2017年5月10日(水) しんぶん赤旗
リニア工事の住民通知は前日夕方 JR東海は不誠実 衆院国交委 本村議員
日本共産党の本村伸子議員は、9日の衆院国土交通委員会で、長野県大鹿村でのリニア新幹線トンネル掘削工事開始(4月27日)の際、住民や地元自治体への周知が前日夕方以降だったのは「あまりに不誠実だ」と強く抗議しました。
工事が始まったのは同村釜沢地区の除山(のぞきやま)非常口。掘削残土の搬出先が決まらないまま強行されました。
本村氏は、自然環境・生活環境への影響が甚大な工事なのに、県と村に開始が通知されたのは前日の夕方で、村民には希望者への前日夜のメールだけだったと指摘。「石井啓一国交相が繰り返し答弁してきた『住民への丁寧な説明』に、JR東海は反している」として石井氏の見解をただしました。石井氏は「通知が遅かったとの批判もある」と認めつつ、「引き続き指導監督する」と従来の答弁に終始しました。
本村氏はまた、リニア工事で毎秒2トン減水するとされる大井川について、「(減水する)全量を恒久的に」川へ戻すよう求めた川勝平太静岡県知事への同社の回答は不十分だとして、同社に対し「全量・恒久的に」と文書で約束させるよう国交省に要求しました。
議事録
○本村(伸)委員 日本共産党の本村伸子でございます。
リニアの問題について質問をさせていただきます。
まず最初に、石井大臣、長野県下伊那郡大鹿村に訪問をされたことがございますでしょうか。この大鹿村は、日本で最も美しい村の一つだと言われております。大臣は、この美しい大鹿村で静かに暮らしてみえる方々にリニア工事によって多大な迷惑をかけるという認識がございますでしょうか。
○石井国務大臣 トンネル工事が行われる地区におきましては、トンネルの掘削に必要な工事用作業ヤードの整備や、発生する土を搬出するための工事用車両の通行等が発生いたします。このため、工事を行う際には、事業説明会や工事説明会等により、地元の方々に具体的な工事の内容やスケジュール等について十分に理解を得ることが必要となります。
大鹿村におきましても、JR東海により、これまで五回の事業説明会、六回の工事説明会が行われ、昨年十一月の起工式を経て、トンネル掘削工事が進められていると承知しております。
私自身は大鹿村を訪問したことはございませんが、国土交通省といたしましても、平成二十七年二月に、鉄道局の担当課長が大鹿村を訪れまして、村長を初めとする地元の方々と意見交換をしたほか、二十七年九月に、来庁された村長や村議会議長等から鉄道局長が要望を受ける等の対応を行ってきたとの報告を受けております。
○本村(伸)委員 大臣には、ぜひ大鹿村に行っていただいて、住民の皆さんの声を聞いていただきたいというふうに思います。
四月二十七日ですけれども、リニアのトンネル掘削が大鹿村で始まりました。南アルプストンネル(長野工区)八・四キロの作業用トンネル、釜沢地区の除山非常口、坑口の部分です。
このトンネル掘削について、大鹿村当局に告げられたのはいつでしょうか。そして、大鹿村の住民の皆さんに知らされたのはいつか、大臣、御存じでしょうか。そして、長野県に告げられたのはいつでしょうか。
○奥田政府参考人 お答え申し上げます。
リニア中央新幹線につきましては、先生御案内のとおり、平成二十六年十月十七日に工事実施計画の認可をいたしまして、南アルプストンネル新設(長野工区)の工事では、大鹿村に三つの非常口、小渋川非常口、除山非常口、釜沢非常口が設けられる計画となっております。このうち、除山非常口において、四月二十七日に斜坑トンネルを掘削する工事が開始されたところでございます。
南アルプストンネル新設(長野工区)の工事が開始されるまでの経緯につきましても若干付言させていただきますと、平成二十六年十一月から事業説明会を五回、平成二十八年九月から工事説明会を六回実施の後に、平成二十八年十一月一日に起工式が小渋川非常口で行われ、同じく七日より、同非常口での作業ヤードの整備が開始されたということでございます。
このうち、除山非常口の工事につきましては、平成二十八年十月十一日に、除山非常口に近接する釜沢地区において、地元の方々への工事説明会が開催されまして、工事内容の説明が行われ、その後、同じく十二月十九日に、大鹿村や長野県の関係者及び村内の各自治会長から成ります大鹿村リニア連絡協議会が開催されまして、除山非常口の概略の工事工程などについての説明が行われました。
