2018年4月12日(木) しんぶん赤旗
徹底的調査と検証を要求 本村氏 衆総務委
衆院総務委員会は10日、合併市町村に認めている公共事業などのための「合併特例債」の発行期限を再延長する特例法改正案を全会一致で可決しました。
改正案は、合併特例債の発行可能期間を5年延長し、東日本大震災被災市町村は合併から25年間に、同震災被災地以外の自治体には合併から20年間へと延長します。
日本共産党の本村伸子氏は、被災市町村支援の観点から同案に賛成だとした上で、延長の恩恵を受ける自治体の多くは非被災地であり、「合併推進のための『アメ』の役割を果たしてきた優遇措置のさらなる継続となる」と指摘しました。
さらに、再延長を求める首長会の要望書が「合併による複雑な住民感情が存在する中、住民との合意形成に予想以上に時間を要し、事業進捗(しんちょく)が遅延している案件も発生している」と指摘しているとして、合併時の協定が守られていない愛知県愛西市を例に「合併特例債の再延長が住民合意に基づいて有用に使われているか、徹底的な調査・検証をすべきだ」と要求しました。
野田聖子総務相は、住民の合意形成による町づくりを期待するとしつつ「合併特例債の発行状況調査等を通じて活用状況を把握していく」と述べました。
議事録
○本村委員 日本共産党の本村伸子でございます。
よろしくお願いいたします。
合併特例債の発行期間の対象となる自治体は、まず確認したいんですけれども、全体で幾つなのか、そのうち被災自治体と非被災自治体は幾つか、それぞれお答えをいただきたいと思います。
○山崎政府参考人 お答え申し上げます。
合併特例債の延長の対象となる市町村数は五百五十五団体でございまして、そのうち、東日本大震災の被災市町村数は七十五団体、それ以外の市町村数は四百八十団体となっております。
○本村委員 今お示しをいただきました被災地というのは、東日本大震災の被災を受けた合併市町村ということで、熊本の地震やあるいは九州北部の豪雨の被災地は、この法案の中の被災地の被災自治体ということには含まれておりません。
金額についても確認をしたいというふうに思いますけれども、十二兆円の積算見積りのうち、予定がないのは今二兆円とされておりますけれども、そのうち被災市町村、幾ら使えるのかお示しをいただきたいと思います。
○山崎政府参考人 御指摘の約二兆円のうち、東日本大震災の被災市町村分が約四千億円、それ以外の市町村分が約一兆六千億円となっております。
○本村委員 対象となる市町村の多くは、被災地以外の方が圧倒的に多いということになってまいります。
この法案については、被災市町村を支援するという観点から私どもも賛成をいたしますけれども、しかし、問題点は指摘していかなければいけないということで、質疑を続けたいというふうに思います。
発行期間の延長による恩恵を受けるのは、先ほど来確認をしてきましたけれども、多くは被災地以外の合併市町村でございます。
提案者の方にお伺いをしたいんですけれども、本法案は、前の改正で追加された、被災地以外の合併特例債の発行期間を再延長するものであります。これによって、合併推進のためのあめという役割を果たしてきた優遇措置を更に継続するということになる、そういう認識について、まずお伺いをしたいと思います。
○坂本委員 委員御指摘のとおり、合併特例債は、平成の合併を推進する観点から、手厚い財政措置として設けられたものであると承知しております。
今回の改正は、その発行可能期間を延長するものであります。もっとも、改正案はあくまでも、平成二十八年熊本地震等の相次ぐ大規模災害や、全国的な建設需要の増大、さらには東日本大震災の被災市町村における人口動態の変化等により、合併市町村の市町村建設計画に基づいて行う事業等の実施に支障が生じているという状況にあること、そして、これに加えまして、百六十を超える地方公共団体からの要望があること、このことを踏まえまして、合併特例債の発行可能期間を延長するものであるという点を何とぞ御理解いただきたいというふうに思います。
○本村委員 先ほども、百六十団体から要望があるというお話がありましたけれども、この再延長を求める要望書の中にも、合併による複雑な住民感情が存在する中、住民との合意形成に予想以上に時間を要したことで事業進捗が遅延している案件も発生していますというふうに言われております。
この合併特例債の延長措置が有意義な形で使われたのか、どのように住民の利益になったのか、住民合意に基づいて有用に使われているのか、こういう観点から徹底的な調査、検証が必要だというふうに思いますけれども、総務大臣の見解を伺いたいと思います。
○野田国務大臣 お答えいたします。
