2016年10月27日(木) しんぶん赤旗
衆院国交委 リニアに公金投入 可決
本村議員が反対討論 審議わずか1日
衆院国土交通委員会は26日、リニア新幹線建設への3兆円の公的資金投入を可能にする鉄道建設・運輸施設整備支援機構法改定案を採決し、自民、公明、民進、維新などの賛成で可決しました。日本共産党は反対しました。同改定案は同日、実質審議入りしたばかり。同日の参考人質疑でもリニアの安全・技術面での不安など、多くの問題点が指摘されたにもかかわらず、わずか1日の審議で質疑を打ち切り、可決されました。
同改定案は、政府が国債の一種「財投債」を発行して調達した資金を、リニア中央新幹線全線開業の最大8年間前倒しを理由に、鉄運機構を通じてJR東海に貸し出す財政投融資(財投)を行うため、機構に貸付業務を追加するもの。採決に先立ち、日本共産党の本村伸子議員が反対討論し、リニア新幹線事業が抱える問題に対する十分な審議もなく採決したことに抗議しました。
本村氏は、「安全性、採算性、技術面、自然環境、生活環境などの多くの問題を抱え、無謀な計画だ」と指摘。同社の全額自己負担という大前提が崩れた以上、「JR東海の全額自己負担を前提とした整備計画決定、工事実施計画の認可を取り消すべきだ」と求めました。
反対の理由に、(1)リニア新幹線事業そのものに大義がなく、建設主体のJR東海のやり方にも多くの問題点がある(2)今回の財政投融資はさらなる追加投資に道を開き、将来、国民・住民にツケを回すことになりかねない―などの点を挙げました。
2016年10月28日(金) しんぶん赤旗
リニア問題 公金注ぎ情報非公表
本村議員に国交省 衆院委
リニア中央新幹線に3兆円もの公的資金投入を計画しながら、JR東海発注の建設工事情報が開示されないことが、日本共産党の本村伸子議員の26日の衆院国土交通委員会の質問で明らかになりました。国土交通省の奥田哲也鉄道局長は、JR東海発注の工事について、契約金額や経過などすべて「非公表」だと答えました。
本村氏は、「3兆円も公的資金が投入される事業。情報公開を推進する政府の方針にも反する」と開示を求めました。
また、労働者の安全確保、労働条件改善など求める公共工事品質確保法も適用されないとして、それに準じる対応を求めました。
政府は、鉄道運輸機構に貸付業務を追加して、リニア事業を行うJR東海に財政投融資する仕組みづくりを進めています。資金の償還確実性の審査も鉄道運輸機構にさせます。本村氏は、同機構には貸付業務に精通した人材がおらず、JR東海と頻繁に人事交流が行われている事実を示し、「厳格な審査はできない。とってつけたような仕組み」だと批判しました。
本村氏はリニアへの公的資金投入の背景として、参院選で「超低金利活用型財政投融資」を今後5年間、30兆円規模で行うとした自民党の公約を紹介。「1990年代後半、『第2の予算』と呼ばれた、大型開発事業への財投資金投入を復活させる、リニアをその先駆けにするのではないか」と追及しました。石井啓一国交相は「財投全体の在り方は財務省に」と答弁を避けました。
2016年10月30日(日) しんぶん赤旗
用地取得理解進まず リニア建設 本村氏質問で明らかに
リニア中央新幹線建設工事の前提である用地取得が住民の理解を得られず進んでいないことが26日の衆院国土交通委員会での日本共産党の本村伸子議員の質問で明らかになりました。
リニア沿線1都6県の用地取得状況について国交省の奥田哲也鉄道局長は「今後実施する測量によって決まっていく。現時点で示すことはできない」と答弁しました。
本村氏の調査では、名古屋市は現在測量段階で用地取得はゼロ。岐阜県瑞浪市では区分地上権の数が不明で交渉は未着手です。本村氏は「工事が進んでいるかのように宣伝しているが、実際の工事は進んでいない。前提の用地取得にもほど遠い」と指摘しました。
山梨県南アルプス市の集落では頭上35メートルをリニア高架橋が横切り1日上下20本が走行する予定。宮沢区は、意見書を添えた署名を住民の95%から集めて同社に提出、隣の戸田区とともに事業説明会を拒否しています。
本村氏は、「狭い地域で肩寄せ合って暮らしてきた大好きな所。そんな思いをまったく無視して本当に許せない」など住民の声を紹介し、生存権の侵害だと追及、沿線住民の声を聞くよう求めました。石井啓一国交相は「地域の理解と協力が不可欠、丁寧に説明するよう指導監督していく」と答弁しました。
議事録
