もとむら伸子(日本共産党衆議院議員)-
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【12・01・17】八ッ場ダム建設再開に渾身の怒り~日本共産党伊藤ゆうじ群馬県会議員の討論

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 民主党政権の八ッ場ダム建設再開の予算に許せない思いでいっぱいです。

 八ッ場ダム建設の地元はなおさらだと思います。

 群馬県議会で日本共産党の伊藤ゆうじ群馬県会議員が渾身の討論を行っています。ご紹介したいと思います。

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2011/12/16 八ッ場意見書・決議反対討論

 日本共産党を代表して議題となっている「八ッ場ダム建設継続を求める意見書」「同決議」の採択に反対の立場から討論をいたします。

 いま、私たちの社会と政治のあり方は歴史的な岐路に立たされています。高齢化し人口も急減してゆく未来を前に、必要性のなくなった大型公共事業から社会保障へと予算の使い方かを大きく転換させなくてはなりません。政権交代はそうした国民の願いが実現させたものです。

 ところが民主党政権は、国民の期待を裏切りました。八ッ場ダム問題でも、いきなりの「中止」発言が反発を呼ぶと「予断なき検証」を持ち出しましたが、この「検証」はまったくの官僚主導となりました。「建設再開」となるような検証の枠組みを御用学者に決めさせ、八ッ場ダムをつくっている関東地方整備局に「検証」の原案作成を丸投げ。それを御用学者が追認する―――原発の誤りと同じ構図が繰り広げられました。

 案の定、「検証」は虚構と欺瞞に満ちたものになりました。利水では、「水余り」という最も肝心な問題を最初から検証の対象にしませんでした。話になりません。机の上で勝手に想定した富士川からの導水案などと比べるに至っては茶番劇そのものです。

 治水では、八ッ場ダムの洪水削減効果をそれまでの説明の2.6倍に引きのばしてダムの効果をむりやり突出させました。ダムの上流に降った雨にしか効果を発揮しない治水の不確実性を指摘されると、堤防整備も併せてすすめると言い訳する。しかし、何度も指摘したとおり、利根川の堤防改修の予算は、八ッ場ダム建設費に吸い取られる形で減少しつづけているではありませんか。強化が必要な脆弱な堤防は八斗島下流の利根川の60%にも及びます。公共事業費が減少し続けるとき、いま集中してやらなければ危険な堤防をそのまま放置することにつながります。

 今議会でも自民党議員が漏水する堤防の怖さを述べました。それがなぜ八ッ場ダムの必要性へと議論が飛躍するのでしょうか。不安な堤防があるなら、まずそこを補修するのが先決ではありませんか。

 上流・下流の物質の流れを断ち切り、自然環境を大きく破壊するダムによる治水と堤防による治水を同列で論ずるのも誤りです。あらゆる洪水を直接受け止める堤防の補強を最優先すべきことを改めて強調いたします。

 「検証」の欺瞞性は枚挙にいとまがありません。60年間利根川本川での破堤はなく、それによる被害額はゼロなのに、八ッ場ダムがないと毎年4820億円の洪水被害が出るという費用対効果の「検証」などその典型です。

 ここではもう一つだけ触れたい。それはダムにどれだけ土砂が貯まってゆくのか堆砂についての計算です。八ッ場ダムの堆砂を計算するのに近傍類似ダムとして参考にされた霧積ダム。上流に浅間山があり第三紀の火山性の地層の上に建設されているなど極めて類似しています。

 その霧積ダムは建設34年ですが、100年で計算された堆砂容量を超えてすでに124%貯まってしまっている。計画の3.6倍の早さです。莫大な費用をかけて貯まった土砂を運び出さなければダムが役割を果たさなくなります。霧積ダムは県営ダムですから、ずさんな予測をした県の責任が問われます。

