2017年6月21日 しんぶん赤旗
人員不足安全脅かす 本村氏
日本共産党の本村伸子議員は7日の衆院国土交通委員会で、航空管制官の業務が増加する一方、人員不足で空の安全が脅かされているとして管制官の増員を求めました。
本村氏は、航空管制官の航空機の取り扱いが1998年時に比べて259万機増加する一方、管制にかかわる職員が全体で668人減少し、管制官は09年のピーク時から77人も減っていると指摘。管制官削減により安全面へのリスクが増えたとする中部国際空港(愛知県)の実態を紹介し、休むことなく管制業務を続ける場合もあり現場から悲鳴が上がっていると訴えました。
石井啓一国交相は「勤務実態の把握に努め、必要な体制を確保していきたい」と答えました。
議事録
○本村(伸)委員 日本共産党の本村伸子です。
空の安全を支える管制官の問題について伺いたいと思います。
管制官は、空港の管制塔とレーダー室での仕事だけではなく、日本全体の航空交通の監視、洋上の航空機を取り扱う航空交通管理センター、そして、日本の上空を四つに分けてそれぞれ担当している航空交通管制部、これは札幌、東京、福岡、那覇にあるわけですけれども、主に高高度を飛行する航空機をレーダーを用いて管制しております。管制官は、英語もレベル4ということで資格取得が義務づけられております。
このほかにも、管制を支える仕事として、航空管制運航情報官、航空管制技術官、航空灯火・電気技術官がいらっしゃいます。こういう方々が、離陸から着陸まで、空の安全を支えてくださっております。
こういう認識を国交省も共有しているというふうに思いますけれども、管制官や情報官、技術官、こういう方々の役割の重要性についてどう認識されているか、お示しいただきたいと思います。
○坂野政府参考人 お答えいたします。
御指摘の航空管制官等、すなわち航空管制官、航空管制運航情報官、航空管制技術官及び航空灯火・電気技術官でございますが、これらの職員は、航空機に対して安全な運航に必要な指示等を行い、航空機の運航に必要な情報提供等を行い、あるいは航空管制等に使用する航空保安無線施設等の整備及び維持管理を行うことなど、さまざまな業務を行っておりまして、これらによりまして、我が国の安全かつ効率的な航空交通を確保する上で必要な業務を担っておるわけでございまして、その役割は重要であると考えております。
○本村(伸)委員 その重要な管制にかかわる皆さんの実態がどうなっているかということですけれども、航空管制延べ取扱機数について、一九九八年から二〇一六年、どのくらいふえているかという点、そして、それに比べて航空管制官等定員は、一九九八年から二〇一七年、ピークと比べて減っているんですけれども、どのくらいに減っているか、管制官の定員、一九九八年から二〇一七年、ピークと比べて今どうなっているか、お示しいただきたいと思います。
○坂野政府参考人 お答え申し上げます。
まず、航空管制の延べ取扱機数については、平成十年から現在までに増加しております。具体的には、全国の航空管制延べ取扱機数は、平成十年は約三百九十三万機、平成二十八年は約六百五十二万機でありまして、この間、約二百五十九万機増加しております。
また、航空管制官等の予算定員でございますが、本年四月一日現在で三千九百九十八名となっており、この定員数はピーク時の平成十四年度に比較して減少しております。
このうち、航空管制官の予算定員については、本年四月一日現在で千九百十九名となっておりまして、この定員数は、ピーク時の平成二十一年度に比較して若干減少しております。
○本村(伸)委員 今お答えをいただきましたけれども、航空管制の延べ取扱機数というのは、離陸をしないで、例えば中国―アメリカ便といったような国際線のように日本の上空を通過する航空機も含んだものだそうですけれども、この航空管制延べ取扱機数というのは、先ほどもお答えがありましたように、一九九八年から直近で二百五十九万機もふえている。一方で、管制官等でいいますと、定員が六百六十八名も減っているという、乖離が激しくなっている異常な事態だというふうに思います。管制官についても、ピーク時が二〇〇九年ですから、二〇一七年と比べますと、七十七名も減っております。
取扱機数はふえているのに管制官が減っているという現状の中で、航空管制の現場では大変ひどい実態になっているということをお示ししていきたいというふうに思うんです。
これまでは、複数の管制官で、お互いにダブルチェック、トリプルチェックを行うことで、リスクを最小限に抑えて、繁忙期ですとか緊急時においても航空の安全、空の安全を確保してきたわけですけれども、管制官が削減されることに伴い、管制官一人当たりの負担業務がふえてしまって、安全に対するリスクが増加して、ヒヤリ・ハットの事例が現場感覚でふえているということを現場の皆さんがおっしゃっているわけです。
悪天候のときなどには、管制処理能力を超えるということで、航空機の遅延が発生して、国民、利用者の皆さんに不利益になっている。削減された現場の管制官の皆さんは、休憩時間を削るなどして対応しているそうですけれども、それも限界に来ているというお話でございました。
今、国を挙げて、国交省も外国人観光客を誘致するということでやっておられますけれども、インバウンドの増加に伴い、航空機の離発着数ですとか取扱機数がふえております。
