もとむら伸子(日本共産党衆議院議員)-
国会質問

質問日:2016年 10月 19日 第192国会 国土交通委員会

リニア 大深度地下使用認可について

2016年10月20日(木) しんぶん赤旗

リニア建設 問題山積 共産党追及

大深度地下使用認可 地権者権利 侵害の恐れ 本村議員

写真

(写真)質問する本村伸子議員=19日、衆院国交委

 日本共産党の本村伸子議員は19日の衆院国土交通委員会で、リニア新幹線建設に関連して大深度地下(深さ40メートル以上の地中)使用認可の問題を取り上げ、土地利用が制限され地権者の権利を侵害する危険性を追及しました。

 大深度地下使用の認可は大深度地下法に基づき、事業者が地権者の同意なしに地下を使用できるようになるもの。本村氏は、初めて本格的に大深度地下法が適用される東京外環道で「土地利用に制限を課すこともない」としていたにもかかわらず、突然、都市計画事業を認可し、建築制限など権利侵害された事例を紹介。住民からは「だまされた」と声が上がっているとして、大深度地下使用認可と都市計画事業認可の取り消しを求めました。

 リニア建設では、東京都品川、世田谷、大田各区・町田市、川崎市、名古屋市・愛知県春日井市の計55キロメートルが大深度地下使用認可の対象。本村氏は、リニア建設で「都市計画事業を適用することはないのか」と迫りました。石井啓一国交相は「現時点で予定はない」と述べ、今後の可能性は否定しませんでした。栗田卓也都市局長は、大深度地下使用の認可のみの場合、土地利用が制限される可能性は「皆無ではない」と答弁。本村氏は「大深度地下法は地権者の権利を侵害するもので適用すべきでない」と主張しました。

 本村氏が、大深度地下にリニアが通る土地を取り引きする際、宅地建物取引業法の重要説明事項に当たるかただすと、谷脇暁土地・建設産業局長は「対象とされていない」と答弁。本村氏は「消費者にとって不利益になる」と批判しました。

 

議事録

西銘委員長 次に、本村伸子君。

本村(伸)委員 日本共産党の本村伸子です。

 清水議員に続いて、三兆円の財政投融資、公的資金を入れるというリニアの問題について質問をさせていただきます。

 リニアの計画ですけれども、今、資料をお配りしております。

 資料の一を見ていただきますと、東京都内の品川区、大田区、世田谷区、町田市、神奈川県内の川崎市、そして、地図の左ですけれども、愛知県名古屋市、春日井市、この全五十五キロが大深度地下法の使用の認可を受けようということでやっております。

 大深度というのは、地下四十メートルよりも深いところ、あるいは支持地盤上面から十メートルよりも深いところでございます。大深度地下法というのは、大深度地下の使用の認可を受ければ、事業者は大深度地下を使用しても地権者の同意は要らないというものでございます。

 私は、大深度地下法は地権者の権利を侵害するものであり、悪法だ、使用するべきじゃないということをまず述べておきたいというふうに思います。

 その点で、五点確認をしたいと思いますけれども、一つ目、リニアに関してJR東海から大深度地下の使用の認可の申請はされたのかという点、二つ目、申請のための地質調査は何カ所やったのかという点、三つ目、井戸などの物件の障害物は何件あったかという点、そして四つ目、調査に当たって何人の地権者の方に同意を得て調査を行ったのかという点、五点目、そもそもリニアルートの大深度地下の地権者は何人おられるのか、このことをお答えいただきたいと思います。

奥田政府参考人 お答えいたします。

 一点目の大深度地下使用に係る認可申請を行っているかということにつきましては、中央新幹線品川―名古屋間二百八十六キロのうち、東京都品川区から町田市の間約三十五キロの区間及び愛知県春日井市から名古屋市の間約二十キロの区間について、JR東海は、いわゆる大深度法に基づく大深度地下使用の認可申請を予定しております。

 現在、JR東海におきまして、認可申請に必要となります同法十二条に基づく事前の事業間調整、十三条に基づく中央新幹線の事業区域に井戸その他の物件があるかどうかの調査、十四条第二項第四号に定める事業区域が大深度地下にあることを証する書類を作成するための地質調査等を行っているところと聞いております。