 その霧積ダムの土砂補足率―――流れ込んだ土砂のうちダムに堆積する率は85%という実績値です。ところが、八ッ場ダムの土砂補足率は45%という計算がされている。流れ込んだ土砂の半分もたまらないというのです。霧積ダムで痛い目に遭っている群馬県ならば、これは違うと、もっと大きくなるはずだと、ピンと来たはずです。しかし、そういう声は未だに聞こえてきません。

 このような虚構を重ねてまで、なぜ建設再開させたいのか。大手ゼネコンの利益のためでしょうか。官僚らの天下り先の温存のためでしょうか。いずれにしても真実からかけ離れた「検証」は流域住民のためではない。このような虚構でつくられた「検証」によってムダなダムを造らせてはならない、というのが反対の第一の理由です。

 第二の理由は、八ッ場ダムが災害を引き起こす可能性の高い危険なダムだという点です。
 八ッ場ダムのダム湖周辺は脆弱な地質がひろがる地滑り地帯です。群馬県も大規模な地滑り対策をおこなってきました。ダム関連工事がはじまってからも、国道の法面をはじめ何カ所も崩壊が起きて、その都度対策工事が追加されてきました。いかに地盤が弱いかを示しています。代替地も民間の宅地造成ではあり得ない40m近い超高盛土です。

 こうした場所を湖水が満たし、地下水位を大きく上下させることになれば、地滑りを誘発する可能性はとても大きい。しかし、今回の「検証」では、その調査も対策も極めて限定されたものしかやられませんでした。

 全国的に見ても、試験湛水直後に地滑りが起こり、その対策のために完成から10年近く経っても水をためられないダムが相次いでいるではありませんか。地元住民の安全に直接関わる問題です。警鐘をならす科学者らの声を聞き、再調査するべきです。

 八ッ場ダム本体の建設に反対するもう一つの理由は、このダムが地元の人たちの生活再建に結びつかないと考えるからです。清流を集めるわけではない中流域のダムです。富栄養化は避けられないでしょう。夏季は水位が30mは下がり、赤茶けた土肌をさらします。ダム観光が成り立つとは思えないのです。

 一方、ダムが中止となれば、吾妻渓谷はそのまま残ります。すべて国有地となっている水没予定地も活用できます。自然公園、観光牧場、一部は別荘地にしてもいいでしょう。新しい国道・鉄道を使うならば現在の国道は観光道路です。
 私は、こんな光景を思い描きます。

 長野原草津口駅で貸し自転車に乗る。マイカー乗り入れ禁止にした道路を八丁暗がりまでの長い緩やかな下り坂を四季の渓谷美を楽しみながら進む。渓谷を抜けると馬車が待っている。その馬車にのり、再度渓谷美を愛でながらゆっくりと川原湯温泉に向かってゆく…。

 半世紀にわたって辛苦をなめさせられてきた地元のみなさんにとっては、思考の外にある話で、すぐには理解できかねる気持ちもわかります。しかし私は、ダムなしの再建こそ本当に現実的な道であると強く言いたい。そしでダムなし再建の枠組みと展望を一刻も早く示すことを民主党政権に求めます。

 討論の最後に私は、吾妻渓谷をこよなく愛した詩人・若山牧水が90年前に残した一文に触れたいと思います。

 私はどうかこの渓間の林がいつまでもいつまでもこの寂びと深みとを湛えて永久に茂つてゐて呉れることを心から祈るものである。ほんとに土地の有志家といはず群馬縣の當局者といはず、どうか私と同じ心でこのさう廣大でもない森林のために永久の愛護者となつてほしいものである。
 若しこの流を挟んだ森林が無くなるやうなことでもあれば、諸君が自慢して居るこの渓谷は水が涸(か)れたより悲惨なものになるに決つてゐるのだ。 

 私たちはいま、次の世代に何を残せるのか、何を残すべきなのかが問われています。美しい自然、長年にわたって培われてきた文化、地域のコミュニケーション、いろいろあるでしょう。しかし、そこに巨大な負の遺産であるダムは入らないし、決して入れてはいけない。そのために、私たち政治に携わるものが目を見開き、考えを改めなくてはならない、そのことを心からよびかけて、私の討論といたします。

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