もとむら伸子(日本共産党衆議院議員)-
レポート

【10・10・07】名古屋大学副総長・理事の皆さんと懇談―「予算1割削減で大学は壊滅状態」―副総長が懸念

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 10月7日、名古屋大学を訪問し、杉山寛行理事(総務・入試・学生支援関係担当)・副総長、渡辺芳人副総長(研究・国際企画関係担当)と懇談をさせていただきました。
 八田ひろ子元参院議員、かわえ明美准中央委員も一緒です。

 国立大学法人の運営日交付金が2004年から削減され続けている問題での懇談です。名古屋大学は9月28日、運営費交付金確保を求める緊急声明を濱口道成総長名で発表しています。

 渡辺副総長は、毎年1%の減額が続き、6年前は運営費交付金のうち約60億円を教育現場に回せたのが、現在43億円になっているといいます。「教員の人件費、建物の維持費など削れない部分がある。このうえ10%シーリング(一律1割削減)をかけられたら、本質的に大学が壊滅状態に陥る」と危機感を表明。このままいけば、教職員の給与カット、授業料の値上げの議論にならざるを得ないとの見通しを示しました。

 杉山理事は、「高等教育の使命は人材育成」とのべた上で、奨学金の役割を説明。交付金の削減をはじめ奨学金の枠が減少すれば、経済的に大学にいけない家庭が増える懸念を表明しました。またノーベル賞を受賞するような研究成果にしても「元をただせば基礎研究から」と指摘し、「合理的な基盤的経費はどのくらい必要かというきちっとした議論があるべきだ」との考えを示しました。

 私は、2010年6月に出された「大学の危機打開へ、『学問の府』にふさわしい改革をすすめる日本共産党の提案」などの骨子を説明させていただき、お伺いしたご意見を必ず国会議員団にも申し伝え、国の政策に生かすことができるように、国会と愛知県内でがんばる決意を申し上げました。
 懇談をさせていただき、学術予算でも成長が止まりそうな国になっている現実を痛感しました。

大学の危機打開へ、「学問の府」にふさわしい改革をすすめる日本共産党の提案

                             2010年6月3日 日本共産党
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 わが国の大学は、かつてない深刻な危機に追い込まれています。各大学で教育・研究のための財政が枯渇し、地方の大学や中小の大学は存立さえ危ぶまれています。教員は資金集めに忙殺され、発表される学術論文数も減少しています。経済的理由で進学をあきらめる若者がふえ、研究者を志す若者が将来への希望を失うなど、大学の学長が「日本の学術は衰退する」と憂慮する重大な事態です。
 大学予算が先進国のなかで最低水準にとどまり、さらにこの10年来、旧政権が「国際競争力ある大学」を看板に、経済効率最優先の「大学の構造改革」(国立大学の法人化、大学の基盤的経費の削減と「トップ30」大学への資金の集中)を推進したからです。民主党中心の政権も、「事業仕分け」で、科学予算・大学予算を短期的な効率主義で縮減するなど、「構造改革」路線から転換する姿勢がみられません。
 この路線をさらにすすめて学術・教育を台なしにするのか、それとも「学問の府」にふさわしい改革に転換し、大学危機を打開するのかが、今、わが国の政治に問われています。

≪社会の知的基盤としての大学の発展を応援する政治へ転換を≫

 大学は、「学術の中心」(学校教育法)であり、わが国の知的基盤として社会の知的・文化的な発展、国民生活の質の向上や地域経済などに大きな役割をはたしています。とりわけ、大学が担っている基礎研究は、自然や社会へのより深い理解をもたらし、学術の全体が発展する根幹となっています。学術の衰退は社会の大きな損失であり、基礎研究が枯れてしまえば、政府がいうイノベーション(新しい社会的価値や技術の創造)も望むことができません。
 欧州では、大学の多くが国公立で国が手厚い財政負担をしています。大学進学率も上昇し、大学が国民に開かれた教育機関として充実しています。わが国は大学への財政負担が少なく、高学費のために大学進学率は5割余にとどまっています。しかし、NHKの「日本人の意識調査」によれば、国民の8割がわが子に大学・短大までの教育をうけさせたいと望んでいます。大学教育の充実は、国民の願いです。
 「構造改革」路線は、こうした国民の立場から大学の発展を応援するのではなく、大企業の「国際競争力」に役立つ大学をつくりあげるという、財界の要求にかなった改革を推進しました。経済的利益をうむかどうかをモノサシに、予算の削減と過度な競争を大学におしつけ、学術の発展そのものが危ぶまれる大学の深刻な危機をうみだしたのです。
 大学が、この危機から抜けだし、その本来の役割を全面的に発揮することは、21世紀の社会発展にかかわる国民的な課題です。そのためには、「構造改革」路線から転換し、「学問の府」にふさわしい改革をすすめること、すなわち、憲法の定める「学問の自由」と「教育をうける権利」の全面的な保障を根本にすえ、大学の自主的創造的な発展を応援する政治にすることが必要です。
 日本共産党は、この立場からの抜本策を提案し、その実現のために国民のみなさんとともに力をつくします。

