましたけれども、手話通訳士、手話通訳者の試験合格率はとても低く、ワーキンググループに参加をされた社会福祉法人聴力障害者情報文化センターの皆様方の2009年の手話通訳士実態調査によりますと、手話通訳士の合格率は9.8%、合格者の手話の学習年数は13.1年というふうになっております。短期間に簡単になれるものではないということがよくわかるというふうに思います。
この電話リレーサービスのオペレーターの養成も当然進めなければならないわけですけれども、その担い手となっていただくことになる手話通訳をやっていただく方、要約筆記をやっていただく方々の絶対数をふやしていくことが必要だというふうに思います。電話リレーサービスを普及させていくためには、この手話通訳者、要約筆記者の人材確保、人材育成がどうしても必要になってくるというふうに思います。
現在、高齢化ですとか人材不足になっているところがふえております。どう対策をとるのかということが課題でございます。国が計画を持って養成する、人材育成を費用面でも協力して支援していくということが重要だというふうに思いますけれども、きょう、厚生労働副大臣、来ていただきました。よろしくお願いしたいと思います。
○橋本岳厚生労働副大臣
お答えをいたします。
電話リレーサービスを安定的に供給していくためには、そのオペレーターとなり得る通訳者、手話通訳士、手話通訳者及び要約筆記者の方々ですけれども、この養成を推進していくことは大変重要であるというのは委員御指摘のとおりだと考えております。
必要となるオペレーターの人数につきましては、現段階で正確に見込むことは困難ではございますが、日本財団が行っているモデルプロジェクトの現状を踏まえ、一定の仮定を置いて機械的に推計をしてみると、制度施行後5年程度で現在の従事者数の4倍程度必要と考えられ、これを充足するためには、毎年、常勤、非常勤合わせて約100人強、常勤換算で40人程度の養成確保が必要と見込んでいるところでございます。 一方で、各資格試験の合格者数に関しては、手話通訳士試験は毎年100名前後、手話通訳者や要約筆記者の試験では毎年200名から300名前後となっておりまして、これらの合格者や既に合格している方々を中心にオペレーターを確保していく、このようになっておるところでございます。
厚生労働省では、通訳者の育成を推進するため、障がい者総合支援法に基づく地域生活支援事業において、手話通訳者や要約筆記者を養成する地方自治体に対して財政支援を実施する、あるいは各地域で実施される養成研修における指導者の養成を関係団体に委託をするなどの取組を実施しているところでございまして、オペレーターの必要数を確保できるように、引き続き通訳者の養成に努めてまいりたいと考えております。
○もとむら伸子
今の電話リレーサービスの利用を前提にしますと、かからない、つながらないということもございまして、もっと養成をしていく、そして配置をしていくということが必要だというふうに思います。 ワーキンググループの委員の皆様方からは、手話通訳者、手話通訳士、要約筆記の仕事は、社会的責任が大きく、役割も非常に大きい、しかし、国や地方、行政から手話通訳事業に充てられる予算は非常に少額だというふうに指摘をされております。 今後、オペレーターとして公的施設などに手話通訳者、手話通訳士を配置することは、職業的な地位の向上が期待できるという御意見がございます。
手話通訳、要約筆記を担う方々をふやすためにも、国が数値目標を持って、今から十分な予算をつけて養成するべきだ。今の額じゃなくて、もっとふやして、これまで日本財団さんが電話リレーをやっていたわけですけれども、そこに対する補助金もこの電話リレーサービスに生かすということも含めて、ぜひ予算の増額をお願いしたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
○橋本岳厚生労働省副大臣
お答えをいたします。 電話リレーサービスのオペレーターとなります通訳者につきまして、必要となる人数を確保するためには、必要な予算を確保して、さまざまな事業を実施していくことが重要であると考えております。
このため、令和2年度予算においては、先ほど申し上げました地域生活支援事業による地域の通訳者養成を推進する取組や、団体に対する研修、指導者の養成の委託のほか、手話通訳者等の養成を更に推進するため、地域の需要や必要数を踏まえた通訳者の養成計画の作成、地域課題の把握、改善手法の検討等を実施する事業の創設、あるいは、若い方に手話通訳等の普及を図るべく、大学などで手話通訳者の養成研修をモデル的に実施する事業の拡充などに必要な予算を確保しているところでございます。
