もとむら伸子(日本共産党衆議院議員)-
レポート

総務委員会で、 医師不足による自治体病院での過労死・過重労働問題、医師確保への支援について、野田聖子総務大臣に質問しました!!

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12月5日、衆議院総務委員会で、野田聖子総務大臣にたいする初めての国会質問を行いました。
医師不足による自治体病院での過労死、過重労働問題、自治体病院の医師確保のための強力な支援を岐阜県中津川市にある坂下病院の例をあげて質問しました。

【医師不足による過労死、過重労働】

 新潟市民病院の女性研修医の過労自死。月平均時間外労働は 、厚生労働省が「過労死ライン」と位置付ける80時間の2倍を超える約187時間、もっとも多い月では251時間にたっしていたとご遺族の方の声が報道されています。すさまじい状況のなかで自ら命をたたれました。二度と起こさせない対策をとらせなければなりません。
 また、野田聖子大臣の地元である岐阜市民病院でも過労死ライン残業時間月80時間を超える医師が複数いることが発覚。
 時間外労働に関する労使協定で定めた月100時間の上限を超えて医師に残業させたとして岐阜労働基準監督署から岐阜市民病院が是正勧告を受けました。

そうしましたら、今度は上限を月150時間とする協定を結び直したと、毎日新聞の情報公開で明らかになっています。これでは過労死の被害がまた起きてしまうことになってしまいます。

 自治体病院で働く勤務医の長時間過密労働の問題について、総務省として、新公立病院改革ガイドラインで効率化だけを強調するのではなく、長時間過密労働の背景などもしっかりと分析し、今後過労死を出させないために、医療の安全性を確保するために対策をとるべきと質問しました。

 野田聖子総務大臣は、「過労死は絶対あってはならないもの、公立病院の医師についても、働き方改革をしっかり進めていく必要があると認識しています」と述べましたが、厚生労働省の医師の働き方改革に関する検討会の動きを注視していくとの答弁にとどまりました。

 私は、OECD諸国のなかで、人口1000人当たりの臨床医の数について日本は下から4番目の2.3人で、OECD加重平均2.8人よりもかなり下になっている実態を示しながら、医師を抜本的に増やす必要性を強調しました。

【過疎や中山間地の医療を守れ】

 過疎や中山間地の自治体病院は、医師の確保という点で大きな困難を抱えています。医師が確保できないことで、病院の経営が悪化するということについては、大臣も答弁で認めました。

 今、政府は、高齢化のピークとされる2025年までに「地域医療構想」をもとに病床・ベットを削減する計画があります。
 岐阜県だと2025年までに3507病床減らす計画。(東海エリアですと、愛知県1433病床削減、静岡県7791病床削減、三重県3671病床削減)
 地域医療構想に関する審議で、日本共産党の高橋千鶴子衆議院議員が、医師が足りないために病棟が閉鎖、そのために都市部で入院、通院、その受療動向のデータで固定化してしまったら、病院がいっぱいあるところに通っているから、その過疎の地域で病院がなくてもいいという話になってしまうではないか、との質問にたいし、当時の塩崎厚生労働大臣は、「過疎地では医療がなかなか提供されないというのでは困りますから、そこのところもしっかりと踏まえた議論を」と答弁しています。
 総務大臣にも過疎地、中山間地の医療を守っていく立場をぜひ聞かせてほしいと質問しました。
野田聖子総務大臣は、「そのとおりです」と答弁しました。

【医師確保の支援を!坂下病院を守るためにも】

 医師不足、地域医療構想、というなかで、実際に現場はどうなっているか、中津川市の例で紹介しました。
 岐阜県の中津川市に国民健康保険坂下病院という中津川市が運営する総合病院があります。1948年に開設されました。
 この坂下病院の常勤の医師数が2010年度14人だったのが、2016年度は半分の7人になってしまいました。うち内科は5人だったのが2人になってしまいました。
 医師数が減れば、経営も悪化していくということとなり、悪循環になっていくわけです。
坂下病院は、半径五キロ以内人口3万人未満の地域で不採算地区です(ベット数が150床以上なので、特別交付税は措置されていません)。
 現在、坂下病院では、一般病床は50床になってしまい、常勤のお医者さんの数が減ったことから、夜間診療や休日診療ができなくなり、救急車の受入れも月一回の当番日だけになり、眼科の手術後の入院もなくなるなど、どんどん地域の医療が縮小してしまっているのです。
私も現地に行き、皆様の声を聞いてきたこと、皆様がとった住民の皆さんの声を紹介しました。
◆もう30年以上も糖尿病を患っています。倒れて頭を切り、大出血、肺炎、心臓病等を起こし、そのたびに身近な病院があったお陰で現在があると思います。病院が遠くなれば助かる命も助からなかったとつくつぐ坂下病院のあることを感謝していきている。決して坂下病院をなくさないでください。心からのお願いです。(80代男性)

◆坂下病院のリハビリ、ST(言語)、OT(作業)、PT(理学)に通っている子どもたちは多く、重度身体障がい児~発達障がい児までいろいろな障がいをもった子どもたちが利用しています。中にはリハビリ=生命維持と言える子どもさんもみえます。坂下病院のリハビリテーション科の存続を強く希望します。(30代女性)

◆災害が多い時代、国道や県道が寸断された場合、中津まで行くことはできません。耐震されている坂下病院の役割は大きいです。絶対に必要となります。施設の整った坂下病院をなくすことはできません。(60代女性)

