日本共産党の市田忠義書記局長が4月20日、参議院環境委員会で「環境影響評価法の一部を改正する法律案」の審議のなかで愛知の設楽ダムの問題を追及しました。
設楽ダムは、国土交通省の直轄ダムのなかで法に基づいたはじめての環境アセスが行われたダムです。
以下、議事録(未定稿)を掲載させていただきます。
日本共産党 市田忠義参院議員の質問議事録(未定稿)
2010年4月20日 参議院環境委員会
○市田忠義君 今日は、住民意見のアセスへの反映と科学性、客観性を持った審査の必要性について質問します。
愛知県の豊川水系豊川の河口から約七十キロメートル上流に計画されている設楽ダム、ここは国土交通省直轄で初めて法に基づくアセスを実施したダムであります。当時の会見で同ダム工事事務所の所長は、法に基づき従来より踏み込んだ環境調査、予測をしたつもりだと述べておられます。実際はどうかと。
まず、設楽ダムの概要について確認したい。愛知県が設楽町にダム調査申入れを行った年と当時の事業目的は何か、述べてください。
○政府参考人(小池一郎君) お答えいたします。
愛知県が最初に地元に調査申入れを行った時期でございますけれども、昭和四十八年の十一月でございます。その申入れの際には、設楽ダムの目的につきまして、豊川の治水及び東三河地域の新規利水の供給を目的とした多目的ダムであると、そういうふうに説明をしております。
○市田忠義君 それから四十年近くたったわけですが、現在の建設目的と、事業費は幾らですか。
○政府参考人(小池一郎君) 設楽ダムにつきましては、特定多目的ダム法に基づきまして基本計画というものを平成二十年十月に策定しております。この中で、設楽ダムの建設の目的につきましては、豊川の洪水調節、流水の正常な機能の維持、かんがい及び上水道の用水供給としているところでございます。また、建設に要する費用の概算額は約二千七十億でございます。
○市田忠義君 設楽ダムの有効貯留容量と流水の正常な機能の維持のための容量は幾らですか。
○政府参考人(小池一郎君) 設楽ダムの有効貯水容量は九千二百万立方メートルでございます。そのうち、流水の正常な機能の維持と増進を図る、具体的には豊川用水の取水地点である大野頭首工下流で頻発している瀬切れというものがございますが、これを解消するなど、豊川の流況を全体的に改善するための容量といたしまして最大六千万立方メートルを計画しているところでございます。
○市田忠義君 流水の正常な機能の維持というと分かりにくいんですけれども、要するに渇水時にダムから水を放流して豊川の河川流量を増加させると。ただ、渇水への対応は既に十分でき上がっていて、ダムをわざわざ造って水をためる必要は全くないと。日常的に活用されていない量が有効貯留量の六五%も占めていると、こんなダムは日本でも極めて異常であります。結局、目的変更で必要水量が減った分の帳じり合わせをしていると。
そもそも、豊川水系では多くのダムが造られて自然の流れを壊してきた、その対策のためにまたダムを造ると、こんなばかげた話は私はないと思います。しかも、百二十戸を水没させて、そのために二千億円も掛けると。洪水調節ということも言われましたが、森林や河道整備状況から判断して、戦後最大規模の洪水はダムなしでほぼ対応できる、また、新規水源開発は、〇二年に完成した豊川総合用水事業により一億トンを超える供給余力があると。いずれの目的も根拠を失っているわけで、こんな無駄な事業は見直すべきだと考えますが、いかがですか。
○大臣政務官(藤本祐司君) 市田委員にお答えいたします。
この設楽ダムに限らず、政権交代後でございますけれども、税金の使い道を大きく変えていくということの考え方の下で、できるだけダムに頼らない治水ということで政策転換を図っているところでございまして、我々としては、今後の治水対策のあり方に関する有識者会議、この中で具体的な治水対策案の立案手法とか新たな評価軸の検討などをしております。
御指摘いただいているこの設楽ダムについてもこの検証の対象にしてございまして、今全体で、一定の客観的な要件を満たす事業を除いたすべての事業を検証することとしておりまして、現在八十四事業、八十五施設について検証の対象としてございまして、御指摘いただいていますこの設楽ダムについても、他の全国の検証の対象となっているダムと同じように、先ほど申し上げました今後の治水対策のあり方に関する有識者会議の中で、本年の夏ぐらいをめどにして中間取りまとめを行って検証を進めていくという考え方で今進めているところでございます。