 これらの調査や調整を行った上で、JR東海において、大深度地下使用の認可申請が行われるものと承知をいたしております。

 それから、二点目のボーリング調査、地質調査でございますが、これまで百三十カ所で地権者等の了解を得て調査済みでございます。

 それから、井戸等の物件調査につきましては、中央新幹線の事業区域にある約六千四百筆の土地のうち、調査員の聞き取り等により、約百二十筆の土地に約百五十本の井戸が確認されておりまして、これらにつきましては、地権者等の了解を得た上で、位置や深さ等の調査を実施済みであるということでございます。

 なお、こういった調査に当たりましては、登記をされております一筆一筆ごとの土地について確認を行っているわけでございますが、その確認のやり方として、実際に現地に赴きまして、居住者等がおられる場合には、その方に了解を得た上で、その土地内に立ち入って調査をする、それから、そういった状況にないものにつきましては、登記簿上の所有者に対して通知をして立ち入りをお願いしているということでございますので、こういった調査手法からいたしまして、ルート上に何名の地権者がおられるかといったようなことは把握されていないということだと思っております。

本村(伸)委員 そもそも地権者の数さえ把握していないというのは本当におかしいというふうに思います。ぜひ把握をしていただきたいというふうに思います。

 この大深度地下というのは、東京の外環道でも関越―東名間で利用するということになっております。皆さんにお配りしている資料の二つ目ですけれども、二〇〇六年六月に国交省と東京都が一緒に出しております「東京外かく環状道路 これまでに頂いたご意見・ご提案と計画の具体化の検討等における考え方」というパンフレットにはこう書いてあります。大深度地下について、「土地利用に制限を課すこともないため、補償すべき損失が発生しないものと考えられることから、財産価値に与える影響はない」と書かれております。

 このような見解を出していたということは間違いないでしょうか。

栗田政府参考人 お答えいたします。

 委員御配付の資料のとおりの記載でございます。

 一言、確認的に申し上げさせていただきますと、これは、平成十三年に大深度法ができまして、その後、大深度地下使用の申請が想定された上で、大深度地下の事業区域について、土地所有者等によって通常使用されることのない地下の深さであるということですので、大深度法を念頭に置いて、土地利用に制限を課すことがない、したがって補償すべき損害が発生しないというように考えられていることを回答しているものでございます。

本村(伸)委員 この東京の外環道ですけれども、二〇一四年三月二十八日に大深度の地下の使用の認可がされました。住民の皆さんにとっては突然のことだったんですけれども、同じ日に、都市計画事業承認、認可もされたわけです。

 そうすると、建築制限、あるいは、売買する場合は国へ届け出義務がある、そして国が土地を優先的に買い取る権利まで発生をいたしました。これはどういうことか、お示しいただきたいと思います。

栗田政府参考人 お答えいたします。

 お配りいただいております平成十八年の説明文書では、平成十三年の大深度法の施行後、その適用が想定されましたので、大深度法を念頭に置いて、土地利用に制限を課すことがないと御説明を申し上げております。

 その後、この事業はもともと都市計画決定がされておりましたけれども、都市計画事業を円滑に進める観点から、施行者から事業認可申請が行われ、平成二十六年三月に都市計画法に基づく都市計画事業の承認、認可が行われたところでございます。

 これによりまして、都市計画事業の円滑な施行を図るために、事業地内では、都市計画法六十五条に基づきまして、建築物を建築等する場合に許可を要する、六十七条に基づきまして、土地建物等を売買する際に届け出をしなければならないというようなことになったというところでございます。

本村(伸)委員 国交省が住民の皆さん、地権者の皆さんに、土地利用に制限を課すことはない、補償すべき損失は発生しないということを言っていたのにもかかわらず、建築制限や、あるいは自由に売買できないという全く違うことが起きています。住民の皆さんにとってはだまし討ちだというふうに言われている事態でございます。

 資料の三を見ていただきたいんですけれども、国交省が出しております大深度地下の公共的使用に関する基本方針というものがございます。ここに国交省が示しているんですけれども、「都市計画制度を活用し、事業の円滑な実施を図ることが必要である。」というふうに書いてあります。

 国交省、国が、都市計画制度を活用するように誘導している。もともと国交省と東京都が住民の皆さんに説明をしたパンフレットを二〇〇六年の段階で出していたのに、国交省自身がそれと反することをやっているというのは、本当に許しがたいことだというふうに思います。

 住民の皆さんは、地下にトンネルが通るだけで土地の価格が下がるのに、建築制限など、一層土地の価格が下がってしまうという不安の声を上げておられます。これはまさに財産権の侵害だというふうに思います。こういう大深度地下の使用の認可やあるいは都市計画事業承認、認可は取り消すべきだということをここで強く求めておきたいというふうに思います。

