もとむら伸子(日本共産党衆議院議員)-
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【政策】TPP参加ストップ!!農林漁業の再生を国づくりの柱にすえ、国民の食料と豊かな環境を守り、持続可能な社会をめざします

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農林漁業の再生を国づくりの柱にすえ、国民の食料と豊かな環境を守り、持続可能な社会をめざします

2012年11月

 国民の命を支える農林漁業と農山漁村は崩壊の危機が広がっています。先進国で最低水準に落ち込んできた食料自給率はさらに低下し、国土の荒廃も広がっています。

 「このままでは農業も、農村も、だめになってしまう」――3年前の民主党政権の誕生は、こうした深刻な状況の打開を期待したものでした。

 ところが、民主党政権は農政の分野でもその期待を次々に裏切ってきました。最大の問題は、農林漁業を壊滅させる環太平洋連携協定(TPP)への参加を2年前に突然言い出し、推進してきたことです。消費税増税を強行し、東日本大震災ではおざなりな対応に終始、原発再稼動に固執していることも農漁業の危機打開に逆行しています。

 今日の危機的事態は、大企業製品の輸出を最優先し、食料は輸入すればいいという、自民党政権が長年すすめてきたアメリカ・財界いいなり政治に根本原因があります。民主党はそれを転換するどころか、アジア・太平洋諸国との「経済連携の強化」の名のもとに農産物の自由化、市場原理一辺倒の路線をいっそう徹底しようとしています。

 こんな政治を続けては、農漁業の崩壊が一気にすすみ、わが国が食料自給の基盤をまったく失った国になりかねません。そのことは、農山漁村だけでなく、日本社会全体の持続可能性を根本から脅かす重大な問題といわなければなりません。

 東日本大震災は食料の確保が人間の生存や社会の安定に欠かせないことを改めて突きつけました。今年に入り国際的な食料価格の高騰が再燃するなど、21世紀の世界は、「食料は金さえ出せばいつでも輸入できる」時代ではなくなっています。自由貿易・市場原理一辺倒の政治が世界の多くの人々を貧困に追い込むなど多大な害悪をもたらし、その転換が切実に求められています。地球環境の保全も人類死活の課題となり、各国の国土や自然条件を生かした循環型の社会への転換も求められる時代です。

 農林漁業を再生し、食料自給率を回復することは、国民の生存の根本にかかわる「待ったなし」の課題です。人類社会の持続的な発展にたいする日本の責任でもあります。そして、農山漁村の再生は、輸出偏重で内需が冷え込み、脆弱な体質にされてきた日本経済を内需主導、持続可能な方向へ転換するうえでも不可欠です。

 わが国には、温暖多雨な自然条件、すぐれた農業技術の蓄積、世界有数の経済力、安全・安心を求める消費者のニーズなど、農漁業を多面的に発展させる条件は十分にあります。必要なのは、そうした条件を全面的に生かす政治への根本的転換です。

 日本共産党は、農林漁業つぶしの根本=アメリカ・財界いいなり政治を大もとから転換し、農林漁業の本格的な再建、食料自給率の50%台への引き上げを国づくりの柱に位置づけ、あらゆる手立てをつくします。農業再生の総合政策については2008年3月の「日本共産党の農業再生プラン」で詳細に明らかにし、漁業や林業の再建についても、国政選挙の中で具体的な政策を打ち出してきました。それらを踏まえながら、今日の情勢に即して、農林漁業や農山漁村の再生の政策を提案します。

TPP参加をきっぱり断念させ、食料主権を回復する

 いま、わが国の農林漁業の存続を根底から脅かしているのが、例外なき「関税ゼロ」を原則とするTPPへの参加問題です。農産物輸入を完全自由化して、あれこれの国内対策で農業への打撃を防げないことは、これまでの歴史で証明ずみです。農林漁業の再生には、各国の条件の違いを踏まえて関税など国境措置を維持・強化することが不可欠です。

TPP参加をきっぱり断念させる――TPPで関税撤廃に例外がないことはアメリカなど交渉国が再三強調し、日本政府も認めています。TPP参加と農林漁業の再生との両立はありえません。TPPは、農林漁業だけでなく医療や雇用、食の安全を脅かし、経済主権も奪う、国民にとって「百害あって一利なし」です。TPP反対の国民的共同と力を合わせ、参加をきっぱり断念させるために力をつくします。

各国の食料主権を尊重する貿易ルールを確立する――自由化一辺倒のWTO体制のもとで、世界各国の農業が荒廃し、環境や食の安全も脅かされ、貧困と格差が拡大するなどの矛盾が広がりました。21世紀の世界に必要なのは、各国の国土資源を最大限に生かした食料の増産であり、それを可能にする貿易ルールです。各国が自国民のための食料生産を最優先し、関税など国境措置の維持強化、価格保障などの農業政策を自主的に決定する権利=「食料主権」を保障する貿易ルールの確立をめざします。

農業に打撃を与えるFTA・EPAに反対する――「成長戦略」の名で輸出や投資の拡大を最優先し、農産物を含めた輸入自由化を推進するFTAやEPAが、農業衰退に拍車をかけることは避けられません。農業に大きな打撃となる日豪EPA交渉などに反対します。二国間・多国間の貿易や経済連携にあたっては、各国の農業の共存、食料主権を尊重するルールをめざします。

