12月3日、愛労連交通運輸部会の皆さんが主催した「交通政策」産別交流会(安全・安心な交通運輸をめざす産別政策について)に参加させていただきました。
港湾、タクシー、トラック、鉄道、官庁で働く皆さんから現場で起きていること、法制度の改善・充実の提言などお聞かせいただきました。
名古屋港で働く全港湾の皆さんからは、3月30日に衆議院、3月31日に参議院で可決され、成立してしまった港湾法「改定」の問題、名古屋港で中古車や中古農機具から高い放射線量が計測され、労働者の健康被害にたいして心配の声が広がっており、国は安全基準を示してほしいとのご要望、他の港で荷主の責任になっているのに名古屋港ではコンテナ返却時に掃除・水洗いが運送事業者やドライバーの仕事になっている問題など出されました。
愛自交の皆さんからは、タクシー業界は、規制緩和によってタクシー台数が増えたことによって、ドライバーの皆さんの低賃金化、長時間労働、事故、健康被害などが増え、その実態が社会問題化するなかで、規制強化へと向かわせてきたこの間の運動の成果が報告されました。
2009年6月19日、タクシーの規制を強化するタクシー活性化法が参議院本会議において全会一致で可決成立。規制緩和の道路運送法「改正」が自公民各党の賛成多数で可決されてから9年、実施されてから7年余り後の規制強化へ大転換しました。
規制緩和反対をたたかい続けてきた愛自交さんはじめ自交総連の皆さんの大きな成果です。
このタクシー活性化法で名古屋周辺でも減車がすすみ、タクシードライバーの皆さんの手取りも上がりました。しかし、まだまだ若い人が働き続けることができないような賃金水準です。
来年9月末には、この特措法の期限が来てしまいます。期限が終わる前に、新しい法律をつくってほしい、とのご要望をいただきました。
建交労トラック部会の方からは、トラック労働者は、月600時間拘束(月30日20時間拘束ということ)の事例もあるほど長時間労働にもかかわらず、賃金(月給)が全産業の労働者の平均に比べて2万円安くなっていることなど命と健康を損なう過酷な労働実態であることをお話されました。
建交労の皆さんは、国土交通省、厚生労働省、適正化実施機関などに働きかけを繰り返し行っています。
自動車運転者の「改善基準告示」をILO第153号条約や同第161号勧告、厚生労働省の「過労死認定基準」などを生かして、法制度の強化を求めています。
(1)1日の拘束時間の限度を原則11時間以内にすること。
(2)1ヵ月の拘束時間については、原則248時間を限度とすること。
(3)休息期間は原則13時間以上(トラックにあっては車両内ベットでの休息を除く)とし、休息地については居宅もしくは駐車場、宿泊設備を完備した施設とすること。
(4)「改善基準告示」を実効性のある法律にすること。
また、大型車は、タコグラフの装着義務があり、高速料金が高く、80キロ/h制限のため、大型車にくらべ、タコグラフ装着義務もなく、高速料金も安く、100キロ/h制限の中型車に変えるケースも多い実態が報告されました。
建交労の皆さんは、運行記録計の装着を営業車全車種に義務化することを求めています。
働く皆さんの労働条件を左右する運賃をどこも調査していない問題があり、調査をして適正運賃の指標となる「標準運賃」などの設定を早急に行うことも求めています。
適正化実施機関(業界内で秩序維持を行う国土交通省の委託機関)は、トラックでは専任9人、兼務4人で、3年に1度事業所を回る程度になっている問題なども語られました。
鉄道の分野からは、国労の方が発言されました。JR東海では、尼崎で事故を起こしたJR西日本やJA東日本が導入した安全装置よりも機能が劣る装置を導入したことや安全教育が不十分であることなど語られました。また、青年労働者の労働時間、賃金の問題でも実態が報告されました。また、JR利用者の皆さんからの多くのアンケートをとり、2両から4両にさせた運動なども報告されました。
国土交通労働組合の方からは、経済産業局、地方整備局、環境事務所を対象とした出先機関の廃止問題について、震災により自治体組織が壊滅したときに、日常の業務があってこそ緊急時に国が対応できること、出先機関がなくなれば、手助けする要員も設備も縮小し、援助が不可能になってしまう問題が報告されました。
また、公務員給与引き下げ法案は、公務員給与の引き下げだけに留まらず、625万人の地方公務員や公務員準拠の民間に働く労働者の賃金に直接影響するといわれています。労働総研の試算では、この賃下げ法案が実施に移された場合、「家計収入の減少額」は3兆4千億円、「税収の減少」も5400億円にも上るといわれていることなどもお話されました。
交通にかかわる皆さんのご要望をしっかりと受け止め、前進させるために国会議員団の協力も得ながら私も全力をつくしたいと思います。
皆さん、本当にありがとうございました。
参考―穀田恵二衆院議員 港湾法及び特定外貿埠頭の管理運営に関する法律の一部を改正する法律案への反対討論
第177国会 衆議院国土交通委員会 2011年3月25日
私は、日本共産党を代表して、港湾法及び特定外貿埠頭の管理運営に関する法律の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
本法案は、新成長戦略に基づき、国際戦略港湾、すなわち京浜港、阪神港に港湾の整備予算を集中するとともに、港湾運営、経営までも民間会社に任せることができるようにするものです。
しかし、今行うべきは、東日本大震災により多大な被害を受けた港湾や漁港の復興、再生に優先的に財政を投入することであります。総事業費五千五百億円もの巨額の費用を注ぎ込む国際戦略港湾を推し進めるときではありません。そんなお金があるなら、まず被災者の救援、インフラ復旧に回すべきであります。
港湾で働く労働者を組織する全国港湾労働組合連合会と全日本港湾運輸労働組合同盟は、震災直後から救援、被災対策を行い、救援物資輸送に全力を挙げるとともに、現国会で審議されている港湾法の改正は行わず、その予算を損壊した港湾施設の復興に振り向ける措置をとることを提案しています。これが国民多数の声ではありませんか。
反対する第二の理由は、京浜港や阪神港に巨額の税金をつぎ込んで港湾整備を進めても、コンテナ貨物が集荷する保証はなく、地方港を抱える地方経済の衰退ばかりが進むからです。これは、この間、進めてきたスーパー中枢港湾プロジェクトの結果を見ても明らかです。今、アジア諸港との関係で必要なのは、国際競争力の名による競争優先ではなく、協調できる方向を探ることです。国際戦略港湾への一極集中政策を改め、地方の地域経済の活性化に資する港湾政策への転換こそ必要です。
反対する理由の第三は、港湾運営の民営化により、国民の財産、公共財である港湾が、特定の民間事業者のもうけの場として提供されることになりかねず、効率化、もうけ第一優先で、港湾の秩序ある運営と公共性を損ねることになるからです。これまでの民営化手法を含む規制緩和で、コスト削減競争が激化し、港湾で働く労働者に犠牲が押しつけられてきました。港湾運営会社による効率化優先の港湾運営や港湾運送事業への参入も想定され、さらに港湾労働者の雇用、労働条件が破壊され、深刻化することが懸念されます。
また、外国の資本による港湾支配への歯どめもなく、公有財産である港湾が投機の対象になることで、港湾の公共性と安全性が脅かされかねません。
以上、反対の理由を申し上げ、私の討論を終わります。