○本村(伸)委員 日本共産党の本村伸子でございます。
今回、JR東海、リニアに財政投融資で三兆円の公的資金を入れる、そのために、鉄道・運輸機構の業務に貸付業務を加えるという法改定です。
私は、予算委員会でこの三兆円の公的資金投入問題を取り上げまして、麻生太郎財務大臣ともやりとりをさせていただきました。この間、財務省ともやりとりをいたしまして、明らかになったことが三点ございます。
一点目が、財政投融資計画の編成において、財務省が、法律上規定もある財政制度等審議会を開かずに、持ち回りでいいかげんな形で決めてしまったということ。そして二つ目が、JR東海が今後出すお金、品川から大阪までの建設費九兆円の問題や、JR東海が、今後入ってくる収入の見込み、需要予測、この二つの根拠がわかる資料は、財政審の委員の先生方には議案資料としては渡されていなかったということ。そして三点目が、建設費九兆円、需要予測について、つまりは償還確実性について財政制度等審議会で議論されていないということ。この三点が明らかになりました。
麻生財務大臣に、償還確実性や、そもそも九兆円の根拠について精査をしたのかと質問をいたしましたら、次のような答弁が返ってまいりました。
九兆三百億のものが確実にどうなるか。私、生きていたら証明したいと思いますけれども、それまで生きている保証がありませんので何ともわかりません。私どもとしては、九兆円という予算を頂戴しておりますので、そのいただいたものに基づいて、我々としては、いわゆる償還確実性というものが、時間が延びるというのは十分あり得ますよ、もちろん。そういった意味では、私どもとしては、それが確実にできるかというと、残念ながら、それまで生きている保証が私にはありません。百歳以上、百歳まで生きているという保証はありません。
こういう答弁でした。
大変無責任な答弁だというふうに思います。時間が延びるというのは十分ありますよ、もちろんということで、事業費が膨れ上がるということを示唆する答弁だということも同時に指摘をしておきたいというふうに思います。
石井大臣も同席をされていたというふうに思いますけれども、石井大臣にお伺いをいたします。
今回のリニアへの三兆円の財政投融資は、返済が三十一年後、そしてその後、毎年毎年三千億円ずつ返済をして、四十年後に完済という計画でございます。償還は三十年後、四十年後という話ですけれども、国会議員として、そして大臣として、やはり子供たちや若者、次の世代のこともしっかりと考えて、真面目に検討して政策決定をするべきだというふうに思いますけれども、大臣、お答えをいただきたいと思います。
○石井国務大臣 リニア中央新幹線につきましては、現下の低金利状況を生かし、財政投融資を活用することで、大阪までの全線開業を最大八年間前倒しし、整備効果を早期に発現していくものでございます。
この全線開業によりまして、三大都市圏が一時間で結ばれ、人口七千万人規模の世界最大の巨大な都市圏が形成されることになります。我が国の国土構造が大きく変革され、国際競争力の向上が図られるとともに、その成長力が全国に波及し、日本経済を発展させるというふうに考えております。
今回、貸し付けが行われる財政融資資金の償還確実性についてでありますが、そもそも、JR東海は、収益力の高い東海道新幹線と一体的に経営を行うものであり、貸し付けた資金は、JR東海より確実に償還されるものと考えております。
貸し付けに際しましては、貸付主体となる鉄道・運輸機構におきまして、償還確実性に関する審査を行い、貸し付け後も定期的に会社の財務状況の確認等を行うこととしております。
したがいまして、今般の貸し付けに当たりましては、JR東海から確実に償還がなされるものと考えているところでございます。
○本村(伸)委員 リニアは、品川から大阪まで、建設費九兆円、今世紀最大の事業です。そして、新しい技術を使うものでございます。慎重に検討をしっかりとして、議論をするというのは当たり前だというふうに思います。
このリニアの三兆円、財政投融資の公的資金投入の問題で、財務省に伺いたいというふうに思います。
先ほども言いましたけれども、この三兆円の財政投融資計画の決め方そのものがずさんだったというふうに私は思っております。
