☆長い長い報告②になりますが、ご自身の都道府県や市町村でどうなっているかをチェックしながら、みていただけると幸いです。
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8月1日~2日高知県委員派遣報告②
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◆8月1日、移動時間がかなりあったので、バスのなかで、高知県の職員の方から「南海トラフ地震に立ち向かう高知県の挑戦~『命を守る』対策の徹底 『命をつなぐ』対策の加速化へ」について伺い、個別にもレクチャーしていただきました(深謝)。
南海トラフ沿いの1600年以降の地震の周期をみてみると、100年~150年に一回は大きな地震が来ています。
◆東海地震が最後にあったのは、1854年。
164年たっています。
◆東南海地震が最後にあったのは、1944年。
74年たっています。
◆南海地震が最後にあったのは、1946年。
72年たっています。
高知県では、全国最大の34メートルの津波が、土佐清水市や黒潮町に来るということで、南海トラフ地震対策の加速化と抜本強化を位置づけているそうです。
2018年の今年は、3月「第3期南海トラフ地震対策行動計画」を改訂し、3月「避難路や避難場所の現地点検が完了」、「地域ごとの医療救護計画の策定」などすすめていますが、
2019年3月に「第4期南海トラフ地震対策行動計画」を策定する予定とのことです。
事前対策で死者数を減らそうと懸命に取り組んでいる印象を持ちました。
その対策として、
◆住宅の耐震化
◆津波早期避難意識の向上
◆避難空間の確保
をメインに進めています。
「第3期南海トラフ地震対策行動計画」の全体像をみると
【「命を守る」対策】
■揺れ対策として「建築物の耐震化」←住宅の耐震化の加速化は地震対策の一丁目一番地
公共施設の耐震化は概ね完了。住宅の耐震化のさらなる加速化を図るとともに、熊本地震で課題となった避難所等の安全確保対策を推進。
ライフライン施設の耐震化、家具転倒防止も。
→多数の住宅が倒壊すると多くの命が失われる。
それだけでなく、火災の発生・拡大、津波からの逃げ遅れ、道路閉塞による消防活動、救急搬送の阻害によって、さらに多くの命が失われる。復興の担い手を失う。
また、被災者への支援ニーズが増大する。避難所、応急仮設住宅・災害公営住宅の確保、ガレキの撤去・処分等。膨大な公費負担が発生。財政を圧迫。
結局、全体として復興も遅らせてしまう。
■住宅の耐震対策は、地震に伴う様々なリスクを同時に低減。さらに地方への経済波及効果も大!!!
■住宅の耐震対策を地震対策の一丁目一番地に位置づけ、協力に推進。
↓
◆高知県の住宅の耐震化率は80%(2017年度末推計)
◆2017年県民世論調査で耐震診断を受けていない人は79%
理由として「工事費用が高額で出せない」「耐震診断の費用がかかる」などの声。
◆対応策として、
ポイント①住宅所有者の負担軽減
☆財政的支援の充実
・診断と設計の自己負担を限りなくゼロに
診断無料 26/34市町村
設計実質無料 23/34市町村
・手厚い工事費補助
2015年度~92.5万円補助
2016年度~市町村ごとの上乗せ
25/34市町村が実施(最大60万円上乗せ)
☆低コストで負担の少ない補強工法の開発・普及も重要
天井・床を壊さない補強や外からのみの補強などの技術・工法の普及促進により工事費減!