また、ことし三月二十二日に開催されました第二回の大鹿村リニア連絡協議会では、JR東海から、トンネルの掘削は、早ければ四月中、若干延びた場合は五月上旬から開始したいとの説明が行われたというふうに聞いております。
また、同協議会の概要につきましては、四月十七日に大鹿村で発行されました「リニア中央新幹線情報ナンバー二十六」に掲載されまして、村内全戸に配布されたと承知しております。この中では、除山非常口の掘削は四月から五月に開始するというふうにされております。
その後、斜坑掘削のための準備が進められまして、四月二十六日には、トンネル坑口付近の斜面を安定させるためのモルタル吹きつけ工事や、斜坑のトンネル壁面を支える支保工の部材の据えつけが完了いたしまして、掘削が開始できる状況となったことから、翌日からトンネル掘削を開始する旨を、二十六日の十七時ごろにJR東海から長野県及び大鹿村に対し電話で伝えまして、二十六日十八時から夜にかけまして、施工会社から釜沢地区の住民の方々にメールにて連絡をしたというふうに聞いております。
○本村(伸)委員 長野県の初めてのリニアの掘削工事で、具体的に村当局の皆さんに知らされたのは、前日の夕方五時ぐらいに電話で連絡があったと。そして、大鹿村の住民の皆さんに対しては、メール配信を希望した方のみ、しかも、私もそのメールを読ませていただきましたけれども、初の掘削であるということがわからない、判別できないような文章で、前日夜のメール配信があったわけでございます。
釜沢地区の皆さんは、発破作業などが始まると、騒音とか振動とか、被害に遭う可能性が高いわけです。それなのに、こういう、前日の夜、夕方お知らせをするというやり方は、やはりこれは不誠実なやり方だというふうに思います。そして、絶対に許すことはできないというふうに思います。釜沢地区の自治会長の方だって、取材で初めて知ったというふうに、知らされていなかったわけです。
大臣は、この委員会の私のリニアの質問に対して何度も答弁をいただいておりますけれども、例えば、二〇一六年三月三十日の答弁では、「これまで以上に地元の理解と協力を得ることが不可欠」こうお答えになっております。そして、二〇一五年十月の工事実施計画認可の際にJR東海社長に対して指示しましたように、地元住民への丁寧な説明を行うこと、「JR東海を指導監督してまいります。」と言っておりますけれども、JR東海は全く守っていないわけです。丁寧な説明、住民の皆さんの理解と協力ということに反しているのではないですか。大臣、お答えをいただきたいと思います。
○石井国務大臣 リニア中央新幹線の建設事業が円滑に実施されるためには、地元の理解と協力を得ることが不可欠と考えております。
除山非常口におけるトンネル掘削工事につきましては、JR東海は、工事スケジュールの概要について、工事説明会や地元の協議会等で説明しているとの報告を受けております。
一方、今回のトンネル掘削工事では、工事開始の通知のタイミングが遅かったとの批判もあることから、JR東海においては、このような批判を受けることがないよう、地元の理解と協力を得ることにより一層努めていただきたいと思っております。
国土交通省といたしましては、引き続き、JR東海に対しまして、地元住民等に丁寧に説明をしながら、安全かつ確実に施工が行えるよう、指導監督してまいりたいと存じます。
○本村(伸)委員 釜沢地区の自治会長さんも、住民への影響が大きな掘削の開始をこうした形で事前に伝えているという姿勢は、真面目に住民に向き合っているとは思えない、こういう発言をされております。そして、大鹿村の村長さんは、発破など、影響が大きい作業を始める際は、もっと事前に連絡をもらわないと困るというふうにおっしゃっているわけです。
私が質問するたびに、大臣は、JR東海を指導監督してまいります、丁寧な説明、地元の理解と協力を得るというふうに何度も何度も答弁しておりますけれども、一体何回JR東海に指導したんですか。誰が、いつ、何回、どのような指導をしたのか、お答えをいただきたいと思います。
○奥田政府参考人 お答え申し上げます。
今お話ありました、誰が、いつ、どのように指導したかということについては、済みません、今ちょっと手元に資料がございませんけれども、いずれにいたしましても、リニア中央新幹線の建設事業が円滑に実施されるためには、地元の理解と協力を得ることが不可欠でございます。
