2017年4月21日(金) しんぶん赤旗
要配慮施設 一人夜勤の改善を 本村氏 災害時に逃げ遅れ 衆院国交委
日本共産党の本村伸子議員は19日の衆院国土交通委員会で、災害時の「逃げ遅れゼロ」を保障するために、医療・介護・福祉など「要配慮者利用施設」の職員体制を拡充するよう求めました。
昨年の台風10号による水害で入所者9人が亡くなった岩手県岩泉町の高齢者福祉施設では、被災時の職員は1人でした。本村氏は、日本医療労働組合連合会の夜勤実態調査でもグループホーム、小規模多機能型施設などですべて一人夜勤との結果だったことなどをあげ、「一人夜勤は、防災・防犯の上でも、日常の安全・安心のためにも改善しなければならない」と指摘。現場では「災害などがあったら一緒に死ぬしかない」という声が上がっていると紹介し、「夜間体制強化のための予算をふやし、一人夜勤を許さない基準に見直してほしい」と訴えました。
石井啓一国交相は「厚労省と連携し、要配慮者利用施設における必要な防災体制の確保を支援していく」と述べました。
本村氏は、要配慮者利用施設のうち避難確保計画を策定した施設は2.3%しかないことを指摘。水防法改正で、避難確保計画の策定や避難訓練を義務化する以上、政府として支援するよう求めました。石井国交相は「防災安全交付金により市町村への支援していく」と述べました。
議事録
○本村(伸)委員 日本共産党の本村伸子でございます。
水防法について質問をいたします。
今回の法改正では、洪水や土砂災害のリスクが高い社会福祉施設、学校、医療施設などの要配慮者利用施設に対して、避難確保計画の作成、そして避難訓練の実施を義務づける改正が盛り込まれております。
昨年、台風十号によって、岩手県岩泉町の小本川沿いの高齢者福祉施設、グループホームにおいて、入居者九名の方々が逃げおくれ、亡くなられました。亡くなられた方々に、心からの哀悼の意を申し上げたいと思います。そして、被害に遭われた方々に、心からお見舞いを申し上げたいと思います。
逃げおくれゼロのためにも抜本的な対策が必要だということは言うまでもないというふうに思いますけれども、まず、厚生労働省にお伺いをいたします。
避難確保計画の作成、そして避難訓練実施を義務づけるとしても、実際に逃げおくれゼロにできるかどうかということが問題だというふうに思うんです。岩泉町の高齢者福祉施設、グループホームでは、被災時にはどういう職員態勢だったのか、お答えをいただきたいと思います。
○坂口政府参考人 お答え申し上げます。
昨年の台風第十号によりまして、今ございました岩手県岩泉町の認知症高齢者グループホームが被災し、利用者の方々が亡くなられるという痛ましい事態があったと認識をしております。
当該被災したグループホームにおきましては、水害を想定した非常災害に関する計画が策定されていなかったとか、あるいは、当時発令されていた避難準備情報の意味合いを理解していなかったという事情もあったと承知しております。
今委員の方からお尋ねのグループホームの当時の職員態勢でございますけれども、台風十号の接近に伴いまして、職員の帰宅が困難になることを考慮して帰宅させており、管理者一名であったということで承知をしております。
○本村(伸)委員 やはり一名だったということですけれども、施設の職員の方々の人数が減る夜間の問題についてお伺いをしたいというふうに思うんです。
日本医療労働組合連合会、医労連の皆さんの二〇一六年の介護施設夜勤実態調査の結果を見てみますと、グループホームですとか、小規模多機能型の施設ですとか、看護小規模多機能型施設で、回答のあった全ての事業所で一人夜勤というふうになっております。また、特別養護老人ホームや老人保健施設、短期入所でも一人夜勤が散見されまして、回答のあった職場の二割弱が一人夜勤だったということでございます。
この一人夜勤という状況は、防災上も防犯上も、そして何よりも日常の安心、安全のためにも、改善しなければならないというふうに思います。
具体的に御紹介いたしますけれども、例えば、秋田県の介護職員の方の声です。
定員十六名のショートステイで、夜勤は職員一人、十六時半から九時の十六時間半の勤務です。十九時半から翌朝七時まで本当に一人。早番の職員の顔を見ると本当に安心します。認知症のない方はまずいません。休憩二時間が設定されていても、一人夜勤でどうとれというのでしょう。コールや排せつ介助、徘回の利用者さん対応、転倒しないように走り回っているのが現実で、体も気持ちも休まる時間がありません。
こういう実態があちこちであるということです。
東京都内の特別養護老人ホームが朝日新聞にも紹介されておりましたけれども、例えば、夜八時半から翌朝七時まで、四十七名の方々を二人の職員でケアしているという状況で、夜勤中の呼び出しコールは九十回を超えるという、必死に皆さんが働いているという状況でございます。
