2015年6月19日(金) しんぶん赤旗
所得に応じたUR家賃に 本村氏 要配慮者支援の役割を
日本共産党の本村伸子議員は16日の衆院国土交通委員会で、都市再生機構法改定案の質問に立ち、同機構(UR)の賃貸住宅を公的賃貸住宅として、低所得者や高齢者など要配慮者のセーフティーネットとして役割を強化するよう国が率先すべきだと主張。あわせて2018年度までにUR賃貸住宅を8万戸削減する計画を批判しました。
太田昭宏国交相は「居住者の同意が前提、居住者と十分な話し合いを行うことが必要」と答弁。本村氏は、名古屋市での建て替え事業で便利な土地は営利企業などに売られ、駅やスーパーから離れた不便な地域への移転を余儀なくされているUR住宅の実態を指摘。国交省の橋本公博住宅局長は「住民の利便性を考えながら土地利用計画を指導していく」と答えました。
改定案は、従来は隣接地のみで可能だった団地の建て替えを、近接地(飛び地)でも可能にし、駅前などを想定。本村氏は駅前などに建て替えれば「高家賃で狭い住宅になる」と指摘。世帯収入251万円未満が居住者の51%を占めるとのアンケート結果を示し、所得に応じた家賃制度に改めるよう求めました。
議事録
○本村(伸)委員 日本共産党の本村伸子です。
独立行政法人改革にかかわる法案に関しまして質問をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
私は、六月三日のこの委員会の中で、川崎市の簡易宿泊所の二畳、三畳という劣悪な住環境のもとで十名の方々が火災で亡くなった、その背景には低所得者の方々や高齢者の方々の公的な住宅が足りないということが根本にあるんだということを新聞社の社説なども引きながら指摘をさせていただきました。
そのときに、私は次のように述べさせていただきました。
憲法二十五条からいって、本来、国が公的な住宅を用意し、供給しなければならないんだというふうに思います。公営住宅の新規建設、供給を進めるとともに、UR住宅の削減をやめて、家賃は所得に応じたものに安くするべきだということや、UR住宅の空き家あるいは民間賃貸住宅を借り上げて公営住宅にするという施策、さらに家賃補助制度を進めるなど、緊急にこうした具体的な対策が必要だというふうに思います。
地方自治体に任せるのではなく、国が責任を持って公的な住宅をふやしていく方向に転換をするべきだと思います。二度とこの川崎市のような大惨事が起こることがないように、大臣に、こうした公的な責任を果たす、国としての責任を果たすということをぜひ明言していただきたいと思います。
という質問をさせていただき、そのときに太田大臣は、今御指摘の、公営住宅、公的な賃貸住宅の整備というお話がありますが、住宅に困窮するこうした低所得者等の居住の安定を確保するためには、公営住宅等の公的賃貸住宅の整備、これは大事な問題でありますと答えてくださいました。
また、橋本住宅局長も、住宅確保要配慮者につきまして、公的賃貸住宅の供給促進ということも答弁をされておられます。
私は、公的な賃貸住宅という意味で、UR住宅というのは非常に大きな役割がある、担っているというふうに思っております。
まず、住宅セーフティーネット法上のUR賃貸住宅の位置づけについてお伺いをしたいと思います。
○橋本政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘の住宅セーフティーネット法、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律におきましては、国及び地方公共団体は、既存の公的賃貸住宅の有効活用を図りつつ、公的賃貸住宅の供給促進及び住宅確保要配慮者の民間賃貸住宅への円滑な入居の促進に努めることとされております。
UR賃貸住宅につきましては、この住宅セーフティーネット法における公的賃貸住宅として位置づけられておるところでございます。
○本村(伸)委員 ありがとうございます。
まず前提として、公営住宅が足りないということははっきりとしております。そういう中で、UR住宅は、公的賃貸住宅として、低所得の方々や高齢者の方々など、この法律上の住宅確保要配慮者の方々へのセーフティーネットとして、率先してこうした方々の居住の安定を図る、そういう役割を果たすべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