来年度の財政投融資計画もあるわけですから、その際には、建設費九兆円の根拠、そして、過大な需要見込みではないか、生産年齢人口を加味していないじゃないかという指摘もあるわけですけれども、この需要予測、この二つがわかる資料を、償還確実性、このことがちゃんと検証できる資料を財政審の委員の方にお渡しして、この償還確実性について財政制度等審議会でしっかりと公開で議論をするべきだと思いますけれども、財務省、お答えをいただきたいと思います。
○北村政府参考人 お答えいたします。
財政投融資計画の編成に当たりましては、毎年度、財投機関から要求された内容を踏まえまして、財政制度等審議会の財政投融資分科会において御意見を聞いて、適切な審査、編成に努めております。
平成二十九年度財投要求につきましても、現在、他の財投機関と同様に、鉄道・運輸機構からの要求についても、償還確実性の観点も踏まえ、審査を進めているところでございます。今回の要求においても、鉄道・運輸機構の要求内容や審査の状況等も踏まえ、適切な編成に努めてまいります。
○本村(伸)委員 お答えになっていないと思うんです。建設費九兆円の根拠や需要予測の根拠をしっかりと議論するのかという点、お答えをいただきたいと思います。
○北村政府参考人 二十九年度要求に係ります財投分科会について、各財投機関の要求内容や審査の状況等も踏まえて、適切に開催してまいりたいと考えております。
○本村(伸)委員 ごまかしの答弁ですよね。
財政投融資の償還確実性の精査というのは、かつて、第二の予算と呼ばれて、不要不急の大型開発事業、湯水のようにこの事業に資金投入をされたことから、二〇〇一年、財投の改革の際に位置づけられたものだと理解をしております。その際には、政策コストの分析の導入や情報開示の徹底、これが改革の柱だったというふうに思います。それが、今回のように償還確実性の審査をまともに行っていないというのは、財投改革そのものに反するものだというふうに思います。
なぜこういうふうにいいかげんな審査しかしないのかという点を考えてみますと、いいかげんな審査の方がこの財政投融資を今後もじゃぶじゃぶ使えるからと考えているのではないかというふうに疑念が出てくるわけでございます。
この夏の参議院選挙で自民党の皆さん方は公約をされております。ゼロ金利を活用した超低金利活用型財政投融資を、今後五年間で官民合わせて三十兆円の事業規模を確保しますというふうに書いてあります。五年間で三十兆円ということであれば、毎年六兆円ということになります。
九〇年代後半、第二の予算と呼ばれた。そして、大型開発事業に財政投融資の資金が投入させられた。これが、それを復活させる問題で、リニアが先駆けになるのではないかというふうに疑念を持つわけですけれども、石井大臣の見解を求めたいと思います。
○石井国務大臣 財投全体のあり方については財務省の方でお答えいただくものかと存じますが、今回のリニア中央新幹線に対する財政投融資の投入ということにつきましては、あくまでもJR東海の償還確実性をきちんと判断した上で実施を行っているものでございます。過去の財投改革に逆行するものではないというふうに考えております。
○本村(伸)委員 確認をいたしますけれども、JR東海が何らかの理由で三兆円を返せなかった場合、最終的な債務の負担を行うのは誰か、確認をしたいと思います。
○奥田政府参考人 お答え申し上げます。
リニア中央新幹線につきましては、全国新幹線鉄道整備法に基づきまして、交通政策審議会におきまして、JR東海の財務的事業遂行能力の検証が行われまして、この中で、リニア中央新幹線への投資による債務は、大阪開業後のリニア中央新幹線及び東海道新幹線による営業収益で着実に返済できることが確認されております。
この結果、JR東海が収益力の高い東海道新幹線と一体的に経営を行うことで、経営の安定性を維持しながら事業を遂行することが可能であるとの答申を得たところでございます。
この点に関しましては、今回の措置によっても変わるものではなく、貸し付けた財投資金は確実に償還されるものと考えております。
さらに、今般の貸し付けに際しましては、貸付主体となる鉄道・運輸機構において、償還確実性に関する審査を行い、貸し付け後も定期的に会社の財務状況の確認等を行うこととしております。
また、貸付期間中にJR東海の財務状況が悪化し、債権保全が必要な場合等においては、担保を設定する旨も貸付時の約定において定める予定でございます。
これらの措置を講ずることによりまして償還確実性は十分に確保されるものと考えており、今般の財投資金については、JR東海から確実に償還がなされると考えております。
