「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟の原告団長の中島孝さんからお話を伺う
5月16日、宿泊させていただき、お世話になった南相馬市の農家民宿「いちばん星」さんをあとにして、相馬市の「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟の原告団長の中島孝さんのところに向かいました。
「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟の原告団長の中島孝さんから、お話をお聞きしました。
中島孝さんは、相馬市内でスーパーを営み、震災直後から被災者の皆さんを支援してきた方です。
「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟では、2700人が原告になって、福島第一原発事故前の0.04マイクロシーベルト/hに戻してくれと原状回復を求め、精神的被害にたいし月1人5万円を求めていて裁判に訴えているそうです。
原告の皆さんは、「お金がほしいのではない。そんなもんはくれてやる。このままでは原発を止められない」―そんな思いで裁判をたたかっているそうです。
こうした被災者の皆さんの思いを無視し、3月25日の福島地裁での口頭弁論で、東京電力は、驚くべき理由で原告の訴えを拒絶したそうです。
◆東電の主張―その1
原告の原状回復要求で想定される金額は、あまりに莫大。1企業が実現するのは不可能だから却下すべき。
◆東電の主張―その2
住民が年間20ミリシーベルト以下の放射線を受けたとしても、法的権利が侵害されたと評価するのは困難だ。喫煙、肥満、野菜不足よりリスクは小さい。
つまり、◆原状回復は金がかかりすぎて無理、◆年間20ミリシーベルト以下の被ばくには何の責任もない、というのです。
中島さんは、「20ミリシーベルト以下でも発がんや遺伝的影響はゼロといえないのが苦難の源だ」「東電は反省も責任の自覚もない」と怒りをあらわにしています。
福島市内の福島地裁の前の放射線量は、0.78マイクロシーベルト/hで、裁判官も4~5ミリシーベルト/年被ばくすることに。60キロ離れていて何の手立て、補償もないなかで、避難したい人でも避難できない現状もあると語ってくださいました。
震災直後の被災者支援の中で、漁業者の「母ちゃんたち」の悩みを聞くこともあったそうです。
相馬港の岸壁は修理などされていますが、放射能の問題で漁師の皆さんが漁にでられない状況があります。漁業者の「母ちゃんたち」と県庁交渉にもいったそうです。
今は、賠償金などが漁業者に支払われています。
被災した漁業者にたいし、パチンコをしているなど非難する声もあるそうです。しかし、ある漁業者は「中学を卒業してすぐに船にのった。船に乗れなくなって、文章をかいたり、読んだりすることもできない。仮設住宅にずっといると具合が悪くなっていく。だからパチンコに行くしかないんだ」と言ったそうです。
中島さんは、それぞれの人の立場にたって、思いを聴くことの重要性も指摘されました。
賠償に関して、いろいろ言いたいことがあっても東電は賠償を切ってくるのが怖くて、言いたいことをストレートにいえない状況もあるそうです。
中島さんは、私たちをとても歓迎してくださり、逆に激励してくださいました。
裁判でたたかっている皆さんの思いをしっかりと受け止め、愛知でも福島の皆さんの思いを実現させるために頑張っていきたいと強く思いました。
本当にありがとうございました!!
伊達市霊山町で市民発電所を運営する農民連・服部崇さんからお話を伺う
次に訪ねたのは、伊達市霊山(りょうぜん)町の太陽光発電所「福島県北農民連第一発電所」、「福島りょうぜん市民共同発電所」です。
中心的に運営している県北農民連事務局長の服部崇さんからお話を伺いました。
「福島県農民連の会員1400戸分の電気は、自然エネルギーで自給するぞ!」という目標で、105キロワットを発電する「福島県北農民連第1発電所」が2013年9月4日に売電をスタートさせたそうです。
予想以上に発電し、メンテナンスなどもあり、収支はとんとんになる予定とのこと。
発電所は、地元の中小企業の力を借りて作ったそうです。地域循環型の発電所です。
福島農民連の皆さんは、このほかにも二本松市で340キロワット、喜多方市で260キロワット、郡山市で250キロワットの中規模太陽光発電の計画を進めています。
そして、同時にスタートさせたのが、お隣にある「りょうぜん市民共同発電所」。
こちらは、福島県農民連とNPO法人「自然エネルギー市民の会」の連携で実現しました。
自然エネルギー市民の会は、「自然エネルギーはその地域のものであり、利益は地域に還元する」という立場から、市民との共同で自然エネルギーの普及に取り組んできた、大阪市に事務所を置く市民団体です。
1口20万円で100口分、2000万円の建設費用が集められ、設備容量50キロワット(一般家庭の約15~20世帯分)の太陽光パネルが設置されています。