ミニマム・アクセスを廃止する――世界で米が不足している時に、輸入の必要のないわが国に77万トンもの米輸入を強要するミニマム・アクセス制度はきっぱり廃止を求めます。ミニマム・アクセスは、WTO協定上は最低輸入機会の提供にすぎず、全量輸入は義務ではありません。当面、「義務」輸入は中止します。

東日本大震災・原発放射能災害からの復興を急ぐ

 東日本大震災と東電福島第一原発事故は農林漁業と地域社会に甚大な被害をもたらしました。そこからの復旧と復興を本格的な軌道に乗せることは、被災者の暮らしや地域経済の回復の柱であり、わが国の農林水産業の再生にむけても欠かせない一歩です。

 現状は、関係者の懸命の努力にもかかわらず、被災者の命や暮らしの脅かされる状況が続き、農林水産業の復旧も遅々としています。被害の甚大さもありますが、政府の復興対策が従来の枠組みにとらわれ、あまりに遅く、不十分なことにも重大な責任があります。「創造的復興」の名のもとに被災地を選別・淘汰し、企業のもうけを優先する「復興」を押しつけたことも被災者の住まいやなりわいの再建を遅らせる原因となってきました。

 原発・放射能災害でも、農地や森林、海が汚染され、住民がふるさとを追われたままで、農林漁業の再生どころかスタートにもつけない地域が広範囲に残されています。

選別・排除をやめ、経営再開を望むすべての農家を支援する――被災農家の多くが住宅や家財とともに農地、農機具、農業施設など生産手段のすべてを一瞬にして失ったなかで、政府の復興支援の対象を大規模経営や共同事業に限定しては多くの農家が営農をあきらめざるをえなくなり、地域そのものが崩壊してしまいます。こうした選別・排除をやめ、中小・兼業を含めて希望する農家すべてが営農を再開できるよう積極的に支援します。

 農漁村集落がまるごと破壊され、集落移転を迫られている地域でも、住まいの再建となりわいの復興を一体で進め、農業や漁業を続けられる住まいや集落をめざします。

上からの押しつけでなく、被災農家の声を最優先に――各種の復興事業は上からの押しつけでなく被災農家の声を最優先に進めます。被災農地の大区画ほ場整備に取り組む場合には、関係農家の合意の上で中小農家の多くが営農を継続できるよう区画の大きさなど柔軟にすすめます。“先端農業の育成”が強調され、民間企業が参加した大規模野菜工場の建設などに巨額の補助金が投入されていますが、復興支援はあくまで被災農家が主体となった地域農業の再建を中心にし、施設や機械の投資も過大にならないようにします。

手続きや要件を緩和・簡素化し、復旧事業を急ぐ――農地の復旧や施設の整備などに必要な予算を十分に確保するとともに、手続きや要件を緩和・簡素化して自治体などが迅速・柔軟に対応できるようにします。復興事業の遅れの1つの要因となっている、設計や執行に必要なマンパワーの不足を解消するため、国の責任で必要な技術者などを派遣します。

漁業の復興は生産・加工・流通一体で支援する――漁業・水産業の復旧・復興では、生産・流通・加工部門をセットで再生する総合的な支援が不可欠です。漁船・漁具・養殖施設の復旧をさらに進めるとともに、魚種の生産適期にあわせた計画の実行と、漁港や水産加工、流通施設の整備の前提となるかさ上げなど基盤整備を抜本的に強化します。

 水産加工や流通業者の再建を支援するため、中小企業グループ補助金などを希望者すべてに支援します。漁民や水産関係業者の二重ローン対策も強めます。

漁港の集約化や民間企業への漁業権の開放は中止する――復旧を拠点漁港に集中し、小規模な漁港は後回しにする「漁港の集約化」をやめ、小規模漁港を含めて復旧を急ぎます。利益第一の民間企業への漁業権の開放に道を開く「水産特区」は中止します。

原発事故による農漁民の被害に全面的な賠償を求める――原発事故・放射能汚染による農林漁業者の損害のすべてを国と東電の責任で全面的に賠償することは、農漁業の経営を再生する最低の条件です。政府の損害賠償審査会の中間指針を早急に見直し、“風評被害”や事故に伴う諸経費の増加分などをふくめて全面的な賠償を行わせるようにします。賠償金について非課税扱いにし、賠償請求の手続きも簡素化させます。

農林水産物の放射能検査体制を抜本的に強化する――放射能不安による農林水産物の販売不振や価格の低下などで農漁民や関連業者の経営は窮地に陥っています。そこから回復するには、検査の徹底と公表による農林水産物の安全性や信頼性の確保が不可欠です。国の責任で放射能の検査機器・体制・要員を抜本的に整備・拡充します。海の汚染状況について水産物だけでなく海底土壌やプランクトンなども密度濃く調査します。

農用地および森林の汚染実態を把握し、除染を急ぐ――農用地について詳細な汚染マップを早急に作成するとともに関係機関の英知を結集して除染方法の開発・実証をすすめ、除染を急ぎます。森林についても除染方法について実証をすすめ可能な除染をすすめます。