今回の事案を踏まえまして、JR東海においては、さらに丁寧な対応を心がけ、地元住民等に丁寧に説明しながら、安全かつ確実な施工が行われるよう、引き続き指導監督してまいりたいというふうに考えております。
○本村(伸)委員 国交省が、いつ、誰が、何回、どのように指導したのかというのを資料を出していただきたいと思います。局長、お願いしたいと思います。
○奥田政府参考人 検討いたします。
○本村(伸)委員 ぜひ出していただきたいというふうに思います。
除山非常口、坑口から出された残土の持っていき場というのはもう決まっているんでしょうか。
○奥田政府参考人 お答えいたします。
JR東海によりますと、リニア中央新幹線南アルプストンネルの除山非常口から搬出されます発生土の最終的な置き場につきましては、長野県から提示された候補地リストをもとに、現在、地元関係者との調整でありますとか、現地での環境調査などを行っているというふうに聞いております。
なお、一点ちょっと御説明申し上げますと、除山非常口からの建設発生土の搬出につきましては、搬出ルートとして想定されております主要道路国道百五十二号線と結びます、県道赤石岳公園線の幅員が狭く、大型運搬車両の通行が難しい状況のため、JR東海は、同非常口からの発生土を国道百五十二号に搬出する方法といたしまして、除山非常口からの発生土を除山非常口の近傍に設けられた仮置き場に仮置きし、国道百五十二号までの距離が近い小渋川非常口と釜沢非常口との間の先進導坑を先行して整備いたしまして、当該トンネルの貫通後に、仮置きしてある発生土を釜沢非常口から当該トンネルを経由して小渋川非常口まで運搬する。また、小渋川非常口から国道百五十二号を経由して最終的な置き場に運搬する。小渋川非常口から国道百五十二号までの間においても、集落の中心を通過しないよう、小渋川の左岸に工事用道路を設け、運搬するとの手法を予定しているということでございます。
このため、除山非常口からの発生土の最終的な置き場への搬出は、平成三十一年度以降になる見込みということでございます。
国土交通省といたしましては、環境影響評価法に基づく国土交通大臣意見で求めました、発生土置き場の適切な管理でありますとか有効利用先の確保など、建設発生土の処理が適切になされるよう、JR東海を指導監督したいというふうに思っております。
○本村(伸)委員 除山坑口の付近に仮置き場をつくるというふうに言っておりますけれども、そこが最終の残土置き場になるのではないかということで、地元の皆さんは不安に思っているわけです。そして、大鹿村村内で説明がJR東海からあったときに、松川のところで受け入れがあるんだというような虚偽の説明もあったわけです。残土の持っていき先も最終的なものは決まっていないのに、こうやって工事を住民の皆さんを無視してやるというのは本当に無責任だというふうに思います。大鹿村の皆さんを軽視したこういうやり方は絶対に許されないというふうに思います。
何度も指導や監督をされているというふうに思いますけれども、大臣、今度こそ是正をさせていただきたいと思うんです。住民の皆さん全員が参加できる説明会を開き、掘削の開始や今後の見通し、工事の影響などを詳細に説明するのが、ここからやり直すというのが筋だというふうに思いますけれども、大臣、答弁をお願いしたいと思います。
○石井国務大臣 除山非常口におけるトンネル掘削工事につきましては、非常口が設けられる大鹿村において、事業説明会が五回、工事説明会が六回開催された後に起工式が行われました。その後、地元での二回の連絡協議会で工事スケジュール等が説明され、工事に着手されたと承知しております。
一方で、今回のトンネル掘削工事では、工事開始の通知のタイミングが遅かったとの批判もございますので、JR東海においては、地元の理解と協力を得ることにより一層努めていただきたいと考えております。
国土交通省といたしましても、今回の事案を踏まえまして、引き続き、JR東海に対しまして、地元住民等に丁寧に説明しながら、安全かつ確実に施工が行われるよう、指導監督してまいりたいと存じます。
○本村(伸)委員 まだ大臣が直接JR東海に指導していないというふうにもお聞きしておりますけれども、確実に、改めてJR東海に対して文書で指導していただきたいというふうに思います。
次に、静岡県の大井川の減水の問題についてお伺いをしたいというふうに思います。