こういう現状で本当に災害時に避難できるのかという問題があるというふうに思います。避難できると考えているのか、厚生労働省にお伺いしたいと思います。
○坂口政府参考人 お答え申し上げます。
介護サービスにおきましては、利用者の状態に応じて適切なサービスが提供されるように人員配置を定めておりまして、例えば、認知症のグループホームにおきましては、夜勤職員を一ユニットに一人以上配置するように義務づけております。このほか、夜間に職員を手厚く配置した場合には、報酬上の加算措置というものも設けてございます。
また、お尋ねの災害時における対応でございますけれども、やはり、災害時における対応につきましては、あらかじめ、関係機関や地域関係者との連携も含めまして十分な対策を講じて、利用者の安全を最優先に考えて早目早目に対応するということが大切だと考えております。このため、各サービスの運営基準等におきまして、非常災害に対します具体的な計画を立てて、非常災害時の関係機関への通報、連携体制の整備ということを定めてございます。
加えまして、事業者に対しましては、あらかじめその計画に災害時の人員体制や関係機関との連携体制を決めておく、避難訓練を実施して計画の検証、見直しを行う、それから、計画の策定の際には地域関係者と連携協力して課題や対応策を共有するということについて、対応できるような取り組みをお願いしているというところでございます。
○本村(伸)委員 危険な、災害時にリスクを負うような一人夜勤というのは、やはりなくさないといけないというふうに思うんです。
地元の愛知県内の医療の現場の方々や介護の現場の方々のお話をお伺いしますと、やはり、とりわけ夜間は一人勤務も多くて、災害などがあったら一緒に死ぬしかないというふうにおっしゃっておりました。日々必死に頑張っている方々に、こういう思いを絶対にさせてはならないというふうに思うんですね。
避難確保計画の作成や避難訓練の実施を義務づけるというのであれば、やはり、夜間であっても確実に避難できる、逃げおくれゼロを保障する職員体制がどうしても必要だというふうに思います。避難確保計画、避難訓練が義務化される新たな段階になるわけですから、夜間の職員をふやすなどの体制強化、そしてそのための予算をふやすこと、介護や障害者福祉など社会福祉施設で一人夜勤を許さない基準をつくっていただきたいというふうに思いますけれども、厚生労働省、お願いしたいと思います。
○坂口政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど高齢者のサービスについてもお答えしましたけれども、高齢者のみならず、障害者、児童等の入所、入居系のサービス等におきましては、最低基準としまして、利用人数に応じて一定数以上の夜間に勤務する職員等の配置を行うということも規定しております。
また、先ほど申し上げましたように、サービスあるいは施設の種類によっては、夜間の手厚い人員配置というものを報酬でありましたり措置費というようなもので評価する、加算ということでの夜勤体制の強化ということも図っておるところでございます。
実際の各サービス等におきます夜勤の体制につきましては、先ほど申し上げましたけれども、利用者の状況あるいは地域との連携状況も考慮した上で対応されているものと承知をしておりまして、非常時の災害対策計画を策定して、避難訓練等も実施するということも求めておるところでございます。
ですから、福祉サービス等におきます夜勤体制につきましては、今回の水防法改正の内容を正しく理解していただくのはもちろんのことでございますけれども、こうした取り組みを含めまして、災害が起こった際の利用者の安全が確保されるように対応を図るということが重要であると考えております。
○本村(伸)委員 今、いろいろ加算があるというふうにおっしゃいましたけれども、介護施設夜勤実態調査の結果を見ましても、グループホームや小規模多機能型施設では、全てが、そういう加算をとらずに、一人夜勤ということにあるわけです。加算をとって人をふやして、では、採算がとれるのかということで、事業として成り立たないから、加算して人が配置できないという現実もあるというふうに思うんですね。そういう点でも、厚生労働省としてしっかりと基準をつくっていただいて、予算をふやしていただきたいというふうに思うんです。
国土交通大臣に次にお伺いをしますけれども、国交省、国土交通大臣の責任として、今回、避難確保計画、避難訓練の義務化がなされるわけですから、厚生労働省、厚生労働大臣とも連携して、医療の現場、介護の現場、障害福祉の現場、児童福祉の現場、そして生活保護の方々が必要があって入所されている施設もございますけれども、そうした現場や学校の現場で、防災上も、本当に必要な体制、職員の数が夜間もとれるように、ぜひ協力体制を要請していただいて、体制をしっかりとしていただきたいんですけれども、大臣、お願いしたいと思います。