○橋本政府参考人 公営住宅あるいはUR住宅それぞれにつきまして、それぞれ根拠となる法律がございまして、その法律の規定の範囲内で、各地方公共団体あるいは事業主体が適切に判断をして入居者を受け入れるべきだというふうに考えます。
○本村(伸)委員 先ほどもお話がありましたけれども、住宅セーフティーネット法上では、「国及び地方公共団体は、所得の状況、心身の状況、世帯構成その他の住宅確保要配慮者の住宅の確保について配慮を必要とする事情を勘案し、既存の公的賃貸住宅の有効活用を図りつつ、公的賃貸住宅の適切な供給の促進に関し必要な施策を講ずるよう努めなければならない。」というふうに書いてございます。
この点では、お年寄りや低所得者の方々が川崎の簡易宿泊所の火災事故のような、大惨事の火災事件のようなことに遭わないためにも、質の一定確保された住宅に住むという点からも、UR住宅が果たす役割はとても大切だというふうに思います。
厚生労働省の所管ですけれども、雇用促進住宅というものももっと本来は活用すべきだというふうに思いますけれども、この雇用促進住宅についても、売却、廃止ということに方向として進められているという点で、この点でも方向転換をしなければいけないというふうに思います。
加えて、そういう公営住宅も足りない、そして雇用促進住宅も廃止をしていこうとしている中で、UR住宅についても、二〇一八年度までに、ストック、既存の住宅を八万戸減らし、家賃が高い戻り住宅等三万戸はつくるけれども、結局、三年後の二〇一八年度までに五万戸、全体としてUR賃貸住宅を減らそうとしている計画がございます。
私が持っている新しい数字の中で、UR機構の管理戸数というのは、二〇〇六年度末が七十六万八千六百八戸あったのが、二〇一三年度末には七十四万八千三百九十四戸となり、結局、この七年間で二万二百十四戸も減らしている。まだまだ減らそうとしているというふうになっているわけでございます。
公的な賃貸住宅の数が足りず、市場では住宅確保が難しい方々に住宅を保障していくという観点から、セーフティーネットとなるべき公的住宅が小さくなるというのは、その網からこぼれてしまう人ができてしまうということになるのではないかというふうに思うんです。
UR賃貸住宅の削減というのは住宅セーフティーネット法の趣旨に反すると思いますけれども、いかがでしょうか。
○橋本政府参考人 UR賃貸住宅は、御指摘のとおり、約七十五万戸ございますけれども、老朽化が進んでおるところも相当ございます。我が国の人口や世帯減少が進む、特に地域の中では、地域ごとに減少が大きいところもございます。例えば、URで申しましても、郊外の団地では空き家が非常に増加する傾向がございます。多いところでは三割近い空き家、これは常時募集をしても三割近くあいているところがございます。
そういう空き家の多い団地につきまして、高齢者の方々がどのようにお住まいになるか等、ニーズも十分に把握した上で、再編を進めた上で、全体の戸数を調整する。全体としては五万戸程度減らすということでございまして、決してセーフティーネットとしての機能を損なうということではないというふうに考えております。
○本村(伸)委員 私も、愛知県内、空き家など生活相談の方々がおりまして、UR住宅に入れないかと探してみましたけれども、家賃が安いところはいっぱいなんですよ。家賃が高いところがあいているという状況で、生活相談を受ける方はなかなか入れないという現状があることも認識されていると思いますけれども、ぜひそういう点も改善していただきたいというふうに思います。そもそも、やはりセーフティーネットであるUR賃貸住宅の数を減らすということは本当におかしいというふうに思います。
もう一つ確認をさせていただきたいんですけれども、四月十六日の参議院の国土交通委員会の審議の中で、日本共産党の辰巳孝太郎参議院議員が質問をいたしました。その中で、今回のスキームでの移転は入居者の同意が必要かという質問に対して、大臣は、「UR団地の建て替えに伴う居住者の移転に当たりましては、居住者の同意が前提ということになると考えています。」と答弁をされました。
確認ですけれども、建てかえ、居住者の移転に当たっては、居住者の方々の同意、そして十分な話し合いが必要であるというふうに思いますけれども、これを確認させていただきたいと思います。
○太田国務大臣 UR団地につきましては、居住者が安心して住み続けられることが何よりも大事だと思っています。
UR団地の建てかえに伴う居住者の移転に当たりましては、居住者の同意が前提でありまして、従来どおり、居住者と十分な話し合いを行うということが必要かと思います。