○市田忠義君 設楽ダムも見直しの対象だということが確認されました。じゃ環境の側面から見てどうかと。
設楽ダムのアセスの内容についてお聞きします。同ダムの予定地は、モリアオガエル、ムカシトンボ等、重要だと言われる動植物だけで百八十一種確認されています。中でも、二〇〇七年四月十九日付けの環境大臣意見では、希少種のクマタカ、ネコギギについて指摘しています。ネコギギについてはどのように述べておるでしょうか。
○政府参考人(白石順一君) お尋ねの環境大臣意見、具体的にはネコギギにつきましては、読まさせていただきますが、「本事業は、豊川上流に生息するネコギギの重要な生息域のうち、事業実施区域における生息域を消失させることから、その生息域の改変に当たっては、下記の点を含む必要な対策を講じること。」とありまして、「本評価書においては、環境保全措置として改変区域内に生息する個体を改変区域外の生息適地へ移植することを掲げているが、現段階ではネコギギの移植に関する知見及び移植の事例は少なく、措置の効果に係る知見が十分に得られているとは言えないことから、移植については、十分慎重に実施するとともに、事後調査を行い、移植した個体群が安定して生息していることを専門家の意見を聞く等により確認すること。」というふうに記載しております。
○市田忠義君 ネコギギは、伊勢湾あるいは三河湾に注ぐ河川にすむナマズ目の魚で、環境省レッドリストで絶滅危惧IB類、絶滅のおそれがあるとされている種であります。
国交省に聞きますが、アセス評価書に記述されている豊川上流でネコギギの生息が確認された箇所数、それから事業実施による改変箇所数ですね、これはどうなっていますか。数字だけ。
○政府参考人(小池一郎君) 環境影響評価書についてでございますけれども、ネコギギの生息域として把握されたふち、これは五十三か所でございます。それから、そのうち事業実施により改変されるふちが十八か所。さらに、貯水池よりも上流においてネコギギの生息が確認されているふち一か所につきましては、その下流側の集団が貯水池等の出現により消滅する、したがって、上流側が小集団として孤立するために、長期的に見れば集団としての存続性が低下する可能性があるというふうに評価されております。
○市田忠義君 環境省作成の日本の重要湿地五百においてネコギギ生息地の項目を担当された方のお話によりますと、生息密度の情報が示されていないために、消失が予測されるふちの割合だけでは影響が分からない、それ以上の影響が出る懸念もあると指摘されています。生息域の割合だけでも約三六%が事業により消失すると、これはもう大変なことであります。
国交省は移植のための野外実験を行われましたが、初年度の結果はどうでしたか。
○政府参考人(小池一郎君) 今お話がございましたネコギギ移植のための野外実験でございますけれども、平成十七年度から実験候補地の選定に着手いたしまして、十九年度から、ネコギギが生息できること、繁殖できることを実際に現地で確認するため、個体の放流実験を行っております。平成十九年度から二十年度にかけて二百個体を放流いたしましてその調査を行ったわけでございますけれども、二十一年六月調査では二つの個体、それから九月の調査では三つの個体が現地で生息していることを確認しているところでございます。
このような実験結果を踏まえて、更に生息数を増やすために、二十一年度でございますけれども、放流前に放流の個体を河川の水温に近い環境に置いた上で、一日実際の河川なりに慣れさせた上で放流するなど放流方法の改善等の取組を行っておりまして、今後とも有識者の助言、指導をいただきながら生息環境保全に向けた取組に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
○市田忠義君 時間がないので、尋ねたことだけに答えていただいて。
二百匹放流して二匹しか発見されなかったと。それ以降も同様の放流実験しているけれども、同じような定着確認、ほとんどできていません。