大臣にお伺いしたいんですけれども、今、この資料にあるように、取扱機数はふえているのに、管制官等の定数、管制官の数は減っているということで、やはり空の安全のためにもこういうことは放置できないと思いますけれども、大臣の答弁をお願いしたいと思います。
○石井国務大臣 航空管制官等の予算定員の見直しに関しましては、航空管制等に使用する航空保安無線施設の性能向上等に伴う維持管理業務の効率化、通信回線の高速、高品質化に伴う空港の対空援助業務の集約化、空港において航空機の位置を正確に把握するための機器であるマルチラテレーション等の新たな管制システムの導入や、衛星を利用した航法であるRNAV等の新たな航法の導入と普及による航空管制官の業務負担の軽減、現在、航空交通管制部で使用しております航空路管制卓システムの導入による管制卓の操作性の向上等、技術の進歩を活用して業務環境の改善を図るとともに、航空交通量が大きく減少する深夜時間帯の要員配置の最適化による勤務体制の見直し等の措置を講じた上で、必要な体制は確保しておりまして、航空交通の安全確保に支障は来していないと考えております。
○本村(伸)委員 今の話を聞いておられたんでしょうか。ヒヤリ・ハット事例がふえている、現場の声をぜひ聞いていただきたいというふうに思うんです。
インバウンドの増加によって国際線の離発着がふえて、LCCの新規参入もふえている状況のもとで、日本の空域、管制方式にふなれなパイロットや英語がなかなか通じないパイロットがふえているそうで、一機当たりの交信する回数がふえているという点も指摘されておりますけれども、この点、国交省、つかんでおられますでしょうか。
○坂野政府参考人 お答えいたします。
国際民間航空条約において、各締約国は、自国の許可を受けた航空運送事業者の操縦士が、利用する空域、経路、空港について十分な知識を持つよう担保することが求められております。また、各締約国は、国際標準に基づき、国際航行を行う操縦士に対し英語能力を証明することを義務づけられております。
国土交通省としても、外国航空会社が我が国に乗り入れる際、各締約国が当該会社に運航認可をしていることをもって、各社が国際標準を満足していることを確認しております。したがって、我が国に乗り入れる操縦士についても、必要な知識及び英語能力を有しているものと考えております。
○本村(伸)委員 現場の職員の方がおっしゃっていたことと今部長がおっしゃっていることが違うんですけれども、一機当たり交信する回数がふえているということは現場感覚としてあるわけです。その実態を部長がつかんでいないということだというふうに思います。
訪日外国人の方々の多くは航空機を利用します。外国人観光客の皆さんをふやすのであれば、管制官も大幅にふやすのが当然だというふうに思います。
二〇二〇年四千万人、二〇三〇年六千万人、こういうインバウンドの過大な目標は、安全が大前提でなければならないというふうに思います。二〇二〇年四千万人、二〇三〇年六千万人になりますと、管制延べ取扱機数はどのくらいふえるというふうに予測しているのか、それに見合う管制官等の定員増、養成、採用はどのような計画になっていくのか、端的にお示しいただきたいと思います。
○坂野政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど御指摘があった観光ビジョンでは、二〇二〇年に四千万人、二〇三〇年で六千万人に増加させるとの目標を掲げておりますが、この旅行者の九割以上が航空機を利用する実態にある中、この目標の実現のためには航空交通量の処理能力の拡大が重要な課題でございまして、このため、私どもとしては、国内の管制空域の抜本的再編、いわゆる上下分離を段階的に実施しまして、管制取扱機数を現状より約二十万機増加させることとしております。
ただし、これらの個々の航空機が実際に飛行する具体的な経路、空域等を予測することは困難でございまして、御質問にございました管制延べ取扱機数、これは航空交通管制部及び空港事務所等の管制機関が取り扱うこととなる機数でございますが、この機数及びこれに対応した航空管制官の必要な要員数について、現時点ではお示しすることはできません。
○本村(伸)委員 現場の声を、ぜひ部長にも、そして大臣にも聞いていただきたいんです。
管制官の養成には時間がかかるわけです。訪日外国人はどんどんふえていくということですから、それに見合った管制官の養成を計画的に進めていただきたいというふうに思うんです。
管制官をふやしたいというふうに思っても、ネックとなりますのが、総定員法に基づく機械的に公務員の数を減らす計画があるわけですけれども、取扱機数は大幅にふえているわけで、これからもふえていくわけで、にもかかわらず、それに対して定員は減っていくということになれば、空の安全自体が守れないということになるんです。
現場が疲弊しているからこそ、私はこういう質問をさせていただいているんです。空の安全についても、正確な運航のためにも、定員削減の計画は即時中止して、空の安全のために頑張っている管制官の定員を大幅にふやすことが当たり前だというふうに思います。
地域によるアンバランスもあるということも指摘をさせていただきたいと思います。
中部国際空港で働く方にもお話をお伺いしました。中部国際空港では、管制官の人数が減らされて、労働強化になっているというお話をお伺いいたしました。