≪日本共産党は提案します≫

1.大学の日常的運営に必要な経費(基盤的経費)の増額と基礎研究支援の拡充をはかり、じっくりと教育・研究できる大学へ条件整備をすすめます

 大学の教育・研究は、日常的運営に必要な経費として国が交付する基盤的経費、すなわち国立大学への運営費交付金や施設整備費、私立大学への国庫補助金によってささえられるものです。大学での研究は、個別の研究テーマごとに国が審査し、採択された大学や研究者に与える資金(競争的資金)によっても支援されます。
 「構造改革」は、基盤的経費を連続削減して大幅に減らすとともに、競争的資金のなかでも基礎研究に与えられる資金の科学研究費補助金(科研費)を抑制しました。また、国立大学には「5年間で5%の人件費削減」をはかるよう義務づけました。
 その結果、国立大学では、「教員の教育研究費が半減し、教材を私費で賄っている」、「人件費削減で教員が減り、一部の授業を閉鎖した」など、教育・研究に重大な支障をきたしています。
 私立大学では、大学の経常費にしめる国庫助成の割合は1980年の29%をピークに、わずか11%へ低下しました。高学費による学生負担の増大、教育・研究条件の国私間格差の拡大、中小規模の私立大学や短大での「定員割れ」による深刻な経営難などの事態がひろがっています。
 他方で、科学研究費補助金の獲得競争や、学費収入をふやすための受験生獲得競争が激化したために、教員がそれに忙殺されて、じっくりと教育・研究する時間がなくなっています。
 こうした事態を打開するため、基盤的経費と科学研究費補助金を大幅に増額することが必要です。

<国立大学の教育・研究をささえる基盤的経費を十分に確保する>

 国から国立大学への運営費交付金は、2004年の法人化から6年間に750億円も削減され、その額は小規模な国立大学24校分に相当します。国立大学を法人化する際に国会が採択した付帯決議は、「法人化前の公費投入額を十分に確保する」としています。これをふまえて、法人化以前の公費投入額をただちに回復し、増額をはかります。
 旧政権は、「効率化」を口実に交付額を減らす「算定のしくみ」をもとに、運営費交付金を削減してきました。このようなしくみを廃止し、各大学の教育・研究費や人件費などの予算額を、国が十分に確保するしくみに変更すべきです。さらに、各大学の特性や役割を尊重し、地方大学や文科系、教員養成系大学など財政力の弱い大学に厚く配分することも必要です。
 2005年の行革推進法で「2006年度以降5年間で5%以上の人件費削減」が国立大学にも義務づけられ、退職した教職員の不補充、非正規雇用の増大をひろげました。この義務づけを廃止します。政府が検討している図書館など大学の重要業務への市場化テストの導入に反対します。

<私立大学への「公費負担」原則を確立し、「経常費の2分の1助成」を実現する>

 私立大学は、わが国の学術研究の重要な一翼を担うとともに、大学生の74%を擁して高等教育に大きな比重をしめるなど、公共的役割をはたしています。しかし、学生1人あたりに支出される公費は、国立大学の14分の1ときわめて低く、そのため、学生の負担は国立の1.6倍(理工系では2倍)にのぼっています。
 私立大学がはたす公共的役割にふさわしく国の支援を強め、国立との格差を是正するため、私立大学にも国公立と同様に公費を支出する「公費負担」の原則を確立すべきです。この原則にたって、1975年の国会決議が求めた「私立大学の経常費の2分の1を国庫補助する」ことをすみやかに実現します。
 格差是正への第一歩として、公費負担によって私大学費の国公立並みへの引き下げにふみだします。そうすれば、国民の教育費負担が大きく軽減されます。さらに、大学進学率が向上して「定員割れ」の解決を促し、大学が「資金集め」「受験生集め」に翻弄されずに、安定した経営のもとで教育・研究にうちこめるという効果ももたらします。
 国庫助成は、国の裁量で配分を決める「特別助成」よりも、教職員数などにもとづいて配分する「一般助成」を増額し、その割合を高めます。中小私大、地方私大には増額配分すべきです。「定員割れ」の大学に減額・不交付する措置は、国の責任放棄であり、直ちに廃止します。