○本村(伸)委員 ありがとうございました。
居住者の同意、そして十分な話し合いということを大臣から答弁していただいたと思います。
UR賃貸住宅のストック再生、再編のやり方、削減のやり方も、本当に居住者の方々の立場に立ったものだったのかどうかということについても、少し質問をしていきたいというふうに思います。
名古屋市緑区の鳴子団地の例なんですけれども、大きな団地で、その半分以上を建てかえる事業なんです。当時は、名古屋市の地下鉄の駅が新しくできるというところで、今はもうできておりますけれども、大変便利なところになっております。
建てかえの話が出たときに、団地の中で一番駅に近い、そしてすぐ近くにスーパーマーケットもある、そういう便利なところには、足の悪いお年寄りや障害者の方々、そうした方々が住んでもらえるような住宅にしてほしいと住民の皆さんからURに対して要望が伝えられました。
そのときに対応したURの職員の方は、当時、こういうふうに言っていたんです。福祉施設などを呼び込むんですとおっしゃっておりました。私も住民の皆さんと一緒に交渉に同席をさせていただき、その言葉を私もこの耳でしっかりと聞いておりました。
しかし、結局、その土地はUR団地を壊して民間マンションの会社に売られてしまいました。今はとても高級そうなマンションが建っております。また、団地内で便利なところに住んでいた方が、団地内で建てかえないブロックに移転をするということが余儀なくされましたけれども、結局、駅からは大分遠くなる、スーパーからも遠くなるという状況がございました。
同じく、名古屋市の鳴海団地でも、大きな団地ですけれども、駅に近い広大な地域の大半が民間に売られて、これまで住んでいた方々が建てかえられたところに移ったわけですけれども、それはより駅から遠くなり、不便になり、そして家賃が高くなったわけでございます。こうしたやり方を見てみますと、居住者の方々のことを本当に考えているのかということを疑問に思わざるを得ないというふうに思います。
もともと居住者の方々、もともと住んでいる方々が不便になったり、あるいは家賃が高くなったり、いいことがない。こんなやり方はおかしいと思いますけれども、いかがでしょうか。
○橋本政府参考人 まず、団地の建てかえ後の土地利用につきましては、例えばミックスドコミュニティーなど、団地の再生に寄与しているか、地域にとって最適なものになっているか、あるいは民間等による余剰地の活用見込みがあるか、あるいは移転をお願いする居住者の同意が得られるかなどを総合的に勘案して、個別団地ごとに判断をしてまいっております。
御指摘の鳴子団地につきましては、高齢者や子育て世帯が安心して住むことができ、かつミックスドコミュニティーを図っていくという観点を持って建てかえを進めておるところでございまして、高齢者施設を中心とした地区と子育て世帯を中心とした地区に分けたというふうに聞いております。
具体的には、住みなれた環境で住み続けられるように、既存の住宅を存置する、そのまま置いておくブロックを設定した上で、高齢者が福祉サービスを受けられるように、隣接するブロックに高齢者向け施設を誘致する。一方、小学校、中学校、幼稚園に隣接するブロックについては、UR賃貸住宅の建てかえや民間住宅、利便施設の誘致を行い、子育て世帯を誘導するなどの考え方に基づいて土地利用を計画したということでございます。
また、鳴海団地につきましては、これは非常に物理的な理由でございます。雨水管の老朽化が著しくて、調整池に近いところから雨水管を更新する必要があったので、まず調整池に近いところを建てかえて、そこにお移りをいただいてから、その余の土地の利用を考えたということで、これは団地の状況に応じたということでございます。
もちろん、駅になるべく近いところに住民の方々にお移りをいただきたいというのは原則ではございますけれども、やはり、団地の置かれた状況、建物の状況に応じて、必ずしも原則どおりにいかない場合もあろうかと思います。引き続き、できる限り住民の方々の利便性を考えながら土地利用計画をつくるように指導してまいります。
○本村(伸)委員 今回の法案についてですけれども、UR賃貸住宅の建てかえを飛び地にでも可能にするものになっております。駅前など、駅前とは限らないというふうに私はこれまでの例からしても思っておりますけれども、駅前などに建てかえますと、移転しなければならない方々は今までよりも高家賃で狭い住宅になるというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