 また、2017年2月 坂下地区区長会、山口地区区長会、川上地区区長会、坂下まちづくり協議会、川上まちづくり推進協議会、山口まちづくり協議会・馬籠地域づくり推進協議会、南木曽町地域振興協議会長会議の皆さんから「要望書」が出されていることも紹介しました。
「『一般病床』を残した『国保坂下病院の機能』の存続を要望いたします」と書かれています。
眼科、整形外科で手術をして帰宅が困難な患者さんが入院することや、肺炎での診療後、数日間、入院すること、糖尿病の検査入院など、「軽度な急性期・回復期」の入院機能を残してほしいという声が出されています。

岐阜県だけの問題ではなく、お隣の長野県南木曽町はじめ木曽南部の皆さんが約30%も利用しているのが坂下病院です。

今年3月に「中津川市 国保坂下病院 経営改善計画」というものが出され、「現在、坂下病院の経営は、地方病院における医師不足や国の医療制度改革などの影響により、大変厳しい状況にあります」と書かれ、だから病院機能を縮小していくという話になっています。
このまま放っておいたら、病院は守れない。
医師の確保をすれば、自治体病院の経営がよくなるということもあるわけですから、
総務省ももっと、困難を抱えている自治体病院の医師確保に何ができるか研究するべきで、医師確保のための専任の人員をしっかりとおけるようにすること、情報取集のためのお金や通信費、出張経費などなど財政保証していくことや、来てくれる医師が、医師としてのキャリアを積めるような研修の保障、そのための代替医師の確保・派遣、女性医師も増えていますから、仕事と家庭の両立ができるような労働時間、労働環境の改善、自治体病院が他の機関と協力しながら総合的な医師確保の取り組みをできるような支援をぜひやるべきだと質問しました。

野田聖子総務大臣は、
「地元岐阜県の中津川の坂下病院についてさまざまなお声を今伝えていただきまして、まことにありがとうございます。子どもの医療につきましても人ごとではございません。そういうご不安を少しでも解決するために今しっかり取り組んでいかなければならないという気持ちを新たにしたところです。
 地方における医師確保というのは大変重要な課題だと考えています。総務省における対策としては、基本的には厚生労働省が医療行政を担っておられるので、ただ、私たちとしてできることは、例えば公立病院が医師派遣を受ける際の経費や、お話がありましたが、女性医師を確保するためにやはり院内保育所の運営費、そういうことにたいして、地方交付税措置というのをすでに講じているところです。また、地域医療介護総合確保基金の地方負担金や、産科、小児科等の後期研修医に対する修学資金の貸与事業等についても地方交付税措置を講じています。
 今後とも、医師確保に向けた地方公共団体の取り組みにたいして、関係省庁と連携しながら、必要な地方財政措置をしっかり取り組んでまいります。」と答弁しました。

 私は、坂下病院は、これまでの施策のもとで医師が減っていると指摘。
 今年3月に出された「中津川市公立病院改革プラン」には「市民病院と坂下病院のための医師招聘に、病院長とともに大学にも出向きお願いはしておりますが、大変厳しい状況にあります」と書かれています。
中津川市議会では今年の3月28日、「早急な医師確保が必要です」と医師確保を求める意見書が出されていることも紹介しました。

厚生労働省の話では、1万6000人の勤務医の先生方からのアンケートの回答では、44%の医師が地方に行ってもいいと答えており、20代では、60%以上、地方に行ってもいいと答えていることを紹介。
また、厚生労働省の資料では、2008年度以降、医学部の臨時定員増などによる地域枠での入学者が順次卒業し、臨床研修を終え、今後、地域医療に従事する医師が順次増加していく見込みだということも紹介。
そういう展望もあることを示しながら、自治体病院に結び付ける施策を力強くやるべきだと質問しました。

さらに、坂下病院は、1948年から木曽南部の医療を担ってきた病院であり、県境ゆえの難しさもあるわけだから、県をまたがる医療を担っている自治体病院へ支援をするべきと質問しました。
野田大臣は「取り組んでまいります」と答弁しました。

【不採算地区、不採算医療の特別交付税が144億円も減っている】

不採算地区病院については、自治体の一般会計からの繰出金にたいし、特別交付税措置をしていますが、これを算定するための病床を許可病床数から稼働病床数に変更し、
◆稼動病床数等×単価
  か 
◆自治体の繰出金額×0.8
どちらか低い方 という方法に変更しました。
算定方法が変わる前の2015年度と算定方法が変わったあとの2016年度、特別交付税へ減っているのではないかと質問。

自治財政局長の答弁では、2015年度は781億円、2016年度は637億円と1年間で144億円も減っていることが明らかになりました。

答弁の数字は、不採算地区病院、結核、精神、感染症、周産期、小児、リハビリテーション専門病院、救命救急センター、小児救急の部分の特別交付税です。
さらに、新ガイドラインに基づいて、自治体病院にたいする財政措置で、もう一つ縮小されているのが、普通交付税です。
普通交付税も、2015年度から許可病床数をもとにした算定から稼働病床をもとにした算定に変更しました。これによって、自治体病院の病床にたいする普通交付税の交付額は減らされたのではないかと質問。
自治財政局長は、「算定額は減少しております」と答弁しました。
(具体的な数字は、出せないとのことで、具体的に減額した額を聞くことができませんでした。今後、出させるように努力していきたいと思います。)

私は、過疎地、中山間地の地域医療をささえる自治体病院の運営にたいする自治体の繰出金にたいする特別交付税もへらし、自治体病院を支える普通交付税も減らしているわけで、地域医療を支えている自治体病院を総務省が首をしめているのではないかと述べ、総務省として、もっと自治体病院を守る立場で、支援すべきだと強調しました。

 木下律子中津川市議、坂本満南木曽町議、政策委員会の谷本諭さんなどなど多くの皆様にご協力いただくなかで、質問することができました。
 引き続き、坂下病院はじめ地域医療を守るために全力をあげていきます。
 本当にありがとうございました。

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