2017年3月15日(水) しんぶん赤旗
無法な戦争に弾薬提供 本村議員批判 ACSA協定審議入り 衆院本会議
日米、日豪、日英それぞれの物品役務相互提供協定(ACSA)3案が14日の衆院本会議で審議入りしました。日本共産党の本村伸子議員が代表質問に立ち、「協定3案は、米国の無法な戦争を同盟国が支援する態勢をいっそう強化するものだ」と批判しました。
今回のACSA協定は、2015年に政府・与党が強行成立させた安保法制の内容を反映させるためのもの。重要影響事態などに対象を拡大し、あらゆる場面で弾薬の提供を可能にします。
本村氏は「他国への爆撃に出撃しようとしている米軍戦闘機への弾薬の提供や空中給油は、武力行使との一体化そのものだ」と指摘。「安保法制とACSA協定がアジア情勢に与える影響も重大だ」として、「軍事態勢の強化は、周辺諸国に脅威を与え、軍事対軍事の悪循環を招くだけだ」と批判しました。
そのうえで、本村氏は「二度と戦争を繰り返さないことを誓った戦後の出発点に立ち返り、東アジアに平和的環境をつくる外交こそ日本の進むべき道だ」と述べました。
安倍晋三首相は「ACSA協定は、平和安全法制の内容を反映するものであり、わが国の平和と安全を確保し、世界の平和と安全に貢献するうえで不可欠のもの」などと述べました。
議事録
○本村伸子君 私は、日本共産党を代表して、日米、日豪、日英ACSA協定三案について安倍総理に質問いたします。(拍手)
初めに、政府は、三月十日、南スーダンから陸上自衛隊の施設部隊を五月末に撤収させることを決めました。
問題はその理由です。
政府は、活動に一定の区切りがついたと言いますが、南スーダンでは、昨年七月に首都ジュバで大規模な戦闘が発生して以降も、各地で戦闘、略奪、暴行が頻発し、新たな反政府勢力が生まれ、国連が民族間の大量虐殺の危険まで指摘をしてきました。内戦の激化の危険性を認め、直ちに自衛隊を南スーダンから撤退させるべきです。
そもそも、戦争放棄、戦力不保持、交戦権否認を規定した憲法九条は、自衛隊が海外で軍事活動を行うことを想定しておりません。紛争当事者間の和平合意が何度も破られ、全土で戦闘が頻発する国への自衛隊の派遣、ましてや、そこでの駆けつけ警護や宿営地共同防護が憲法九条に真っ向から反することは明らかではありませんか。
国連PKOは、この二十年余りの間に大きく変化をしています。内政不干渉と中立性の原則、自衛以外の武力行使を認めない伝統的PKOから、住民保護のためなら、国連自身が交戦主体となって武力を行使し、事実上先制攻撃まで行うようになっています。こうした国連PKOの現実と憲法九条が両立しないことは明らかではありませんか。
憲法九条は、国際紛争の平和的解決という国連憲章の原則をさらに発展させた、国際的にも先駆的な意義を持つものです。こうした憲法を持つ日本は、紛争の平和的解決と非軍事の民生支援、人道支援で積極的な役割を果たすべきです。
次に、ACSA協定です。
今回のACSA、すなわち物品役務相互提供協定は、二〇一五年九月に政府・与党が強行成立させた安保法制の内容を反映させるものです。重要影響事態や国際平和共同対処事態、集団的自衛権の行使を認めた存立危機事態などに対象を拡大し、あらゆる場面で弾薬の提供を可能にするものです。
圧倒的多数の憲法研究者を初め、歴代の内閣法制局長官、最高裁判所の長官まで、こぞって憲法違反と指摘したものです。憲法違反の安保法制、戦争法と一体の協定など、断じて容認できません。
ACSAは、世界じゅうに展開する米軍がいつでもどこでも兵たん支援を確保できる体制をつくろうと、アメリカが一九八〇年代から世界各国と締結を進めてきたものです。今回の協定もその一環にほかなりません。
政府は、二〇〇三年、アメリカ、イギリスが始めた国連憲章違反のイラク戦争を支持し、イラクに自衛隊を派遣しました。航空自衛隊C130輸送機は、米軍の武装した兵士、物資をバグダッドに輸送し、陸上自衛隊はサマワで、治安維持を担うイギリス軍、オーストラリア軍と連携して活動しました。
今回の協定三案は、こうしたアメリカの無法な戦争を同盟国が支援する体制を一層強化するものではありませんか。
補給や輸送、修理、整備などの活動は、武力行使と一体不可分の兵たんそのものであり、戦争行為の必要不可欠の要素をなすものです。
さらに、従来の非戦闘地域の建前さえも取り払い、政府自身が憲法上慎重な検討を要するとしてきたアメリカ軍などに対する弾薬の提供や、戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機に対する給油、整備を可能とするのが安保法制と今回の協定です。
