もとむら伸子(日本共産党衆議院議員)-
レポート

日欧EPA(経済連携協定)について、お声が寄せられました。

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日欧EPA(経済連携協定)についての、日本共産党の政策を知りたいという、お声が寄せられています。

TPP(環太平洋連携協定)と関連して、2017年総選挙政策でも、分野別政策の17番目でくわしく述べていますので、以下でご紹介します。

なお、日本共産党のホームページ上のリンク先はこちらです。

http://www.jcp.or.jp/web_policy/2017/10/2017-17-TPP.html

17、TPP-国会決議違反、自由化交渉中止、食・農・地域経済への打撃、ISDS条項、薬価、食料主権

多国籍企業優先の自由貿易一辺倒をやめ、経済主権、食料主権を尊重した互恵・平等の対外経済関係の発展をめざす

2017年10月


 いま世界では、TPP(環太平洋連携協定)を含む、いくつもの地域経済連携協定(メガ経済連携協定)交渉が行われていますが、その多くが関係国間の利害対立とともに、自由貿易が多国籍企業の利益を最優先するものになっていることへの諸国民の反発などによって行き詰まり状況にあります。そこには、90年代以降続いてきた新自由主義的な貿易自由化が、各国で拡がっている貧富の格差拡大や地域経済の衰退の大きな原因になっていることが指摘されるようになっているからです。

 自民党政権は、TPPをアベノミクスの主要な柱に位置づけて参加を強行し、秘密交渉で譲歩を重ねて妥結し、国会批准と国内関連法を強行可決ましたが、アメリカのトランプ大統領の脱退宣言で発効は見込めなくなっています。ところが安倍首相は、自由化一辺倒に対する批判、抵抗を「保護主義か自由貿易か」と対立させ、自由貿易こそ“正義”とばかりに世界でも異常な自由貿易推進の姿勢をとっています。

 いま経済外交をめぐって大事なことは、世界に起きている貧困の拡大と多国籍企業、少数の富者への異常な富の集積というゆがみと関税の撤廃や貿易障壁として撤廃・緩和を強行してきた自由化貿易偏重、市場原理一辺倒の政策を全面的に検証し、国民的立場で見直す事こそ必要になっています。

 日本共産党は、平等・互恵、経済主権と食料主権を尊重する経済・外交をめざして次のような政策を進めます。

 

TPP11、日欧EPA、日米経済交渉などの自由化交渉を中止し、国民に交渉内容と経過を全面的に明らかにさせる

 自民党安倍政権は、TPPをアベノミクスの主要な柱に位置づけて参加を強行し、秘密交渉で譲歩を重ねて妥結し、国会批准と国内関連法を強行可決ました。アメリカのトランプ大統領の脱退宣言で発効は見込めなくなっているにもかかわらず、安倍政権は、アメリカに復帰を働きかける一方で、アメリカを除く11ヵ国で発効させる交渉(TPP11)を主導しています。さらに日欧EPA(経済連携協定)では、乳産品の関税引き下げなどTPPを超える市場開放を受け入れる内容で大枠合意し、RCEP(東アジア地域包括的経済連携―アジア・オセアニアの16か国が参加)でも多国籍企業優先のルールを参加国に押しつけようとしています。しかも、これらの交渉では、何が対象とされ、日本が何を求めているかもまったく明らかにしていません。大枠合意した日欧EPAでも公表は合意内容に限定するなど、TPP以上に異常な秘密交渉に終始しています。

 このようにTPP以上の市場開放をすすめる自公政府の姿勢は、経済主権、食料主権を脅かすにはおきません。多くの自由化交渉は、TPP交渉が出発点になり、それ以上の関税引き下げや貿易・投資ルールが課題にならざるをえません。日本政府は、TPP11交渉では、関係各国が修正要求を出すなかで、アメリカに大幅に譲歩した内容をそのままで発効させる態度をとっていると報じられています。アメリカとの2国間交渉では、アメリカがよりいっそうの農産物関税や輸入規制の撤廃をもとめることはあきらかです。これらの交渉を中止し、交渉項目や経過を全面的に明らかにすることを要求します。TPP後の経済連携交渉が秘密裏に行われているもとですので、TPPを中心に自由貿易一辺倒が何故、国民のためにならないかとは検証していきます。

 明確な国会決議違反の内容を受け入れた

 TPPは、第1章で、「協定の規定に基づいて自由貿易地域を設定する」ことを宣言し、市場アクセス(関税撤廃)をはじめ、28項にわたって、農業と食料はもとより、自動車、医薬品、政府調達、金融、投資、環境、労働など暮らしと経済のあらゆる分野で貿易拡大に必要な規制緩和―ルールの変更をすすめるものです。 

