外国人技能実習生「失踪」問題、とりわけ一番「失踪」の多い建設業の問題を質問した時の石井啓一国土交通大臣の他人事の冷たい答弁は忘れられません。
議事録を載せておきます。
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衆議院国土交通委員会での質問
2016年12月9日 議事録の抜粋
○本村(伸)委員
資料一にも出しましたけれども、現在、日本にいる技能実習生の方々は二十一万人以上でございますけれども、建設分野で働く外国人技能実習生の数の推移を二〇一一年、二〇一五年の数字でお願いしたいと思います。
○佐々木政府参考人 お答えいたします。
分野別の技能実習生数に関する統計につきましては、技能実習二号への移行者数、すなわち、おおむね一年目から二年目への移行者数で把握をしてございますけれども、建設分野の最近の動きといたしまして、平成二十三年が二千九百五十四人であったものが、平成二十七年には八千八百三十九人に増加をしてございます。
○本村(伸)委員 資料の二に出しておりますけれども、次にお伺いをしますけれども、外国人技能実習生の失踪がふえておりますけれども、二〇一一年、二〇一五年、推移をお示しいただきたいと思います。
○佐々木政府参考人 お答えいたします。
技能実習生の失踪者数は、二〇一一年には千五百三十四人であったものが、二〇一五年には五千八百三人と増加をしてございます。
このうち、分野別でございますけれども、入国管理局では、特に近年失踪事案が急増していることに鑑みまして、平成二十八年九月以降失踪した技能実習生が従事していた職種についての調査を開始いたしました。それによりまして、ことしの九月と十月の数字で見ますと、失踪者の総数九百五十三名のうち建設関係で二百九十二名、業種別で最も多くの失踪者が発生してございます。
○本村(伸)委員 ありがとうございます。
二〇一一年から二〇一六年九月末まで、資料の三枚目の数字ですけれども、合計で外国人技能実習生が二万一千四百九十二名失踪しているわけでございます。この方々は一体どこに行ってしまったのかということが、命さえも私は心配になるわけでございます。
私の地元愛知の愛知県労働組合総連合、愛労連の皆さんのところには、この外国人技能実習生の方からのSOSが入るわけです。逃げてくるケースが多いわけですけれども、どの業種が多いのか、感覚として建設業が多いけれども、つかんでほしいということで、ずっと求めてまいりました。そして、やっとこの九月、十月の数字をつかんでいただき、建設業の失踪者が一番多く二百九十二名というのが、先ほど御答弁があったところでございます。
この失踪が多い理由について次にお答えをいただきたいと思います。
○佐々木政府参考人 平成二十六年三月以降で私どもがこれまでに失踪技能実習生及び関係者から事情を聴取するなどした調査では、失踪の動機といたしまして、技能実習生に対する人権侵害行為等、あるいは受け入れ側の不適正な扱いによるものもありますけれども、一番は、技能実習を出稼ぎ労働の機会と捉え、より高い賃金を求めて失踪する者が多数であるという調査結果になってございます。
○本村(伸)委員 資料の五枚目を見ていただきたいんですけれども、失踪者が失踪する動機ということで、賃金が安いというのが最も多いわけでございます。
技能実習二号への移行者全体が二〇一五年で六万一千八百九名、そのうち建設関係は八千八百三十九名で、二号に移行された方は一四・三〇%なんです。一方で、資料の四なんですけれども、結局、失踪者は三〇・六四%が建設業にかかわる方々でございます。異常に失踪者が多いというのは明らかでございます。
外国人技能実習生の失踪者が建設関係で一番多いという問題、建設を所管している国交大臣としてどのようにこの現実を認識しているかということ、そして、建設業の担い手を、若手をふやしたいということで、処遇改善を中心として、担い手確保、育成対策のさらなる強化ということを国交省は言っているわけですけれども、外国人技能実習生の方々が失踪するようなブラックな職場、これではやはり建設業の担い手はふえていかないというふうに思います。
外国人技能実習生の方々も安心して働ける職場を建設業の分野でどうやってつくっていくおつもりなのかという点、建設関係で失踪者が一番多いという点に関しての大臣の認識や責任、そして、外国人技能実習生も安心して働ける職場をどうつくっていくおつもりかというこの二点、大臣にお伺いしたいと思います。
○石井国務大臣 外国人技能実習生の受け入れに係る制度の所管は法務省及び厚生労働省でございますので、国土交通省として、この点について見解を申し上げる立場にはございません。
○本村(伸)委員 大変無責任な答弁だというふうに思います。強く抗議をしたいというふうに思います。
