もとむら伸子(日本共産党衆議院議員)-
国会質問

質問日:2017年 4月 14日 第193国会 国土交通委員会

宅配運転手の働かせ方問題

2017年4月17日(月) しんぶん赤旗

過酷宅配運転手 是正を 本村議員 指導・実態調査や規制を要求

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(写真)質問する本村伸子議員=14日、衆院国交委

 日本共産党の本村伸子議員は14日の衆院国土交通委員会で、佐川急便が荷物を他の事業者に委託し、運転手を過酷な労働条件で働かせていた問題を取り上げ、改善を政府に求めました。

 佐川急便は、荷主から依頼された荷物を有限会社アドバンスに委託し、軽自動車の運転手に配達を丸投げしていました。委託料金の契約に運転手は異を挟めず、月100時間以上の残業、賃金は月13万円程度という条件で、体調を崩して病院に運ばれました。

 本村氏は、禁止されている労働者供給事業が疑われるとして調査を要求。厚生労働省は「一般論」として、禁止されている労働者供給事業に該当する恐れのある事案を把握した場合には「必要な調査や指導、是正をはかる」と答弁しました。

 本村氏は、禁止されている労働者供給事業のような軽自動車運転手の手配事業者がはびこっているとして、元請への指導と実態調査、規制を要求。石井啓一国交相は「取引実態の把握に努め、必要に応じて適正化を推進していきたい」と答弁しました。

議事録

○本村(伸)委員 日本共産党の本村伸子でございます。
 本日は、熊本地震から一年という日です。亡くなられた方々に、心からの哀悼の意を申し上げます。被害に遭われた方々に、心からお見舞いを申し上げたいというふうに思います。
 きょうは、三月三日の質問に続いて、佐川急便の宅急便を配達している軽自動車ドライバーの問題について質問をさせていただきたいというふうに思います。
 資料を一枚お配りしているかというふうに思いますけれども、この資料でも見ていただいてわかるように、荷主から佐川急便に行きまして、その下請ということでアドバンスという会社が入っておりまして、そこが配達をしないで、Bさんという個人事業主、形ばかり個人事業主にさせられたBさんという方が、丸投げをされて、宅急便の荷物を配達しているという状況でございます。
 先日も申し上げましたように、朝七時ごろ出勤をいたしまして、帰り、夜は九時、十時まで働いて、手取りは大体月額十三万円そこそこであると。残業代を計算してみますと、過労死ラインを軽く超える月百時間以上の残業もあったということでございます。長時間、低賃金の働かせ方の中で、Bさんは吐血をして救急車で病院に運ばれてしまったということでございます。
 この丸投げをしていた有限会社アドバンスという会社とBさんの契約というものがどういうものだったかということを見ておきたいんです。
 まず国交省の方にお聞きをいたしますけれども、運送委託契約書のモデルは、運賃・料金の改定の条文がどういうものなのかということをお示しいただきたいと思います。

○藤井政府参考人 お答えいたします。
 国土交通省におきましては、安全運行の確保の観点から、運送契約に関して荷主や貨物自動車運送事業者が書面により共有するべき必要最小限の事項や書面契約のモデル様式を定めたトラック運送業における書面化推進ガイドラインを平成二十六年一月に策定し、公表しているところでございます。
 運賃及び料金につきましては、このガイドラインの中で必要記載事項として定められているところであります。さらに、書面契約のモデル様式にも運賃・料金の記載欄が設けられているところでございます。