 TPPへの交渉への参加をめぐって2013年に採択された国会決議では、農産物の重要5品目―コメ、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖の関税撤廃は認めず、「除外」または「再協議」するとしていました。また、自民党は12年の衆院選挙で、「TPP断固反対。ウソをつかない、ぶれない自民党」のポスターまで貼りだし、13年の参議院選挙の公約(*)では、「自然的・地理的条件に制約される農林水分野の重要5品目等やこれまで営々と築き上げてきた国民皆保険制度などの聖域(死活的利益)を最優先し、それが確保できない場合には脱退も辞さないものとします」などを掲げました。

 ところが、安倍内閣は、アメリカとの事前交渉で、入場料といわれるアメリカの要求を受け入れたうえ、「あらかじめ関税撤廃を約束されないことが確認された」などとして、交渉参加を強行、交渉を通じても、さまざまな分野で譲歩を続けました。その結果、日本は、農林水産品2594品目のうち2135品目(82%)で関税の撤廃を約束、聖域とした重要5項目でも29%の品目で関税を撤廃、残った品目でも特別輸入枠の設定(コメ、麦)や牛肉・豚肉の関税大幅引き下げ、野菜、くだものでは大部分の品目で関税撤廃するなど、農林水産物の総自由化といえる内容を受け入れました。しかも日本のみが農産物輸出国との間で、7年後に再交渉することを義務づけられているのです。これで「国会決議は守った」「聖域は守った」などと言えないことはあきらかです。

でたらめな影響見通しなどで関連法の採択、批准を強行――合わせて重大なことは、農業や関連産業、地域経済への深刻な影響を「ない」ものとする「経済効果試算」を示して批准を強行したことです。2013年に政府が発表した影響試算では、TPPによるGDPの押上げ効果が3・2兆円、農林水産物の生産額の減少が3兆円としていました。ところが、大筋合意後の影響試算では、GDPの押上効果は14兆円と4倍に膨らみ、農林水産物へのマイナス影響は1300億円~2100億円と20分の1に減少、TPP対策を実行すれば農業生産は維持され、食料自給率も低下しないと強弁しました。

 TPP参加による農産物貿易の主な競争相手は世界で最も農産物価格が安いアメリカとオーストラリアです。一戸当たりの耕作面積が日本の100倍のアメリカ、1500倍のオーストラリアと、「競争できる強い農業」などというのは、国土や歴史的な条件の違いを無視した暴論にすぎません。米農務省が、TPP合意で2025年までに関税が完全撤廃になった場合に12カ国の農産物貿易がどう変わるかを予測した結果(13年11月13日日本農業新聞)によると、輸出額が85億ドル増え、そのうち33%をアメリカで占め、58億ドル増える輸入額の70%は日本が占めるとしています。日本にとってまさに、外国食料の氾濫であり、安全な国産食料をという国民の願いを真っ向から踏みにじることになります。

 政府の試算は、関税が撤廃・削減され、「非関税障壁」が緩和されれば、輸出が増え、雇用が増え、設備投資も増えて、賃金も上がるなど、日本の経済はすべてうまくまわる。農産物の関税撤廃・削減も、国内価格の低下は予想されるが規模拡大やコスト引き下げなどの対策をとれば影響は軽微ですむというものです。

 しかし、その農業対策の中心は、大幅に関税を引き下げる牛肉・豚肉の価格低下時の補てん制度(マルキン)を充実させる以外は、米の輸入枠拡大分の備蓄米買い入れ増、経営規模拡大など生産者に自助努力を促して輸入価格と競争させることです。これは、現実に生産を担っている大多数の農業者の生産と経営を維持するものではありません。先の国会で成立させた農業競争力支援法は、TPPが発効できないもとでも、TPP並みの市場開放に対抗できる農業だけが残ればよいという政策にほかなりません。

 このように、TPP協定は、日本の農林水産業に壊滅的打撃を与え、国民への安定的な食料供給と食の安全を土台から崩さずにおかない内容になっています。現在行われているメガ経済連携交渉もTPP以上の自由化が求められることはあきらかです。自国での農業と食料生産をつぶし、もっぱら外国にたよる国にして良いのか、この国の根本的なあり方が問われています。

環境や国土の保全など農林水産業の多面的な役割も失う――農林水産業は、環境や国土の保全など、多面的な役割を果たしています。日本学術会議は、農林水産業の多面的機能について、洪水防止機能、土砂崩壊防止機能、水質浄化機能、生態系保全機能などで年間約90兆円の効果があると試算していますが、こうした多面的機能も喪失させます。