汚染牧草、稲ワラ、堆肥などの処分を国の責任で早急に行う――放射能に汚染された牧草、稲ワラ、堆肥などの処理方法が決まらず、農地や作業場などに滞留して畜産などの生産継続の重大な障害になっています。政府の責任で早急に処理方法や処分地を決定し、あらたな生産の開始を可能にします。原木きのこ栽培のための安全な原木の確保を国や行政の責任で行います。

農業の担い手の確保・育成に国をあげて取り組む

 戦後日本の農業を中心に支えてきた世代の「引退」が加速し、農家や農業就業人口の減少に拍車がかかっています。農業就業人口のなかで75歳以上が31%を占めるという超高齢化もすすみ、担い手の面から農業と農村が崩壊しかねない事態です。

 わが国の食料生産をだれが担うのか、国土や環境をだれが守るのか、農村地域にとどまらず日本社会が真剣にむきあうべきまったなしの課題です。国や自治体、関係団体が営農や暮らしの条件の根本的な改善と一体で、農業・農村の現在と将来の担い手の確保・育成に特別な力を注ぐことが求められています。

農家の選別をやめ、大小多様な農家経営を数多く維持する――「担い手育成」の名で一部の大規模経営だけに農地や施策を集中し、多数の中小農家を政策対象から排除する政府のやり方では農業の衰退を早めるだけです。食料自給率の向上や国土や環境の保全なども兼業・高齢者世帯を含む多くの農家が農村に定住し、営農を続けてこそ可能になります。今後の担い手は「続けたい人やりたい人はみんな担い手」として位置づけ、現に農業に従事している農家は可能なかぎり多く維持できるようにます。

集落営農や大規模農家も応援する――引退する高齢農家の農地や作業を引き受ける集落営農や大規模経営も、地域農業を支える担い手として重要です。大規模経営や集落営農などが機械・施設を導入・更新する際、助成や低利融資を行います。地域の自主性を尊重しながら、行政や農協などが一体で支援を強め、実務や資金管理、販路確保の負担を軽減します。集落の共同が困難な地域では、当面、自治体や農協の出資する法人による農地の管理をすすめ、耕作放棄が広がらないようにします。

新規就農者を増やす特別の努力を――農業就業者が急速に減少するなか、農家子弟や都市住民を含めて新規就農者を飛躍的に増加させる思い切った対策が必要です。

 近年、定年退職者や若者の間でも就農希望がふえ、農業への関心が高まっています。それを本格的な就農に結び付け、定着させるために、国や関係機関、地域社会が一体となった長期にわたる支援を行います。「新規就農者支援法」を制定し、就農希望者の研修・教育機関の整備、農地の確保、資金、販路や住宅の紹介など総合的な支援体制を整備します。とりわけ、中山間地や過疎集落での定住者、移住者を増やすために、営農や暮らしの両面から支援することに特別の力を注ぎます。

 日本共産党は新規就農青年に3年間、月15万円支給する制度を早くから提案してきましたが、政府も12年度から青年就農給付金事業(45歳未満の就農者に年150万円、最長5年支給)をスタートさせました。当初の予想を超えた希望者が出ており、必要な予算を確保するとともに、大規模経営に集落の農地を集積する「人・農地プラン」と一体であることや親元就農の場合に5年以内に経営委譲するなどの要件を緩和して、一定期間の就農を前提として希望する青年すべてを対象にします。60歳以上の定年退職者などにも、農業技術の研修や農地のあっせんなどで就農しやすくするよう支援します。

新規就農者の研修や技術指導を引き受ける農業生産法人や農家への支援も強化します。なりわいとしての就農とは別に、市民農園や体験農業、学校農園、グリーンツーリズム、農業ボランティアなどさまざまなチャンネルで国民の多くが農業・農村にふれ、生産にかかわる取り組みも重視します。

農協や農業関係団体の役割を重視する――2012年は国際協同組合年でした。農協や各種の共同組織は、集落営農や担い手への支援、農産物の販路の確保、加工施設の運営など地域農業の振興と農村社会の維持に欠かせません。自主性を尊重しつつ、その役割がはたせるよう、国や自治体も協力し、支援します。協同組合の事業を独禁法の適用除外とするのは、諸外国でも認められた原則であり、堅持します。

農外企業や株式会社一般の農地利用を厳しく監視する――数年前の農地法「改悪」で農外企業の農地利用に道が開かれましたが、もうけ第一の株式会社が進出するのは優良農地で、そこで成り立っている農家や集落営農と競合し、追い出すことになりかねません。農地の利用は、農家とその共同組織を優先し、株式会社一般の農地進出に厳しい監視と規制を強めます。そのために、農業委員会の体制を強化し、必要な予算を増額します。公選を基本にした農業委員の構成と農業委員会の必置規制は堅持します。

安心して農業に励め、農村で暮らせる条件を抜本的に整える

 農業や農村の担い手の確保にもっとも必要なのは、安心して農業生産に取り組め、農村に暮らし続けられる条件です。その最大の柱の一つは、農産物の価格保障を中心に、所得補償を組み合わせ、生産コストをカバーする施策をしっかり行うことです。