○石井国務大臣 要配慮者利用施設の現場におきまして、水害時の避難に必要な防災体制を確保することは重要でございます。
国土交通省では、施設の管理者等に水害の危険性や水害に対する防災体制の必要性等を認識していただくための説明会を、厚生労働省や都道府県等と連携して全国で開催しているところであります。そこで得られた知見も活用いたしまして、施設においては避難確保計画を作成することとなりますが、その過程で、水害時の避難に必要な防災体制が検討されることとなります。
また、計画に基づく訓練を実施することで、施設の防災体制を担う職員の技術力が向上するものと考えております。特に、小規模な施設の場合では、地域の防災体制の中で施設の避難活動を行うことが有効な場合があると考えられ、計画作成や訓練を通じて、自治会等の地域と連携した防災体制を構築することも重要と考えております。
国土交通省といたしましては、引き続き、厚生労働省等とも連携し、要配慮者利用施設における必要な防災体制の確保を支援してまいりたいと考えております。
○本村(伸)委員 少なくとも一人夜勤の状況をなくすためにも、体制強化を、国交省、厚生労働省連携してつくっていただきたい。必ずやっていただきたいというふうに思います。
そもそも、洪水や土砂災害のリスクが高い地域に要配慮者利用施設をつくらせない規制も必要だというふうに思います。少なくとも水害が想定される地域では、つくらせないか、もしつくるのであれば、床上浸水しない状況を、かさ上げなどしながら、水没しないように施設を建てるなどの規制が必要だというふうに思います。
国交省が出しております「新たなステージに対応した防災・減災のあり方」の中でも、「自然災害から命を守るためには、災害の発生の危険性が高い区域にはできるだけ人が住まないようにすることが重要である」というふうに書かれているわけですから、とりわけ、高齢者や障害者や子供たち、病気の方々が過ごす福祉施設や医療施設、学校などの要配慮者利用施設は、洪水や土砂災害のリスクが高い地域につくらせない規制が必要だというふうに思います。
災害弱者の方々にはそもそもリスクの少ないところに住んでいただく誘導策あるいは規制、こうしたことを、国交大臣として真剣に検討を始めていただきたい、そして実施をしていただきたいと思いますけれども、答弁をお願いしたいと思います。
○石井国務大臣 水害や土砂災害のリスクを踏まえた適切な土地利用の推進のためには災害のリスク情報の共有が重要であることから、水防法に基づく浸水想定区域図や家屋倒壊等氾濫想定区域等の公表、土砂災害防止法に基づく土砂災害警戒区域の指定等を進めているところであります。
また、浸水想定区域や土砂災害警戒区域内にある土地の取引の際には、災害リスク情報を提供すること等を不動産関連事業者等へ求めているところでございます。
これらの取り組みによりまして、災害リスク情報が十分考慮された適切な土地利用が図られることを推進してまいりたいと考えております。
○本村(伸)委員 国交省が出している「新たなステージに対応した防災・減災のあり方」にも、「災害の発生の危険性が高い区域にはできるだけ人が住まないようにすることが重要である」という認識が示されているわけですから、とりわけ災害弱者の方々にはやはり命を守る具体策が必要だというふうに思いますので、ぜひこの点、進めていただきたいというふうに思います。
次に、改めて確認をしますけれども、今回、避難確保計画の作成あるいは避難訓練の実施を義務づけられる要配慮者利用施設というのは全国でどのくらいあり、現在、避難確保計画を持っている施設、避難訓練をやっている施設はどのくらいあるのか、お示しをいただきたいと思います。
そして、二〇二一年までに一〇〇%を目指すというふうになっておりますけれども、どのように実現するのか、お答えをいただきたいと思います。
○山田政府参考人 お答えいたします。
水防法等に基づく要配慮者利用施設におけます避難確保計画の作成及び訓練の実施につきましては、市町村地域防災計画に位置づけられている施設が対象となります。
水防法に基づく施設は、平成二十八年三月末で三万一千二百八施設ありまして、うち七百十六施設で計画が作成され、計画に基づき訓練が実施された施設は二百三十七施設でございます。
また、土砂災害防止法に基づく施設は、平成二十八年三月末時点で七千三百二十五施設ありまして、うち千二百九十二施設で計画が作成され、訓練が実施された施設は五百六十九施設でございます。
多くの要配慮者利用施設では、既に火災や地震に対する避難計画が作成されておりまして、水害等に対する避難確保計画は、これらの計画に必要な事項を追加して作成することも可能だと考えております。
