もとむら伸子(日本共産党衆議院議員)-
レポート

【16.03.16】衆議院国土交通委員会で、認知症患者の方の列車事故問題で安全対策を積極的に進めてこなかった政府の姿勢をただしました。

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  3月15日、衆議院国土交通委員会で、踏切道改良促進法、道路法の改定案の審議にかかわって、愛知県大府市のJR東海・東海道線「共和駅」構内の認知症患者の方の列車事故問題で安全対策を積極的に進めてこなかった政府の姿勢をただしました。

  2007年12月、認知症の男性=当時(91)=がJR東海の共和駅構内で電車にはねられて亡くなりました。この事故にかかわって、最高裁は3月1日、遺族に対して約720万円を求めたJR東海の損害賠償請求を棄却しました。

 ご遺族の方々は当初から、亡くなった方は、「共和駅」ホーム端のフェンスがしまっていれば、事故にあわず、命を失わずにすんだ、「被害者」だと主張していました。

 「父はけっして社会に危害を加えようとしたわけではない。加害者のまま裁判を終えてはならない」との思いで、8年間もの間、裁判でたたかってこられました。

 本来は被害者である認知症患者の方を一律に危険視し、患者の方と家族の方々を偏見に巻き込む不当なものだと批判しました。
また、ホーム端のフェンスの扉が施錠されておらず、JR東海の安全対策が不十分だったと指摘し、事故に遭った方やご遺族、支援される方々、手厚く介護すればするほどその責任が問われるというおかしなことがないように、事故にあわれた被害者の方への補償を含む仕組みをつくるべきだと求めました。

 さらに2015年3月期の連結決算で2641億円も純利益を上げたJR東海と8年間も裁判をたたかった遺族の思いを代弁し、「賠償請求するという対応を改めさせるべきだ」と追及しました。石井啓一国交相が「各鉄道事業者が判断すべきだ」と答弁。
「そんな態度では事故に遭った方もご遺族も救われない」と強調しました。

 2014年4月24日の2審の名古屋高裁判決では、次のように、JR東海の責任に言及しています。

「社会の構成員には,幼児や認知症患者のように危険を理解できない者なども含まれており,このような社会的弱者も安全に社会で生活し,安全に鉄道を利用できるように、利用客や交差する道路を通行する交通機関等との関係で、列車の発着する駅ホーム、列車が通過する踏切等の施設・設備について、人的な面を含めて、一定の安全を確保できるものとすることが要請されているのであり、鉄道事業者が,公共交通機関の担い手として,その施設及び人員の充実を図って一層の安全の向上に努めるべきことは、その社会的責務でもある」。
 「利用客等に対する監視が十分になされておれば、・・・フェンス扉が施錠されておれば、本件事故の発生を防止することができたと推認される事情もあった」
もっともな指摘で、JR東海の安全対策が不十分だったと言わざるを得ません。

  JR東海の責任とともに、「鉄道事業者に対して積極的な安全対策を求めてこなかった政府の責任は大きい」と、▽ホームドアなど転落防止の方策▽狭いホームの改善▽無人駅をなくす▽バリアフリー化―など早急に計画的に進めさせるべきだ、認知症患者の方の列車事故をうけて、もっと駅や踏切など安全対策を進めるべきとの声も多く、その声にしっかりと答えた国土交通行政を進めるべきと追及しました。

  鉄道局長からは、危機感をもって積極的に安全対策をすすめるような答弁がなく、とても残念でした。

 宇都宮LRTの問題も取り上げました。

 現在、宇都宮市と芳賀町と宇都宮ライトレール株式会社が、軌道運送高度化実施計画(案)を国土交通省に出しています。

 軌道運送高度化実施計画(案)では、LRTの線路が地元の平石中央小学校のそばの道路と平面交差し、路面電車の法定最高速度である時速40キロをこえて、将来は50キロ、専用走行区間では70キロで走行させるとしています。

 「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」が「鉄道は道路と平面交差してはならない」と規定して踏切の新設を禁止しています。

 3分に1回、小学校のすぐ近くを通る計画で、住民の皆さんや保護者の皆さんが子どもたちが危ないと声をあげているのに、今の計画はおかしいと追及しました。
 さらに、LRTの線路に沿って、フェンスがつくられると、避難所である平石中央小学校への最短ルートが遮断されると強調。安全と避難ルートを確保するために、立体交差を望んでいる住民の皆さんの声も紹介しました。
これから新しく作るものは、認知症の方、障がいをもった方、多動の子どもさんでも安全が確保できる構造にしなければならないことも強調し、「国が補助金を出し、出資する事業で人命が奪われることがあってはならない」と慎重な対応を求めました。
石井啓一国土交通大臣は、「安全で適切なものとなるよう、必要に応じて指導する。(現地調査も)機会があれば検討したい」と答弁しました。

 さらに、JR東海の御殿場線の踏切で、踏切の部分だけがせまくて、通学・通園する子どもたちや車いすの方などの安全のために御殿場市がお金をだすので拡幅したいと求めているのに、JR東海がダメだと認めない問題を取り上げました。

  鉄道局長からは「歩道がない等の場合は、緊急性を考慮して、踏切道の統廃合を行わずに拡幅を実施することができる」と答弁し、御殿場市とJR東海との協議の状況を把握して「必要に応じ指導したい」と答えました。
  認知症の方の列車事故をうけて、もっと駅や踏切、安全対策を強化するべきだという声は多く、その声にこたえた国土交通行政をしっかりと進めることを求めて、質問を終わりました。

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