“すべての被災者の生活と生業の再建”に国が全力をあげることを求めます
東日本大震災と福島原発事故から4年を迎えるにあたって
2015年3月11日 日本共産党幹部会委員長 志位 和夫
東日本大震災と福島原発事故から4年が経過しました。あらためて犠牲となられた方々に哀悼の意を表するとともに、被災者のみなさんにお見舞いを申し上げます。復興に向けてねばり強い努力を続けている被災地のみなさん、自治体のみなさん、そして被災地への支援を続けておられる全国のみなさんに心からの敬意を表します。
震災後に被災者が直面している困難への緊急対策を行うとともに、被災者の生活と生業の再建への支援の抜本的強化を求める
被災地では、4年が経過した今でも、23万人もの被災者が応急仮設住宅や借り上げ住宅などで不自由な避難生活を強いられ、震災関連死が3194人にのぼっています。震災から時が経過するほど、被災者の生活にさまざまな困難がのしかかり、被災者から希望を奪っていく事態が続いていることは重大です。
資材など建設費高騰が被災者の住宅再建の大きな障害となっています。被災地では、土地のかさ上げや移転先の高台の整備事業が続いており、やっと住宅建設を始められるという段階になりつつありますが、「この数年で建設費の坪単価が50万円から70万円になった」「資金が足りない」という切実な声が上がっています。円安と物価値上げ、公共事業のバラマキ、消費税増税――これら被災地での建設費高騰の原因をつくったのは、「アベノミクス」という安倍政権の経済政策にあることは明らかです。住宅再建への障害は、政府の責任で解決しなければなりません。
被災者生活再建支援金を300万円から500万円に引き上げ、対象を広げることをはじめ、国が住宅再建への支援を緊急に拡充することを強く求めます。災害公営住宅の遅れも深刻であり、建設促進が求められています。また、応急仮設住宅はカビの発生による健康被害、床板のゆがみなど、最低限の健康的な暮らしが脅かされており、改善・修繕が急務となっています。
震災関連の自殺や孤独死も増えています。医療、介護などを被災者の実情に見合って充実させなければなりません。被災者の医療費・介護保険利用料等の免除措置を国の制度として復活させるべきです。仮設住宅団地、復興公営住宅などでのコミュニティーの形成に取り組むことが重要なのに、サポート体制や支援員の縮小や廃止などの逆行する動きが出ています。阪神・淡路大震災で1000人を超えた孤独死の教訓も踏まえて、被災者に寄り添った支援の拡充が必要です。
事業の再建も正念場を迎えています。商店・商店街の再建に向けて、仮設店舗から本設への本格的な支援が求められています。グループ補助の充実・拡大、小規模事業者の支援、二重ローンの解決、販路の回復と人材確保など、事業者への直接支援を強化し、早期の事業再開と雇用確保を応援すべきです。
JR東日本は、被災した気仙沼線、大船渡線の復旧計画をいまだにつくっていません。市街地の中心部をとおるJR線の復旧計画がないことが、復興計画全体を遅らせる要因にもなっており、すみやかに復旧計画をたてるべきです。災害に乗じて地方路線を切り捨てたいというJR東日本の思惑を国は容認するのか、きびしく問われています。
復興の妨げになる政治の転換を――国の復興予算を縮小・削減し、被災地に負担増を求めることは許されない
消費税増税やTPP(環太平洋連携協定)など、安倍政権の暴走政治が、復興の大きな妨げになり、懸命にがんばっている被災者から希望を奪っていることは看過できません。
再建をめざす事業者に、仮設店舗から本設にしても、消費税増税や不況で商売が成り立つのかという不安がひろがっています。安倍政権が、米価大暴落を放置し、まともな対策をとっていないことは、震災からの農業復興にも大きな妨げとなり、「がんばって農業を再開してもやっていけるのか」という声があがっています。その上、TPP参加を強行すれば、被災地の基幹産業である農林漁業と食品加工や輸送をはじめ地域経済に大打撃となるのは明らかです。復興の妨げになる政治を抜本的に転換することを求めます。
さらに重大なことは、復興事業への国庫負担を減らし、被災地の負担を増やす動きを安倍内閣が強めていることです。国が決めた「集中復興期間」が終わる2016年度以降は「(現在の仕組みが)全部続くのは難しい」(竹下亘復興相)などと言い出しています。しかし、未曽有の大災害の復興が5年で終わるはずがありません。国が復興事業の負担を減らし、その分を被災地に付け回すなどということをやれば、被災地の復興がさらに遅れるだけでなく、各自治体が独自に行っている住宅再建や医療・介護の負担軽減などの住民のための支援策を圧迫することになります。まさに、安倍政権による復興妨害と被災者いじめの暴挙としか言いようがありません。2016年度以降も、被災者の生活と生業(なりわい)が再建され、被災地の復興が成し遂げられるまで、国が責任を果たすことを強く求めます。