 それで、この大深度地下の使用の認可について、外環道ではこういうだまし討ちのようなことが行われました。リニアの場合も、大深度地下に対して、この東京の外環道のように都市計画事業の網をかけるというのは絶対にないと言い切れるのかという点、そして、リニアの大深度地下の地権者は、建築制限や、売買する場合、JR東海への届け出義務が要るようになるということが絶対にないのかということ、そして、JR東海に土地を優先的に買い取る権利、そういうことは絶対にないのかという点を確認したいと思います。

石井国務大臣 委員が先ほど御説明していただいた資料によりますと、「大深度地下とともに地上又は浅深度地下を使用する事業については、必要に応じて、」「都市計画制度を活用し、事業の円滑な実施を図ることが必要である。」というふうにされておりまして、大深度地下の事業が全て都市計画制度を活用するということを位置づけているものではございません。

 その上で、リニアにかかわらず、都市施設の都市計画決定は地方公共団体が行うことになりますが、リニア中央新幹線の大深度地下使用申請予定区間については、現時点で都市計画決定する予定はないと承知をしております。

本村(伸)委員 もう一つお伺いしたいんですけれども、都市計画事業に関係なく、大深度地下の使用の認可を受けた場合、その土地に自由に穴をあけたり、重い建物を建てたり、土地売買は勝手に自由にできるという理解でよろしいでしょうか。

栗田政府参考人 先ほど、都市計画法の六十五条、六十七条の規定につきまして申し上げました。今大臣から答弁がありましたとおり、都市計画決定の予定がない、したがいまして都市計画事業認可が行われることもないということでありますと、先ほど私が申し上げたところの六十五条、六十七条の制限がかかるというようなことにはならないと現時点では考えておるところでございます。

本村(伸)委員 では、自由に穴をあけたり、あるいは重い建物を建ててもいいんですね。

栗田政府参考人 大深度法に基づく一定の制限に服する場合、通常の土地利用ということは考えられませんが、大変極端な場合として、大深度法の一定の制限に服する場合は皆無ではないのかというように法律上は想定されております。

本村(伸)委員 つまり、土地利用の制限があるというわけでございます。

 もう一点確認をしたいんですけれども、不動産取引の際、その土地の大深度地下にリニアが通っている、このことは宅建業法の重要事項説明になるのかどうか、確認をしたいと思います。

谷脇政府参考人 お答えをいたします。

 宅地建物取引業法に基づく重要事項説明でございますけれども、これは、取引に関しまして説明すべき事項について義務的に説明させるものでございまして、例えば、登記上の権利関係でございますとか、法令に基づく権利制限の内容、こういったようなものを説明対象として法令上明記しているところでございます。

 今御指摘のございました大深度法に基づきます大深度地下の使用につきましては、通常の土地利用に制限を課すこともないということでございますので、重要事項説明の対象とされておりません。

本村(伸)委員 その土地の地下にリニアが通っているのに、それを知らせずに消費者に土地を買わせるということになるわけです。こういう情報を知らせないというのは、消費者にとって不利益に当たるんじゃないでしょうか。

谷脇政府参考人 今御説明いたしましたように、宅地建物取引業法において、重要事項説明は、義務的に説明をする必要があるということで法令上規定しておるわけでございます。

 いろいろな取引の事情は非常に多様でございまして、その重要事項説明の対象事項以外のことについてどのような事項を説明するかということにつきまして、一概に申し上げられるものではございません。それぞれの取引において、宅地建物取引業者が適切に判断し対応する、そういう性格のものだと考えております。

本村(伸)委員 この問題は、消費者の不利益に当たることも、大深度地下法、問題を抱えているということでございます。

 大深度地下をリニアは通るわけですけれども、その上の家屋調査を事前にやらないということをJR東海は言っております。私の地元愛知県春日井市には亜炭廃坑があり、リニアの沿線で陥没が実際に起きております。家屋調査をやらないというのは絶対に私は納得できないというふうに思います。

 例えば、事前の家屋調査をやらないで地盤調査だけだったら、もともと家にひびが入っていないのに、この工事や、あるいはリニアが通ったことによってひびが入ったということをどうやって立証するのかというふうに思います。

