中小企業は日本経済の根幹であり、「社会の主役として地域社会と住民生活に貢献」(中小企業憲章)する存在です。企業の99.7%を占め、働く人の3人に2人が働いている雇用の担い手です。電機をはじめ大企業が国内で大規模な首切りや生産拠点の閉鎖をすすめ、日本経済や国民生活への社会的責任を放棄しつつあるとき、地域に根をおろし、モノづくりやサービスでの需要にこたえ雇用を生み出している中小企業の役割はますます大きくなっています。
福島原発事故以来、原発から速やかに脱却することが喫緊の課題となっているとき、大企業が原発に固執しているのとは対照的に、中小企業の中から「この国は自然エネルギーの宝庫。それらを安全に効率よく使う技術の多くの萌芽は中小企業が持っている…小さく微力かもしれないが…原発がないほうが健全な国・地域づくりができるという対案を示し、それを実践していく」と高らかな声が上げられました(「エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議」)。農林水産業の振興と結んだ自然エネルギーの利活用で、日本経済・産業の新しい方向を切り開くことが切実な課題となっており、地域に根ざした中小企業の役割がいっそう重要となっています。ところが、歴代自民党政権の大企業中心の経済政策のもと、中小企業はこの20年間で520万から420万へ100万社も減少、廃業率が開業率を上回る事態が続いてきました。
いまこそ、“大企業がよくなれば中小企業もよくなる”という、大企業中心の経済政策を根本的にあらため、日本経済の多数者であり根幹である中小企業を中心にした経済政策への転換をはかるときです。
中小企業憲章に背く政治
中小企業経営者・自営業者は中小企業憲章の制定を求めて運動してきました。ヨーロッパ小企業憲章は「小企業はヨーロッパ経済の背骨である。小企業は雇用の主要な源泉であり、ビジネス・アイディアを生み育てる大地である。小企業が最優先の政策課題にすえられてはじめて新しい経済が到来を告げようとするヨーロッパの努力は実を結ぶだろう」と述べています。民主党は2009年の総選挙のマニフェストで「わが国経済の基礎である中小企業の活性化を図るため、政府全体で中小企業対策に全力で取り組む」と約束、政権成立後の2010年6月には中小企業憲章を閣議決定しました。
中小企業憲章は次のように述べています。
「中小企業は経済を牽引する力であり、社会の主役である…創意工夫を凝らし、技術を磨き、雇用の大部分を支え、くらしに潤いを与える」「政府が中核となり、国の総力を挙げて、中小企業の持つ個性や可能性を存分に伸ばし、自立する中小企業を励まし、困っている中小企業を支え、そして、どんな問題も中小企業の立場で考えていく。これにより、中小企業が光り輝き、もって、安定的で活力ある経済と豊かな国民生活が実現されるよう、ここに中小企業憲章を定める」
ところが、民主党政権は、この中小企業憲章をまじめに実行せず、公約していた「中小企業いじめ防止法」は提案もせず、2012年度の中小企業予算を復旧・復興関係経費を別にすると史上最低レベルに落とし、来年3月での金融円滑化法の廃止を決めるなど、自民党政府と変わらない中小企業政策をとってきました。
中小企業への期待が高まる一方、中小企業をめぐる経営環境はきびしいものとなっています。
7~9月期のGDPがマイナスにおちいるなど景気後退が鮮明となるなか、中小企業経営はいちだんと困難な局面を迎えつつあります。日本商工会議所の直近の調査では、9月時点ですでに穀物価格や燃料価格の高騰が収益を圧迫、業況の悪化を訴える声が広がっていましたが、10月の倒産件数は、東北、北陸、四国、九州で今年最多、全国的に前月比11%、前年同月比6%と5ヶ月ぶりに増加に転じています。電機産業の大リストラは広範な下請中小企業に深刻な影響をあたえかねません。
1.中小企業を守る緊急対策