○本村(伸)委員 一般論として聞いているんですけれども、返せなかった場合、最終的な債務を負担するのは誰か、お答えをいただきたいと思います。
○奥田政府参考人 JR東海の償還能力については、先生も御案内のとおり、今お話をしたとおりでありますし、財投貸し付けについて償還が滞ったというようなことはないといった話がさっきあったと思いますので、お答えといたしましては、今般の財投資金についてはJR東海から確実に償還がなされるというふうに考えております。
○本村(伸)委員 確実に償還できるという根拠が、国交省でいえば交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会中央新幹線小委員会の議論などだというふうに思うんですけれども、そこにも疑義が出ているわけでございます。そういうことでこの議論をさせていただいているんですけれども、結局、JR東海が返せなかった場合、それは当然、国や国民の皆さんの負担になるということだというふうに思います。
資料をお出ししているんですけれども、資料一を見ていただきたいんです。
資料一の上の表は、今回、三兆円の財政投融資をした場合のJR東海の長期債務残高のグラフでございます。下は、以前の話ですね、財投の話が出てくる前、JR東海が出していた長期債務残高の資料を国交省から出していただいたわけですけれども、上の新しい長期債務残高を見てみますと、そもそも三兆円以外に借りる計画があるわけです。
国交省にお伺いしますけれども、三兆円以外に幾ら借りる計画になっているのかという点、品川から大阪のケースですね。
そして、財務省にお伺いしたいのは、リニアに三兆円以上貸すということはないですねという確認をしたいと思います。
○奥田政府参考人 お答えいたします。
済みません、ちょっと質問の御趣旨がいま一つ明確でないんですが、例えば名古屋開業時でありますと、今回のシミュレーションで四・六六兆円ですので、その時点での民借りは、それから三兆円を引きました一・六六兆円、大阪開業時は、五・五〇兆円から三兆円を引きました二・五〇兆円が民借りということになろうかと思います。
○北村政府参考人 お答えいたします。
今般のリニア中央新幹線に対する貸し付けにつきましては、品川―名古屋間の工事に充てるために調達が必要と見込まれます三兆円について、財投の長期、固定、低利の貸し付けを行うこととしておるものでございます。
これにより、JR東海が予定していた品川―名古屋間開業後の八年間の経営体力回復期間を置かずに、品川―名古屋間開業後、連続して、名古屋―大阪間の工事に速やかに着手することで、全線開業の前倒しを図るものでございます。
必要と見込まれます財投の貸し付けが三兆円を超えることはないと考えているところでございます。
○本村(伸)委員 次にお伺いをしたいんですけれども、上の、三兆円財政投融資をした場合のJR東海の長期債務残高、そして財投がない場合の以前の長期債務残高、この二つのグラフを比較いたしまして、JR東海の利益、メリットをどのように考えているのか、国交省から伺いたいと思います。
○奥田政府参考人 お答えいたします。
今般の措置は、財投の長期、固定、低利の貸し付けによりまして、八年間の経営体力回復期間をなくし、品川―名古屋間開業後、連続して、名古屋―大阪間の工事に速やかに着手することで、全線開業の前倒しを図るものでございます。
具体的には、品川―名古屋間の工事に充てるために調達が必要と見込まれる三兆円について、一括で貸し付けが行われることによりまして、JR東海は、金利変動リスクや、多額の資金需要に対応できないという資金調達リスクを回避することができるわけでございます。
これによりまして、八年間の経営体力回復期間をなくし、全線開業までの期間を最大八年間前倒すことを目指すことが可能となると考えており、これがJR東海にとってのメリットであるというふうに考えております。
○本村(伸)委員 この新しい表の二〇五〇年の債務残高を見てみますと、まず、財投ありのケースでいえば二兆円超でございます。そして、下の表の財投なしの場合は三兆円超でございます。二〇五〇年の債務残高で見てみますと、一兆円の債務残高が減るということになります。つまり、二〇五〇年にはJR東海の借金が一兆円減ることになるというふうに思います。これはJR東海の利益そのものじゃないかというふうに思うわけです。
