「社会保障・教育の財源は、消費税にたよらずに確保できる」――日本共産党の財源提案
〈1〉富裕層や大企業への優遇をあらため、「能力に応じた負担」の原則をつらぬく税制改革や、歳出の浪費をなくす改革をすすめます
「所得税では、所得が1億円を超えると逆に負担率が下がる」「法人税も、実質負担率が中小企業は19%前後、大企業は12%」――こうした富裕層・大企業優遇の不公平税制をあらため、「能力に応じた負担」に立って税制を改革すれば、歳出の浪費をなくすこととあわせて当面17兆円、将来的には23兆円の財源を確保できます。
大企業への優遇税制をあらためます
「研究開発減税」などの「租税特別措置」、海外子会社から受け取った配当の一部を非課税にする「配当益金不算入制度」、グループ間の損益を相殺して税金を減らす「連結納税制度」など、大企業に恩恵が偏った優遇税制を廃止・縮減します。
法人減税のバラマキを中止し、安倍政権以前の税率に戻します
安倍政権は、法人税率引き下げなどで4兆円もの企業減税を実施しましたが、内部留保を増やすだけで、賃上げにも景気回復にもつながりませんでした。バラマキ減税をやめ、中小企業を除いて、税率を安倍政権以前の水準(37%)に戻します。
大株主などの富裕層に、せめて欧米並みの負担を求めます
株式配当は、少額を除いて分離課税を認めず、総合累進課税を義務づけます。株式譲渡所得については、当然分離課税としますが、高額部分には欧米並みの30%の税率を適用します。
所得税の最高税率を引き下げ前の水準に戻します
所得税・住民税あわせた最高税率(50%)を、1999年改定前の65%に戻し、富裕層の課税所得3000万円超の部分には65%の税率を適用します。
「富裕税」の創設など資産課税を改革します
高額な株式や不動産などを保有する富裕層に、純資産で5億円を超える部分に毎年低率を課税する「富裕税」を創設します(対象は1000人に1人程度)。相続税の最高税率(55%)を、中間層の負担増とならないよう基礎控除額を引き上げるなどの措置をとりつつ、2003年改定前の70%に戻します。
タックスヘイブンを利用した「税逃れ」をやめさせます
海外の租税回避地(タックスヘイブン)にペーパー会社を設立する手法による「税逃れ」をなくすため、海外投資に対するデータの収集・好評、タックスヘイブン税制の適用拡大などを実行します。
被用者保険の保険料上限を見直します
サラリーマンの年金保険料は月給62万円、健保・介護保険料は月給139万円で頭打ちのなっているため、年間報酬1億円を超える大企業役員などの保険料負担率は1%程度にしかなりません。こうした仕組みをあらため、高額所得者にも応分の負担を求めます。
為替取引税を創設します
多額の為替取引に低率で課税する「為替取引税」を創設します。税率を低くすることで、通常の貿易や金融取引には影響は出さず、短期間に多数の取引を繰り返す投機マネーに負担を課します。
環境税を強化します
現行の石油石炭税では不十分な、「地球温暖化対策の課税」を強化します。原油の国際価格高騰などの際には税率を変動できるような柔軟な仕組みを検討します。低所得者や寒冷地の負担軽減も行います。
軍事費を大幅に削減します
イージス艦、オスプレイ、F35ステルス戦闘機、無人機グローバルホークなど、「海外で戦争する国」に向けた軍拡、米国軍需産業からの高額兵器の購入問題にメスを入れます。米軍への「思いやり予算」や「米軍再編経費」(あわせて年4000億円)、正面装備(年6000億円前後)や自衛隊の海外活動予算などを大幅削減します。
大型開発中心の公共事業を生活密着・安全対策優先に切り替えます