また、先ほどお触れになりましたが、現在、厚生労働省では、日本財団の電話リレーサービスモデルプロジェクトを実施している聴覚障害者情報提供施設に対して定額の補助を実施しているところでもございます。
現在の日本財団による電話リレーサービスモデルプロジェクトによる事業は、令和2年度までの予定ではありますが、公共インフラによる整備が開始されるまでの間、日本財団によるモデルプロジェクトとのサービスに空白期間を設けないように、厚生労働省としては総務省や日本財団と調整することとしておりまして、本事業についても、その状況を踏まえ、必要な対応を検討していくこととしておりますし、また、更にその先を見通して予算を確保していくべき、こういうことでございますけれども、しっかりと予算が確保できるように私たちも頑張っていきたい、このように考えております。
○もとむら伸子
ありがとうございます。
手話通訳オペレーターの養成なんですけれども、現在、厚生労働省の方で、電話リレーサービスにおいて、オペレーターのカリキュラムをつくるために、群馬大学の中野聡子准教授に委託をして調査研究を行っているというふうに思います。
ちょっと時間がないので御答弁いただけないんですけれども、実際にそういうカリキュラムができたとしても、そのカリキュラムを使った養成、研修は一体誰が責任を持って行うことになるのかということが、当事者団体の皆様方から大変不安に思われているわけでございます。
障がい者団体の皆様方からは、手話通訳オペレーターの体制的整備、養成、研修など、誰が責任を持つのか具体的にしてほしい、その計画が示されることで安心できる、誰の責任のもとで行われる制度なのか、事業所だけに責任が押しつけられることがないように国の責任を明確にしてほしいとのお声も聞いております。 国や自治体の役割と責任はどこまでなのか、責任と役割の範囲の明確化を求める声は、当事者の皆様、その関係団体の皆様方から、ほかにも伺っております。 聞こえない人の、聞こえづらい方々の命、人権を守る業務を担うことになる通訳オペレーターの皆様方の役割は非常に重要だというふうに思います。通常の対面の通訳とはまた違った専門領域ですとか特殊な技能、知識を要することになります。
全日本ろうあ連盟の皆様方の意見書の中にも、主に当事者団体、聞こえない、聞こえにくい当事者団体による養成や研修への協力や意見の反映が必要であることを法律等に加えてくださいとの御意見をいただいております。
また、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会、全国要約筆記問題研究会の皆様方も、その実績から、人材育成、確保に大きく貢献できる、文字オペレーターの検討に際しては、検討会等への参加が可能となるように強く要望をされております。
通訳オペレーターの養成について、国が責任を持つこと、そして当事者の皆様方の参加、こうした声に応えていくべきだと思いますけれども、これは総務大臣と厚生労働副大臣にお願いしたいと思います。
○高市早苗総務大臣
電話リレーサービスにおいて、意思疎通の仲介を行っていただく通訳オペレーターは不可欠な役割を担っておられ、特に緊急通報の対応など、通常の通訳とは異なるノウハウも必要になると認識をしております。 このため、電話リレーサービスの特性も踏まえて、通訳オペレーターが適切に対応を行えるよう、総務大臣として、電話リレーサービス提供機関が体制整備や研修を適切に行うということを基本方針において定める予定でございます。
○橋本岳厚生労働副大臣
オペレーターの養成や体制の確保に向けまして、国としても一定の役割を果たしていく必要があると考えております。 このため、厚生労働省におきましては、これは先ほど申しましたとおり、地域生活支援事業による国庫補助でありますとか、各自治体が実施する研修において指導者となる者の養成等を行う委託事業の実施、あるいは、電話リレーサービスのオペレーターに求められる資質や養成カリキュラムに関する研究などに取り組むこととしておるところでございます。
また、本法律案におきまして、今、高市大臣からも答弁ありましたとおり、総務大臣は、聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する基本的な方針を定めることとされておりますけれども、この基本的な方針の内容にはオペレーターに関する事項も含まれておりまして、厚生労働省もこの基本的な方針の作成や変更に協力をするということになります。