○本村(伸)委員 モデルのケースを具体的におっしゃってはいただけなかったんですけれども、例えば、委託料金を改定しようとするときは、何カ月前までに書面をもって申し入れ、そして、甲乙でいうと、下請の側の乙の書面による同意を得なければならないというようなモデルケースが推奨されるというふうに思うんです。
 このアドバンスの委託取引基本契約書の「委託料金の設定」という部分の条文は大変ひどいものでございます。甲がアドバンス、乙がBさんというふうに考えていただきたいんですけれども、
 一 委託料金の設定は、甲が甲の顧客先から収受する金額をもとに甲が決定するものとし、乙は異議を挟まない。
 二 甲は経済的変動・業務委託内容の変更等により、取引条件の変更を余儀なくされた場合、設定済み委託料金を予告無く変更することがある。この場合乙は異議無く受託するものとする。
 つまりは、この委託料金は、アドバンスがアドバンスの顧客先から収受する金額をもとにアドバンスが決定するから、Bさんは異論を挟まない。アドバンスは「経済的変動・業務委託内容の変更等により、取引条件の変更を余儀なくされた場合、設定済み委託料金を予告無く変更することがある。この場合」Bさんは「異議無く受託するものとする。」という内容です。これは、請負契約という点から見ますと、請負の委託料金というのは交渉できるというふうに思います。そうやって自由に事業者の方々が判断できるはずだというふうに思います。
 やはりこういう契約書をはびこらせてはいけないというふうに思いますけれども、これは大臣にお伺いをしたいと思います。そして、こういう契約書をはびこらせないためにも、元請にもしっかりと、元請が受けた荷物ですから、公正な取引が行われるように指導していただきたいというふうに思いますけれども、大臣、お願いしたいと思います。

○石井国務大臣 一般に、運送契約の締結に当たりましては、契約自由の原則のもと、契約当事者同士が十分な協議の上でその内容を定めるべきものと認識をしております。
 一方で、トラック運送契約に関しましては、下請構造が多層にわたる場合もあることから、その健全化が課題であると認識をしております。
 このため、国土交通省では、昨年十一月に、下請多層構造など、元請と下請における運送事業者間の取引条件改善に向けた取り組みを進めることも念頭に、業界団体に対しまして、トラック運送業の適正取引推進のための自主行動計画を策定するよう要請いたしました。
 これを受けまして、全日本トラック協会におきまして、全ての取引について原則二次下請までに制限すること、下請事業者の原価を考慮した運賃・料金設定を行うとともに、燃料や人件費などの上昇分を考慮したコスト負担のルールを設定することなどを内容とする適正取引推進等に向けた自主行動計画を三月九日に策定し、佐川急便を初めとする大手トラック運送事業者十九社が率先して実施することとしたところであります。
 今後、この自主行動計画に基づいた取り組みの着実な実施がなされるよう、国土交通省といたしましても、引き続き大手運送事業者に対して働きかけを行ってまいりたいと存じます。

○本村(伸)委員 採用前に示された条件説明の資料にはこう書いてございました。弊社レギュラードライバーの場合、四十四万二千円、こういう、四十四万二千円もうかるかのようなことを書いて、甘いことを前面に出して、契約をさせたわけでございます。
 資料をもう一度見ていただきたいんです。
 佐川急便とBさんの関係ですけれども、Bさんは、朝七時ごろ出勤し、佐川急便の端末を受け取り、荷物の入力、積み込み、そして出かけて、こんにちは、佐川急便ですと言って配達をする。配達の途中に新しい荷物の連絡が佐川急便から入り、駆けつける。佐川急便に戻って、配達済み、持ち戻りの荷物の入力、一日の集計報告、佐川急便に営業報告。そして、退社は夜九時、十時ということで、どう見ても指揮命令の関係は佐川急便の労働者のような働かせ方でございます。
 そして、Bさんとアドバンスの関係ですけれども、個人事業主ということで形ばかりにはなっているんですけれども、委託料金はアドバンスが決定するからBさんは異論を挟まないということや、アドバンスは設定済みの委託料金を予告なく変更することがあるけれども、Bさんは異論なく受託しろというわけでございます。そして、さまざまな罰金で拘束をしておりますし、最初に軽自動車を買わせるということで、借金もあるわけでございます。
 そもそも、四十四万円稼げるかのようなことを言って、実際は手取りが月額十三万円、過労死ラインを超える労働時間、休憩もなかなかとれないという現実がございました。まさに奴隷的な働かせ方だというふうに思います。これは支配従属関係にあると言えるというふうに思います。
 先日も指摘をしましたけれども、労働基準法のコメンタールの中では、形式上請負のような形をとっていても、その実態において使用従属関係が認められるときは、当該関係は労働関係であり、当該請負人は本条の労働者であることになる、労働者性を実態として見るんだということが書かれているわけでございます。
 このBさんの状況は、まさに禁止されている労働者供給事業ではないかというふうに思うんですけれども、厚生労働省には、この点、佐川急便、アドバンスを含め、調査をしていただきたいというふうに思いますけれども、答弁をお願いしたいと思います。