《高知県における住宅の平均耐震改修工事費》
2014年188万円→2017年163万円
ポイント②住宅所有者への啓発
☆徹底した啓発
・全市町村で戸別訪問
・テレビCM放送など
高知県の耐震改修実績は右肩あがりで、2018年度は2000棟になる見込み(予算上の見込み)。
■津波避難対策
津波から命を守るための津波避難空間の整備は概ね完了。港湾、河川、海岸堤防等の耐震化、要配慮者施設の高台移転、津波の早期検知体制の整備。
☆津波避難計画の策定
沿岸部19市町村全393地域で完了(2014年3月)
☆避難路・避難場所の整備
市町村の財政負担を実質ゼロにする高知県独自の仕組みにより整備を加速化
避難路など 1445箇所(100%)
津波避難タワー 109/115箇所(95%)
津波シェルター 1基(100%)※県単独で整備 室戸市
☆避難路などの現地点検・実践的な訓練
避難路や避難場所の安全確保のため、市町村と協力し現地点検(362箇所)を完了
避難経路を確保するため、老朽化住宅の除却や住宅の耐震化、ブロック塀の除去を実施
地域住民による避難訓練を毎年実施するとともに、夜間や要配慮者対象とした様々な訓練を実施
☆海岸堤防の地震・津波対策
県人口の約45%が集中するとともに都市機能が集積する県都・高知市の被害最小化に向けた浦戸湾(高知港)の地震・津波対策の促進
→三重防護・・・8月2日にも浦戸湾をみながらの聞き取りがありましたので、別の投稿で報告したいと思います。
☆早期避難等情報発信システムの構築
高知県民の津波からの早期避難意識率
2010年度 21.2% → 2017年度 71.7%(残りの3割には年齢層の違いなどはない、とのこと)
第3期行動計画の目標・・・津波から早期に避難する意識率100%
発災後、メール等で個々人に避難を呼びかける仕組みづくりの必要性
高知県が独自に取り組む対策
①防災行政無線のサイレン及び音声パターンの統一
・大津波警報は命令調で呼びかけ
・繰り返し自動放送を継続
②緊急速報メールを活用した津波情報の配信
・総合防災情報システム改修により緊急速報メールを自動配信
※早期避難意識を高めるために自主防災活動事例等を報告する冊子もつくって普及
自主防災活動への補助制度もある。
自主防災組織維持のため、防災訓練や学習会のためのお金は90%?
資機材1/2 避難路メンテナンスのための資機材1/2
☆火災対策
住宅密集地における地震火災や石油基地等における津波火災についての具体的な対策を引き続き推進。
・漁業用野外燃料タンクの対策を支援
・農業用重油流出防止装置付きタンクの開発と設備の導入を支援
・県民生活に不可欠な燃料確保や油流出等による被害軽減を図るための対策を推進
・地震火災対策指針の策定
出火防止:感電ブレーカ等の設置が有効
住宅耐震化は、すべての対策に効果あり
延焼防止:住民自らが消火に取り組む心がけ
安全な避難:自ら安全な避難の判断ができるようにしておく
・木造住宅が密集し、安全な避難が困難となる可能性がある11市町19地区を、対策を重点的に推進する地区として位置づけ
重点推進地区:870ha、23000世帯、47000人
・住民は参加し、地区ごとの地震火災対策計画を策定
【「命をつなぐ」対策】
応急活動対策として「救助・救出活動」(高知県総合防災訓練)、被災者・避難所対策として「避難所」、医療救護対策として「医療救護活動」(DMAT訓練)
☆応急期の対策をさらに掘り下げて具体化
・総合防災拠点の整備
県内8カ所も整備
災害対策支部となる5地域に専任職員
2014年度:17人→2015年度:51人(内兼務26人)
→2016年度~:56人(内兼務26人)
・輸送対策
道路啓開計画策定
(最大クラスの地震であるL2クラスと、発生頻度の高い地震L1クラスについて計画を策定)
防災拠点・ルートの選定
〇インターチェンジ、海路、空路から広域の防災拠点(総合防災拠点、災害拠点病院など)へ
県外からの応援部隊・物資を受け入れるための拠点(40カ所)
〇広域の防災拠点から地域の防災拠点へ
助かった命をつなぐための地域の拠点(1253カ所)
直近の総合防災拠点やインターチェンジと結ぶルート
そのほか、啓開日数短縮のための対策、道路啓開を確実に実施するための対策、道路啓開計画を補完する対策など
・応急活動体制の整備
応急対策活動要領策定
・応急期の機能配置計画の策定
発災時には、応急救助機関の活動拠点等の様々な機能(施設・用地)が必要となり、特定の公共施設や用地に、競合する恐れがあるため、事前に必要な機能の配置を計画しておくことが重要
※必要な機能:応急救助機関(消防・警察・自衛隊)の活動拠点、避難所、医療救護所、物資集積所、応急仮設住宅建設用地、災害廃棄物仮置場、遺体検案・安置所、仮埋葬地 など
〇市町村で不足する機能を想定→全市町村で機能配置計画策定(2017年完了)
〇市町村単独で不足する機能の広域調整
・長期浸水対策の推進
・応急救助機関受援計画 など
☆避難者・避難所対策
・想定避難者数の約8割分の避難所を確保
〇1週間後の避難者約23万人にたいし、約20万人分を確保
学校、公共施設の耐震化(2018年4月1日)
(学校)市町村立901/915棟(約98.5%)
県立334/335棟(約99.7%)
地域集会所の耐震化、教室利用の促進、旅館ホテル生活衛生同業組合との協力協定締結
〇福祉避難所の指定促進
全市町村で204施設を指定し、約9000人の受け入れ体制を整備(2018年3月末)
・避難所のさらなる確保と運営体制の充実を推進
・避難所・福祉避難所の確保と運営体制の充実
地域集会所の耐震化、福祉避難所の指定、避難所運営マニュアル作成
〇避難所等の耐震化の促進、要配慮者の受け入れ能力の拡大
未耐震の避難所、地域集会所の耐震化、全市町村での教室利用、旅館・ホテル生活衛生同業組合と市町村との協定締結による避難所の指定、福祉避難所の指定促進
↓それでも不足する市町村は
広域避難の検討の具体化に向けた今後の取り組み
県下4圏域(安芸、中央、須崎、幡多)での広域避難体制の確立
広域避難の実施計画と具体的なルール作り
訓練による計画等の検証、見直し など
〇避難所運営マニュアル作成の加速化(2020年度末までに約1100カ所)
での作成を目指す!