実際に逃げている方は建設業でふえているわけでございます。そして、法務省、厚生労働省といっても、入管でも人が足りない、そして労働基準監督署も人が足りない、そういう中で、なかなか現場を押さえることができないという中で、国交省が協力しなければこの現状を改善することができないというものでございます。
愛労連の皆さんのところに駆け込んできたケースでは、昨年二月、東京から逃げてきた建設関係で働いていたフィリピンの技能実習生の方は、手取りが月額二万四千円でした。未回収分として、安全帯、作業服、道具代など三万二千円、これは借金になっております。これでは逃げ出すのも当然だというふうに思います。
建設業は、雨の日は仕事がないなど、ほかの産業の働き方とは違う特殊性がございます。
建設業の外国人技能実習生の方のお話をお伺いしますと、建設現場までの移動の時間は時給に入らない、現場で仕事をした時間のみカウントされる、午前三十分、午後三十分の休憩やお昼の休憩六十分、合計二時間は労働時間に入らない、最低賃金に近いような時給で働いておられます。暮らしていけないのは当然だというふうに思います。
外国人技能実習生の方は、兼業、ほかに仕事をするということはできない仕組みでございます。
ことし二月に相談のあった鹿児島県のフィリピン人の技能実習生の建設業の方は、出勤日数は十七日で、基本給が六万九千四百円。鹿児島県で最低賃金六百九十四円で計算をいたしますと、一日六時間労働ということになりますけれども、実際はそうなのか。一日四千八十二円ということになります。鹿児島県の最新の設計労務単価を見てみますと、例えば、普通作業員で一万五千七百円になっております。日本の国交省、農水省の直轄の工事の十六万人のサンプルから設計労務単価というものは算出されておりますけれども、三・八倍の乖離がある。
日本人が従事する場合の報酬と同等額以上ということで外国人技能実習生の待遇はなっているのに、なぜこういう生活できない賃金がまかり通っているのかという問題がございます。
もう一つ、埼玉の建設関係のとびをしていた中国人技能実習生の方ですけれども、建設現場で落ちていたスチールパイプでけがをしました。病院では、会社は労災と言わずに、逆に、仕事に来なければ首と言われたそうです。結局、首にされて、帰国をさせられてしまった。言葉が十分ではなく、会社で殴られたこともあるそうです。この会社では、残業代が支払われず、家賃なども契約書と違う内容がありまして、昨年も一人逃げております。
宮城県の気仙沼から名古屋に逃げてきたベトナム人技能実習生の方は、職種は、ベトナムでは溶接だったのに、日本に来たら鉄筋工になっておりました。結局、だまされていたわけでございます。受け入れ団体は広島県、実習企業本社は鳥取県、就業場所は宮城県の気仙沼だったそうです。時給は七百五十円、七時間半、日給五千円から六千円。同一の会社が送り出し機関とそして受け入れ組合もやっておりました。寮は仙台の郊外で、一時間半かけて気仙沼の現場に行く。その移動の時間も無給だということでございます。
広島の入管の職員が宮城県の気仙沼まで行くことはできません。こういう状況、先ほども申し上げましたように、入管の職員も足りない、労働基準監督署の労働基準監督官も足りないという中で、なかなか把握すら難しい現実がございます。
国交省は、外国人技能実習生の問題は入管の問題だ、法務省の問題だ、厚生労働省の問題だというふうに言いますけれども、そう言っていては、建設業における先ほど来言っている失踪が相次いでいる問題を解決できないからこそ、国交大臣にこうやってしっかりと取り組んでほしいということで実態をお伝えしているわけでございます。
国交省としても、建設業で働く人の問題として、外国人技能実習生の問題……
○西銘委員長 時間が来ていますので、まとめてください。
○本村(伸)委員 実際どうなっているのかということを実態調査してください。せめて公共工事の分野では実態調査ができると思います。そして、違反を繰り返す悪質な建設業者に対しては、建設業の取り消しも含むくらいの強い姿勢で取り組むべきだというふうに思います。そして、公共事業について、外国人技能実習生が失踪するような労働条件、人権侵害がないように徹底するべきだということを大臣に強く申し上げて、答弁を求めて、質問を終わりたいと思います。
○西銘委員長 大臣、時間が来ていますので簡潔にお願いします。
○石井国務大臣 技能実習生に係る労災隠しや処遇等への対応につきましては、関連する制度を所管する法務省及び厚生労働省において必要な検討や対応が行われるべきものであると考えております。
○本村(伸)委員 労働現場のこうした問題を改善しなければ、やはり若い人たちが建設職場に入ろうということにならないわけですから……
○西銘委員長 本村委員、時間です。
○本村(伸)委員 改善を求めて、質問を終わりたいと思います。
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