 

非関税(ルール)分野でも重大な譲歩・市場開放

 日本共産党は、TPPについて、アメリカと多国籍企業の利益を再優先する協定であり、経済主権をアメリカに開け渡すことになると批判してきました。ノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大学教授は、日本での講演で「TPPは悪い貿易協定である。国際企業の最悪利己性が強調される」述べていますが、アメリカや関係国で、市民団体や労働組合に反対の声が広がったのも、そこに原因があります。

 とくに、食の安全、医療、官公需・公共事業の発注、金融・保険、労働などで、国民の生活や安全を守るルールと監視体制、中小企業を支援する制度などが大きく崩されることが危惧されています。なかでもISDS条項(投資家対国家の紛争解決制度)は、国の主権より多国籍企業の利益を上に置く主権侵害として厳しい批判がおきています。自民党も13年の参議院選挙ではこれらに反対を公約していました。

(*)自民党の参院選の公約(Jファイル)で、TPPについて掲げた6項目「――①自然的・地理的条件に制約される農林水産分野の重要5品目(米、麦、牛肉、豚肉、乳製品、甘味資源作物)等の聖域を確保する、②自由貿易の理念に反する自動車等の工業製品の数値目標は受け入れない、③国民皆保険制度を守る、④食の安全安心の基準を守る、⑤濫訴防止策を含まない国の主権を損なうようなISD条項は合意しない、⑥政府調達・金融サービス等は、わが国の特性を踏まえる」

 にもかかわらず安倍内閣は、ISDS条項や地方都市まで外国企業の入札を認める政府調達、遺伝子組み換え農産物の輸入拡大、発展途上国が厳しく反対した医薬品の特許、臨床試験データ保護などで、国民が指摘してきた問題も、日本へのアメリカをはじめとした多国籍企業の進出や日本企業の低賃金国への移転、国際競争のもとでの低価格競争、労働条件の悪化などの懸念もいっさい無視しています。こうして、日本は工業製品や資本も輸出国だから有利になるという前提で事態をバラ色に描くことで国民をだましているのです。

 食の安全を脅かす――アメリカ政府は、BSE対策であるアメリカ産牛肉の輸入制限の緩和を要求してきました。安倍内閣は、TPP交渉参加の事前交渉とあわせ、13年4月からアメリカ産牛肉の輸入規制を30か月齢以下に緩和し、続いて国内産牛肉の全頭検査を事実上やめてしまいました。

 また、アメリカとの2国間の交換文書では、日本が「食品添加物としてポストハーベスト農薬を統一して承認、効率化をはかる」ことを日本が認めるなど、食料の安全に対する規制緩和が大きく進む内容になっています。

 遺伝子組み換え産物について、貿易の拡大、透明性、協力をすすめるための情報交換の委員会を設置することになっていることも、現在の安全性への配慮や表示を主にしたルールから貿易拡大に力点が置かれることになり、栽培規制も緩和されるなど、遺伝子組み換え作物の栽培、貿易を促進するルールに変えられる危険があります。

安価な薬の供給が減り、薬価が高止まりに――「知的財産」の章では、医薬品の特許などの保護を強化する制度がアメリカと発展途上国の最大の対立点となりました。アメリカはバイオ薬品(抗がん剤やC型肝炎の治療薬など)の特許期間13年を要求、5年にすべきという発展途上国と対立しました。結果は、特許期間は、少なくても8年又は5年+他の措置とされました。あわせて、特許が切れたバイオ医薬品のデータ保護期間の設定、ジェネリック薬(後発医薬品)承認決定に特許権者に特許権を侵害していないかを確認するリンケージ制度を設けることが盛り込まれています。

 これら規定は、規制緩和ではなく製薬大企業のための規制強化であり、ジェネリック薬市場への参入規制を長期化させるものです。日本国内だけでなく、多くの途上国では、患者の命をつなぐ安価な医薬品が切望されていますが、手に入りにくい状況は改善されません。しかも、参加国の政府が薬価決定する際に、「直接影響をうける申請者」が、不服審査を開始することができると規定されており、今後、アメリカの製薬企業などが利害関係者として、日本の医薬品・医療機器の保険扱いの可否や公定価格の決定に影響力を強めることが懸念されます。

地元中小企業向け官公需発注が困難に――「投資」「政府調達」の章では、地元から雇用、物品やサービスの調達を求めるなどの「現地調達」を要求してはならないとする規定は、地方自治体が地域の中小企業を支援するための「中小企業振興基本条例」や労働者の最低賃金の支払いや地域貢献をもとめる「公契約条例」などが規制される可能性があります。適用範囲の拡大や基準額引き下げのため、発効3年以内の再交渉も明記されています。