○橋本政府参考人 URの家賃は、原則、近傍同種家賃でございます。したがいまして、駅から遠いところから駅により近いところに同じ面積で建てますと、確かに近傍同種家賃は上がります。
しかしながら、先ほどから何度も御答弁申し上げておりますように、面積については、特に高齢単身、高齢夫婦のみ世帯が大変ふえていることも踏まえますと、かつての勤労者の、例えば四人家族の世帯を中心とした住宅よりも若干狭くても、快適にお住まいいただける場合も多かろうと思います。
そういうことも勘案して、面積も若干調整をすることで三・五万円の家賃上昇の範囲内でおさめるということで、今お住まいの方々がずっとそのまま移っても住まい続けられる場合には、従前の負担をふやさないという方針で臨んでおるところでございます。
○本村(伸)委員 横浜市中区の海岸通団地というところは全面建てかえの団地だったわけですけれども、この建てかえは、全体に二百十四戸が建てかえで、戻り用の住宅が百十二戸。そのうち五十戸が一Kの間取り、家賃は九万七百円から九万七千四百円と、本当に高い家賃になっております。申込世帯の四二%がこの一Kを申し込まざるを得ないという状況になっております。
半数の方が一Kを申し込んだのはなぜかというと、やはり家賃が高いからです。まだここは、新しく建てかえられた新しい住宅に戻っても、お年寄りの方々や低所得者の方々や障害者の方々など、いわゆる要配慮者の方々へは五〇%の恒久減免というものがございました。
しかし、今回はこの五〇%という措置ではなくて、集約された新しいUR住宅に移転する要配慮者の方も、最高でも三万五千円の減額になるだけでございます。さらに、要配慮者以外の一般の方にとっては物すごく家賃が高くなるわけでございます。
建てかえをするならば、もっと安い家賃でないとUR住宅に住み続けることはできません。建てかえる場合でも、入居できる安い家賃にするべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
○橋本政府参考人 御指摘の海岸通のような団地というのは、実は十四地区ございます。これは昭和三十年代に建設をされたもので、立地としては極めてすぐれている、極めていい立地でございます。
この十四団地につきましては、特別な措置として、市場家賃が上がるのを特別の措置で抑えておりますけれども、このような事例は十四団地以外ございません。あくまで限定的な措置でございます。
繰り返しになりますが、ずっと三万五千円の減額をすることで家賃負担をふやさずにお住まい続けていただけるようなところについて、近接地建てかえを今後進めていきたいというふうに考えております。
○本村(伸)委員 居住者の、今UR住宅にお住まいの方々の状況は大臣もつかんでみえるというふうに思いますけれども、改めて申し上げたいというふうに思います。
二〇一四年九月の全国公団住宅自治会協議会幹事会の皆さんのアンケート結果ですけれども、これは、UR賃貸住宅の皆さんの、九万三千百二十八戸という大きい回答がある結果でございます。
その結果は、世帯収入が二百五十一万円未満の方が五一・三%、世帯収入が二百五十一万円から三百六十七万円未満というのが二〇・一%、合計しますと七一・四%の世帯という状況です。
今の家賃負担について、大変重いというお答えが三五・五%、やや重いというのが三七・一%と、七割を超えておられます。URの家賃負担が重いということを七割を超える世帯の皆さんがお答えになっている。六十歳以上の世帯が七三・八%、八十歳以上が一七・一%となっております。
私も愛知県の名古屋市東区、北区でUR住宅にお住まいの方と改めて懇談をさせていただきました。年金だけで生活が苦しいという声や、家賃を下げてほしいという声や、せめて所得に応じた家賃にしてほしいという要望が多数寄せられました。
とりわけ、今、年金が下がり、消費税は上がり、介護保険料は上がり、国民健康保険料の負担や後期高齢者医療制度の保険料の負担など、本人の責任とは関係のない部分で生活が苦しくなっている、そういう現状がございます。今UR住宅にお住まいの皆さんのこういう苦しいという声に公的賃貸住宅として応えて、住宅セーフティーネットとしての役割の強化を図るべきだということを強調したいというふうに思います。