発電した電気は、昨年から施行された再生可能エネルギー固定価格買取制度を利用して、全量、東北電力に1キロワットあたり42円で売電します。売電収益からは、出資者に20年かけて22万5200円の元本償還と収益が配当されるほか、毎年、収益の2%を福島復興基金として積み立て、その基金は自然エネルギー市民の会と福島県農民連で作る運営委員会で運用されることになっています。
2000万円の出資募集に対して、たった1カ月半の募集期間でその1.5倍、3000万円を上回る応募があったそうです。
問い合わせは、自然エネルギー市民の会の事務所がある大阪府をはじめ、福島県、東京都、北海道など全国から寄せられ、お断りしなければならなかった出資申し込みが続出したとのこと。
原発の電気を使いたくないという思いを市民発電所として実現させた福島農民連の皆さん、自然エネルギー市民の会の皆さんの取り組みは本当にすばらしいものです。各地にもっともっと広げていきたいです。
県北農民連事務局長の服部崇さんには、原発事故による農業への損害賠償についての状況もお伺いしました。
福島第一原発事故の前の収入と今の収入の差額分を補償させることは当然だが、果樹園の除染や放射線量を測定する検査費用などさまざま補償されていない部分が多くあるそうです。
「もう基準値以上の農作物は出ていないから必要ないと東電は言うが、福島第一原発事故は収束しておらず、何が起きるかわからない。生産者、消費者の皆さんの不安だって解消されていない。あんぽ柿も出荷スタートと報道されているが、まだ事故前の1割しか出荷されていない状況にある。事故後3年たてば、もとに戻ると思ってもらっては困る」と語られました。
ここでも形ばかりの「収束」、「復興」を描こうとし、被害を小さく見せようとする東電や政府の不誠実なやり方に頭に来ました。
服部さん、本当にありがとうございました!!
飯館村役場で日本共産党の佐藤八郎飯館村議のお話を伺う
その後、バスのなかで昼食をとりながら、飯館村に移動しました。
飯館村に近づくにつれ、放射線量はどんどん高くなり、車のなかでも1マイクロシーベルト/hを超える状況になりました。
飯館村役場につくと、日本共産党の佐藤八郎飯館村議が出迎えてくださいました。
飯舘村役場前のモニタリングポストは、0.44マイクロシーベルト/hでした。
しかし、そこから2メートル離れた地点で佐藤八郎飯館村議が計測すると1.82マイクロシーベルト/hと非常に高い線量。
飯館村役場のなかで、佐藤村議からお話を伺いました。
佐藤村議は、「なくせ!原発・安心して住み続けられる日本を~手と手をつなぎ、たたかい続けましょう~」というレジュメと資料を用意してくださいました。
飯舘村は、人口6,170人で、村の総面積の230㎢の約75%が山林。
農業が基幹産業で、お米、畜産、たばこ、野菜などを生産。福島県内で一番所得が低い自治体とのことです。
原発の事故が起きたあと、村では、南相馬市と双葉地方からの避難者受け入れがはじまり、3月16日正午での避難者受け入れ数は1610人となり、みんなでボランティア活動をして、食事などを提供。ところが、あとになって飯舘村が汚染されていたことが分かり、忸怩たる思いをしているとのこと。
飯館村長は、村内で講演をした長崎大学の山下俊一教授と一緒になって、” ただちに影響はない”、”避難しなくても大したことない”という立場をとっていたそうです。山下俊一教授は、年間100ミリシーベルトでも200ミリシーベルトでも大丈夫など講演。この講習会は4月16日まで続いた。
4月10日に、政府が放射線量を積算し検討して、避難が必要と指摘をしたが、村長が受け入れないと返事。しかし、政府が4月22日、村全域を「計画的避難区域」に指定し、そこから本格的な避難は始まった。
そんななかで、村民の行政不信の思いは強くなった。
民主党政権、自民党政権も同じで、被害者を分断する。線量で分断、賠償で分断、除染で分断している。
家族のなかでも離婚などが多い。
除染は、山林を進めない限り、難しい。山林から舞ってくるもので、すぐに戻ってしまう。防波堤みたいなものをつくるなども必要か。
子どもたちは、大人の言うことに右往左往させられて、誰にも言うことができないまま、布団のなかで泣いていたそうです。
年間5ミリシーベルトなら戻れると言うが、馬鹿にしている。
「帰村宣言」をしようとしているが、完全な除染もないのに出すべきでないと考えている。
大きな相手に立ち向かっているが、たたかい続けていきましょうと語られました。
ご自身もご自宅に帰ることができないなかで、お話いただき、本当にありがとうございました!
飯館村でもあちこちで除染作業が行われていました。事故前とくらべれば、格段に高い線量のなかでの作業に多くの皆さんが携わっておられます。
福島第一原発事故によって、深い苦しみ、深い悲しみを多くの福島の皆さんが背負っています。
そして、集団的自衛権行使容認など安倍自公政権の暴走をストップする運動も妨害されています。
原発推進勢力許すまじ!!
その思いを一層強くした福島訪問でした。
福島革新懇の小川さんをはじめ、皆様に大変お世話になりました。本当にありがとうございました。
森林地帯は、除染が行われておらず、高い放射線量になっています。
福島県内でも放射線量の差はさまざまでした。