そして、財投ありの長期債務残高では、二〇三七年の大阪開業時、五・五兆の債務残高になっております。その下の、前のケースですと、四五年、大阪開業時は四・六九兆円ということで、以前は、JR東海の借金は五兆円に抑えないとだめなんだ、経営が危うくなるから五兆円に抑えるんだということを言ってきたわけですけれども、今回の財投の投入で、この表を見ましても、最大五・五兆円資金調達できるということです。これは、JR東海にとってはかなりのメリットであるというふうに思います。
先ほども議論がありましたけれども、JR東海の利息負担というのは当然減りますよね。
○奥田政府参考人 お答えいたします。
先ほど、黒岩先生からの御質問に対してお答えをいたしました。この両方のシミュレーションにつきまして、品川―名古屋間の着工から全線前倒し開業が見込まれるまでの期間、平成二十六年から平成四十九年につきまして計算をいたしますと、交通政策審議会で検証された当初ケースと、財投活用により八年前倒しを行うケースでは、五千億の差があるということでございます。
○本村(伸)委員 十月十九日のこの委員会で、財政投融資の金利を〇・六%と想定した場合、JR東海のリニア事業における利息負担というのは六千億円なんだという答弁がございました。JR東海はそもそも三%を想定していたわけですから、〇・六%の五倍でございます。〇・六%で六千億円の利息負担ということであれば、単純計算しますと、三%なら三兆円の利息負担を見込んでいたということになります。差し引き二兆四千億円、利息負担がJR東海は軽くなるということも、これは単純計算ですけれども、言えるというふうに思うんです。これは物すごい優遇だというふうに思います。
全額自己負担だといつも言われております。そして、経営支援じゃないんだということも国交省は言われておりますけれども、こういう利息の負担が軽減される中で、全額自己負担だから自己資金なんだと言われても、とても納得ができないわけです。全額自己資金がリニア事業実施計画の前提だったわけです。その前提が崩れているわけですから、整備計画決定や工事実施計画は認可を取り消すべきだというふうに思います。
法案についてもお伺いをいたしますけれども、JR東海、リニアへ財政投融資で三兆円の巨額の公的資金を投入するために、鉄道・運輸機構に貸し付けの業務を加えるという法改定ですけれども、こうした民間の特定の事業に鉄道・運輸機構が貸し付けた例はこれまでにあるのか、お答えをいただきたいと思います。
○奥田政府参考人 お答えいたします。
鉄道・運輸機構といたしまして、民間の鉄道会社の特定の事業に対する貸し付けを行った例はございません。
○本村(伸)委員 そういう優遇をするわけでございます。
私どもの志位和夫委員長が本会議質問をいたしまして、安倍首相がこう答弁をいたしました。先ほども御答弁ありましたけれども、「今般の貸し付けに際しては、貸付主体となる鉄道・運輸機構において、償還確実性に関する審査を行うとともに、貸し付け後も定期的に会社の財務状況の確認等をしてまいります。」と答えております。
そもそも、鉄道・運輸機構が十分な審査機能を持って償還確実性などを精査できるのかという問題がございます。
そこでお伺いをいたしますけれども、直近五年間で、鉄道・運輸機構からJR東海へ、逆にJR東海から鉄道・運輸機構への出向を含む人事交流と言われるものの状況をお示しいただきたいと思います。
○奥田政府参考人 お答えいたします。
鉄道・運輸機構からJR東海への出向を含みます人事交流者の在籍数は、平成二十四年度初三名、平成二十五年度三名、平成二十六年度三名、二十七、二十八年度の実績はないということになってございます。
それから、JR東海から鉄道・運輸機構への出向を含む人事交流者の在籍数は、年度初ですが、平成二十四年度五名、二十五年度八名、二十六年度九名、二十七年度七名、二十八年度四名ということになってございます。
○本村(伸)委員 役職で資料をいただきましたけれども、直近五年間で、JR東海から鉄道・運輸機構に出向など人事交流をしているのが十七名、そして鉄運機構からJR東海に出向などの人事交流を行っているのが六人だという資料をいただいております。
鉄道・運輸機構というのは、JR東海とずぶずぶの関係であるというふうに思わざるを得ないわけです。十分な審査機能があるのか、厳格で客観的な審査ができるはずがないと、私は、この関係からも思います。