(1)消費税の増税を中止し、免税点を引き上げます
2014年4月からの消費税増税は、多くの中小企業に廃業を迫りかねない脅威となっています。ただちに消費税の増税計画を中止します。また、消費税は、転嫁できない中小企業に身銭を切らせ、ついには税の滞納を余儀なくさせ、しかも高利の延滞税をとりたて、経営をおいつめています。消費税に依存する税制をあらため、将来は廃止を展望するとともに、当面、免税点を少なくとも従前の3000万円に、簡易課税の適用水準を2億円に引き上げるとともに、延納措置を認めます。
(2)被災地での生業、中小企業の復旧、復興を全面的に支援します
選別と切り捨ての「復興」ではなく、地域社会全体を再建します。地域に仕事と雇用を生み出す中小企業と生業の全面的な復旧・復興を抜きに地域の復興はありません。個々の事業者の施設復旧と事業立ち上げを支援する直接助成制度を創設します。当面、予算を抜本的に増やし、希望したグループ全体に「グループ補助金」がゆきわたるようにします。市町村が実情にあわせて支援できるよう「復興基金」を上積みします。
「二重ローン」問題の解決を妨げている金融機関主導の既往債務の買い取りを改めさせ、再生支援機構と地域金融機関への指導と支援などをつよめます。
復興に当たっての公共事業を地元中小企業が担い、地域に仕事・雇用・所得がまわるようにします。さまざまな要因で沈下した土地のかさ上げがすすまない条件下でも、仮設の水道をひくなど、営業が可能となる措置をとるようにします。
最低限である「原発被害の賠償ガイドライン」さえも守らず、賠償を東電が拒否する事例が生まれています。福島県外のサービス業への補償を認めないなどの中間指針の枠内に限定せず、原発事故がなければ生ずることのなかったすべての被害について補償の対象とするようにします。
(3)住宅リフォーム助成、トライアル発注、官公需など、中小企業に仕事を増やす施策を実施します
地方自治体が実施している「住宅リフォーム助成制度」は全国で533自治体に達し(全商連調査2012.7.1現在)、住環境の改善整備で住民に喜ばれるとともに、波及効果の大きさで地域経済対策としても大きな威力を発揮しています。国の緊急経済対策の交付金がきっかけとなった自治体も少なくありません。助成制度の具体的な設計と実施は、地方の自主性にゆだね、これを国が支援するようにします。
いま、環境でも、福祉でも、中小企業がモノづくり技術を生かし、社会的要請にこたえた製品やサービスの提供に努力しています。しかし、中小企業の場合、ブランド力がなく、なかなか普及できない場合が少なくありません。中小企業製品やサービスを購入して「試し」に使用しその評価を公にする「トライアル発注」(お試し発注)制度を国や地方自治体が取り入れ、中小企業の新分野開拓を支援します。
小規模工事希望者登録制度などを地域の小企業を対象に広げます。官公需が地域の中小企業の仕事起こしに役立つよう、運用状況を調査し、地元中小企業優先へ発注率を大幅に高めるなどの改善をはかります。
(4)地域経済を支える中小企業を支援し、雇用を確保し、くらしをまもります
地域では、第一次産業である農林水産業、これと結んだ中小商工業が経済の要となって地域の経済循環を担い、地域の雇用とくらしを守っています。
とりわけ、地域に眠る資源を活かした中小企業の自然エネルギーの利活用への取り組みを支援することは、脱原発のためにも、地域経済振興のためにも大きな意義を持っています。
ヨーロッパでは、域外からの石油・天然ガスの「輸入」に代わり、地域の森林や牧草、太陽光や太陽熱、風力を活用してエネルギーの自給自足を実現し、地域で仕事と雇用、所得を生み出し、地域内経済循環を発展させている地域が次々生まれています。日本でも、各地でこうした挑戦が始まっています。