大臣も地元の皆さんからお声を聞いているというふうに思いますけれども、家賃を下げることや家賃の減免措置、家賃の補助、これはUR住宅に限らない制度にする必要があると思いますけれども、低所得の方々へ配慮した家賃制度をつくるべきだというふうに思います。今、家賃改定ルールの見直しも行っているそうですけれども、ゆめゆめ家賃の値上げなどないようにということも強調をさせていただきたいと思います。
生きることのできる家賃にするためにネックとなっているのが、UR法の第二十五条、先ほど来御答弁がありましたように、「近傍同種の住宅の家賃の額と均衡」、この条項を持ったままですと、憲法二十五条に基づくセーフティーネットの役割は果たせないというふうに思います。このUR法の二十五条「近傍同種の住宅の家賃の額と均衡」、この規定は削除するべきだというふうに思います。
大臣、セーフティーネットとしての役割を果たすために、ぜひこのUR法の二十五条の規定をなくすことを検討していただきたいと思いますけれども、お願いいたします。
○太田国務大臣 UR賃貸住宅につきましては、大都市部における中堅所得者向けの良質な住宅という役割を一貫して担ってきたと思います。
平成十一年に住宅・都市整備公団から都市基盤整備公団に移行したときにも相当の議論がありましたし、家賃は近傍同種家賃とした上で中堅所得者向けという役割を果たしてきたと思います。
実際にも、礼金、手数料、更新料、保証人を不要とし、民間市場では制限を受けがちな弱い立場の方に対する受け皿としても住宅セーフティーネットの役割を果たしています。
さらに、建てかえによって家賃が上がる方々等に対しては減額できるとされており、毎年度百五十億円相当の国費等が充てられて家賃を減額しているという状況です。
これに加えて、今年度の予算におきましては、団地の再編によって家賃が上がる低所得の高齢者などの家賃の引き下げ幅を最大三万五千円に拡充するとともに、高齢者向け優良賃貸住宅につきまして、現行の家賃の引き下げ措置を続けるための国費の手当てを新たに措置しました。
今後とも、適正な家賃水準と入居者の適正な負担の両立を図りながら、住宅セーフティーネットの役割を果たしてまいりたいと考えています。
○本村(伸)委員 ぜひ検討していただきたいというふうに思います。
次に、海上技術安全研究所、港湾空港技術研究所、電子航法研究所の統合について伺いたいというふうに思います。
この三つの研究所は、船舶あるいは航空管制、こういう安全確保や津波災害の防止、軽減、海洋環境の保全などの研究を行い、重要な役割を担っているというふうに思います。
今回の統合によって、研究者や職員の皆さんの労働条件が悪くなることがあっては決してなりませんし、三つの研究所の果たすべき役割、必要性が低められることがあってはならないと思いますけれども、いかがでしょうか。
○森政府参考人 委員御指摘のとおり、三研究所は、今まで国交省の行政課題の解決に技術面で大変な貢献をしてまいりました。
国だけではなくて、三研究所が行ってきた各分野の研究開発については、民間あるいは地方公共団体から受託研究が五年間で千七百件に及ぶなど、そういった国以外の機関からも高い評価を受けておりますし、また、国際機関IMOとかICAOの国際基準の策定にも大きなプレゼンスを発揮しております。統合後も、これら従来から高い評価を受けてきた三研究所の役割、機能を低下させることがあってはならないというふうに考えております。
さらに、今回の統合で期待されるメリットとしまして、海上及び航空交通分野、これは国際競争が大変厳しい分野でございますので、国際競争力の強化、あるいは日本がこれから期待される海洋の利用推進、こういったものに向けての政策実施機能の向上が期待されております。
従来から果たしてきた役割や機能、そして統合後に新たに期待される役割や機能、その双方にきちっと応えられるように、業務の実施に必要な組織あるいはマネジメント体制、研究施設等の確保、こういった環境の整備に国と統合法人が力を合わせて努めてまいりたいと思っております。
○本村(伸)委員 次に、船員養成の座学を担う海技教育機構と乗船実習を担う航海訓練所の統合もされる法案になっております。
閣議決定では、海運業界を初めとする関係者の受益者負担の拡大や自己収入の拡大が求められております。大学校や訓練校で自己収入をふやすということは、学生や訓練生の皆さんが支払う授業料が上げられることになるというふうに思いますけれども、授業料の値上げというのはやめるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。
