NTTの固定電話網の中継交換機などの維持が2025年頃に限界を迎えるとの理由で、固定電話サービスを、インターネット技術を応用したIP網に移行するための電気通信事業法改定案と情報通信研究機構法改定案が4月12日、衆院総務委員会で可決されました。
日本共産党は、利用者保護の担保がないとして反対しました。
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電気通信事業法改定案
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採決に先立つ質疑で私は、IP網への移行にかんして、自治体消防関係者から出されている声を紹介し、質しました。
現在、119番など緊急通報した場合、しっかりと内容を聞き取るまで消防などとの緊急通話中に通報者から通話を終了できないようにする仕組みになっていますが、IP電話になるとその回線保留機能がなくなってしまいます。
自治体消防からは、
◆固定電話網のIP網への移行においては、119番の緊急通報が有する回線保留等の機能を従来と同等以上にすることが重要
◆コールバックについては、迅速性や確実性に課題があることから、回線保留機能と同等又は類似の機能を維持していただきたい
◆IP電話は仕組み上、災害時優先電話が実現できないため、通信輻輳時のコールバックが使えない可能性があることを懸念します
などの声が出されています。
私は、情報通信審議会の第二次答申に、今の緊急通報が有する回線保留等の機能は、IP網になっても、「呼継続を保持する機能を実現することは技術的に不可能ではない」と書かれており、技術的には、今の緊急通報が有する回線保留等の機能のようなものを構築でき、利用者に負担をかけない形でやるべきではないのかと質問しました。
さらに、情報通信審議会の第二次答申では、第2次答申は、「停電時の通話手段の確保」について、「メタルIP電話はメタルアクセス回線を利用するため、IP網への移行後も現在のメタル電話と同様に局給電の機能は維持される。他方で、光アクセス回線を利用する光IP電話は局給電に対応しておらず、これが利用者に十分に浸透していないことも含めて課題がある」と指摘されています。
さらに自治体消防関係者から、
◆大規模災害時に停電した場合であっても、被災者等が通話できるように、公衆電話のほか、公民館、集会所、学校等における電話については従来通り、事業者の負担で停電対策を実施していただきたい
◆地震等の災害により指令センター事態が被災し、装置が機能しない場合が想定されていないように感じます。現在では、無給電に対応する電話機を指令センターに設置するとともに、各署に非常用電話機として配備しており、システムダウン時においても最低限の電話機能のみ確保されているため、同様の対策が必要
とのご意見が寄せられています。
光IP電話は、利用者が予備電源を確保しなければ、停電時に通話できなくなり消防署などの非常用電話が使えなくなります。
私は「緊急時、停電で電話が使えなくなる。これでいいのか」と質問。
野田聖子総務大臣は「利用者に理解してもらうよう啓発活動につとめたい」と述べるにとどまりました。
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情報通信研究機構法改定案
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今回の国立開発法人情報通信研究機構法「改定」でこれまでは不正アクセスととらえられていたアクセスを情報通信研究機構に認めることになります。
特定アクセスを行う対象は、乗っ取られ事案が多発しているIoT機器(固有のIPアドレスを持ち、インターネットに接続可能な機器 例えば、監視カメラ、通信機器などなど)です。
私は、特定アクセスにかかわる業務の外部委託、再委託はやるべきでないと質問しました。
野田聖子総務大臣からは、「想定していない」と答弁がありました。
また、現在、正規が4割、非正規が6割となっている情報通信研究機構の予算と人員についても質しました。
同機構のサイバーセキュリティ―研究所の人員は47人(2017年4月1日現在)です。
野田大臣は今回の法改定については「通信の秘密」は犯さないと答弁しましたが、悪意があれば「通信の秘密」にも関わってきます。
「通信の秘密」にもかかわる任務を担う職員の方々は、個人情報を扱うすぐれた能力、倫理性、継続性と安定性が必要で、「通信の秘密」がしっかりと守られる体制の構築が必要で、いれかわりが激しいと個人情報が洩れていく可能性が高くなることを指摘。
研究者や技術者は、今でもきつきつの人員状況とのことで、その上に新たな業務が増加するわけですから正規で人員を増やすよう要求しました。
野田聖子総務大臣は、「IoT機器を狙ったサイバー攻撃が急増している現状を踏まえ、IoT機器に関する総合的なセキュリティー対策を実施するために、平成三十年度総務省予算において六億円を計上しています。 NICTが今回の改正法に基づく業務を実施するに当たっては、この予算をしっかり活用することにより、人員の適切な配置など、しっかりとした業務体制を整備することが可能になると考えているところです」と答えました。
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反対討論
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私は、日本共産党を代表して、電気通信事業法及び情報通信研究機構法の改定案にたいして反対の討論を行います。
NTTの固定電話網は、わが国の基幹的な通信インフラです。
固定電話網のIP網への移行は、NTTが2025年頃に中継交換機等の維持が限界となるとして、メタルIP網や光回線IP網への移行を進めるものですが、本法案は、その際に保障されるべき利用者保護を十分に担保するものとなっていません。
総務省情報通信審議会の第一次答申は、「サービスが終了される場合における利用者保護を確保するためのルール化を検討することが適当」であるとしています。
しかし、本法案では、IP網への移行によって「利用者の利益に及ぼす影響が大きい電気通信役務」に関わる休廃止については、電気通信事業者が大臣に事前届出すること、休廃止については利用者への周知を行う内容に留まっています。
また、IP網に移行した場合、停電時の「局給電」機能がなくなること、消防や警察などが緊急通報を受けた際の「回線保留機能」が従来どおりには使用できないことも明らかとなりました。しかし、こうした緊急時通報の確保に係る措置のほとんどは、法施行後の「使用条件」の整備時に託されています。
なお、増加するIoT機器を悪用したサイバー攻撃によって、ネットに重大な障害が発生している事態に対処し、セキュリティ対策を強化することは必要です。
その際、ほんらい、利用者の情報を知り得ない、情報通信研究機構や認定協会が、設定確認や情報共有等にかかわることになります。「通信の秘密」の遵守と個人情報の保護の徹底を強く求めます。
以上、申し述べて討論とします。