こうした中小企業のとりくみや起業を、地方自治体のイニシアチブのもと、市民や金融・研究機関が連携して支援できるよう、基金の設置、独自の融資制度の確立など国の対策を強めます。地域固有のエネルギー源(太陽光・熱、風力、小水力、地熱、林業や畜産のバイオマス・エネルギー)など自然エネルギーの利活用は地域に優先権をあたえるようにします。建築・木工品などの需要に敏速・的確にこたえる林業と流通システムの構築、バイオマス・エネルギーの活用への支援、小水力を容易に利用できるように省庁の許認可権を自治体に一本化するなど水利権の運用改善などをすすめます。
(5)「日本の宝」―町工場を守るため、固定費補助などの緊急・直接支援をおこないます
町工場は、金型・成形・切削・研磨・プレス・熱処理・メッキ・鍛造・鋳造など、基盤技術の集積を形成している日本独特の中小企業・自営業者のネットワークであり、創造と技術革新の「苗床」です。
電機などの大規模なリストラが、苦境にある町工場をさらに追い詰めることになりかねません。「日本の宝」である優れた技術・技能が失われることは、大企業や日本経済全体にとっても大きな損失であり、何としても防がなければなりません。
町工場の固定費の負担軽減のため、リース料の支払い猶予を広げるとともに、機械設備のリース料や借り工場の家賃に対する直接補助を実現します。
東京都大田区で実施されたような自治体独自の緊急・直接の支援策「ものづくり経営革新緊急支援事業制度」を国としても支援し、モノづくり集積地への支援を強めます。
(6)中小企業金融円滑化法を延長し、中小企業への資金繰りを確保する
中小企業をめぐる経営環境の急速な悪化が予測されており、金融円滑化法の2013年3月の打ち切りは中小企業の資金繰りの破綻を招きかねません。金融円滑化法は当面延長するとともに、地域と中小企業への資金供給、仕事づくり支援などについての金融機関のとりくみを評価(アセスメント)する「地域金融活性化法」を制定します。
2.中小企業憲章を活かし、中小企業を第一にすえた政策を実行します
1.大企業と中小企業の公正な取引を保障するルールをつくります
(1)下請け取引を適正化し、「単価たたき」など不公正な取引をやめさせます
下請法違反はこの5年間増え続け、2010年6500件を超えるまでになっていますが、是正勧告は毎年10数件に過ぎません(公正取引委員会年次報告2011年版)。公正な取引を実現するために抜本的な改善が必要です。
適正な単価を保障するため、「振興基準」を実質化します……下請振興法は、下請け単価は、「下請中小企業の適正な利益」を含み、「労働条件の改善」が可能となるよう、親企業と下請け企業が「協議」して決定しなければならないと定めています(同法第3条「振興基準」)。「振興基準」に照らして取引の実態を総合的に調査し、それをもとに「振興基準」を実質化するとりくみをすすめます。
「主導的に検査に入る」しくみをつくるなど下請け検査を改善します…… “申告待ち”“書面調査頼み”という現在の下請け検査のやり方を転換し、抜き打ち検査など主導的に検査に入るシステムをつくります。そのために「下請けGメン」の設置など、検査官の拡充を行います。
罰金を引き上げ、親会社の挙証責任を強化します……下請代金法の課徴金などの罰則を強化するとともに、被害救済の違反金制度(被害額の3倍等)を創設します。アメリカには、不公正取引による損害額の3倍を賠償請求できる仕組みがあります(クレイトン法4条)。契約書の作成や単価決定の交渉記録の保存を親企業に義務付けるなど、下請代金法違反ではないことを立証する親企業側の責任を強化します。資本金規模によって適用範囲を限定する現行制度を見直し、発注元企業や元請け企業までさかのぼって不公正取引の調査等ができるようにするなど、下請け2法の改正・強化をすすめます。
(2)「優越的地位の濫用」をなくすため、独占禁止法を強化します
大規模小売業者と納入業者との取引や、荷主と物流事業者との取引などで、「買いたたき」などの不公正な取引が数多く存在しています。