 自主共済も廃止に追い込まれる――「金融サービス」章の定義は広範で、すべての保険、銀行、その他の金融サービスが含まれます。たとえば、JA共済や全労済なども、保険業務に含まれるので適用されます。アメリカ政府は、相互扶助機関として保険商品を提供している協同組合の共済について、金融庁の規制のもとにある外資系保険会社と同じ「規制と競争」のもとにおけと要求、14年の「外国貿易障害報告書」でも、共済を金融庁の監督に服させることを「日本政府は、実施を遅延している」と指定しています。

 また、日米交換文書は、日本郵政の販売網へのアクセスや、日本郵政グループが運営する「かんぽ生命」が民間保険会社より有利になっている条件を撤廃することで「認識が一致した」と明記されています。 

ISDS条項をはじめ、主権侵害の毒素条項が盛り込まれている

 TPP協定の「投資 」章のISDS条項は、外国の投資家が、投資した相手側の国の措置によって損害を被った場合、救済を求めて仲裁続きを利用することができる制度です。安倍政権は、日本企業が発展途上国に進出する場合に有効だとして、積極的に導入に動きました。仲裁判断を下す仲裁人は、双方の仲裁人と第3者となっていますが、第3者には、日ごろISDSで訴えを起こす多国籍企業を依頼主とするような国際投資を専門とする弁護士などがなる場合が多く、相手国に不利な判断を下す危険があります。安倍内閣は、日本企業の相手国進出に必要と言い。濫訴防止条項があると言いますが、日本政府や自治体がアメリカ企業から訴えられる危険は少なくありません。日欧EPAが大枠合意に止まった原因の1つに、ISDSによる訴訟手続きの厳格化、2審制を主張するEUとの対立があったと報じられています。

 「越境サービス}章にあるラチェット条項も各国の自主権を侵害するものです。この条項は、発効後に各国は規制や法律で自由化水準を低めてはならないというきまりです。適用される分野では、企業にたいする規制強化や民営化したサービスを再公営化することもできません。暮らしにかかわる公共政策が自由化一辺倒と矛盾しない方向にきめられてしまうことになります。 

TPPなど自由化は、「成長戦略」どころか、地域経済と雇用、内需に大打撃となる

  現在進められようとしている自由貿易の拡大で「恩恵」を受けるのは、一部の輸出大企業など多国籍大企業と富裕層であり、農業と食料、地域経済と雇用、国民生活は、犠牲だけが強いられることになります。安倍内閣は、大筋合意後の試算で、TPPによるGDPの押上効果を3・2兆円から14兆円に、農林水産物の生産額の減少を3兆円から1300億円~2100億円と20分の1に減ると発表しました。しかし、東京大学の鈴木宣弘教授が、2年前の政府試算と同じ手法で行った試算では、GDPの増加額は5000億円(0.069%),農林水産業の生産減少額は、1兆5594億円、関連産業への波及を加えると3兆6237億円の減少、就業者も、農林水産業で63万4000人、全産業で76万1000人の減少が見込まれます。

 また、アメリカのタフツ大学世界開発・環境研究所が現実的予測として行った試算では、2015年起点にTPPが発効しない場合とTPP発効した2025年を比較すると、アメリカと日本のGDPはマイナスになり、他の参加国の経済成長も微々たるものという結果になったと発表されています。

 このように自由貿易拡大一辺倒では、米国や日本の巨大多国籍企業の飽きない利益追求のために、農業、食の安全、医療、保健・共済、政府調達など、あらゆる分野で多国籍優先のルールを押しつけ、ISDS条項などによって、多国籍企業が政府や自治体の施策に干渉・介入する「権利」を保障するものです。国民生活と地域経済に大打撃となり、日本経済全体にも大被害をもたらすにおきません。

 現在、日本は、一部の輸出大企業が、労働者と中小企業の犠牲のうえに、突出した「国際競争力」を強め、外需だのみの経済にしてきた結果、国内需要は縮小を続け、消費税増税がそれに拍車をかけています。それをさらに加速させるのが自由貿易一辺倒の政治です。一部の輸出大企業など多国籍企業が巨額の富を蓄積する一方で、国民の所得が奪われ、日本経済の長期低迷は避けられません。自由貿易一辺倒でなく国民生活応援・内需主導にきりかえ、日本経済の健全な成長とつりあいのとれた発展をはかることこそ重要です。