原発事故の賠償打ち切りなど“福島切り捨て”政策を転換し、すべての原発被害者に、国と東電の責任で必要な支援を
安倍政権は、原発再稼働と一体で、賠償をはじめ被害者支援策を打ち切り、縮小させる動きを強めています。原発事故の被害という、とりわけ深刻な困難をかかえている福島にとって、加害者である国と東電が、賠償と除染に対する責任を果たしきることは、復興の大前提です。福島原発事故を「終わったもの」とするための“福島切り捨て”政策は、「オール福島」の願いを踏みにじるものであり、絶対に許すことはできません。
東京電力が示した、商工業者等への営業損害の賠償打ち切りの「素案」は、商工業者をはじめ県民の怒りに直面し、「見直し」を表明せざるを得なくなりましたが、賠償打ち切りの方針が撤回されたわけではありません。商工業の次は農業、漁業などが狙われます。営業損害の賠償打ち切りは、かろうじて維持している事業や雇用を損ない、福島復興の基盤を掘り崩してしまいます。賠償打ち切りの方針を撤回し、被害の実態に見合った賠償を継続することを強く求めます。
上からの一方的な「線引き」が被害者を分断し、新たな困難をもたらしています。いまだ12万人が県内外に避難しています。国による指定区域が解除されても、多くの被害者は、すぐに帰ることができません。それにもかかわらず賠償の縮小・打ち切りや、復興公営住宅の入居対象を指定区域によって条件から外すなどの切り捨て策がすすんでいます。安全な住宅の確保をはじめ、すべての原発被害者の希望にそって、必要な支援を行うことが、加害者である国と東電の責任です。
福島第1原発の事故収束と汚染水対策――「国が前面にでる」という約束を安倍首相は実行し、万全の対策をとることを求める
福島第1原発の事故は、収束するどころか、汚染水の漏出事故や労働者の死傷事故が相次ぐなど危機的な状況が続いています。最近でも、高濃度の放射性物質を含む雨水が、排水路を通じて港湾外に流出していることが明らかになりました。とりわけ重大なことは、この事実を知りながら、東電が1年近くにわたって情報を隠し続け、原子力規制委員会が何の対策もとってこなかったことです。この姿勢は県民の大きな怒りをかい、2月26日には福島県議会が全会一致で「断固抗議する」決議を採択しています。
安倍首相は、一昨年9月に、汚染水対策は「国が前面に立って責任を果たす」と述べましたが、「東電まかせ」が続き、相次ぐ汚染水漏れと情報隠ぺいという、最悪の事態が継続しています。国は、事故原因の究明と事故収束、汚染水対策を最優先の課題として全力をあげるべきです。国内外の英知を結集する体制を確立することが必要です。
安倍政権が、こうした福島原発事故の危機的な実態と痛苦の教訓をいっさいかえりみず、「オール福島」の切実な願いとなっている「福島の全10基廃炉」にも背を向けて、原発再稼働へと暴走していることは断じて許されません。
日本共産党は、原発再稼働に反対するという一点での国民的共同をよびかけ、その先頭にたつとともに、「原発ゼロの日本」をめざして奮闘するものです。
国民の命と財産を守るという政治の使命が問われている
東日本大震災からの復興は、国政上の最優先課題であるとともに、災害列島である日本で、国民の命と財産を守るために力を尽くすという政治の使命を果たすことができるかどうかの試金石となっています。
被災者の切実な要求と運動、自治体関係者の努力で、住宅や事業の再建、被災者の生活への公的な支援が拡充してきました。もちろん、それらはまだまだ不十分なものです。被災地からは、「自分たちが困っていることは、いまの制度のままでは、これからの災害でも繰り返されてしまう」という声もあがっています。被災者の生活と生業の再建のための支援策の抜本的な拡充をはかることは、東日本大震災からの復興を力強くすすめるうえでも、今後発生が予測される災害から国民の命と財産を守るうえでも、きわめて重要な政治的課題となっています。
日本共産党は、幾多の困難の中でも、一歩一歩前進してきた被災者のみなさんの歩みに心からの敬意を表するとともに、復興への力強い歩みを被災者のみなさんとともにすすめていきます。党としての支援活動もさらに継続していきます。
4回目の3月11日を迎え、東日本大震災からの復興のために、国民のみなさんとともに力を尽くす決意をあらためて表明するものです。