ネコギギに詳しい研究者は、川魚の移植による定着の成功例というのはほとんどないと、裏付けがないまま環境アセスでは移植を保全措置としたと、工事で川への影響が出る前にどうするか改めて議論する必要があると、こう話しておられます。
環境大臣にお聞きしますが、実験では定着の見通しが立たない下で、専門家の意見を踏まえれば今の段階で改めてネコギギの保全対策を再検討すべきだと思いますが、いかがでしょう。
○国務大臣(小沢鋭仁君) ネコギギの移植に関しては、私どもも、これまでの結果をお聞きする限り順調とは言い難いと、こう感じてはおります。
しかしながら、ネコギギの移植が難しいことは審査当時も十分認識していたことから、環境大臣意見において、移植した個体群の安定した生息を専門家の意見に基づき確認することを含め、移植の十分慎重な実施を求めてまいりました。事業者において引き続き大臣意見を踏まえた十分な慎重な取組を今はお願いしているところでございます。
○市田忠義君 今回の法改正で、環境大臣意見を検討する際に学識経験者の知見を参考にすると、そういうふうになっていますが、それならば、ネコギギの問題も国交省任せにしないで透明性を持った第三者機関で保全対策の検討をやるべきだと思いますが、大臣の認識はいかがでしょう。
○国務大臣(小沢鋭仁君) 今も市田委員からお話しいただきましたように、大臣意見を述べる際には専門家の先生方の意見も聞いてきたところでございます。
今後どういう対応を取るかに関しましては、事業者の皆さん方の対応をしっかりしていただくことを前提に、我々としてできることは何かということは考えてみたいと思っておりますが、現時点において具体的な話を今決めているところではございません。これから検討したいと思います。
○市田忠義君 第三者機関の設置も含めて検討するということで、是非やっていただきたいということを述べておきたいと思います。
今回の法改正で住民が意見を述べる機会が増えることになるわけですが、事業者がその意見を真摯に受け止めて検討することが私は不可欠だと思うんです。その点で設楽ダムは一体どうだったのか。
この事業の方法書の縦覧期間、方法、意見の数について述べていただけますか。
○政府参考人(小池一郎君) 環境影響評価方法書の縦覧につきましては、環境影響評価法第七条に基づきまして、平成十六年十一月二十四日から十二月二十四日までの一か月間、設楽ダム工事事務所など六か所において実施いたしました。その結果、六十六通の意見書、延べ数にいたしますと百五十七件の意見が提出されたところでございます。
○市田忠義君 ホームページでの閲覧は可能でしたか。
○政府参考人(小池一郎君) ホームページでは閲覧は可能ではございませんでした。
○市田忠義君 現地に伺いますと、閲覧のやり方が広く住民の意見を求めて英知を集約するという点で極めて困難だったと言われています。また、住民意見の提出期間がちょうど年末年始の期間に重なったために、帰省や行事に追われて落ち着いて意見を出す状況ではなかったと。
こういう問題は法改正によって若干改善することも期待されますけれども、問題は住民意見の事業への反映であります。このダムの方法書で一番多かった意見は、水質に係る調査地域について、調査地域を豊川流域全体と三河湾に広げるべきだと、これ三十七通であります。しかし、事業者はこの意見を取り入れませんでした。同様の意見は、住民だけではなくて流域で漁業をしている人たちからも出されています。
国交省にお聞きしますが、二〇〇五年に豊川水系漁協連絡協議会名で意見書を受け取っておられるはずですが、その内容を簡単に説明してください。
○政府参考人(小池一郎君) 二〇〇五年六月に今御指摘ございました豊川水系漁協連絡協議会から意見書をいただいております。その内容は、設楽ダム建設に伴う豊川のアユへの影響等を懸念し、ダム建設に反対するというものでございます。
○市田忠義君 さらに、環境破壊とは、我々の母なる川、日本一のアユ釣りメッカ、豊川上流にアユが育つことはできないと判断したからこういう意見書を出したんだということを述べておられます。この意見書は豊川水系の七漁協の代表理事組合長の連名によるものであります。そういう意味では大変重いと。
そこには遊魚券の販売実績、漁業者の数の推移などの資料が添付してあります。簡潔に数だけ述べてください。