○森重政府参考人 お答え申し上げます。
委員御指摘のように、船員は我が国の経済と暮らしを支える海運の担い手でございます。その船員を養成する独立行政法人の運営に必要な経費につきましては、基本的に国が賄うこととしております。
一方で、独立行政法人が教育や人材の養成といった個々の利用者に受益が生ずる事業を行う場合は、受益者に対して適切な負担を求めることとしております。
この考え方に基づきまして、この独立行政法人による船員の養成では、学生にとっては知識、技能を身につけられることから、相応の負担をお願いしております。
すなわち、学生にとって過度な負担とならないよう、海上技術学校では公立の普通高校と同水準の授業料を、海上技術短期大学校では国公立専修学校と同水準の授業料の負担をお願いすることとしております。
○本村(伸)委員 最後に、統合するわけですけれども、さらなる事務事業のスリム化、効率化などが求められることになり、国民の命と安全を確保する国の責任を一層弱めることになってはならないということを再度確認したいと思います。
○森重政府参考人 お答え申し上げます。
先ほど御説明申し上げましたように、我が国の経済と暮らしを支える海運の担い手であります船員を養成するこの独立行政法人の運営、これは基本的に国の責務として行っていく考え方をこれからも維持していきたいと思っております。したがいまして、その中で、この独立行政法人の運営に関しても適切に対応してまいりたいと思っております。
○本村(伸)委員 終わります。ありがとうございました。
反対討論
○今村委員長 これより討論に入ります。
討論の申し出がありますので、これを許します。本村伸子君。
○本村(伸)委員 日本共産党を代表し、独立行政法人に係る改革を推進するための国土交通省関係法律の整備に関する法律案に対する反対討論を行います。
まず、独立行政法人都市再生機構法の一部改定についてです。
反対する第一の理由は、UR賃貸住宅の建てかえに当たり、今の団地から離れた場所への移転を可能とし、統廃合の加速を図ることで、居住者の居住の安定が損なわれるからです。
本法案は、URの既存住宅を当面八万戸削減する計画を推進させるものです。建てかえや集約化の加速により、居住者は、別の団地への移転が迫られ、新規建てかえ住宅の高額家賃で家計への負担増を強いられます。
住みなれた団地に住み続けたいという居住者の願いに応えるとともに、低所得高齢者の居住確保など住宅セーフティーネットとしての役割を果たすための改善こそ求められています。
反対する第二の理由は、都市再生機構が民間と共同出資して開発型特定目的会社をつくる要件を緩和し、大手ディベロッパーの都市再開発に対する支援強化を図るからです。
リスクの高い大規模再開発への投資が失敗すれば、賃貸住宅事業にしわ寄せが及び、さらなる家賃引き上げにつながり、大手ディベロッパー主体の大規模再開発により、周辺地域の地価の上昇、住民追い出しの地上げや町壊しが推進されかねません。東京一極集中を進め、地域間格差を拡大することも問題です。
次に、海上技術安全研究所、港湾空港技術研究所、電子航法研究所の統合及び海技教育機構と航海訓練所の統合についてです。
いずれの統合も、単なる数合わせにすぎません。統合により、事務事業のスリム化、効率化が一層進められ、国民の命と安全を確保する国の責任を弱めることになり、賛成できません。
二〇〇一年の独立行政法人化以降、運営費交付金の削減に伴い、各研究所では、研究予算の縮小、不安定雇用の増加など研究開発条件の悪化が進み、船員養成施設でも、教育施設の運営、維持や練習船の運航計画に支障を来し、教員不足や職員の労働条件悪化が進んでいます。
統合により、さらなる効率化が求められるのは目に見えています。船員養成施設において、受益者負担の拡大、自己収入の拡大により授業料の値上げが計画されていることも認められません。
以上、反対の理由を申し述べ、討論といたします。(拍手)
○今村委員長 これにて討論は終局いたしました。
――――――――――――
○今村委員長 これより採決に入ります。
内閣提出、参議院送付、独立行政法人に係る改革を推進するための国土交通省関係法律の整備に関する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○今村委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。