 豊凶変動や価格の乱高下が避けられない農産物の価格保障は農家の意欲と誇りを高め、営農を保障し、食料自給率を向上するうえで決定的です。欧米諸国でも農産物の価格支持制度は維持しています。農畜産物の特性を踏まえて品目別の価格・経営安定制度を導入あるいは現行制度の充実・改善に取り組みます。加えて、国土や環境の保全など農業の多面的な機能を評価して、農地面積などを対象にした各種の所得補償を抜本的に充実します。

米価に「不足払い」制度を導入する――ここ十数年、生産者米価が一貫して下がり続け、多くの農家が家族労働費どころか経営費もまかなえない状態が続きました。この事態を根本から改善し、基幹作物である米作経営を安定させることは農業再生の出発点です。

 米価に過去3年の生産コストの平均を基準として販売価格との差額を補てんする「不足払い制度」を創設します。あわせて水田のもつ国土・環境保全の役割を評価して当面10アール1~2万円の所得補償を実施します。

 当面、価格暴落の一定部分を補てんする政府の戸別所得補償制度について、家族労働報酬の全額を補償することや保障基準を地域や品種別の違いに配慮するなど改善・充実し、安定した制度にするためにも法制化をはかります。

米の需給や流通の安定に政府が責任をはたす――国民の主食である米の価格や流通を全面的に市場にまかせた結果、近年、米価が乱高下し、米流通に混乱がおきています。米の需給と価格の安定に政府が責任を持ち、豊作や消費減などで余剰米が発生した場合、政府買い入れを増やすことで需給調整をはかります。備蓄米を毎年20万トン買い入れる政府の方針は2年続けて半分も達成されていません。播種前契約方式を抜本的に見直し、買入価格を引き上げるなどで5年未満の米で早期に備蓄米100万トンを確保し、さらにゆとりある備蓄をめざします。

 輸入米の主食用への流通拡大を抑え、当面、SBS米の枠は維持します。加工用米についても、農家に主食米なみの所得を補償することにより、安定した生産を確保し、加工業者が国産米で対応できるようにします。

 大手流通企業による買いたたきを規制し、産地・品種・品質の偽装表示など無秩序な流通を規制するルールを確立します。年間を通じて計画的に出荷・販売する業者・団体にたいして金利・倉庫料など必要な助成をおこないます。

水田における主食用以外の増産に力を入れる――米の生産調整は、水田における麦・大豆・飼料作物などの増産と一体で取り組みます。そのために、転作作物の条件を思い切って有利にし、農家が安心して増産できる条件を整えることを優先します。当面、麦・大豆・飼料作物などの助成金を10アールあたり平均で5万円(現行3万5千円)に増額し、地域農業の実態をふまえて配分できるようにします。米粉・飼料用米には、10アール8万円の助成、原料として受け入れる地場の加工企業などへの支援を強め、増産に見合って輸入を抑制するなど、安定した販路・需要先を確保します。

畑作、畜産、野菜、果樹などに価格・所得対策を充実する――日本は地域の条件に応じて畑作、畜産、果樹、野菜など多様な農業が発展してきました。それぞれの品目の生産や流通、加工などの実態に即した価格保障(価格安定・支持制度)と所得補償の拡充で、農家経営が安定して持続できる条件を整えます。

麦・大豆――自給率の極端に低い麦・大豆の増産は急務です。土地条件の改良や栽培技術・品種の改善、加工・流通への支援などとあわせて、麦・大豆に生産費と販売価格の差額を補てんする交付金制度を復活し、充実させます。水田での作付け・増産をはかるため、手厚い所得補償を実施します。国産を活用したパンや加工品の学校給食での普及・拡大を支援し、国産麦や大豆の需要拡大にとりくみます。

酪農・畜産物など――輸入飼料に依存して大規模化に偏重した畜産政策を見直し、日本の大地に根ざした循環型の畜産経営を支援します。加工原料乳は、生産費を基準とする不足払い制度を復活し、需要増大の見込めるチーズや生クリームまで対象を拡大します。肉用子牛補給金や牛・豚肉の価格・経営安定対策は、単価や補てん水準を引き上げ、再生産が可能になるよう改善・充実します。飼料作物の増産を支援するため、水田・畑・採草地への所得補償を拡充するとともに、飼料の広域流通体制を整備します。生乳の国内需給に影響を与えないよう乳製品のカレントアクセスの輸入を規制します。

 当面、飼料価格の高騰による畜産経営の破たんを防ぐため、配合飼料価格安定基金からの補てんを安定的なものにするために万全な財源を確保します。

●野菜・果樹、甘味資源など――野菜や果樹は、作柄変動に伴う値動きが大きいうえに、増大する輸入品に圧迫され、国内生産が減少を続けています。景気悪化による消費減もあいまって物財費さえ下回る低価格が多くの品目でたびたび起きています。現行の野菜価格安定制度を、対象品目や産地を拡大し、保証基準価格を引き上げる、大規模経営の多少による産地差別を廃止する、加入や支払いの事務を簡素化するなどの改善・充実をはかります。自治体が行う特産物の価格安定対策に国が支援を強めます。