厚生労働省といたしましては、政府の一員としての責任を持って、総務省などとも連携をしつつ、オペレーターの養成や体制の確保に向けて今後ともしっかり取り組んでまいりたいと考えております。
○もとむら伸子
国の責任と当事者参加、この部分でもぜひお願いしたいと思います。
通訳オペレーターの労働環境、処遇の保障についても確認をしたいというふうに思います。 現在、手話通訳士、手話通訳者の有資格の方でも通訳の仕事だけでは生計を立てられない現状にございます。不安定な雇用のために、健康管理も十分ではなく、頸肩腕症候群などを発症するということも伺いました。
ワーキンググループの報告書の中にも、例えば手話通訳士については、平均年齢が55.3歳、男女比が約1対9であること、そして、通訳者が一部の地域に偏在していること、給与水準が低いこと、手話通訳士の給与の平均というのは月16万6783円というふうになっております。通訳者となるためには相応の期間、手話通訳士の試験に合格するまでの学習年数は平均10.5年を要すること、資格を生かした職についている人が少ないという実態があり、必ずしも将来に向けて通訳者が十分に確保できる環境が整備されているとまでは言えない状況であるというふうにワーキンググループの報告書でも書かれております。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査の賃金の中で、一般労働者の賃金を見てみますと、2019年は30万7700円、月ですね。平均年齢43.1歳、勤続が12.4というふうになっておりまして、平均年齢も低いのだけれども、10万円以上の開きがあるということでございます。 電話リレーサービスのオペレーターを含めた手話通訳者、要約筆記者の絶対数をふやすためにも、この通訳オペレーターの処遇を抜本的に改善するということが必要だというふうに思います。24時間365日、責任を持って稼働していただくためにも、最低でも夜勤のある専門性の高い職種の平均賃金は保障しなければいけない。正規でしっかりと生計が立てられるように、ぜひとも平均賃金は保障できる単価を設定して保障するべきだというふうに思いますけれども、総務大臣、お願いしたいと思います。
○高市早苗総務大臣
通訳オペレーターの方々が果たしてくださる役割は極めて重要ではございますが、国として特定の業種に対してあらかじめ一定の賃金水準を保障するということは適切ではないと考えております。
通訳オペレーターの賃金につきましては、電話リレーサービス提供機関において適切に検討されると考えております。総務省としては、交付金に係る総務大臣認可を通じて、通訳オペレーターの方々の人件費を適切に確保するといったことなど、厚生労働省とも連携しながら、通訳オペレーターの処遇にはしっかり配慮をしてまいります。
○もとむら伸子
賃金が低ければ、やはり人を確保するということが難しくなってしまう。これは電話リレーサービスの質にもかかわる根幹の問題だというふうに思います。ぜひ、人材を確保するためにも、交付金、負担金の積算の上で、ちゃんと賃金が一般労働者の平均賃金を保障できるような積算をできるようにするべきだというふうに思いますけれども、大臣、もう一度お願いしたいと思います。
○高市早苗総務大臣
電話リレーサービスの提供に際して発生した赤字部分を交付金、負担金によって全額補填することを総務省令において定めるということを想定しております。 したがって、負担金の額につきましても、通訳オペレーターの人件費を確実に担保することができますように、総務大臣認可を通じて定めることとなります。
○もとむら伸子
ぜひ、しっかりと一般労働者の平均賃金は保障できるように積算をするべきだということも強く申し上げたいと思います。
オペレーターの方々、関係団体の皆様からは、働く人の健康問題が一番心配、24時間365日になると、深夜の場合、一人職場になる可能性がある、一人で待機して電話がかかってこない場合でも、8時間一人で拘束されれば、精神、メンタルを壊してしまうとのお声も聞いております。
ワーキンググループの委員からも、対人の翻訳業務は非常に精神的にも過重であって、電話という特殊なツールの中で翻訳していく行為は、それにも増して精神的なストレスや過重労働が懸念されるということが指摘をされております。
健康診断ですとか、労働安全衛生上の職業病を予防する方策の強化ですとか、保障の強化ですとか、オペレーターの健康を守る、しっかりと保障していくということは当然求められるというふうに思いますけれども、厚生労働副大臣、お願いしたいと思います。