下請代金法は独占禁止法の特別法であり、下請代金法の適用がなくても、「親法」である独占禁止法に戻って不公正な取引を取り締まることが可能です。独占禁止法の厳格な運用や課徴金の引き上げなどの改正・強化によって、中小企業にかかわるすべての取引について、大企業による「優越的地位の濫用」をなくしていきます。
「買いたたき」などの不公正な取引で、親企業が下請け企業を締め上げるようなやり方が横行しているのは世界でも日本だけです。日本にしか見られない下請け取引の異常をなくすことをめざします。
(3)大型店の身勝手をゆるさないルールをつくり、商店街・小売店を活性化します
「大型店・まちづくりアセス」を義務付けるなど、まちづくりのルールをつくります……大型店の身勝手な出店・撤退は、地域の商店街・小売店を衰退させ、各地で「買い物難民」を生むなど、地域の存亡にかかわる問題を引き起こしています。欧米では、自治体が大型店を規制するルールが各国で具体化されています。大型店の出店・撤退等による生活環境や地域経済への影響評価と調整・規制を行う「大店・まちづくりアセスメント」などのルールをつくります。規制対象となる大型店の床面積を現行の1万平方メートル超から3000平方メートル超にするなど、「まちづくり3法」の抜本改正をすすめます。
(4)「フランチャイズ適正化法」を制定し、加盟店の経営安定をはかります
フランチャイズ形式の取引・経営で働く人は21万人、売り上げは21兆円にのぼりますが、ここには、日本の「ルールなき資本主義」の闇があります。本部の加盟店にたいする関係では、24時間労働の強制、ロイヤルティーという名の不当な利益の吸い上げ、値引き販売の禁止、近隣への出店、一方的な契約の打ち切りなどの優越的地位の濫用、著しく不公正な関係が横行しています。
加盟店に本部との交渉権を保障し、契約内容やロイヤルティーの適正化などを盛り込んだ「フランチャイズ適正化法」を制定します。
(5)実体経済に貢献する金融に転換し、中小企業の経営を支えるルールをつくります
「地域金融活性化法」を制定し、資金繰りを円滑化します……短期のもうけを最優先するアメリカ型の金融自由化路線を見直し、中小企業をはじめ実体経済に貢献する金融へ転換します。メガバンクをはじめとした貸し渋り・貸しはがしをやめさせます。「地域金融活性化法」を制定し、金融機関の地域への貸し出し状況を公表させるなど、資金供給を円滑化するルールをつくります。「自己資本比率」一辺倒による金融機関の評価を改め、中小企業や地域への貢献度などを評価します。短期的な経営指標に基づく債務者区分を改め、「不良」債権、「要注意」債権などの不当な呼び方をやめさせます。
信用保証などのあり方を見直し、政策金融本来の役割を果たさせます……すべての中小企業が使える「一般保証」制度に導入された「部分保証」を廃止し、全額保証に戻します。リスクに応じた保証料率をあらためさせます。「景気対応緊急保証」制度については、対象業種が10月から大幅に絞られ、しかも来年3月末で制度自体も打ち切られようとしています。対象業種を全業種に戻すとともに期間を延長します。代位弁済時に保証協会に財政損失が出ないように全額国庫負担とするなどの改善をすすめます。日本政策金融公庫などによる貸し渋りをやめさせるとともに、業務や組織形態など、政策金融全体のあり方を見直します。
2.本格的な中小企業振興策をすすめます
(1)中小企業予算を1兆円に増額し、経営支援を抜本的に強化します
中小企業予算を1兆円に増額します……国の中小企業対策費(当初)は、1967年に一般歳出比でピークの0・88%を記録して以来減少傾向にあり、2012年度は0・35%の史上最低水準に落ち込んでしまいました。中小企業に冷たい予算のあり方を転換し、当面、一般歳出の2%、1兆円程度に増額し、日本経済の「根幹」にふさわしい本格的な施策をすすめます。