 ミカンやリンゴなど果実生産は、豊作時に加工に向けることで生果の需給調整が可能になるよう、輸入原料の規制とあわせて、加工向け果実価格安定対策を創設します。

 北海道や南九州・沖縄の基幹作物であり、国内で貴重な甘味資源作物であるてんさい・ばれいしょ、さとうきび・かんしょなどは、生産・製造コストと販売価格の差額を補てんする現行の経営安定対策を充実・強化し、農家の再生産が可能となるよう支援を強めます。

農業の多面的機能に着目した所得補償を拡充する――農業生産の4割を担う中山間地など条件不利地域での農業を維持するためには、特別の援助が必要です。中山間地域等直接支払い制度を恒久制度として立法化し、高齢化が進む実態を踏まえて、集落協定の要件の緩和、対象地域の拡大、協定期間の弾力化、事務手続きの簡素化などを進めます。高齢者率の高い集落への支援や樹園地などには補償水準を手厚くします。

 農業のもつ国土や環境を保全するなどの多面的な機能は、農産物の価格には反映されず、無償で国民に提供されてきたものです。これを正当に評価して、水田・畑地・樹園地など地目に応じた所得補償を実施します。食の安全や環境に配慮した有機農業などの育成にも、一定の基準で所得補償を実施します。

災害補償制度の充実をはかる――台風、豪雨、高温など農業をめぐる自然災害が増えています。それが生産の減少や農産物価格の乱高下、農家の経営不安の原因となっています。農業災害補償制度は、その重要な制度ですが、共済組合の広域化や対象農家を限定し、小規模な経営を除外するなどの状況があります。地域農業の支えているすべての農家を対象にするとともに、加入率の低い果樹、施設共済などを利用できやすく改善します。

農家の経営規模に見合った機械や施設の導入への支援――農業機械や施設の大型化の推進はコストを高め、農家の所得を減らす場合が少なくありません。農家の経営規模に見合った機械の導入、共同利用の機械更新への支援、肥料の価格安定、農事用軽油減免措置の恒久化などで生産コストの低下、農家所得の増大、消費者価格の安定をはかります。

品種・栽培技術の改良など試験研究を強化する――作物の増産と生産コストの削減には、品種改良・栽培技術など基礎的な研究と援助が不可欠です。効率優先で基礎研究を切り捨てるのでなく、食料の増産、農業経営の改善に役立てる方向で強めます。

農林水産予算を大幅に増額して、食料自給率50%をめざす

 日本農業を再生するには、農業つぶしの政治が長く続き、その傷が深いだけに、長期の見通しによる計画的な取り組みと関連予算の思い切った増額が必要です。とりわけ、 長年”猫の目農政”に苦しんできた農家が、将来にわたって農業に安心して励めると確信を持てるようにするためにも、政策の一貫性、持続性が不可欠です。

 日本共産党は、食料自給率の早期50%達成を目標に掲げていますが、そのために、価格保障や所得補償の充実などに必要な農林水産予算を大幅に増額します。

 一般歳出に占める農林水産予算の割合は2000年度の7.1%から2012年度の4.5%に低下しています。現在の国の予算規模を前提にしても、農業を「国づくり」の柱に据え、予算上の位置づけを10年前の水準に戻すだけでも約1兆円は確保できます。

 また、農林水産業の生産額と農業予算の割合を比較すると、アメリカ56.0%、フランス33.9%。ドイツ62.0%、韓国59.8%、日本27.5%であり、日本の農業予算の貧弱さが目立ちます。この割合を先進諸国なみに高めれば、農業予算の大幅増額は可能です。

 食料の増産には、湿田の乾田化、用排水施設の維持・補修、山間地域のほ場整備などの土地改良事業が欠かせません。土地改良や施設の建設などは大型事業中心ではなく、農家や地元負担が少なく、経営改善につながる事業に予算を重点的に配分します。

農業者・消費者の共同を重視し、「食の安全・安心」をひろげる

 アメリカでのBSE感染牛の発生、遺伝子組み換え食品の横行など食の安全・安心を脅かす事態が後を絶ちません。「安全な食料は日本の大地から」の実現をめざしつつ、食品の検査体制・安全基準を強めます。

現行のBSE対策を堅持し、牛肉の安全を確保する――TPP参加の「入場料」として、BSE(牛海綿状脳症)対策がずさんなアメリカ産牛肉の輸入拡大のために、20ヶ月月齢制限などの輸入規制を緩和することなどとんでもありません。20ヶ月月齢制限や特定危険部位の除去など現行のBSE対策を堅持し、牛肉の安全を確保します。

口蹄疫や鳥インフルエンザの発生防止に万全を期す――口蹄疫や鳥インフルエンザなど各種感染症の発生の影響を最小限にとどめるよう、監視体制を強め、感染拡大防止に国が全面的に責任をもち、獣医師など人的資源の集中、殺処分した家畜の埋却(土地の選定・確保を含め)を迅速におこないます。被害農家には、殺処分した家畜の評価額を再生産可能な価格とし、埋却までの間のエサ代の補償、新たに導入する家畜が販売できるまでの3年程度の所得などの直接支援をおこないます。