<公立大学への国の財政支援を強める>

 地方財政危機のもとで、公立大学でも教育・研究に大きな支障がうまれています。国の地方交付税における大学経費の削減、「三位一体改革」による国庫補助の廃止は、公立大学の財政基盤をいっそう弱めました。
 公立大学は、学術の進歩に貢献するとともに、住民要求にこたえた高等教育を行い、地域の文化、経済の発展に寄与しています。地方交付税の大学経費を引き上げるとともに、公立大学に対する国庫補助制度を確立するなど、国の財政支援を強めます。

<大学職員を増員し、教育・研究・診療への支援体制を充実させる>

 大学は、教員だけでなく、技術、事務、医療(附属病院)などの職員によって支えられています。しかし、各大学の人件費削減によって正規職員が減少した結果、過重労働やサービス残業がまん延する一方で、非正規雇用が増大しました。職員の減少が教員の負担も増大させ、その両面で教育・研究・診療に支障をきたす事態をうんでいます。大学の基盤的経費を増額して職員を増員するとともに、職員の雇用は正規が基本となるよう促します。

<国立大学附属病院の基盤整備をはかり、資金貸付事業の廃止を許さない>

 国立大学附属病院は、医師の養成と先端医療の開発を担い、地域の高度医療のとりでとなっています。しかし、度重なる診療報酬のマイナス改定、病院交付金の大幅削減などによって、医療機器の購入さえままならない経営危機に追い込まれています。新政権が4月の「事業仕分け」で国立大学附属病院への資金貸付事業を廃止するとしたことは、これに追い討ちをかけるものです。
 診療報酬を十分に引き上げ、病院への運営費交付金を法人化前の水準に直ちに戻すとともに、法人化の際に各大学が背負わされた多額の病院債務を軽減します。病院の施設整備に必要な資金は、従来どおり国が責任をもって確保する体制を維持します。

<基礎研究支援を拡充し、資金配分の偏りを是正して公正に配分する>

 国が大学や研究者などに交付する競争的資金は、この10年間で倍増しましたが、大幅に増えたのは新技術に直結する研究への支援や、一部の大学への巨額の資金投入(グローバルCOE資金)などです。それらの総額は3000億円に達するのに対し、基礎研究を支援する科研費は2000億円にとどまっています。とくに人文・社会科学への支援は冷遇されています。科研費を大幅に増額し、学術の釣りあいが取れた支援をはかります。
 科研費の配分では、旧帝大系など一部の大学への集中を是正します。科研費の獲得額が1位の大学と20位の大学で19倍の開きがあり、米国の2.5倍に比べても偏りは極端です。私立大学への配分は、米国の40%程度に対して、日本は16%です。科研費の増額によって、こうした配分の偏りも是正し、研究のすそ野を思いきってひろげます。
 公正な資金配分のために、科研費の配分機関である学術振興会の審査体制を充実させます。現状では、学術振興会に登録された大学教員が非常勤で審査し、論文数など業績中心に行っています。米国では、資金配分機関であるNSF(国立科学財団)に520人の科学者が常勤で雇用されて、専門的審査をしています。わが国も、科学者で常勤の審査員を大幅に増員し、将来性ある研究、萌芽的な研究を見極める「目利き」のある審査を充実させます。
 先端的研究への資金や「グローバルCOE」など大型の競争的資金については、日本学術会議をはじめとする専門家による独立した資金配分機関を新たに確立します。数年間にわたって億単位の巨額の資金を特定の大学、研究組織に投入するものだけに、配分の決定を文科省に委ねるのではなく、こうした独立した機関が慎重で公正な評価にもとづいて配分を決定するとともに、審査内容も公表します。

2.大学の自主性を弱めた国立大学法人制度をみなおし、大学の「生命」といえる“自治と民主主義”を保障します

 国立大学は、2004年に法人化されて最初の中期目標期間(6年間)が終わり、第2期目を迎えました。その節目にあたって、法人化がもたらした現状と問題点を検証し、大学関係者の意見を尊重して、法改正を含む制度の抜本的見直しを行うことを提案します。