この鉄道・運輸機構には十分な審査機能がない、償還確実性を精査できる、そういう機能がないというふうに思いますけれども、もともと金融機関じゃないわけですから、償還確実性を審査するノウハウがないのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
○奥田政府参考人 お答えいたします。
今般の財投措置におきましては、JR東海の償還確実性に係る審査を行うとともに、財投資金を貸し付けた後に、定期的に、工事の進捗状況でありますとか、JR東海の財務状況の把握及び確認を行い、円滑な工事の実施や償還確実性の確保を図ることが必要となってまいります。
鉄道・運輸機構は、鉄道建設の整備促進のための支援を総合的かつ効率的に行うことを目的といたしておりまして、鉄道建設に関する技術や工程管理に関する知見が十分に蓄積されていることから、この鉄道・運輸機構において貸し付け及びその後のモニタリングを行うことが適切であると考えたところでございます。
なお、財投の貸付業務につきましては、確実な審査等の対応が必要となることから、機構における既存の人員体制の範囲内におきまして、貸し付け等の業務に関する専門知識を有する人材も含めた体制構築を行い、厳正な審査に万全を期すということにいたしております。
○本村(伸)委員 事前の審査やモニタリングをする職員の人件費などの経費は、JR東海が負担するというふうになっております。JR東海がその人件費などを負担するということであれば、やはり厳格な審査機能を発揮することができないというふうに思うわけです。
これは初めてやることなので、本当に取ってつけたスキームで、三兆円貸し付けるにもかかわらず、いいかげんな仕組みでやろうとしているというふうに思います。
先ほども、安倍首相の答弁、そして今、局長の答弁がありましたけれども、事前の償還確実性の審査というのはどういう審査をするのか、そういうことを問いたいというふうに思います。
建設費九兆円の根拠、需要予測の根拠、その精査もちゃんとするのか。先ほども参考人からありました、人件費の高騰や資材費の高騰がある中で、今の時点でちゃんとチェックするべきだというふうな指摘もありましたけれども、ちゃんとその点を精査するのかという点、そして一件一件の工事の予定価格、工事契約の内容、発注価格、工事の方法など精査するのかという点をお伺いしたいと思います。
○奥田政府参考人 お答えいたします。
鉄道・運輸機構は、JR東海に対します貸付時に、JR東海の財務の健全性でありますとか、リニア中央新幹線の全線開業を前倒ししても償還期間のキャッシュフローが確保される見通しであることなどを確認することとしております。
具体的には、各種経営情報資料を用いた財務分析の実施でありますとか、JR東海の事業から生み出されるキャッシュフローと、設備投資及び財投資金を含む債務返済キャッシュフローの比較、需要の変動、設備投資金額の変動といった事業の前提条件に変化が生じた場合にも、償還期間中のキャッシュフローに問題がないかの確認などを行うこととなります。
なお、JR東海から鉄道・運輸機構に提供のあった情報については、法律上、秘密保持義務がかかることとなります。
あと、お尋ねの何点かについてでございます。
まず、大阪までの総事業費につきましては、品川―大阪間全体の建設費につきましては、平成二十一年十二月に鉄道・運輸機構及びJR東海から公表された中央新幹線調査報告書、いわゆる四項目調査におきまして、その概要額が九兆三百億円とされております。
万一、増加が見込まれる場合におきましては、JR東海は、中央新幹線の工事全体について一層のコストダウンに取り組むとともに、毎年の経営努力を積み重ねることで、会社全体としてこの増加分を吸収しつつ、事業を遂行していく旨、聞いております。
なお、現時点で、確定的な超過要因があるとは承知しておりません。
また、需要予測の根拠につきましては、JR東海の財務的事業遂行能力について、交通政策審議会において、経済成長率ゼロ%、国立社会保障・人口問題研究所の日本の都道府県別将来推計人口、平成十九年五月に基づく需要予測を用いて検証を行っております。すなわち、経済成長率については政府の見込みよりも厳しい数値、人口については政府の予測に沿った数値をもとに検討を行ったところでございます。