水際での検査体制を強化する――輸入食品の水際での検査体制を抜本的に強化し、厳格な検疫・検査を実施します。食品の原料・原産地表示をすべての加工品に実施します。食品に関する表示制度を一本化し、製造年月日表示を復活させます。遺伝子組み換え食品の承認検査を厳密にし、遺伝・慢性毒性、環境への影響に関する厳格な調査・検証・表示を義務づけます。

安全な食料の生産・流通を広げる――「効率化」一辺倒で農薬や化学肥料に過度に依存した農業生産のあり方を見直し、有機農業など生態系と調和した環境保全型の農業、「地産地消」や「スローフード」への取り組み、食文化の継承・発展を支援します。

卸売市場の公正な運営をはかる――卸売市場で広がっている相対取引をふくめて、コストを無視した低価格での納入を強要するなど大手スーパーなどの横暴を抑えるため、産地、中小小売が対等な立場で交渉できる協議会を設置するなど公正な流通ルールを実現します。

山村地域の基幹産業として日本の林業・木材産業の再生をはかる

 国土面積の67%占める森林は、再生産可能な木材の供給とともに、中山間地域の維持と国土・環境の保全や水資源の涵養、生物多様性の保全など、国民生活に不可欠な役割をはたしています。またCO2の吸収・固定による地球温暖化防止への寄与など、「低炭素社会」の実現にも欠かせない資源です。

 わが国の森林は、「育林の段階から利用の段階」に入っていますが、各地の林業関係者から「戦後、植林した樹木が使えるようになったのに、木材価格が安すぎて伐採できない」と悲鳴があがり、国民の多くも「健全な森林」を切実に求めています。森林・林業の持続的な管理経営のために、外材中心の加工・流通体制をあらためて、地域の実態に即した安定的な国産材の生産・加工・流通体制を構築することが求められています。

外材依存体制を転換する――TPPへの参加は、かろうじて残されている製材品や集成材の関税まで撤廃するなど、国産材の需要拡大と森林・木材産業の再生に逆行するものであり、TPP参加を断念するよう要求します。

 丸太や製材品などの林産物は、WTO(世界貿易機関)協定では、自動車や電化製品と同じ「鉱工業製品」扱いですが、多くの国で環境保全や産業育成などのため、丸太の輸出規制がおこなわれており、実質的に自由貿易品目ではなくなっています。森林生態系や自然環境は、人類の生存にかかわる問題であり、市場まかせにする時代ではありません。現在の輸出国主導のWTO体制を見直し、各国の自主権を尊重した林産物貿易、森林・林業政策を保障することを世界に提起します。

地域の実態に即した産地づくりにとりくむ――森林境界の明確化を促進し、森林所有者や素材生産業者、製材業者、大工・工務店などが連携して、地域の実態に即した森林資源の循環システムを構築するとりくみを支援します。

地形や自然環境に配慮した林道・作業道の整備など生産基盤の整備をはかる――わが国の森林は、亜熱帯から亜寒帯まで分布し、気候条件も違い、急峻な地形が多いなど地域の生育環境も多様です。路網づくりでは、生態系や環境保全に配慮した技術の確立と地域の実態に即した生産基盤整備ができる助成制度にします。また、日本の森林にあった林業機械の開発を国の責任ですすめます。

公共建築物や住宅、土木事業等への国産材の利用を広げる――公共建築物は、これまで木造建築が排除されてきました。不足している木造の設計・建築技術者の育成や木造建築技術の開発・普及にとりくみ、公共建築物木造化法の方針を実行します。また、住宅は新築だけでなくリフォームへの補助や税制上の優遇措置、住宅以外の建築物の木造化、土木事業への新たな利用技術の開発をすすめ、国産材の需要拡大にとりくみます。

木質バイオマスなど多面的な利用をすすめる――「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」を活用した木質バイオマス利用の拡大やバイオエタノールなどの研究開発をすすめ、木材の多面的な利用拡大をすすめます。

森林所有者に再造林できる価格を保障する――国の林業政策の目的に、「林産物の需給および価格の安定」を位置づけ、国有林と公有林による需給調整や搬出コストの削減など、政府が責任をもって再造林できる原木価格が保障できるとりくみをすすめます。

地域資源を活用した就労機会の確保、都市住民との交流をすすめる――山菜や薬草など地域資源を活用した特産品の生産振興や加工・販売などのとりくみや自然環境を活用したレクリーション、保健・休養など都市住民との交流をすすめます。

林業労働者の計画的な育成と待遇改善をはかる――林業は、森林の多面的機能や生態系に応じた育林や伐採などの専門的知識や技術が必要です。国が責任をもって、「緑の雇用事業」の拡充や事業体への支援を強め、系統的な林業労働者の育成にとりくみます。また、安全基準などILOの林業労働基準に即した労働条件や生活条件の改善にとりくみ、安心して働ける環境をつくります。

森林組合など事業体への支援を強める――森林組合員の所有面積は私有林面積の7割、約1100万haです。森林組合は森林所有者の協同組織として、地域の森林整備の中心的な役割を担っています。素材生産業や製材業などとも連携し、地域林業の確立のために積極的な役割がはたせるよう、安定的な施業や管理にとりくめるよう支援を強めます。