地域に「中小企業センター」をつくり、中小企業者の要望にこたえる支援策を行えるようにします……中小企業の支援策は、省庁ごとの縦割り、単発・細切れで使い勝手が悪くなっています。申請手続きの煩雑さも大きな負担です。現行の支援策を改善し、経営者が使いやすい制度に改善します。
区市町村に「中小企業センター」をつくり、国の補助をつよめます。中小企業が必要なときに必要な情報や相談を受けられるように、中小企業の身近な場所に設置し、夜間開放など使いやすい運営をはかります。製品開発や販路開拓などを専門家が支援します。個々の企業では持ちえない最新設備を整備し、検査、測定、試作、技能訓練などが行えるようにします。中小企業からの「相談待ち」ではなく、市の職員や「センター」の相談員などが、直接中小企業や業者を訪問して要望を聞き、相談にのる体制をととのえます。
(2)地域経済循環の核である中小企業を支援し、雇用の増加、くらしの改善をはかります
農商工連携のとりくみを支援し、地元産物の利用をすすめます……地元の農林水産物などを活用し、その生産・加工・販売・流通など各段階で地域に仕事と雇用を生み出します。「農・商・工」連携のとりくみへの支援を拡充し、地元農水産物の給食材への活用、地元木材の公共事業などへの活用をすすめます。消費者と結んだ直売所・産直センターなどへの支援をつよめます。
「空き店舗」対策など、商店街・小売店の振興をすすめます……商店街・小売店を「地域の共有財産」と位置づけ、商店街振興対策予算を拡充します。「空き店舗」の借り上げ、改装費などへの補助を拡充します。お年寄り、障害者、子ども等の生活圏(ライフ・エリア。例えば小学校区など)を単位に、生鮮3品を買える店舗、商店街、学校、医療機関、保育施設や官公署、公共交通などを整備します。朝市、ポイントカード、共同配達など、自ら努力している商店街を支援します。
地場・伝統産業の産地・集積地への支援をつよめます……地域の雇用や文化の土台を担っている地場産業・伝統産業への支援をつよめます。ネットワークの強みこそ産地の競争力の源であり、それを生かすために、産地・集積地全体を「面」として支援する自治体ごとの振興計画をつくります。新製品・デザイン開発や他産業とのコラボレーションを支援し、常設展示施設の整備、インターネットの活用など販売支援をつよめます。
環境・福祉など、社会的ニーズにこたえた製品開発・販路開拓などを支援します……自然エネルギーの利活用や省エネ、環境や福祉、建築分野では、社会的要請にこたえた製品やサービス、建築などで、中小企業の挑戦がすすんでいます。わずかな風力でも動く小型風車、木質繊維の断熱材、リハビリ効果を高める「足こぎ車いす」の開発など、多彩な取り組みが行われています。
モノづくりでは、連携して社会的ニーズにこたえようとする中小企業のネットワークも広がっています。
こうした中小企業の取り組み―製品・サービスを国や自治体が率先して購入し、その評価を広く知らせ、海外もふくめ販路が広がるよう支援します。
日本古来の木造建築技術を見直し、大手ハウスメーカーに都合の良い「建築確認」審査の仕組みをあらため、地場の工務店による日本の木材を使った建築を支援します。
(3)生活密着型公共事業への転換をすすめ、「公契約法・条例」で人間らしい労働条件を保障します
保育所・特養の建設、学校・道路などの維持補修をすすめます……生活密着型公共事業への転換をすすめ、保育所・特別養護老人ホームの建設、学校・福祉施設の耐震補強、道路・橋梁(きょうりょう)の維持補修、個人宅の耐震補修・リフォームなどを支援し、中小企業の仕事と雇用の増加につなげます。
