4月22日、衆議院国土交通委員会で、静岡県にあった、富士急グループの石川タクシー富士宮が、労働者に何の予告もなく、労働者全員を解雇した事件について、国土交通大臣の認識を質しました。
石川タクシー富士宮は、2010年2月9日、労働者に一切秘密にしたまま、未明に30台ものタクシーをどこかへ運び去り、会社敷地をバリケードで封鎖して、会社解散を口実に40名もの全労働者を解雇しました。
同社の労働組合の皆さんが、長時間残業や最低賃金以下の賃下げ等に反対して運動し、会社がそれを敵視していたため、親会社富士急による偽装解散ではないか、と疑問の声も上がっています。
労働組合の皆さんは、過労運転にならないように、お客様に安心して乗ってもらえるタクシーを目標に頑張ってこられ、事故を減らしていました。
道路運送法38条4項では、「一般旅客自動車運送事業者は、その事業を休止し、又は廃止しようとするときは、あらかじめ、その旨を営業所その他の事業所において公衆に見やすいように掲示しなければならない」とあり、少なくとも7日前まで(旅客自動車運送事業運輸規則第7条)に周知しなければならないとなっていますが、石川タクシー富士宮は、それをしませんでした。
雇用対策法24条、27条で、30人以上の大量離職者が発生する場合には、再就職援助計画や大量雇用変動の届出をハローワークに一か月前までに提出されなければならないのに、それもやっていませんでした。
再就職の斡旋もない、生活保障もない、住宅ローンを抱えた労働者もいました。
この解雇は、道路運送法や雇用対策法などの法令に違反する乱暴な解雇であり、公共交通機関としてこんなことが許されるのか、公共交通を担う国土交通省は許してはいけない、と強調しました。
タクシー運転手が事業者の法令順守のために声を上げることは、安全運行確保のために大事な役割だと質しました。
石井啓一国土交通相は、「経営者と運転者の意思疎通が円滑に行われることは、会社全体における安全に対する意識を高めるためには重要である」と答弁しました。
この石川タクシー富士宮は、富士急の孫会社です。
石川タクシーは、従来1社だったものが、2003年4月16日、持ち株会社(静岡ホールディング)と、石川タクシー富士、石川タクシー富士宮の3社に分割されました。
どの会社の代表も役員も、富士急からの出向です。
静岡ホールディングは、石川タクシー富士、石川タクシー富士宮の株式を100%保有しています。
持ち株会社の株式は、富士急とそのグループ会社が持ち合っています。
一 方で、タクシー会社の利益は、会社が赤字の時でも、「事務委託料」の名目で1100万円以上も持株会社が吸い上げ、今度は、持ち株会社から、富士急本社は、毎年数千万円の「経営指導料」という名目で上納金を得ていました。
意思決定の権限をすべて富士急が握り、儲けも富士急に入っている、まさに一体のグループ企業です。
意思決定の権限をすべて富士急が握り、儲けも富士急に入っている、こういう関係ですから、富士急の指示・意向なしに、石川タクシー富士宮のみで解散の決断ができるはずがありません。
労働者が納得のいく解決のために、国交省は、富士急が社会的責任を果たすよう指導すべきだと強調しました。
自交総連の労働組合でがんばってこられた方々が、傍聴にきてくださいました。涙を浮かべながら聞いてきいてくださったそうです。
こんな理不尽なことを絶対に許すわけにはいきません。
引き続き、働く人の雇用と権利、くらしを守るために全力を尽くします。