あと、個別工事について内容や予定価格ということでございますけれども、鉄道・運輸機構は、貸し付け後、定期的にモニタリングを行いまして、工事の実績及び今後の工事内容の報告を受けまして、貸付対象事業の進捗状況の把握等を行うこととしておりまして、工事についての内容や事業費等については、必要に応じて確認を行うということかと思います。
なお、先ほどからモニタリングの経費についてお話がありますが、例えば民間の金融機関でありますと、調達金利に、彼らがいろいろな業務を行います経費プラス利潤を乗せまして貸付金利を決めてやるということでありますが、鉄運機構の場合は、事前の法案の御説明でも御説明したかと思いますが、借りた条件と同条件で貸し付けます。したがって、民間が調達金利に乗せている部分の経費に当たる部分を当然いただいておるだけでありまして、利潤をいただいておるものではないということを申し添えておきたいと思います。
○本村(伸)委員 九兆円の根拠や需要予測に疑義があるからこそ、こういう質問をしているわけでございます。公的資金を投入するわけですから、今局長が言われたことを検証するためにも、情報がしっかりと国民的に公開されなければならないというふうに思います。
そこで、伺いますけれども、品川―名古屋間では、このリニアは八六%がトンネルでございます。このリニア関連のトンネル工事、これまでに何件契約しているか、工事名をお示しいただきたいのと、発注金額についてお示しをいただきたいと思います。
○西銘委員長 奥田局長、いいですか。
○奥田政府参考人 済みません、通告の問いに見当たらなかったような気がしたので……。
リニア中央新幹線のトンネル工事につきましては、第四南巨摩トンネル(西工区)、南アルプストンネル(山梨工区)、それから伊那トンネル(坂島工区)、中央アルプストンネル(山口工区)、日吉トンネル(南垣外工区)において契約が締結されております。
これらのトンネル工事では、工事用作業ヤードのための土地は借地、トンネル坑口の付近の土地は用地取得または区分地上権で……
○西銘委員長 ゆっくり発言してください。
○奥田政府参考人 はい。用地取得または区分地上権設定でそれぞれ確保されることが予定されております。
○本村(伸)委員 契約金額についてお伺いしたいんですけれども、JR東海だけじゃなくて鉄運機構も契約していると、私、資料の二枚目で出しておりますので、それを読み上げていただいてもいいかと思います。
○西銘委員長 準備はできていますか、答弁資料。
奥田鉄道局長。
○奥田政府参考人 お答えいたします。
まず、国などが行う公共工事では一般に税金が投入されていることから、その透明性を確保することが必要であります。このため、工事の入札でありますとか契約等に関する情報につきまして、関係法令、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律に従って公表することとされております。
民間企業でありますJR東海が行う工事につきましては、同法が規定する公共工事に該当しないため、JR東海は、リニア中央新幹線の工事の契約金額を公表いたしておりません。
なお、JR東海によれば、個別の工事価格が類推されるなど、今後の契約に影響があるため、契約金額については公開していないということでございます。
あと、鉄運機構が契約をいたしております二件につきましては、先生が配付された資料に書いてあるとおりというふうに承知しております。
○本村(伸)委員 鉄運機構の中央アルプストンネルの山口の部分ですけれども、百三十七億九千五百九十九万円というように公表されているわけでございます。先ほど答弁いただいた中身が二枚目の資料に、皆様方にお配りをしております。JR東海が発注しているトンネル工事その他の工事については、契約金額も非公表というふうになっております。
公金が投入されるリニアの事業で、財政投融資がされる工事で、JR東海発注と鉄道・運輸機構発注で何が違うのか、JR東海発注はなぜ公開されないのか、その点、お示しをいただきたいと思います。
○奥田政府参考人 先ほど申し上げましたように、国などが行う公共工事では一般に税金が投入されることから、その透明性を確保することが大事であるということで、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律に従いまして、その法律に言う公共工事を実施する者については公表するということにされておりまして、鉄運機構はそちらに該当する、民間企業のJR東海はそちらに該当しないということで、こういった法制度の前提があってそういうことになっておるというふうに理解しております。