三大都市圏環状道路、国際コンテナ港湾、リニア新幹線など大型開発を安倍政権以前の水準に引き下げ、生活密着型の事業や、老朽箇所の改修など安全対策優先に切り替えます。農業予算も公共事業中心から価格・所得補償中心に切り替え、原発推進予算は全額削除して再生可能エネルギーなどの予算に切り替えます。
将来は「応能負担」の所得税改革をすすめます
最低保障年金の実現や高等教育を含めた無償化など、社会保障・教育の抜本的改革を行なう将来の段階では、多くの国民が能力に応じて負担する必要があります。経済改革の実行で、将来、国民の所得が増えた段階で、所得税の税率に累進的な上乗せをするなど、「応能負担の原則」に立った税制改革を行ないます。
〈2〉国民の所得を増やす経済改革で税収を増やします
大企業と株主優先の「アベノミクス」のもと、実質賃金は低下し、実質成長率は低迷し、とくに個人消費は民主党政権時代より落ち込んでしまいました。これでは、安定した経済成長も税収増も見込めません。日本共産党は、国民の所得を増やす経済改革をすすめます。
人間らしく働ける雇用のルールをつくり、大企業の内部留保を活用して賃上げをすすめます
残業時間の法制化、ブラック企業への規制強化、労働者派遣法改正など、雇用のルールをあらためます。400兆円を突破した大企業の内部留保を賃上げに活用するよう求め、最低賃金を今すぐどこでも時給1000円に引き上げ、1500円をめざします。
確保した財源を活用して、社会保障や教育の拡充をはかります
社会保障や教育・子育て予算を大幅に増やし、国民のくらしを立て直します。
社会保障では国保料の引き下げ、特養ホーム増設、介護職員の処遇改善など。
子育て分野では、30万人分の認可保育所増設、幼児教育・保育の無償化、保育職員の待遇改善(6000億円)など。
教育では、義務教育中の教育負担の解消、30人学級、高校授業料の完全無償化、大学授業料の半減と給付型奨学金の拡充など。
国民の所得を増やす経済改革で、安定的な成長を実現し、税収増を実現します
経済改革で国民の所得を増やせば、それが消費につながり、経済を安定的な成長軌道に乗せ、10年後には国・地方あわせて20兆円前後の税収増が見込めます。
くらしの充実と財政危機打開の両立をはかります
税制・歳出の改革、経済成長による税収増が実現すれば、国債発行額を増やさず、減らしていくことができます。これだけで財政赤字をゼロにすることはできませんが、安定的な経済成長が続けば、対GDP比でみた債務残高を減少させることは可能です。安倍政権のように、大企業・富裕層の優遇税制に手を付けずに「財政健全化」をはかろうとすれば、結局、消費税増税や社会保障の切り捨てをすすめることになり、ますます不況になって、財政危機を悪化させます。日本共産党は、消費税大増税にストップをかけ、社会保障や教育の財源を「消費税にたよらない別の道」で確保する「二つの改革」の旗をかかげ、奮闘します。
税制改革等による財源確保の見込み額 | |
大企業優遇税制(研究開発減税などの租税特別措置・配当益金不算入制度・連結納税制度)の見直し(タックスヘイブン税制の強化を含む) | 4.0兆円 |
法人税率引下げをやめ、中小企業を除いて安倍政権以前の水準に戻す | 2.0兆円 |
株式配当の総合課税、高額の株式譲渡所得の税率引上げなど富裕層への証券課税の強化 | 1.2兆円 |
所得税・住民税の最高税率を元に戻す、富裕層の各種控除の見直しなど | 1.9兆円 |
富裕税の創設、相続税の最高税率を元に戻す | 1.1兆円 |
被用者保険(厚生年金・健康保険など)の上限引上げ | 2.2兆円 |
為替取引税・環境税など | 1.6兆円 |
大型公共事業・軍事費・原発推進など歳出の浪費をなくす | 3.0兆円 |
以上の合計(当面の財源) | 17.0兆円 |
将来的には「応能負担」の原則に立ち、所得税の税率に累進的に上乗せ | 6.0兆円 |
将来分を含めた合計 | 23.0兆円 |