<国立大学法人制度を、大学の自主性を尊重した制度に改める>

 国立大学法人制度は、大学への国家統制を強めるしくみをもつことが、当初から大きな問題になってきました。これを以下のように是正し、大学の自主性を尊重した制度に改めます。
 (1)大学の中期目標を国が決定し、その達成を大学に義務づける制度は、「学問の自由」を脅かしています。大学が中期目標にしばられるため、長期的な視野にたった教育・研究が軽視されてきました。どのような目標・計画をたてるかは、大学の自主性にゆだね、国に対しては届出制とします。
 (2)大学は、中期目標にもとづいて、毎年の年度計画とその業績を国へ報告し評価をうけ、さらに中期目標期間(6年間)の業績を報告し評価をうけます。6年間の業績評価はランクづけされ、評価が低い大学ほど予算が削減されました。このしくみが大学の自主性を弱めるとともに、大学に膨大な労力と時間を費やさせています。こうした評価制度は廃止します。大学評価については、別途、文科省の認証を得た第三者機関が、「大学の質保証」のために全大学を対象に評価を行っています。この「認証評価」制度だけに限定します。

<学長・理事長の独断専行をうまない民主的な大学運営制度を確立する>

 学長・理事長が大学経営に責任をもち、リーダーシップを発揮することは、実行力ある大学運営に必要です。しかし、それが独断専行となればかえって教職員の意欲をそぎ、大学の活力は低下します。国立大学法人制度には、それを防ぐ機能が欠けています。私立大学では、理事長のワンマンによる乱脈な経営によって、財政困難に陥った大学もあります。
 こうした独断専行をうまない大学制度の確立が必要です。国立大学法人法、私立学校法を改正して、「大学の重要事項を審議する」(学校教育法)教授会の権限を明確にし、学長の選考にあたって教職員の選挙を尊重する制度を導入します。さらに私立大学について、財政を全面的に公開し、監事を評議員会が選任するなど、財政のチェック機能を強めます。

3.大学でお金の心配なく学びたい、将来に希望をもって研究したい。この願いを実現します

 経済危機のもとで大学進学をあきらめる若者が急増するなど、憲法の定める「ひとしく教育をうける権利」が著しく侵害されています。低所得層の進学率が富裕層の半分に落ち込むという「教育格差」もひろがりました。「ローン」化した奨学金は、膨大な返済額の借金となって卒業後の重い負担になっています。高校の授業料無償化(私立高校は就学支援)が実現したもとで、大学も無償化にふみだすべきです。
 また、大学院博士課程を修了しても安定した研究職につけず、大学・研究機関のポストドクター(ポスドク=短期雇用の博士研究員)や大学非常勤講師など、不安定な雇用を繰りかえす若者が増えています。研究者としての夢をもてない現実に、大学院博士課程への進学者も減少しています。学術の継承さえ危ぶまれるこうした事態は、社会の発展をそこなう重大な問題であり、解決が急がれます。

<高等教育の段階的な無償化にふみだす>

 国際人権規約は第13条2項で高校と大学の段階的な無償化を定めています。この条項を留保しているのは、日本とマダガスカルだけです。鳩山首相は1月の施政方針演説で、大学の無償化条項について「留保撤回を具体的な目標とする」ことを表明しました。直ちに留保を撤回し、無償化にむけた学費負担軽減の一歩を踏み出すよう求めます。
 無償化にむけて、“学費は教育を受けるものが負担する”という「受益者負担」原則を撤廃し、高等教育は国民の権利であり、その費用は公費で負担することを原則にします。国公立大学の授業料標準額を段階的に引き下げ、私立大学には国立との差額を補てんするための国庫助成や私立大学生への直接助成をおこないます。

<授業料減免の拡充、給付制奨学金の創設と貸与制の返済条件緩和をはかる>

 低所得層の進学機会を保障するために、年収400万円以下の世帯に入学料と授業料を国公私立の区別なく免除する制度をつくります。大学合格直後に貸与を受けられる「入学支援金制度」や、親の失職など家計が急変しても学費未納で除籍や退学とならないよう支援する授業料免除も創設します。
 奨学金は、だれもが安心して教育をうけるための制度です。その目的にふさわしく、抜本的な改善をはかります。有利子制度をすべて無利子に戻し、国公私立間で偏りのない配分にします。民主党政権が「検討する」としている給付制奨学金を、ただちに創設します。