官公需を増やし、ダンピング競争をなくします……国と自治体の中小企業向け官公需発注比率を引き上げます。中小企業への発注率を高めるために、分離・分割発注をすすめ、「小規模工事希望者登録制度」の活用、ランク制の厳格実施などをすすめます。インターネットを利用して競り下げを競い合う「リバースオークション」には反対します。果てしないダンピング競争をなくすため、独禁法など現行のルールを厳正に執行するとともに、最低制限価格制度を導入して適正化をはかります。建設業法が定める元請け責任を厳格に守らせ、工事代金の未払いなどをなくします。
生活できる賃金などを保障する「公契約法・条例」を制定します……千葉県野田市では、2010年4月から全国初の「公契約条例」が施行され、市の公共工事等を受注した企業や下請け業者等は、市が定める賃金以上を支払うことが義務付けられています。発注する公的機関と受注者等の間で結ばれる契約(公契約)において、生活できる賃金をはじめ、人間らしく働くことのできる労働条件を保障する「公契約法」「公契約条例」の制定をすすめます。
(4)創業・開業を応援し、中小企業の財産である人材育成を支援します
積極的な創業・開業を応援し、研究機関等との連携をすすめます……ドイツ、イギリス、イタリア、アメリカ、韓国などでは、自営商工業者が大幅に増えているのに対して、日本では1980年比で3分の2に減っています。新規開業者が利用できる起業支援制度を拡充し、低利で返済猶予期間を備えた開業資金融資制度を創設します。大学、高等専門学校、専修学校、研究機関等との連携を促進します。
中小企業の財産である人材育成を支援します。経営者・団体間の交流を支援します……中小企業にとって、最大の財産はそこで働く人々です。若者や後継者が、実際に仕事を覚えるまでには時間がかかります。雇用を継続する経営者の努力への支援をつよめます。各分野のすぐれた技能者・職人の認定制度、報償金制度を整備・拡充し、すぐれた技術を継承します。経営者同士が交流できる場、各地の商店街や市場が交流できる場をつくります。同業種間、異業種間の交流を応援します。教育関係者等との連携を強め、中小企業の値打ち・役割が社会の共通認識になる環境をつくります。
3.中小企業を支援する税制と社会保障のしくみをつくります
(1)中小企業を支援する税制・税務行政に転換します
大企業優先の税制から中小企業・自営業者を支援する税制に転換します……消費税の増税計画を中止するとともに、消費税の延納措置を認め、免税点を引き上げます。所得税法56条を廃止し、事業主、家族従業者の働き分(自家労賃)を経費と認めます。法人税に累進制を導入し、中小企業の一定範囲内の所得については現行より税率を引き下げます。法人事業税の外形標準課税に反対します。事業用資産については、一定期間の事業承継を条件に、相続税の減免を認めるようにします。
「納税者憲章」を制定し、納税者の権利をまもります……消費税納税にあたっての仕入れ税額控除否認、機械類への償却資産課税の強化、倒産に追い込む差し押さえの乱発など、国と地方の過酷な徴税・税務調査が横行しています。そのうえ、納税者の権利を弱め、一方的に課税庁の権限をつよめる国税通則法が改悪されました。
経済協力開発機構(OECD)加盟34カ国のうち23カ国で、「納税者憲章」が制定されています。日本でも、「事前通知や調査理由開示の義務付け」、「第三者の立会人及び調査内容の記録や録音」、「生存権的財産の差し押さえ禁止」など、納税者の権利を保障する「納税者憲章」を制定します。
(2)国保料をはじめとした中小企業の負担を軽減し、共済制度等への支援をつよめます
国保料(税)を軽減し、人権無視の国保行政をあらためます……市町村国保の高すぎる保険料(税)が、業者のくらしを脅かしています。緊急に国の責任で国保料(税)を1人1万円値下げします。国保への国庫負担を増やして、誰もが払える国保料に引き下げます。滞納者への脅迫まがいの督促、情け容赦のない財産調査・差し押さえ、生活困窮者からの機械的な保険証とり上げなど、加入者の人権を無視した国保行政をやめさせます。出産や病気・ケガのときにも安心して休めるように、出産・傷病手当金の制度をつくります。