食料主権、経済主権を尊重した互恵・平等の経済関係の発展を

  自公政府や財界が「自由貿易」「投資の自由化」の名で押しつける市場原理、多国籍企業優先のルール化は、新しい貿易や投資、経済関係の前進どころか、世界でも、日本でも、破たんしています。地球規模での飢えと食料危機打開に向けた国際的な努力、地球環境をまもる取り組みと規制の強化、パナマ文書(2016年4月日に公表された機密の金融取引文書)で明らかにされた富裕層の課税逃れの根絶、世界経済を混乱させる投機マネーへの規制など、各国の経済主権を尊重し、民主的で秩序ある経済の発展をめざす投資と貿易のルールづくりこそが、世界で求められていることです。

経済主権を尊重した互恵・平等の経済関係の発展をめざす――TPP交渉で安倍内閣が果たした役割は、アメリカと協力して、大筋合意を先導することでした。それは、環太平洋諸国、アジアに向かって「開かれた国」にするのではなく、経済主権、食料主権を投げ捨て、経済面でもアメリカの属国になる道にほかなりません。

  日本に求められているのは、アメリカ一辺倒から抜け出し、アジアを含む各国と経済主権を尊重した互恵・平等の経済関係を発展させることです。貿易や経済関係を拡大すること自体は、悪いことではありません。しかし貿易の拡大の中でも、農業、食料、環境、労働など市場だけに任せておいては成り立たない分野があります。

 新しい世界の流れは、各国の経済主権を尊重し、それぞれの国の民主的で秩序ある経済の発展をめざす、互恵・平等の投資と貿易のルールづくりにあります。この道をすすんでこそ、アジアを含む各国と経済主権を尊重した互恵・平等の経済関係を発展させることができます。日本は、こうした互恵・平等の経済関係を発展させる貿易・投資のルールづくりをこそ、アジアのなかで進めていくべきです。

食料主権を尊重した貿易ルールを――自国の食料確保のあり方は、その国で決めるという食料主権、関税などの国境措置の維持強化は国際的な要請です。国連人権委員会でも「各国政府に対し食料に対する権利を尊重し、保護し、履行する」勧告が再三決議されています。食料不足と飢餓の拡大のもとで、各国が食料増産、自給率の向上にとりくむことが、貿易ルールにおいても食料主権を尊重することが求められています。豊かな発展の潜在力を持っている日本農業を無理やりつぶして、外国から大量に食料を買い入れ、輸入依存を高める―これは国際正義、人類的道義にも反する行為です。

 「金融自由化」から投機マネーの規制へ――自由貿易交渉では、投資の「自由拡大」をいっそうすすめようとしています。しかし、世界の流れは、アメリカが先頭にたってすすめた「金融自由化」が、目先の利益だけを追い求めて世界中を動き回る巨額の投機マネーを生み出し、世界的な金融・経済の混乱を引き起こしていることを反省し、金融取引税の導入など、投機規制の強化を探求しています。日本経済の前途を真剣に考えるなら、こうした流れに合流することこそ求められています。パナマ文書を契機に、富裕層の課税逃れに対する規制が重要な国際課題になっています。日本経団連は、調査に反対し、日本政府も消極的ですが、適正な課税、納税は、貧富の格差の是正にとっても不可欠です。 

国民的な共同の先頭に立って、多国籍企業優先の貿易政策からの転換をめざす

  自由貿易拡大一辺倒では、日本の未来はないし、世界の未来もありません。米国を中心とする巨大多国籍企業に日本をまるごと売り渡す、国内でも多国籍化した大企業などに富を集中させる経済外交を転換させるために力を合わせようではありませんか。TPPをめぐって安倍内閣が交渉経過の資料を全面黒塗りで出し、答弁をことごとく拒否したことを契機に、政府の態度はおかしいという世論が大きく広がりました。日欧EPA、RSEPなどの交渉は、TPP以上の秘密交渉になっています。

 メガ経済連携交渉の関係国が広がるなかで、農業団体、市民団体、環境NGOなどに自由貿易拡大一辺倒に反対する声が広がり、国際的な連帯行動もとりくまれています。トランプ大統領のTPPからの脱退宣言も、アメリカンファーストという大国主義とともに、国民の自由貿易至上主義に対する怒り、反対の声が後押ししていることはあきらかです。

 広がる貧富の格差や地方の衰退への批判、自由貿易拡大への批判を「保護主義か自由貿易か」と対立的にとらえる自公政権やその補完勢力では、経済主権の養護も、真の国際的連帯もできません。日本共産党は、国民の共同、国会内での共同を広げるとともに、国際的な連帯も広げ、多国籍企業優先の経済外交の転換をめざします。総選挙で安倍自公政権と与党勢力を少数に追い込みましょう。

 

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