7月6日、設楽ダム建設計画の土台である「豊川水系における水資源開発基本計画」(豊川水系フルプラン)の実態に即した見直しを求める要請を行いました。
要請書(下記参照)にもあるように、過大な水需要予測が、裁判のなかでも明らかになっています。
国土交通省は、“フルプラン設定から5年を経ているので、その後の最近の実績値を元に達成度を審議会において調べることにしている。第1回目を3月に行った(次回の日程は未定)。審議会では、計画当初の想定なども含め、変更する必要があるかどうかも検討される。どのような意見が出るかの予断は許されない”という趣旨の発言をしました。
事実をしっかりとみて、しっかりと議論し、実態にあった見直しが行われるようこれからも注視していきたいと思います。
農林水産省は最初、「既開発水量は、需要量ではない」と言っていましたが、農林水産省から出された資料を見せると、「既開発水量は、需要量であり、供給量」とわけのわからない回答をしました。
すでに造られている施設を使っても需要量だけしか供給できないと計算する仕組み???
さらに夏も含めて降水量が少なかった1947年の「既開発水量」が、より降水量の多い1968年の「既開発水量」よりも多い問題については、雨の降り方(有効水量)の問題などと強弁しました。
その点については、さらに追及していきたいと思います。
もっと国民の皆さんにわかりやすい説明をするべきですが、本当にわけのわからない計算方法です。
設楽ダム建設計画をやめさせるまで、がんばります!!
「豊川水系における水資源開発基本計画」(豊川水系フルプラン) の実態に即した見直しを求める要請書
2012年7月6日
国土交通大臣 羽田雄一郎 様
農林水産大臣 郡司彰 様
国土審議会水資源開発分科会豊川部会部会長 楠田哲也 様
日本共産党愛知県委員会
岩中 正巳
「豊川水系における水資源開発基本計画」(豊川水系フルプラン)
の実態に即した見直しを求める要請書
3月19日、「国土審議会水資源開発分科会豊川部会」が愛知県豊橋市で開催されました。
今回の開催の目的は、全部変更した「豊川水系における水資源開発基本計画」(以下、豊川水系フルプラン)が策定され5年が経過したため、計画の達成度などを点検するためであり、今後も引き続き部会が開催される予定だと聞いています。豊川水系フルプランの点検にあたっては、実態に即した科学的、客観的な検討を行っていただくために以下のことを要望します。
記
1、2010年6月30日、名古屋地方裁判所における「設楽ダム公金支出差止請求事件」の判決のなかでも、「豊川水系フルプランの基礎となった愛知県受給想定調査の水道用水及び工業用水の需要想定には、平成27年度における実際の需要量がその需要想定値に達しない可能性が相当高いという問題があることは確かである」と過大な水需要を見込んでいることを認めています。こうした判決の内容も踏まえ、実績値と連続性のない現在の需要想定値を見直し、実績値と連続性のある需要想定値を検討すること。
2、農業用水については、設楽ダムで新たに0.3㎥/s開発するという計画ですが、新規開発水量を決める計算式に使われる「既開発水量」を「166,683千㎥」」としていますが、これは、設楽ダム計画基準年である1968年の既開発水源である豊川用水と豊川総合用水事業の需要量です。これは、愛知県のホームページなどでも紹介されている算式、すなわち「既開発水量」には当然、すでに開発された水量(供給可能量)が用いられるべきであることにも反する明確な間違いであり、また実際の「既開発」の状態を無視しているという問題があります。
豊川総合用水事業の計画基準年の1947年は、2002年までの55年間で2番目の渇水年で、ダム計画基準年の1968年よりも降水量が少ない(農業年でみた場合でも2月~8月にかけてもより降水量は少ない)年ですが、その年の降水条件のもとで計画されている計画水量(197,100千㎥)に対し、豊川総合用水は2003年度から水源施設が満水になり、取水実績も上回っています。このことからも設楽ダム計画の根拠となっている「既開発水量」がすでに開発された水量の実態を反映していないことは明らかです。
また、新規開発水量を考える現在のモデルは、用水路、ため池等、および圃場(作物を栽培する田畑)からのみ成るモデルです。ところが、2002年に豊川総合用水事業が完成した後の現実の豊川用水のしくみは異なり、幹線用水路沿いに大きな調整池(約1000万㎥)をつくり、洪水導入(降雨後の河川流量の多い時期に、その時点で圃場が必要としない水を調整池に溜め込む)のしくみを取り入れたことにより、水供給能力は大幅に増加しました。
このことによって、雨の少ない時には、調整池にためた水が圃場に使われます。また、雨が多い場合には、水田に必要な用水量は増えませんが、もし栽培施設が増えて(実際には経営面積も減少傾向)、水需要が増えたときには、川から取水することは容易で、需要が増えれば、調整池の回転数が増えて、増えた需要に対応して水供給量は増加するように工夫されています。
したがって、「既開発水量」に使う数字は、現実にも合わない1968年の需要量ではなく文字通りすでに開発されている水量(供給可能量)に変更し、また「既開発水量」を計算するためのモデルは豊川総合用水事業の実態に即したモデルに変更することにより、必要な新規開発水量について科学的、客観的に検討を行うこと。