森林のCO2吸収力を評価した排出量取引で、山村地域と都市部の連携を強める――国内の排出量の削減を促進するために、森林の整備によるCO2の森林吸収量と、化石燃料の代りに木質バイオマス(生物資源)を使うことによるCO2排出量の削減量を評価して、都市部の企業や自治体の排出削減のとりくみにおけるカーボン・オフセット(炭素排出量の相殺)に活用する制度を本格的に導入し、植林、間伐などの森林整備や木質バイオマスの有効利用の資金を生み出します。

 「地球温暖化対策のための税」の使途に、森林吸収源対策を位置づけ、森林・林業・木材産業における地球温暖化対策の実行に必要な財源を確保します。

国有林の持続的な管理・経営にとりくむ――国有林は、国土面積の2割、森林面積の3割を占め、奥地山岳地帯や水源地帯に広く分布し、8割が保安林に指定され、国土保全や環境保全など国民生活にとっても重要な役割を果たすべき地位にあります。

 わが国最大の林業経営体として、「国民の共有財産」として、管理経営の状態や森林情報の一層の公開をすすめます。

公益的機能を重視した管理経営にとりくむため、技術者の育成確保をはかり、地域自治体・住民との連携をはかり、地域の経済や雇用に配慮した、持続的な管理経営にとりくみます。木材販売にあたっては大企業優先でなく、地域産業との結びつきを強め、適正価格での安定的な販売に努めます。

漁業者の経営安定と資源管理型漁業で水産物の安定供給をはかる

四方を海に囲まれ、変化に富んだ海岸線をもつ日本の漁業は、沿岸、沖合を基本に多様な漁業が営まれ、豊かな魚食文化をはぐくんできました。しかし、東日本大震災による津波被害で、沿岸漁業と水産関連施設が破壊され、東電福島原発事故による放射能汚染が操業と水産物の安全を脅かしています。水産物の輸入と水産物の消費減退や大手スーパーの買い叩きによる生産者価格の低落、燃油や資材価格の上昇による経費の増大など、経営困難な漁業経営が増え、担い手の減少も止まっていません。漁業資源の減少と漁業者の漁業生産量の減少傾向は依然続いていますが、東日本大震災に見舞われた2011年は前年比で10%、特に海面養殖業は22%も大幅に減ってしまいました。

また、世界では、海洋をめぐる国際環境の変化、開発優先のもとでの漁場の悪化、世界的な水産物需要の増大と漁獲能力の増大などによる水産資源の減少が、資源管理を強化させており、水産物の供給を輸入に頼ることはできなくなっています。

 こうしたもとで、世界有数の漁場である東太平洋沿岸の漁業・水産業の復旧を急ぎ、資源の保全・管理に責任をもちながら、漁業・水産業を振興し、国内生産を拡大し水産物の供給を安定させることがきわめて重要になっています。

漁業と水産業を一体にした震災復旧を早急にすすめる――東日本大震災で、沿岸域では基幹産業である漁業と漁場、漁港、冷蔵庫、水産加工、流通など水産業が一体で被害を受けたことが、地域経済と地域社会に大打撃を与えました。共同や効率が優先されるなど選別的な要件を見直すなど、地域・集落での計画・合意を前提に、漁業と水産業を一体で復旧できるよう復興計画、復興予算のあり方を改善します。漁協の再建を支援します。

放射能汚染対策を強化する――東電福島原発事故による放射性物質は、広域な山林、海洋に拡散し、水、土地、海底生物や泥質などを汚染し、多くの魚介類が休漁や販売自粛などに追い込まれ、現在も続いているのが少なくありません。放射能汚染の実態調査をきめ細かく行うとともに、情報の提供などで魚介類の安全を保障し、漁業再開の条件をひろげます。漁業関係者にたいしては、東電による休漁の保障、施設の復旧とともに、操船・漁獲・加工技術の維持・継承のための助成対策を創設します。

魚価安定対策、燃油・資材価格対策を強め、漁業経営を安定させる――漁業経営を安定させ、乱獲を防ぎ、資源の保全をはかる資源管理型漁業をすすめ、政府の責任で価格安定対策を強化します。卸売市場の公正な運営につとめるとともに、相対取引でも大手量販店などの優越的地位を利用した生産コストを無視した買い叩きを規制するルールづくり、魚価の下支えをあわせた「積み立てプラス」の充実など漁業者の所得対策を充実させます。水産資源保全のための休漁・減船に対する補償を国の責任で充実させます。

 石油価格や漁船・漁具、養殖用飼料の価格高騰による経営困難を打開するため、現在、時限立法で措置されている燃油(軽油引取税など)の免税措置を恒久化します。資材価格の安定と省資源型漁船や漁法にたいする援助を強め、消費者価格の安定をはかります。

水産物の消費拡大と魚食文化の普及をはかる――学校給食や公的な給食での魚料理の拡大、地産・地消の振興、伝統的な魚料理の掘り起こしと普及、水産加工品の開発・振興など、健康の増進に役立つ魚食文化の普及で水産物の消費拡大をすすめます。

新規漁業就業者支援制度を創設する――各地の自治体では、新規就業者にたいするさまざまな対策がとられています。国が13年度から導入するとしている新規漁業就業者支援制度を希望者が受けやすい内容に充実・改善します。