 公共事業である東京の外環道では、万が一に備えて事前の家屋調査をやるわけでございます、同じ大深度で。今回、リニアに公的資金を入れるということを言われているわけですけれども、政府がJR東海に強く指導してこの事前の家屋調査をやらせるべきだと思いますけれども、大臣、お願いをいたします。

石井国務大臣 大深度地下につきましては、大深度地下法によりまして、建築物の地下室等に通常供されることがない地下四十メートルの深さ、または、通常の建築物の基礎ぐいの支持地盤の最も浅い部分から十メーターの深さの、いずれか深い方から下の空間と定義がされております。このため、大深度地下空間における構造物は、強固な支持地盤よりさらに十メーター以上深い場所に整備されることとなります。

 また、今回リニアで予定をされておりますシールド工法は、一般的に地下水の流出などが生じにくい工法でございまして、JR東海の環境影響評価書におきましても、シールド工法そのものによって地盤沈下が生じたような事例は確認されておりませんとされております。

 こういったことから、適切に施工が行われれば、大深度区間でのシールド工法による地盤沈下は生じないものと考えております。

 今委員御指摘の外環道では、万が一、建物や工作物に損害等が発生し、工事の施工に起因すると確認された場合には、当該損害等に対して補償するため、念のために工事実施前の建物等の状況を把握する調査を行うこととしていると聞いております。

 リニア中央新幹線についても、同様の目的で、工事の施工による建物や工作物への影響を確認するため、念のための措置として、工事の施工に合わせて、地表面の沈下量等を測定する調査を実施する予定と聞いております。

本村(伸)委員 家屋に被害があったとき、立証するのは大変難しいということになってしまいます。事前の家屋調査はやっていただきたいというふうに思います。

 シールド工法だから大丈夫というお話がありましたけれども、大臣、ネットを見てください。シールド工法でも陥没が起きている事例は幾つも挙げられるわけでございます。政府がJR東海を強く指導していただいて、事前の家屋調査をやらせるべきだということを強く申し上げたいというふうに思います。

 最後にですけれども、リニアの財政投融資三兆円公的資金投入問題について伺いたいと思います。

 この財政投融資の話が出る前ですけれども、JR東海は、全額自己資金でやるんだ、国からの資金援助は受けないと明言をしておりました。そのときの長期債務残高の見通しが資料の四になるわけです。

 この長期債務残高の資料ですけれども、JR東海が民間から調達する予定だった借金の利息というのは、一律三%を想定して計算しているということでございます。利息三%とすると、リニア事業でJR東海は幾らの金利負担を想定していたのか、お答えいただきたいと思います。

 また、二〇一六年度、二〇一七年度財政投融資で、JR東海に対して総額三兆円の財政投融資をされる予定なわけですけれども、それを借りた場合、三十一年目から返済が始まって四十年後に完済するという仕組みで、仮に利息が〇・六と想定した場合、JR東海の金利負担は幾らになるのか、お示しをいただきたいと思います。

石井国務大臣 平成二十二年から二十三年に行われました交通政策審議会におきましては、JR東海の財務的事業遂行能力の検証が行われております。この検証では、JR東海より示された長期債務残高の推移等の試算から、交通政策審議会として、JR東海は、健全経営、安定配当を維持しつつ、全額自己負担で事業が行えることを確認したものであります。

 この交通政策審議会の議論においては、リニア中央新幹線の建設に係るJR東海の金利負担のみを切り出した議論は行われておりません。この金利負担は会社全体の営業外費用の一部に含まれるものとなりますが、この試算におきましては、JR東海は、全社的な資金計画の中で、リニアへの投資だけでなく、国鉄の債務の償還や、また、日々の維持更新費等に必要な資金を捻出し、そのために必要な資金を調達しているということでございまして、明確にリニア建設に係る金利負担のみを切り分けることは困難というふうに聞いてございます。

 また、もう一つの、今回の財投でありますけれども、財投の貸し付けによるリニア中央新幹線の建設に係るJR東海の金利負担額については、三兆円の財投貸付分について、これは実際の金利が、これからの調達ですから現在は明確には言いませんけれども、仮にこれを全て〇・六%で貸し付けたとすると、この財投借り入れに関して償還までの間にJR東海が支払う金利負担額は約六千億円と試算ができるところでございます。

本村(伸)委員 きょうの質疑を通じても、リニアの問題はさまざまな問題を抱えております。ぜひこの国土交通委員会でJR東海を呼んで十分な審議をしていただくということを委員長に求めて、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

西銘委員長 理事会で協議します。

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参考資料

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