○政府参考人(小池一郎君) 御指摘のとおり、意見書におきましては、宇連川の遊魚券販売数と漁業従事者数について記載されております。それによりますと、遊魚券販売数は、平成二年には六千十六枚だったところ平成十六年には七十一枚、漁業従事者数につきましては、年間三十日以上漁業をしている正組合員の数が三百五十五名から九十三名にそれぞれ減少したとされております。
○市田忠義君 恐るべき事態で、一九九〇年には六千枚以上の販売があった遊魚券が二〇〇四年には七十一枚、漁業者が三百五十五名から九十三名に減少していると。漁協の幹部は、これらは周辺のダムの影響だと指摘しておられます。漁協の幹部の一人にお聞きしましたら、日本一のアユの味がすると評判のいい川だったが、二〇〇五年には遊魚券の販売数がついにゼロになった、これ以上ダムを造れば流域全体が駄目になると訴えておられます。
設楽ダムのアセスでは、こんな深刻な被害が出ている漁業関係者の意見も住民意見も全く無視されています。こんなことが果たして許されるのかと。これは大臣の認識聞きたいと思います。
また、法改正で住民が意見を述べる機会が増えても、きちんとアセスにそれが反映されるようにしないと私は意味がないと思うんですが、それも併せて大臣の認識をお聞きしたいと思います。
○国務大臣(小沢鋭仁君) 今のような意見は、これは事業者がしっかりと受け止めていただいて、必要に応じて対応すべきところはやっていただかなければいけないと、こういうことだろうと思います。
その事業に関して今後云々かんぬんということは、環境大臣としては意見を差し控えさせていただきたいと思いますが、いずれにいたしましても、事業者によって必要な調査、予測、評価がなされ、でき得る限りの保全措置が盛り込まれていくことが重要と、こう認識をしております。
○市田忠義君 ちょっと人ごとのような話で、環境省にはそういう権限がないとおっしゃいましたけれども、やっぱり住民意見だとか漁業関係者の意見を事業者がしっかり耳傾けてもっともな意見は取り入れると、当然だという点ではいかがですか。
○国務大臣(小沢鋭仁君) 住民の意見を大事にしていくことは当然のことだと思います。
○市田忠義君 実際にはそうなっていないんですよ。例えば、評価書で取り入れられたのは知事意見であって、それ以外の住民意見や漁業関係者の意見はもうほとんど反映されていないというのが実態であります。
今紹介しただけでも大変重い意見なのに、二〇〇七年、さらに愛知県漁業協同組合連合会が、設楽ダム建設による三河湾への影響調査、これを求める意見書を国交省に提出しています。また、同じ年に日本海洋学会の海洋環境問題委員会が設楽ダムについて提言を発表しています。国交省、どういうタイトルの提言でしたか。
○政府参考人(小池一郎君) 今御指摘がありました提言でございますけれども、平成十九年度に日本海洋学会海洋環境問題委員会は愛知県豊川水系における設楽ダム建設と河川管理に関する提言ということで提言を行っております。
○市田忠義君 その提言の第一項目に、ダム建設が三河湾に及ぼす影響を調査すべきだと、こういう提言であります。ダム建設に絡んで日本海洋学会が川と海との関係に着目した調査の必要性を指摘したのはこれが初めてであります。それだけダム建設による三河湾への影響を憂慮しているということの証明だと思うんですが、先日、私、テレビで三河湾六条潟のことを放映しているのを見ました。愛知県は日本のアサリ漁獲量の三割を占めています。その稚貝の大半が六条潟で、アサリがわき出ると言われているところでもあります。ここに影響が出ると漁業者は壊滅的な被害を受けて、豊かな干潟も影響を受けると。
環境大臣にお聞きしたいんですが、これだけの意見、関係者からの強い懸念が出ているのにアセス手続の中では全くこれが反映されていないと。事後調査の規定を設けると、こういう趣旨からすれば、豊川水系流域、そして三河湾への影響調査も実施すべきだと思いますが、いかがでしょう。
○国務大臣(小沢鋭仁君) 今の委員の御指摘は、いわゆる広域的にそういったダム建設等の影響評価をすべきであると、こういう御指摘だと思います。まさに日本海洋学会海洋環境問題委員会の提言もそうした内容になっておるわけでございまして、環境省としましては、このようなダム事業における広域的な視点というのは極めて重要と、こう思っております。