大型開発をやめさせ、漁場の保全、操業の安全をはかる――名護市辺野古沖への米軍基地の建設をはじめ干潟を破壊する大型開発をやめさせ、諫早湾への海水導入による干潟の再生など漁場の保全・改善をすすめます。潜水艦事故のような海難事故の根絶や米軍の訓練海域の縮小など、漁船操業の安全をはかります。

漁業・漁村を維持する地域活動を支援する――漁業・漁村の環境や国土保全にはたしている役割をきちんと評価し、「離島漁業支援再生交付金」など、多面的機能を維持・増進する地域活動への支援制度をつくります。

 国の予算の使い方を、公共事業中心から、漁業者の所得補償や販路の確保、地産地消の推進、産地における水産加工の振興などを重視するように改めます。

TPP参加をやめ、資源管理と漁業の振興を保障する貿易ルールの確立をめざす――世界の魚の消費量が増え、漁業資源の減少があきらかなもとで、TPPがめざす関税の全面撤廃や安全基準の緩和、漁業補助金の廃止などは、漁業生産に重大な困難をもたらすことは明らかです。TPP参加を断固阻止するとともに、輸入拡大一辺倒のWTO協定を見直し、適切な輸入規制と漁業者の所得確保など、資源管理と漁業の振興を保障する貿易ルールの確立をめざします。

 マグロ、クジラなど遠洋漁業について、国際的な資源管理を尊重しながら、わが国の魚食文化を守る方向での外交的努力をすすめます。

農林漁業に基盤をおいた農山漁村の再生に取り組む

 農林漁業の衰退を放置し、企業誘致や公共事業、原発などの大型開発に依存した地域づくりは、企業の海外進出、公共事業の激減、原発事故などでゆきづまり、各地で破たんしています。農山漁村の再生には、農林漁業を基盤としながら、生産者・地域住民・消費者との共同をひろげ、地域資源をフルに生かした循環型の経済で、就業や雇用の場を確保することが重要です。

地産地消を重視した地域づくりをすすめる――わが国の農林漁業は、地域ごとにきわめて多様であり、再生の取り組みは地域の自主性を尊重すべきです。「食の安全都市宣言」「地産地消宣言」などをかかげる自治体が各地に生まれています。直売所や産直がにぎわい、高齢者や女性、兼業農家などが元気に参加して、都会の消費者との交流もさかんです。地産地消や食の安全を重視した地域農林業、沿岸漁業の振興をはかります。

地場農林水産物を生かした加工や販売を促進する――農林水産物の生産と販売とともに、地域の資源を生かした加工や販売に力を入れることも、農林水産物の需要を拡大し、地域の雇用を増やし、農漁家の所得を増やすうえで重要です。

農業の「6次産業化」はあくまで農業者主体に――地域資源の有効利用、農業所得の増大につながる農業者の農産物の直売、加工、観光、農家レストランなどの取り組みを積極的に支援します。民間企業と連携する農業の「6次産業化」はあくまで農業者主体を貫き、連携する企業も可能な限り地場企業を重視します。

バイオマスや小水力発電など自然エネルギー開発に力を入れる――地球温暖化対策の一環として、世界ではいま、太陽光・熱、風力、小水力、地熱、バイオマスなど自然エネルギーの開発が進んでいます。過酷な原発事故は、その本格的な普及を切実に求めています。原発ゼロを決断し、農山漁村に豊富にある再生・自然エネルギー資源の積極的な活用を、農山漁村経済や雇用の重要な柱として位置づけ、開発・普及に力を入れます。

過疎集落への支援を思い切って強化する――地域資源を生かした第一次産業の振興とともに、「山の駅」(仮称)など地域にあった生活拠点をつくり、集落を結ぶコミュニティバスの運行、高齢者集落への「集落支援員」の配置などにより、買い物や医療、福祉、教育などの生活に不可欠な最低条件の整備に努めます。こうした対策を講ずる自治体に対し、国の支援を強めます。

鳥獣害対策を抜本的に強める――増え続ける鳥獣被害は、農家の生産意欲を失わせ、集落の衰退に拍車をかけ、それが鳥獣害への対抗力も弱める、という悪循環をもたらしています。根本的には、農林業が成り立ち、農山村で元気に暮らせる条件整備が不可欠ですが、当面、該当する鳥獣の生態や繁殖条件の調査を国の責任で行い、増えすぎる鳥獣を適正な密度に減らす地域や自治体の取り組みを支援します。鳥獣が里山に下りずに生息できる森林環境を整備するとともに国の鳥獣被害対策交付金を大幅に増やし、防護柵・わなの設置、捕獲物の利用など農家や自治体の取り組みへの支援を強めます。

都市づくりに農業を位置づけ、農地税制を抜本的に改めます――都市内の農業と農地の存続を否定する現行の都市計画制度を早急に見直し、農業を都市づくりの大事な柱に位置づけます。「都市農業振興法」(仮称)を制定し、直売所、地産地消、学童農園、体験農園などの取り組みを支援します。現に農業が営まれている農地は農地課税・農地評価を基本にし、作業場なども農地に準じた課税にします。当面、生産緑地の要件を緩和し、相続税納税猶予の制度を維持し、市民農園や屋敷林などにも適用します。

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