・作成の必要性を地域の皆様に理解してもらうための啓発
・効率的に作成するため、モデル避難所(10カ所)のノウハウやマニュアル
を活用
・市町村の取り組みを加速するため、マニュアル作成の支援を充実 など
〇避難所の環境整備
・避難所の環境整備に係る支援を充実
・福祉避難所的な機能の確保
〇避難所運営訓練の実施
・訓練に係る支援を充実
・訓練を通じたマニュアルの検証・見直し
・要配慮者への支援
災害時要配慮者の避難支援の手引き作成
・保健・衛生活動の充実
災害時保険活動マニュアル策定
・物資配送計画 など
☆医療救護対策
高知県の想定負傷者数は、約4万7000人
※愛知県は、約10万人
静岡県は、約8万4000人
三重県は、約6万6000人
高知県の想定負傷者4万7000人(想定死者数 2万5000人)のうち、
重症・中等症者は約14100人。
うち、重症者は、約4700人。←高知県の年間の3次救急患者数を超える
災害拠点病院等での処置可能者数は、合計 約3840人
すると、DMATが対応すべき重症・中等症者数は、約10200人。
被災地外からの派遣DMAT(43チーム)による処置数、約2000人
処置できずに残る重症・中等症者は、約8200人
↓
さらに170チーム以上のDMATが必要
全国では、2200チーム以上のDMATが必要。
・地域の総力戦による前方展開型の医療救護体制(※)整備を推進
※負傷者を後方搬送ができない状況を想定し、前方である負傷者により近い場所で行う医療救護活動
〇総力戦の体制づくり
医師会など関係機関が中心となった地域ごとの医療救護の「行動計画」を策定
資源量の見える化、「タイムライン」化による意識共有
〇総力戦の場所と資機材の確保
医療救護施設等の施設・整備・微震の整備への支援
〇総力戦の人材確保
地域の医師を対象とした災害医療研修の実施
DMATや地域災害支援ナース等の育成
広報等による県民参加意識の醸成
講習会開催による応急手当の普及促進
〇地域をバックアップする体制づくり
SCU(航空搬送拠点臨時医療施設)や総合防災拠点への医療用資機材整備
県内医師や医療支援チームを孤立地域等へ搬送する体制を構築
・災害時医療救護計画改定
・医療救護施設等の施設、整備、備品整備
・DMAT(災害急性期に活動できる機動性を持った トレーニングを受けた医療チーム)の体制整備
・災害医療を担う人材の育成
・医療従事者を地域に搬送する仕組みづくり など
【「生活をたちあげる」対策】
東日本大震災の教訓をいかし、まちづくり、くらしの再建をはかっていくことを想定しているようです。
☆まちづくり
復興まちづくりのため、事前対策を推進
〇地籍調査
〇復興都市計画
震災復興都市計画指針(手引書)策定
〇住宅の確保
災害公営住宅建設計画(策定中)
応急仮設供給計画策定
災害公営住宅整備指針
震災復興都市計画指針(手引書)
☆くらしの再建
速やかなくらしの再建に向けた事前対策を推進
〇発災後の速やかな復興にむけた取り組みの検討
〇復興組織体制の整備
〇がれき処理
災害廃棄物処理計画策定
〇産業の復旧・復興(BCP策定など)
農業、林業、水産業、商工業、観光産業などの復興など
産業別復興計画(策定中)