管制官は、ミスが許されない、緊張度が高い勤務ですし、年々業務は複雑化して繁忙度が高くなっているという声もございます。そして、二十四時間稼働している官署ですと、夜勤もある、毎日違う出勤時間だ、心身に与えるストレス度というのは相当高いというふうに思います。
私がこの質問をしようというふうに思ったのは、現場の方からお話を聞いて、本当に過労死してしまうのではないかというふうに思ったからこそ、この質問をしているんです。そういうことを受けとめていただきたいというふうに思うんです。
中部国際空港や関西国際空港については、時間がありませんので、次の、資料の二を見ていただきたいんですけれども、これは関空と中部国際空港の資料を出させていただいております。
中部でいいますと、二〇一二年の十五万一千機から、二〇一六年は十七万一千機と、二万機ふえております。関空でいいますと、二〇一二年の三十四万七千機から、二〇一六年は四十一万九千機と、七万二千機ふえております。にもかかわらず、中部でいうと、管制官は八十二名から七十五名と七名減らされております。関空でいうと百四十九名から百三十五名と十四名減らされております。
資料の三を見ていただきますと、詳しく各空港を見ていただきますと、羽田とか那覇とか、こういうところは管制官がふえております。こういうところは離発着もかなりふえておりますので、そこのふえたところでも大変だというふうに聞いておりますので、ここの一層の人員増も必要だというふうに思います。
そのことを前提にしてなんですけれども、取扱機数がふえている中部、関空で管制官をなぜ減らすんですか。大臣、これはおかしいというふうに思いますけれども、答弁をお願いしたいと思います。
○石井国務大臣 今委員御指摘のとおり、中部空港や関西空港においては、平成二十四年から航空管制取扱機数が増加している一方、航空管制官の予算定員は減少しております。
これは、両空港におきまして勤務体制の見直しですとか新しい管制システム導入等による業務負荷の軽減を行ったことに加えまして、両空港が海上に整備された比較的新しい空港であって、駐機場が十分に確保されており、地上走行する航空機がふくそうする度合いが低いこと、滑走路と旅客ターミナルの位置関係から、航空機による滑走路の横断がないこと、空港周辺に十分な空域が確保されているといった特徴を有しておりまして、他の主要空港と比較して、航空管制業務の困難さに影響を与える要因が異なることによるものでございます。
○本村(伸)委員 空の安全のために、そして働く皆さんの健康や命のために、管制官を減らすのではなくふやすことが、インバウンド、インバウンドと言うのであれば、ふやすことが肝要だ。これは空の安全のために申し上げているんです。
人手不足を補うために、先ほどお話がいろいろありましたけれども、昼間の人員を厚くして夜薄くすることをやっているということですけれども、例えば中部国際空港でいいますと、少ない人員の体制の時間帯、夜間に業務量が増加したり、あるいは早朝の時間帯に航空機の離発着の訓練が設定されるなど、負担も重くなっている。夜間や早朝に突発的な事案が発生した場合に十分対応できないという不安のお声をお伺いしております。
また、一九九七年、ネイチャーという雑誌に学術論文が出たんですけれども、夜勤というのは酒気帯びと同じような心身状態になるということが掲載されております。現場からは、前と比べてより心身への悪影響を与える状況になっているというお声をお伺いいたします。
また、取扱機数だけでは数字にあらわれない管制業務についても考慮に入れるべきだというふうに思うんです。先日も小型機が墜落する事故がございました。こういう不測の事態にも対応することを考慮しながら、管制官は日々業務をやっているというふうに思います。
そして、中部国際空港でいえば、小牧基地なんかもありまして、自衛隊機が空港付近に来たり、あるいは小型ヘリも来て、定期便と比べて不規則な動きをする航空機が多いわけです。そういうことも、やはり管制官にとっては大変な業務になっております。
そして、パイロットの養成も、今、ふやすということで、中部国際空港で訓練飛行も行っているということで、タッチ・アンド・ゴーなんかの訓練もしている。こういうことに新人管制官も当たらなければいけない。そういう中で、管制官が減らされて、現場から悲鳴が上がっているわけです。
大臣には、こういうきめ細かいところまでしっかりと見て、中部国際空港や関空などの管制官を減らしているところを、しっかりとふやしていただきたいというふうに思います。今の余裕のない状況のもとでさらに取扱機数がふえれば、本当に人が回らない、空の安全が確保できない。だからこそ現場の声が上がっているんです。現場の声に、大臣、応えてください。
○石井国務大臣 全国の航空管制官等を対象といたします職員満足度調査や、幹部職員が一般職員から直接職場環境等の実情を聴取するダイレクトトークを行っておりまして、国土交通省としましては、航空管制官等の現場の実情把握に努めてきたところでございます。
ちなみに、この満足度調査におきまして、中部空港事務所の満足度は全国の平均を若干上回っている状況であるということは御紹介しておきたいと思います。
今後も引き続き、航空交通の実態や航空管制官の勤務実態の把握に努め、必要な体制をしっかり確保していきたいと考えております。
○本村(伸)委員 空の安全を支えるそうした方々の声にしっかりと応えていただきたいということを強く申し述べて、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。