国保組合の国庫補助をまもり、負担軽減のとりくみを応援します……不況による生活悪化と健康破壊が深刻化するなか、業者が自主的に運営し、負担軽減や健康づくりにとりくむ、国保組合の役割はますます重要です。ところが、この間、建設国保の入院費無料化などの努力を攻撃する不当なキャンペーンが展開され、政府が国庫補助の削減を検討する異常事態となっています。国保組合への国庫補助をまもり、負担軽減・健康保持のとりくみを応援します。
社会保険料の猶予・軽減制度を整備し、公的支援が受けられるようにします……不況で経営難におちいった事業所が、社会保険料の事業主負担を払えず、その結果、滞納を理由に雇用調整助成金、信用保証、制度融資などの公的支援が受けられない事態も起こっています。経営困難な事業所の社会保険料を猶予・軽減する制度をつくり、企業の経営と従業員の社会保障を守るとともに、公的支援制度を利用できる環境をつくります。
小規模共済制度・中小企業退職金共済制度などを改善します。自主共済は、保険業法の対象外とします……社会保障の相次ぐ改悪で将来不安が増しているいま、中小企業の各種共済制度を充実させることが必要です。小規模共済制度や中小企業退職金共済制度などの改善をすすめます。「助け合い」の精神でつくられている「自主共済」は、保険業法の対象外とします。
中小企業が最低賃金を引き上げられる環境をつくり、引き上げに際しては助成を行います……適正な単価や納入価格の保障、過度な競争の規制、「公契約法」「公契約条例」の実現などによって、中小企業が最低賃金を引き上げられる環境をつくります。最低賃金の引き上げに際しては、雇用保険財政などを活用して、中小企業への助成を行います。
4.「中小企業憲章」を国会決議し、中小企業施策を総合的に見直します
中小企業・自営業者は、製造、建設、小売り、サービスなどあらゆる分野で大きな役割を果たし、雇用の最大の担い手であり、日本経済の「根幹」というべき重要な存在です。さらに、(1)短期的な利益よりも雇用や社会貢献を重視する、(2)利益を地域に還元し、域内循環の中核を担っている、(3)高いモノづくり技術をもつ経済・文化資源である、(4)地域に根ざして社会的責任を果たし、生き生きとした地域社会をつくりだしているなど、多彩な役割を果たしています。
この中小企業の役割が発揮できるようにと、中小企業団体の運動があり、中小企業憲章が閣議決定されました。しかし、中小企業団体が求めた国会決議にはいたりませんでした。閣議決定された憲章は、大企業に偏重した経済政策から中小企業を本格的に支援する政治への転換を明示していませんが、「大企業に重きを置く風潮や価値観が形成されてきた」と述べています。
中小企業憲章は、中小企業の役割を明確にし、「どんな問題でも中小企業の立場で考えていく」としています。今こそ、破たんした従来の中小企業政策を見直し、転換することが必要です。
(1)「中小企業憲章」にもとづき、中小企業基本法などを見直し、中小企業の声が国政に反映されるしくみをつくります
「中小企業憲章」にもとづき、中小企業基本法などを見直します……現行の中小企業基本法は、「中小企業対策も、弱者として保護する対策をとらず、中小の中から強者を育てていく」(当時の閣僚の発言)との観点でつくられたものです。この結果、中小企業の倒産・廃業に拍車がかかりました。「困っている中小企業を支え、どんな問題も中小企業の立場で考えていく」との見地から、大企業中心の経済政策を見直す第一歩として、中小企業基本法を改正します。