 奨学金の返済は、年収が一定額(300万円)に達してから行い、収入がこれを下回った場合には中止する制度を創設します。多額の延滞金や利息を猶予するなど、柔軟な返済計画をもてるようにします。滞納者への制裁をつよめる「ブラックリスト化」を中止します。

<大学・研究機関への人件費削減の義務付けを撤廃し、若手研究者の採用をひろげる>

 若手研究者の深刻な就職難の原因は、院生倍化政策の受け皿を国がつくらなかったことです。とりわけ、国の人件費削減政策のもとで、大学や独法研究機関が新規採用を激減させたことが事態を深刻にしました。
 大学教員にしめる35歳以下の割合は13%に低下し、将来の学術の担い手が不足しています。わが国の大学教員数は学生100人あたり6.2人で、イギリスの7.6人、ドイツの9.0人に比べても多くはありません。こうした現状からも大学教員の大幅な増員が必要です。
 国立大学法人が3年間に減らした人件費だけでも、若手教員1万5千人の給与に相当します。私立大学の学生100人あたり教員数は、国立大学の約半分にすぎず、これを同じ水準にまで増やすには10万人の教員が新たに必要となります。国が国立大学や独法研究機関に義務づけた人件費削減を撤廃するとともに、国から国立大学や独法研究機関への運営費交付金、私立大学への国庫助成を大幅に増額し、若手教員・研究者の採用を大きくひろげます。

<博士が能力をいかし活躍できる多様な場を社会にひろげる>

 大学院を修了して博士となった若者が、社会の多様な場で活躍できるようにすべきです。そのために、大学以外の公的機関の専門職にも博士の採用をひろげます。国家公務員や地方公務員の大学院卒採用枠を新設し、学校の教師や科学に関わる行政職、司書や学芸員などに博士を積極的に採用します。
 民間企業の研究開発職にしめる博士の割合は3.8%にすぎません。これを10%に引きあげるだけで3万人以上の博士の雇用が増えます。博士を派遣や期間社員で雇用する企業に対して正規職への採用を促すとともに、大企業に対して博士の採用枠の設定を求めるなど、社会的責任をはたさせます。

<若手研究者・女性研究者の待遇改善をはかる>

 大学院生、ポスドク、専業非常勤講師など若手研究者の劣悪な待遇を改善します。
 ポスドクなどの研究者がいだく不安は、雇用の不安定です。大学や独法研究機関が、期限付きで研究者を雇用する場合に、テニュアトラック制(期限終了時の審査をへて正規職に就ける制度)をさらに発展させ、期限終了後の雇用先の確保を義務づける制度を確立します。
 研究費支援では、若手研究者に一定額の研究費を国が支給する特別研究員制度を大幅に拡充します。とくに、博士課程院生には6.4%しか適用されていない現状を改善し、20%まで採用を増やします。また、大学院生に給費制奨学金を創設します。
 専業の大学非常勤講師やポスドクに対して、常勤の教員・研究員との「同一労働同一賃金」の原則にもとづく賃金の引き上げ、社会保険への加入の拡大など、均等待遇の実現をはかります。
 出産・育児・介護にあたる研究者にたいする業績評価での配慮、育児休暇を取得した場合の不利益あつかいの禁止、休職・復帰支援策の拡充、大学・研究機関内保育施設の充実など、女性が研究者としての能力を十分に発揮できる環境整備を促進します。文科省が実施していた「女性研究者支援モデル育成」の採択枠を大幅に拡大し、保育所の設置・運営も経費負担に含めるなど利用条件を改善します。

4.大学への公費支出を欧米並みにひきあげます

 大学の危機をうみだした根本的な要因は、大学関係予算が先進国で最低水準にとどまっていることです。「大学予算を欧米並みに引き上げよ」――大学関係者のこの積年の要求に、今度こそ政治がこたえなければなりません。学術、教育の発展は「国家百年の計」であり、将来をみすえた大学への投資こそ、次代を担う若者を育み、21世紀の社会発展に貢献するものです。
 その立場から、例えば、大企業への研究開発減税をもとに戻すことで、5000億円の財源ができます。科学技術関係予算のうち防衛省の軍事研究予算、文科省の高速増殖炉開発予算などの不要・不急な経費を削減すれば、1500億円を捻出できます。
 欧米並みの大学予算を確保するために、日本共産党は全力をつくします。

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