○市田忠義君 時間がないので締めくくりにしますけれども、豊川と三河湾の汚染の関係については、設楽ダムのアセス以前から関係学会の方々から指摘されていた重要な問題だったんです。それを環境大臣意見では踏まえていなかったという問題があると。六条潟というのは奇跡の干潟と言われています。三河湾では、同事業が実施されれば、ダム湖の堆砂に伴って海岸浸食を加速して干潟や浅瀬を消失させる懸念が指摘されています。
干潟、浅海域の保全の遅れというのは本当に喫緊の課題の一つで、環境大臣に最後にお聞きして終わりますが、これまで設楽ダム建設による希少種への深刻な影響、それから豊川水系流域、三河湾への影響について私、それぞれ指摘してきましたけれども、これほどの環境破壊がはっきりしている事業であり、目的もことごとく破綻しているわけですから、希少種の保護、生態系の保全、環境保全の観点から国交大臣に事業の中止をお求めになるべきだと思うんですが、これは国交省の仕事だと言わないで、環境省は環境を守るために存在しているわけですから、省を越えてそういうことを率直に意見を述べられるべきだと思うんですが、そういう意見を述べられる用意はあるかどうか、最後にお聞きして終わります。
○国務大臣(小沢鋭仁君) 環境省としては、いわゆるその時点においても広域的な視点が重要と認識をし、なおかつそういった審査の段階でも確認はしてきたと、こういうふうに承知をしているわけでありますが、現状、市田委員の御指摘というようなことであれば、環境省としても、これは私としてももう一回検討させていただいて、そしてその後判断をさせていただきたいと、こう思います。
○市田忠義君 終わります。
環境影響評価法改正案に対する日本共産党の修正案
環境影響評価法改正案に対する修正案
2010年4月20日 参議院環境委員会にて
○市田忠義君 私は、日本共産党を代表して、今議題となっています環境影響評価法の一部を改正する法律案に対する修正案の趣旨を説明いたします。修正案は既にお手元に配付されておりますので、詳細な説明は省かせていただきます。
その修正の第一は、法の目的に、住民等の参加を規定することで、環境影響評価のすべての過程において住民、専門家等の参加と、その意思の反映について徹底することを明確にしました。
また、環境影響評価に当たり、事業実施を前提とした環境配慮にとどまらず、人類生存の基盤である生物多様性の損失を回避することを踏まえた慎重な検討を行うよう、生物多様性の確保を目的に明記しました。
第二は、国際的な水準の戦略的環境アセスメントの導入を図るため、国等の責務に、国の施策に関する基本的な方針又は計画の策定、変更の段階から環境影響評価を行うことを規定しました。また、方針又は計画の構想段階で検討を行う際、事業を実施しない案を含む複数案の検討を行うことを明記しました。このことにより、個別事業の内容が固まる前の早い段階で、ルート、立地等の決定に当たって複数案を検討し、重大な環境影響を事前に回避、低減することが可能となります。
第三は、環境大臣意見の位置付けを高めるため、免許等を行う者が事業者に対し意見を述べる際には、環境大臣の意見を勘案するとともに、別途その意見を付記することとします。また、許認可権者が地方公共団体の長である場合、評価書について環境大臣の助言を求めることを義務付けます。
第四は、事業者に対し、方法書前の手続において住民等からの意見聴取を義務付け、報告書手続においては、必要がある場合、所要の措置を講ずるべきことを明記しました。このことにより、事業者が事業実施後も含めて、環境の保全、生物多様性の確保に責任を持つことを明確にしました。
第五は、公正な環境影響評価を確保するため、事業者や特定の者の影響を受けない独立した第三者機関を設置します。これにより、国土的な環境、生物多様保全の観点から、専門的知見を基に科学的で客観性を持った環境大臣意見を担保します。
第六に、発電所に係る環境影響評価その他手続に関する特例措置を削除することで、この法律による統一した環境影響評価制度であることを鮮明にいたしました。
以上、委員の皆さんの御賛同をお願いして、趣旨の説明を終わります。