○橋本岳厚生労働副大臣
お答えをいたします。
手話通訳をされる方が、業務上、例えば、先ほどちらっとお触れになりましたが、頸肩腕障がいというのをされたり、あるいは今お話しいただいたような精神的なプレッシャーだとか、そうしたこともあるんだろうというふうに思います。そうしたことによってさまざまな健康の障害が出るということは予防しなければいけないというのは、全く大事な観点だというふうに認識をしております。
このため、厚生労働省におきましては、自治体が手話通訳者等の派遣事業を行うに際しては、手話通訳者の健康管理にも留意するように通知をしてきておりまして、具体的には、意思疎通支援者に対する頸肩腕障がいに関する健康診断の実施、あるいは、業務の内容や時間を勘案した複数体制の確保などをお願いしているところでございます。
また、今年度、手話通訳者に対するアンケート等を行う調査研究事業を実施する予定としておりまして、まずは、健康面などに関する課題をより明らかにしたい、その中で今お話しいただいたようなことにつきましてもしっかり取り組めればいいな、このように思っているところでございます。
いずれにいたしましても、厚生労働省といたしましては、総務省や実施機関と連携をしながら、電話リレーサービスのオペレーターの健康管理にもしっかりと留意をした制度設計を行ってまいりたいと考えております。
○本村委員 ありがとうございます。
次に、聴覚障がい者の負担軽減という問題で質問させていただきたいと思います。
聴覚障がいの方々の働いている方の平均賃金というのは、厚生労働省の調査では、月20万5000円だということでございます。先ほども申し上げましたように、同じ2018年で賃金構造基本統計調査を見てみますと、一般労働者は男女計で30万6200百円ということになりまして、やはり10万円以上の開きがございます。
雇用率もやはり健聴者よりも低くなっておりまして、例えば、障害者生活実態という東京都の調査を見てみますと、聴覚障がいがある方の収入を見てみますと、複数回答ですが、年金の方が80.5%、賃金、給与が21.7%ということで、年金が主な収入であるという方が多いわけでございます。
そして、長崎県の高齢聴覚障がい者実態調査報告書、これは2017年のものですけれども、見させていただきますと、55歳以上の会員全員と離島の非会員の方ということなんですけれども、年収60万円未満というのが3%、60万円から120万未満が51%ということで、半分以上が120万未満の年収ということで、相対的貧困率の基準、2017年は122万円ですから、やはり経済的に苦しいということがわかるわけでございます。
この電話リレーサービスには、スマートフォン、パソコン、タブレットなどの通信機器が必要ですし、動画を送るということになりますと、外でデータが多いということで大変値段が高くなってしまう通信料金もございます。また、電話料金が必要になってまいります。お金がないと電話リレーサービスを使うことができない、こんな制度にしてはならないというふうに思います。 厚生労働省には日常生活用具の支援制度がございますので、ぜひ電話リレーサービスに使う通信機器を日常生活に入れること、そして福祉電話の制度で利用料金も支援していただくということ、そして総務省にもトータルな負担軽減策をとっていただきたいと思います。最後にお願いしたいと思います。
○大口委員長
橋本厚生労働副大臣、もう時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。
○橋本岳厚生労働副大臣
それでは、ちょっと簡潔に申し上げますが、今御指摘の日常生活用具給付等事業につきましてですけれども、これは要件がございまして、一般に普及していないものというものがその要件の中に入っております。 御提案のありましたタブレットやスマートフォンにつきましてはその点に合致をしていないということでございまして、現時点では、障がい者以外の方々との公平性の観点から、日常生活用具給付等事業の支給対象とするのは適当ではない、このように考えているところでございます。
いずれにいたしましても、厚生労働省といたしましては、障害者の自立と社会参加の促進に向けて、各般の施策の充実に努めてまいります。
○もとむら伸子
では、ぜひ、負担軽減策、総務省の方でもとっていただきますようお願いを申し上げまして、質問とさせていただきます。 ありがとうございました。