大井川は、リニア工事によって、毎秒二トン、水が減ってしまうということになりますけれども、毎秒二トンというのは、大井川の流域の八市二町、藤枝市、焼津市、島田市、牧之原市、掛川市、袋井市、菊川市、御前崎市、吉田町、そして川根本町の水利権の量に匹敵する量でございます。地域の皆さんにとっては、まさに死活問題になっております。
四月三日、静岡県が、環境影響評価準備書に関する知事意見を補完する、環境影響評価法に基づく知事意見を出しました。静岡県では、南アルプスをぶち抜くトンネル工事で発生する湧水について、静岡県知事が、全量を恒久的に大井川に戻すことを求めております。
四月二十七日、JR東海が回答したと思いますけれども、その回答はどのようなものだったか、お示しいただきたいと思います。
○奥田政府参考人 お答え申し上げます。
リニア中央新幹線の工事におきまして、JR東海は、大井川流域の水資源への影響の低減を図るため、平成二十六年十二月に、学識経験者により構成される大井川水資源検討委員会を設置いたしまして、平成二十七年十一月の第四回委員会において、大井川流域の水資源に対する環境保全措置として導水路トンネルの設置等を行うことが取りまとめられたところでございます。
この委員会での議論を踏まえまして、JR東海は、静岡県環境影響評価条例等に基づきまして、導水路トンネル等に係る調査及び影響検討結果をまとめた事後調査報告書を本年一月に静岡県知事に送付いたしました。
この事後調査報告書に対して、静岡県知事は、本年四月三日、JR東海に対しまして、「本県境界内で発生するトンネル湧水は、」「本県にとっては貴重な水資源の賦存量の一部」であり、「溶存成分等の水質や水温に問題がないことを確認した上で、全量を恒久的かつ確実に大井川に戻すことを早期に表明すること。」といった意見を提出しております。
これに対しまして、本年四月二十七日、JR東海は、静岡県知事意見に対する回答といたしまして、
大井川に関する歴史的な経緯や、その水が流域の方々にとって極めて貴重な水資源であることについては十分に認識しております。また、中央新幹線の建設によって大井川中下流域の方々が水利用に影響があるのではないかとの懸念を持っていることも承知しております。
環境影響評価書での予測結果は、何も対策を実施していない条件下での計算結果であり、実際のトンネル施工に当たって、さまざまな環境保全措置を実施し、河川流量への影響の程度をできる限り低減してまいります。
大井川の水資源に関する環境保全措置については、大井川水資源検討委員会において真摯な議論を重ねていただきました。その結果、導水路トンネルを設置し、必要に応じてポンプアップすることによりトンネル湧水を大井川に流して、これまでと同様の取水ができるようにするなど、中下流域の水資源利用に影響が生じないようにすることといたしました。
工事着手後は、トンネル湧水量や河川の流量をきめ細かく計測し、得られたデータに基づき大井川水資源検討委員会において影響の程度を確認しながら、ポンプ設備の仕様や配置、運用などの詳細について検討を深めてまいります。また、この間の調査及び検討の状況については、適宜、静岡県を初めとした関係者に説明いたします。中下流域の水利用に影響を生じさせないよう、これらについて誠心誠意取り組んでまいります。
などと回答したところでございます。
○本村(伸)委員 済みません、それは、静岡県が求めた、「トンネル湧水を、溶存成分等の水質や水温に問題がないことを確認した上で、全量を恒久的かつ確実に大井川に戻す」ということなんでしょうか。
○西銘委員長 奥田鉄道局長、時間が来ていますので、簡潔にお願いします。
○奥田政府参考人 JR東海による知事意見への回答は今申し上げたようなところでございまして、中下流域の水利用に影響を生じさせないよう、これらについて誠心誠意取り組むということが述べられておりますが、国土交通省といたしましては、環境影響評価における国土交通大臣意見で述べたように、トンネル工事に伴う河川水の利用への影響を回避することが重要であるというふうに考えております。
JR東海には、静岡県を初めとする関係者と十分に調整を図りながら、知事意見に対する回答の中で示された事項を確実に実行していただきたいというふうに考えております。
○本村(伸)委員 JR東海に、しっかりと文書で、全量を恒久的かつ確実に大井川に戻すということを約束させていただきたいということを強く申し述べまして、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。