他国への爆撃に今にも出撃しようとしているアメリカ軍の戦闘機に弾薬を提供し、空中給油を行うことは、政府自身が認めないとしてきた武力行使との一体化そのものではありませんか。政府は、現に戦闘が行われている現場ではないから一体化しないと言いますが、このようなごまかしは国民を愚弄するものです。
名古屋高等裁判所は、二〇〇八年、イラクにおける航空自衛隊の空輸活動は、他国による武力行使と一体化した行動で、憲法九条一項に違反するとの判断を下しました。政府はこのことを重く受けとめるべきです。答弁を求めます。
今、改めて、アメリカによるアフガニスタン報復戦争とイラク戦争がテロと戦争の悪循環をつくり出してきたことを思い起こすべきです。
アメリカのトランプ新政権は、特定の国からの入国を制限する大統領令に署名をし、過激組織ISを壊滅させるとして、シリアに米軍部隊を増派しようとしています。軍事作戦の拡大では、罪のない民間の人々の犠牲を増大させるばかりか、さらなる憎しみの連鎖を招くだけです。
政府は、軍事作戦の拡大に反対し、いかなる軍事行動にも自衛隊を参加させるべきではありません。国際社会と協力をして、資金や武器の流れを遮断してテロ組織を抑え込み、シリアとイラクの内戦終結に向けた政治的、外交的努力を強めることを求めます。
安保法制とACSAがアジア情勢に与える影響も重大です。
アメリカ政府は、二〇一一年以降、リバランスの名のもとに、米軍兵力をアジア太平洋地域に重点的に配備し、同盟国の軍事的役割の拡大と多国間の共同行動を重視してきました。昨年九月、グアムから朝鮮半島に向かう米軍の戦略爆撃機を自衛隊と韓国軍の戦闘機が順次護衛しました。
日本全国で米軍と自衛隊の一体化、基地の強化が進められています。とりわけ沖縄では、県民の皆さんの民意を踏みにじって、辺野古の米軍新基地建設を強行しています。絶対に許すことはできません。
今回の協定をてこにして、米軍の前方展開拠点を抱える日本を足場に、アメリカと同盟国の軍事体制を一層強化しようとしているのではありませんか。こうした軍事体制の強化は、周辺諸国に脅威を与え、軍事対軍事の悪循環を招くだけではありませんか。
北朝鮮による核・ミサイル開発は、国連安保理決議と六カ国協議の共同声明、日朝平壌宣言に違反する暴挙であり、断じて認められません。国際社会が一致して、国連安保理決議に沿って、平和的、外交的に解決するべきです。
ところが、トランプ政権は、対北朝鮮政策をめぐって、軍事力の行使を含むあらゆる選択肢を検討していることを表明しています。朝鮮半島と日本で甚大な犠牲を生む軍事的な選択肢など、絶対にとらせてはなりません。
日本国憲法は、日本で三百十万人、アジアで二千万人ものとうとい命を奪った侵略戦争の反省の上につくられたものです。二度と戦争を繰り返さないことを誓った戦後の出発点に立ち返り、東アジアに平和的環境をつくる外交こそ、日本の進むべき道です。
憲法違反の安保法制を廃止し、ACSA協定を撤回することを強く求め、質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣安倍晋三君登壇〕
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 本村伸子議員にお答えをいたします。
南スーダンPKOについてお尋ねがありました。
南スーダンの治安状況は現在も極めて厳しいものがありますが、PKOの参加五原則は一貫して満たされていると考えています。また、直ちに撤収を要する状況にもなく、現実に目を向けていないとの御指摘は当たりません。
駆けつけ警護及び宿営地の共同防護における武器の使用については、厳格な警察比例の原則に基づき、相手に危害を与える射撃が許されるのは、正当防衛または緊急避難の場合に限られます。自衛隊が、憲法第九条の禁ずる武力の行使を行うことはありません。
国連自体が交戦主体となって武力を行使し、事実上の先制攻撃まで行うようになっているとの御指摘は、意味するところが必ずしも明らかではありませんが、いずれにせよ、我が国における全てのPKOの派遣は、憲法第九条のもと、参加五原則を満たす場合にのみ実施してきたものであり、これは今後も変わりません。
南スーダンでは、自衛隊は、この五年余りの間、首都ジュバから各地へ通ずる幹線道路の整備など、これまでの我が国のPKO活動の中で最大規模の実績を積み重ねてきたことから、自衛隊が担当するジュバでの施設活動については、一定の区切りをつけることができると考えています。
これまでも、我が国は、自衛隊派遣のみならず、人道支援や民生支援などで大きな貢献を行い、南スーダンや国連を初め国際社会から高い評価を受けています。
今後とも、現地情勢について緊張感を持って注視しながら、自衛隊派遣のみならず、人道支援や民生支援などを行い、国際社会の平和と安定に貢献していく考えであります。