○鈴木政府参考人 お答え申し上げます。
 個別の事案でございますのでお答えは差し控えさせていただきますけれども、一般論といたしましては、供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させる、こういう場合には、労働者派遣に該当する場合を除きまして、御指摘のような労働者供給という格好になるわけでございます。
 この場合、労働者供給を業として行いますことにつきましては、労働者供給事業の許可を受けた労働組合等を除きまして、職業安定法により禁止されてございます。
 このような禁止されている労働者供給事業に該当するおそれのある事案を把握した場合には、都道府県労働局におきまして、必要な調査を行った上で、労働者供給事業者に対しまして指導をし、是正を図ることとなります。

○本村(伸)委員 ありがとうございます。
 Bさんのことは、ぜひ労働者性を認めていただき、本来労働者として支払われるべき残業代、労働時間もちゃんと把握をして、社会保険や有給休暇など、労働者として救済をしていただきたいというふうに思います。
 アドバンスという会社は東海地方最大の会社なんだということで求人広告でも書かれておりますけれども、大臣、先ほど言ったように、禁止されている労働者供給事業のようなことをやっている、軽自動車ドライバーを手配する事業者がはびこっている、こういう現状でいいのかという点、大臣の認識を伺いたいと思います。

○石井国務大臣 今御指摘いただいた個別の事案については承知をしておりませんが、一般論として申し上げれば、貨物軽自動車運送事業者が自社で請け負った運送業務を他の貨物軽自動車運送事業者に再委託することは、貨物自動車運送事業法上禁じられておらないところでございます。

○本村(伸)委員 先ほど来言っておりますけれども、Bさんの労働者性を認めてほしいという質問ですので、そうした機械的な答弁は少しおかしいかなというふうに思います。
 宅配便の配達というのは、Bさんの話ではなく、もう業界全体の話として今からは議論をしたいというふうに思います。
 このアドバンスのように、佐川急便の宅配の仕事を請け負い、そして、その仕事をみずから行わず、さらに個人事業主というふうにされている下請にさせるという形は、宅配便の配達においては、佐川急便だけではなく、大変多い状況になっておりまして、愛労連、愛知の労働組合の皆さんのところにも次々と相談に来るわけでございます。
 軽自動車の黒ナンバーの車の事業者は、国会の周りでもよく見かけますけれども、一九九三年度には約八万五千だったものが、二〇一五年度には十五万五千以上と高水準に今なっているというふうに思います。
 それで、確認をしたいんですけれども、軽自動車ドライバー、貨物軽自動車運送事業者に荷物を丸投げする事業者は貨物利用運送事業にならないというふうに聞いておりますけれども、なぜならないのか、お聞きをしたいと思います。

○重田政府参考人 お答えいたします。
 委員の御指摘のとおり、貨物利用運送事業法という法律におきましては、一般貨物自動車運送事業者など実運送の事業者が行う運送を利用いたしまして貨物の運送を行う事業を貨物利用運送事業といたしまして、登録や許可等の一定の規制を設けておりますが、貨物軽自動車運送事業の行う運送を利用して貨物の運送を行う事業は、貨物利用運送事業には該当しないこととされております。
 これは、軽自動車の特性上、活動の範囲が地理的、輸送量的、輸送品目的に限定されておりまして、当該行為を利用する行為についても同様に限定的であるということ、また、貨物自動車運送事業法自身も、貨物軽自動車運送事業の参入を事後届け出制とするなど、非常に緩やかな規制にとどめていることから、貨物利用運送事業法の規制を行う必要性、合理性が乏しいとして、規制対象から除外しているものでございます。