合併特例債は、合併した市町村が、合併後の一体性の速やかな確立や均衡ある発展に資するため、市町村建設計画に基づいて実施する公共的施設の整備事業等に活用できるものです。
その活用に当たっては、各市町村の議会における予算審議等を通じ、財政見通し等も踏まえながら、実施する事業の必要性や効果を含めて判断されているものと承知しています。
総務省としても、合併特例債の発行状況調査等を通じてその活用状況の把握に努めており、具体的には、合併市町村の周辺部から中心部に至る道路の建設や、小中学校校舎の耐震化工事、コミュニティー施設の整備、消防防災施設など、地域住民の生活にとって必要不可欠な社会基盤の整備に多く活用されているものと認識をしています。
合併した市町村が合併特例債を有効に活用して、住民の合意形成を図りながら、合併後のまちづくりを着実に進めていくことを期待するとともに、引き続き、合併特例債の発行状況調査等を通じてその活用状況を把握してまいります。
○本村委員 私の地元にも幾つも合併した市町村があるわけですけれども、例えば愛知県の愛西市では、四つの自治体が対等な立場で合併をしたわけですけれども、合併の協定では、四つの役場を残すんだということで分庁方式で合意をされましたけれども、結局、その後、庁舎統合ということになって、合併時に約束したことが守られていない事態となりました。合併特例債を活用して建てられた新庁舎をつくるに当たっては、住民投票を求める、そういう声が大きかったわけですけれども、住民投票もせずに強行をされてしまった。そもそも約束が守られなかった。
役場の機能、それぞれ縮小されまして、出張所も今月廃止というところも出ております。周辺部が切り捨てられているという現実もございます。そして、サービスは低下させないんだというふうに合併時約束をされておりましたけれども、サービスもどんどん悪くなっているという現実がございます。やはり、こういう点もしっかりと見なければいけないというふうに思っております。
自主自立の道を貫いて合併しなかった市町村も被災地となっているケースがございます。被災地の中で、一方は有利な地方債を活用できるけれども、一方ではそれを活用することができないという事態が生まれております。被災地にとって復旧や復興というのはまず最優先されるべきものである、それは合併しなくても、していても同じことだというふうに思います。
合併しなかった被災市町村にも合併特例債と同等の地方債が使えるようにするべきではないかと思いますけれども、総務大臣の見解を伺いたいと思います。
○野田国務大臣 先ほどもお答えしましたが、合併特例債は、合併した市町村が、合併後の一体性の速やかな確立や均衡ある発展に資するため、市町村建設計画に基づいて実施する公共的施設の整備事業等に活用できるものです。
災害により被害を受けた地方自治体の財政負担については、総務省として、被災自治体の実情をよくお伺いしながら、その財政運営に支障が生じないよう、地方交付税や地方債による地方財政措置を講じているところです。
引き続き、総務省が被災自治体の力強い仲間であらねばならないとの強い思いのもと、現場主義を基本に、被災地が置かれている状況や課題をお伺いして、被災地の復旧復興に全力で取り組んでまいります。
○本村委員 ぜひよろしくお願いしたいと思います。
提案者の方にお伺いをいたしますけれども、これは最後の延長法案なんだという御説明を事前に受けました。その根拠についてお示しをいただきたいと思います。
○橘委員 お答え申し上げます。
合併特例債の発行可能期間につきましては、合併特例債が合併市町村の一体感を早期に醸成するためのものであり、余り長期にわたって発行されることは適当でないことから設けられたものであると承知をしております。
今般、合併特例債の発行可能期間を延長するという法改正の要望を多くの地方公共団体からいただいているところでありますが、この要望されている延長幅は五年間であります。
また、合併特例債の発行可能上限額の約十二兆円のうち、相当程度の部分につきましては既に発行済み、又は発行が予定されていると聞いているところであります。
これらをあわせて考えてみれば、今回、五年の延長を行うことで、現在、事業の実施あるいは完了に懸念がある事業についても、ほとんどが完了するものであろうと見込まれます。
このようなことを踏まえまして、私ども提案者といたしまして、今後、合併特例債の発行可能期間のさらなる延長が必要であるとは認識をしていないところであります。
以上であります。
○本村委員 合併特例債を使っての事業をするに当たっては、住民合意が大前提ということを強く申し述べ、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。