ACSAと憲法についてお尋ねがありました。
平和安全法制は、国権の最高機関である国会において、二百時間を超える御審議をいただいた上で成立したものであり、その手続と内容のいずれにおいても、現行憲法のもと適切に制定されたものです。
また、真摯な議論の結果、与党だけではなく、野党三党の賛成も得て、より幅広い合意を形成することができたことは、大きな意義があったと考えています。
平和安全法制に対しては、世界の多くの国々から強い支持と高い評価が寄せられています。これは、この法制が決して戦争法などではなく、戦争を抑止する法律であり、世界の平和と安全に貢献する法律であることの何よりのあかしです。
なお、戦争は、国連憲章により禁止されていることは言うまでもありません。
ACSA協定は、こうした平和安全法制の内容を反映するものであり、我が国の平和と安全を確保し、世界の平和と安全に貢献する上で不可欠なものと考えています。
自衛隊のイラク派遣、ACSAのもとでの弾薬の提供及び給油、イラク派遣差しとめの名古屋高裁判決についてお尋ねがありました。
自衛隊のイラク派遣については、国連の安保理決議におけるイラク国家再建のための努力への支援の要請を受け、我が国が主体的かつ積極的に寄与することを目的として実施したものです。
我が国として、国際法上違法な武力行使を行う国に対し、後方支援を含め協力を行うことはあり得ず、ACSAがアメリカの無法な戦争を同盟国が支援する体制を一層強化するとの御指摘は全く当たりません。
新たな日米ACSAのもとでは、弾薬の提供についても新たに適用対象としています。なお、これは、緊急の必要性が極めて高い状況下にのみ想定されるものであり、拳銃、小銃、機関銃などの他国部隊の要員等の生命身体を保護するために使用される弾薬の提供に限るとする五党合意の趣旨を尊重して、適切に対処することになります。
発進準備中の航空機への給油及び整備については、米国のニーズが確認されたことを前提に、改めて慎重に検討した結果、現に戦闘行為を行っている現場では支援活動を実施しないという一体化回避の考え方が適用できると判断しました。したがって、武力行使との一体化そのものとの御指摘も全く当たりません。
御指摘の名古屋高裁判決は、自衛隊派遣の違憲確認及び差しとめを求める訴えを却下し、損害賠償請求は法的根拠がないとして棄却した国側勝訴の判決であります。航空自衛隊の空輸活動が違憲であると述べた部分は、判決の結論を導くのに必要がないにもかかわらず、付随的に述べられた見解であることと指摘しておきます。
テロとの闘いにおける我が国の基本的方針についてお尋ねがありました。
政府としては、これまで累次にわたり御説明してきているとおり、政策判断として、ISILに対する軍事的作戦を行う有志連合に参加する考えはなく、ISILに対する作戦への後方支援を行うことは全く考えておりません。
我が国としては、難民、避難民に対する人道支援など、我が国ならではの支援を拡充し、非軍事分野において貢献してまいります。
日米ACSAや日米の安保協力がアジア太平洋地域に与える影響についてお尋ねがありました。
地域の安全保障環境が一層厳しさを増す中、日米安保体制を中核とする日米同盟は、アジア太平洋の平和と繁栄の礎として重要な役割を果たしており、新たな日米ACSA協定の締結が周辺諸国に脅威を与え、軍事対軍事の悪循環を招くとの御指摘は全く当たりません。
この協定は、自衛隊と米軍との間の物品、役務の提供を円滑かつ迅速に行うことを可能にするためのものであり、平和安全法制によって幅の広がった日米間の安全保障協力の円滑な実施に貢献し、協力の実効性を一層高める上で大きな意義があります。
我が国は、引き続き、揺るぎない日米同盟のもとで、米国とともに手を携え、アジア太平洋地域における平和と繁栄のために主導的な役割を果たしてまいります。
北朝鮮による核、ミサイル問題への対応についてお尋ねがありました。
先般の北朝鮮のミサイル発射を受けて行った日米首脳会談においては、トランプ大統領から、米国は一〇〇%日本とともにあるとの発言があり、日米、日米韓で国連の場を含めて緊密に連携していくことを確認しました。
我が国は、戦後、二度と戦争を繰り返してはならないとの不戦の誓いを堅持してきました。北朝鮮がこのような挑発行動を繰り返していては、世界からますます孤立し、明るい未来を描くことはできないことを北朝鮮に理解させなければなりません。
我が国は、引き続き、米国、韓国、中国、ロシア等と緊密に連携しながら、北朝鮮に対し、さらなる挑発行動を自制し、安保理決議を即時かつ完全に履行し、核・弾道ミサイル計画を放棄するよう、強く求めてまいります。(拍手)