自営業者・小企業を支援する小企業憲章・小規模企業基本法を制定します……中小企業のなかでは、常用雇用者が20人以下(小売などは5人以下)の小規模企業が9割を占めています。中小企業の困難もこの小規模企業にとっていっそう深刻です。政府も、「“ちいさな企業”未来会議」を開催、小規模企業への支援策を検討し始めました。全国商工団体連合会は「日本版・小企業憲章(案)」を発表、小企業・家族経営の役割を正当に評価し、支援することを求めています。全国商工会連合会は小規模企業基本法の制定を求めています。
小企業への支援は、起業を広げ、国民の創造性・イニシアチブを発揮する環境をつくるものであり、税制、金融などでの支援措置をとります。
省庁横断的に中小企業施策を実施するために、「中小企業政策会議」をつくるなど、必要な法整備をおこなう……「縦割り」ではない横断的な中小企業政策をすすめるために、総理大臣のもとに中小企業・自営業者などの代表が参加する「中小企業政策会議」をつくります。同会議では、「憲章」実施の進ちょく状況等を検討するとともに、規制緩和など従来の政策が中小企業に与えた影響を調査し、施策に反映させます。省庁横断的に「どんな問題も中小企業の立場で考え」、施策を実行できるよう、法整備を行い、中小企業担当大臣を設置します。現在の中小企業庁の職員は約200人であり、公安調査庁約1500人の7分の1、宮内庁約1000人の5分の1にすぎません。中小企業庁を中小企業省に昇格させ人員を抜本的に増員します。
(2)地方自治体で「中小企業振興条例」を制定し、地域独自の活性化策をすすめます
中小企業数は約420万社にのぼりますが、一つ一つが多彩な個性をもち、固有の歴史的・文化的特徴を備えています。したがって、国が「中小企業憲章」に基づいて基本政策を実施することとあわせて、地域の実情に応じて中小企業施策を展開することが重要です。
「中小企業振興条例」を制定し、地域の実情に応じた施策をすすめます……2000年以降、80近い都県・市区町で「中小企業振興条例」(名称はさまざま。以下「振興条例」)が制定されており、中小企業振興に大きな力を発揮しています。各自治体で「中小企業振興条例」を制定し、その地域の中小企業施策の基本理念を定めます。
大阪府八尾市では、2002年に地元の大工場が撤退しましたが、前年に制定されていた「振興条例」を根拠に、障害者の雇用を確保するなどの成果をかちとっています。吹田市の振興条例は、大型店や大企業に「地域社会における責任を自覚し…中小企業者との共存共栄を図る」こと求めています。
全事業所実態調査を行い、施策に反映します……全国に先駆けて1979年に「振興条例」を制定した東京都墨田区では、制定の前年、係長級職員165人が、区内製造業9314社に自ら足を運んで実態調査(悉皆〈しっかい〉調査)を行いました。この調査で、「ひどい環境で、家族労働に支えられ、それでも税金を払っている。健康破壊や、長時間労働への対策・支援が急務」など、区長・職員の認識が一変しました。それまで中小企業対策は、商工部だけの「縦割り」行政でしたが、悉皆調査後は、福祉や教育を含む横断的事業として区政に位置付けられています。「全事業所実態調査」を行い、自治体が地域の中小企業の実態を把握し、得られた情報を施策に生かします。その際、商工施策だけでなく、福祉やまちづくりなど自治体の幅広い施策に反映させます。
経営者・業者などで構成する「中小企業振興会議」をつくり、中小企業の声を生かします……「振興条例」が単なる「飾り」ではなく、実際に役立つものになるためには、業者・金融機関・自治体職員などの当事者が「主役」となって実践をすすめることが不可欠です。北海道帯広市では、2007年に「中小企業振興基本条例」を制定した後、条例を具体化するために1年で74回に及ぶ議論を重ねました。その中で、経営者・業者自身が中小企業や地域の値打ちに「気づき」、工場誘致などの「呼び込み型」から「内発型」の地域振興に軸足を移すことが重要だという認識が広がっています。「振興条例」の推進体制として、経営者、金融機関、自治体職員などで構成する「中小企業振興会議」をつくり、中小企業の声を生かします。