○本村(伸)委員 軽か軽じゃないかということだけでそうやって排除するというのは、実態から見てやはりおかしいというふうに思います。
 貨物利用運送事業ならば、大臣がやる気になれば、運賃・料金が利用者の利便とか公共の利益を阻害する場合は、国交大臣が業務改善命令も出せるはずなんですね。大臣がやる気になればの話ですけれども、やることができるんです。しかし、そういう規制から全く排除されてしまっているという現実があるというふうに思います。
 この軽自動車ドライバー、貨物軽自動車運送事業に荷物を丸投げする事業者は、先ほど来議論しておりますように、貨物利用運送事業に入らないわけですけれども、業として誰が指導監督をしているのか、誰がどのように指導監督するのか、お示しをいただきたいと思います。

○藤井政府参考人 お答えいたします。
 トラック運送業における適正取引の確保は、安全運行の確保の観点からも重要な課題であることから、トラック運送業を所管する国土交通省としても、必要な対策を講じることとしているところでございます。
 なお、仮に独占禁止法または下請法の規定に違反する事実がある場合には、同法を所管する公正取引委員会または中小企業庁にそうした行為の排除、是正を図る権限があると承知をしております。

○本村(伸)委員 ですから、貨物利用運送事業としてされていたならば業務改善命令などできるんですけれども、そういう意味では、誰も指導監督をしていないという問題がこういう状況を蔓延させているんだということを申し上げたいというふうに思います。
 みずから運送の仕事はせず、形式上個人事業者の働く方々、そうやってされている方々を、元請にあっせん、仲介して、供給、派遣をしている事業。佐川から請負代金を払ってもらって、形式上個人事業主にされている働く方々に、配達個数をもとにして計算した報酬を支払っている。佐川急便から直接配達を請け負った請負代金よりも、アドバンスから受け取る報酬は少なくなっているんですね。一二%ピンはねをされているわけですけれども、こういう個人事業主にピンはねをして支払う事業がいいというふうに大臣は考えているんでしょうか。

○石井国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、貨物軽自動車運送事業者が自社で請け負った運送委託業務を他の貨物軽自動車運送事業者に再委託することは、法律上禁止されておりません。
 ただ、再委託の貨物軽自動車運送事業者のドライバーの適正な労働条件や安全運行を確保するためには、再委託に係る取引条件を適正なものにする必要があるものと考えております。
 こういった観点から、国土交通省といたしましては、貨物軽自動車運送事業者や宅配事業者に対し、適正な運賃の設定や契約書面の作成、交付等について定めた、トラック運送業における下請・荷主適正取引推進ガイドラインについて改めて周知徹底を図るなど、引き続き、適正な取引条件の確保に向けた取り組みを行ってまいりたいと存じます。

○本村(伸)委員 最後にお聞きをしますけれども、このアドバンスのような、ピンはねをして、ほかの人に軽自動車で配達をさせ、そして手配して丸投げをするような仕事は、日本全国でどのくらいあって、どういう実態なのかという実態把握をしておりますでしょうか。もし実態を把握していないのであれば、ちゃんと実態を把握して、しっかりとルールをつくって規制をするべきではないかというふうに思いますけれども、大臣、お願いしたいと思います。

○石井国務大臣 先ほど申し上げましたように、貨物軽自動車運送事業者が自社で請け負った運送業務を他の貨物軽自動車運送事業者に再委託することは、法律上特段の規制がございませんので、国土交通省としては、御指摘のような事業者の数については把握をしておりません。
 この貨物軽自動車運送事業者については、活動の範囲が限定されている等の軽自動車の特性を踏まえて届け出制としており、貨物軽自動車運送事業者間の運送業務の委託については特段の規制を設けない等、一般の貨物自動車運送事業と比較すると、緩やかな規制のもとに事業運営が認められているところであります。
 一方、長時間労働の是正等により働き方改革を推進し、安全運行を確保するためには、貨物軽自動車運送事業につきましても、取引条件の適正化は重要な課題であると考えております。
 国土交通省といたしましては、本省及び全国各地の地方運輸局に設置をいたしましたトラック輸送適正取引相談窓口の活用等により、この貨物軽自動車運送事業の取引実態の把握に努めるとともに、必要に応じ、その適正化を推進していきたいと考えております。

○本村(伸)委員 終わります。ありがとうございました。

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参考資料

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