また、これまでも、水害や土砂災害のリスクの高い区域に所在いたします要配慮者利用施設における計画作成を促進するため、平成二十五年の水防法改正による努力義務の創設、計画作成のための手引等の公表、厚生労働省や都道府県等と連携した説明会の開催等の措置を行ってきたところでございます。
今後は、さらに、簡易な入力フォームを通して避難確保計画を作成できるようにする手引の充実、それから、地方公共団体が適切に計画作成を指導できる、関係機関と連携した点検用マニュアルの作成、そしてモデルとなる地域において関係機関と施設管理者等が連携して避難確保計画を検討、作成し、そこで得られた効果的な避難等に関する知見を市町村に提供する等の支援を、福祉部局等の関係機関と連携して推進してまいりたいと思っております。
これらのさまざまな取り組みを講じることによりまして、二〇二一年までに一〇〇%の計画作成の実現を目指して支援してまいりたいと考えております。
○本村(伸)委員 ありがとうございます。
私は東海ブロック選出なんですけれども、国交省の資料の中でも、例えば愛知県には、対象の要配慮者利用施設は千三百四十五施設ありますけれども、避難確保計画は二十一施設しかつくっておりません。一・五六%ということです。静岡県では七百九十一施設で六施設、岐阜県では千三百六施設で二十一施設、三重県では、四百十二施設ありまして、ゼロ施設でございます。
避難確保計画の策定や避難訓練を各施設が問題なく実施できるように、市町村が主体といっても、やはり法律で義務化するわけですから、政府としてもしっかりと支援をしていかなければいけないというふうに思います。
国交省は、市町村任せにせず、各施設の実態を把握した上で、避難確保計画ですとか避難訓練を実施、策定するために、人が足りなければ人を派遣するですとか、財政的な支援が必要であれば財政的支援をする、体制強化もしっかりとしていただきたいというふうに思います。これまでも地方事務所に災害情報普及支援室というものがあったようなんですけれども、今言いましたように、避難確保計画の策定も全く進んでいなかったわけですから、こうした体制強化もお願いしたいというふうに思います。
時間がないので、ちょっと二問一緒に質問させていただきたいんですけれども、もう一つ国交省にお願いをしておきたいのが堤防についてなんです。
国交省の現場の職員の方々にお話をお伺いしますと、堤防決壊を防ぐ日常的な予算がじわじわと減らされているということもお伺いをいたします。堤防の草刈りの回数も減ってしまっている。堤防の草刈りというのは、軽視されがちですけれども大事な予算なんだ、草を刈って、堤防がひび割れていないかとかをチェックする上でも大事な予算なんだと職員の方々が強調しております。堤防の草刈りを怠りますと、ミミズがすむようになり、そしてモグラが発生して堤防が穴だらけになり、空洞化して、結局、堤防が弱くなるということもあるんだと現場の職員の方々が強調しておられました。
日常的な草刈りなどの堤防のメンテナンスのお金がじわじわ減るようなことがあってはならないというふうに思います。こういう日常的な基本的な予算をふやしていただくということ、そして、国がこういう状況であれば、地方自治体が管理している河川というのも大変な状況だというふうに思いますので、地方自治体の河川堤防の維持管理についても、やはり国がしっかりと支援をするべきだということを質問させていただきたいと思います。
○石井国務大臣 まず、要配慮者利用施設における避難確保計画の作成や訓練の実施につきましては、先ほど局長から申し上げたようなさまざまな支援策に加えまして、防災・安全交付金により市町村へ支援をしてまいります。
防災・安全交付金は、ハード整備とあわせて行われる要配慮者利用施設の計画作成や訓練といったソフト対策に係る費用の補助等を市町村が行う場合には、効果促進事業として、その費用について市町村への補助が可能であります。今年度より、支援対象を、ハード整備を実施する河川の沿川のみならず、ハード整備を実施する河川の流域内のどの河川の沿川でも可能としたところでございます。
また、維持管理ですが、平成二十五年に、河川法に、堤防を含む河川管理施設等の維持または修繕に関する技術的基準が位置づけられまして、河川法施行令に具体的な技術的基準が定められました。さらに、必要となる最低限の維持管理を行えるよう、堤防等の河川管理施設の点検のための要領等の技術マニュアルを整えたところであります。
これらの基準に基づく維持管理を適正に行うため、国の管理する河川の維持管理に係る必要な予算の確保に努めておるところでありまして、平成二十二年度以降、平成二十九年度まで、毎年増額となっているところでございます。
○本村(伸)委員 ありがとうございました。