2月8日、第31回トヨタ総行動実行委員会の皆さんとトヨタ自動車本社を訪問し、取締役社長・豊田章男氏あてに内部留保を活用して地域経済の再生に役割を発揮するよう要請しました。
トヨタ本社には、榑松(くれまつ)佐一愛労連議長、県商工団体連合会の吉里政治副会長、東京公害患者と家族の会の繁野義雄副会長、全国一般労働組合愛知地方本部の国村忠文書記長とご一緒に訪問しました。
応対した総務部の担当者に、▽内部留保を活用した下請単価の大幅引き上げ▽非正規労働者の待遇改善▽正社員の雇用拡大▽下請企業への環境対策技術の支援―などを申し入れました。
榑松愛労連議長は、大きな事件となったリコール問題で「大量リコールの大本に下請業者への『原価低減』の押し付けがある。トヨタが昨年末に発表した部品単価3割引き下げに、安全が確保できるのかと不安が高まっている」と指摘。安全を最優先した生産体制確立のために、下請でも賃上げができるような部品単価の引き上げなどを求めました。
私は、部品コスト削減や納期短縮に苦しむ下請業者の皆さんの声を紹介し、「トヨタさんは、利益剰余金だけでも11兆円以上あります。内部留保を労働者と中小業者、社会に還元する努力をしていただきたい」と申し上げました。
各代表から「雇用回復に責任を果たすべきだ」、「下請単価がこれ以上下がると、中小企業は廃業に追い込まれ、優秀な技術が失われる」、「大気汚染被害者に謝罪すべきだ」などの指摘もありました。
担当者は「申し入れはお聞きした」と述べました。
トヨタ本社への「要請書」
2010年2月8日
トヨタ自動車株式会社
取締役社長 豊田章男様
第31回トヨタ総行動実行委員会
実行委員長 榑松佐一
要請書
トヨタ自動車におかれましては自動車産業の健全な発展に日々ご奮闘のことと存じます。トヨタ総行動も今年で第31回を迎えました。貴社には例年要請を受けていただきありがとうございます。
さて、世界的な経済危機のなか厳しい雇用情勢が続いております。かつて2倍近くあった県内の求人倍率も0.5倍と1/4に急落し、西三河地域ではこれをさらに下回る状況が続いています。今回の不況では非正規労働者の解雇が多く、全国24.6万人のうち愛知が全国最高で4.1万人となっています。私どもが昨年11月に行ったハローワーク前アンケートでは失業して半年以上たった方が4割、すでに雇用保険の給付が切れたり、最初から加入していない方が3割を占めていました。これは人も部品も「ジャストインタイム」で派遣や有期雇用労働者を増大させてきたことが原因です。
貴社が原価低減を強力に進めた2000年以後、貴社の利益はピーク時には2兆円に達し、内部留保は13兆円、グループ全体では16兆円ともなり、不況の中でも高額な株主配当が続けられています。一方でこの10年間は労働者給与が下がり続け、消費の冷え込みが景気の回復を妨げています。リコールの急増もこの時期から始まっています。
アメリカでサブプライムローンによる架空需要が崩壊した今、景気を回復するためには内需を拡大するしかありません。ところが、貴社は「国際競争力強化」の名で部品単価の大幅引き下げを発表し、また期間工の採用により労働者の賃金を低く抑えています。すでに中小企業のなかには廃業を口にするところが増えています。
いま貴社には「利益」より「安全」を優先することが求められています。賃下げと単価の引き下げをやめ、下請企業も含めて全ての関係者が安全を最優先した生産ができるよう早急な対策が必要です。また地球温暖化対策でも下請企業・地元地域との共存共栄の精神で、新しい生産体制への移行が行われるよう、貴社のリーダーシップに期待するものです。そのためにも、これまでの内部留保を活用して地域経済の再生に大きな役割を発揮されるよう求めるものです。
記
(1)「利益より安全を優先」に、内部留保を活用して下請単価を大幅に引き上げること。
(2)貴社及びグループ各社の非正規労働者の待遇を大幅に改善すること。
(3)残業を減らし、正社員の雇用を拡大すること。
(4)温暖化対策など新技術への転換にむけて下請企業への支援を行うこと。
(5)テストコース造成による絶滅危惧種への悪影響など環境破壊を行わないこと。
以上