○本村(伸)委員 公共工事では、入札状況調書ですとか、下請の施工体系図ですとかが公表をされております。公共事業でこうしたものを公表して、何か支障が出ておりますでしょうか。
○奥田政府参考人 恐縮ですが、支障の有無については承知いたしておりません。
○本村(伸)委員 昨日通告をしたはずですけれども、後で確認をして答弁をいただきたいというふうに思います。
鉄道・運輸機構は、JR東海発注の工事進捗状況を把握し、適正にできているか監視をする役割が、今回の法改定で仕事になるというふうに思いますけれども、工事の入札状況調書を初め契約に至る経過や施工状況など、鉄道・運輸機構にはJR東海からちゃんと情報が開示されるのか、お示しをいただきたいと思います。
○奥田政府参考人 お答えいたします。
今般の財投措置におきましては、JR東海の償還確実性に係る審査を行うとともに、財投資金を貸し付けた後に、定期的に工事の進捗状況やJR東海の財務状況の把握及び確認を行うことといたしております。
工事の進捗状況の確認に当たりましては、具体的には、工事の実績及び今後の工事内容の報告を受け、貸付対象事業の進捗状況の把握等をすることとしております。鉄道・運輸機構は、それらのために必要な範囲でJR東海に対して適宜の資料提出等を求めることとなると考えております。
なお、JR東海から鉄道・運輸機構に提供のありました情報につきましては、法律上、秘密保持義務がかかるということになっております。
○本村(伸)委員 明確に述べていただきたいんですけれども、工事の入札状況調書、そして契約に至る経過、施工状況、これはJR東海から機構に開示されるのか。
○西銘委員長 奥田鉄道局長、最後の方、ゆっくり発言してください。
○奥田政府参考人 今御指摘の点につきましては、審査を行う過程で、具体的にどの資料の提出を受けるかについて、必要に応じ判断がされるということだというふうに承知をいたしております。
○本村(伸)委員 鉄道・運輸機構にも今私が指摘をした資料が開示されるかどうかもわからないということだったというふうに思います。そういう状況で認めろというのは、本当におかしいことだというふうに思います。
財政投融資の改革の柱に、情報公開が中心的な課題として位置づけられております。財務省に対して申し上げたいんですけれども、情報公開をするべきだということを鉄運機構やJR東海に指導するべきだと思いますけれども、お答えをいただきたいと思います。
○北村政府参考人 お答えいたします。
財政投融資につきましては、平成十三年度に財投改革が行われまして、議員御指摘の情報公開の一層の徹底等を実施することとされたところであります。この情報公開の徹底に当たりましては、財投機関の財務諸表等について国民にわかりやすい形での情報公開を行うことで、財投機関の規律確保を図ることとしているものでございます。
今般JR東海に対して貸し付けを行う鉄道・運輸機構においても、適切に財務諸表等の公開を行うものと理解をしております。
○本村(伸)委員 適切な情報が開示されるということは、鉄運機構には先ほど言った資料がちゃんとJR東海から提供されるという理解を財務省としてはしているという理解でよろしいでしょうか。
○北村政府参考人 お答えいたします。
先ほど申し上げました財投改革における情報公開の徹底は、財投機関の財務諸表等の公開を行うものでありまして、財投機関の融資先に関する個別の情報開示を意味するものではないというふうに考えております。
○本村(伸)委員 大臣も、そして安倍首相も、償還確実性はあるから大丈夫だというふうに言っておりますけれども、それを国民的に精査しようと思っても、情報が開示されない中でどうやって精査をすればいいのか、ただ信じろということなのかと抗議をしておきたいというふうに思います。
もう一つお伺いをいたしますけれども、私は、静岡県の南アルプスに行ってまいりました。実際に見た南アルプスというのは、本当に、写真や言葉では尽くせないような壮大な自然環境が残っている地域です。この南アルプスの壮大な自然を壊して、よくトンネルをぶち抜こうとするな、そういう発想がよく出てくるなと、JR東海や国土交通省の見識や倫理観を私は疑いました。おごりの象徴であるというふうに思いました。
この静岡県の南アルプスの区間には、七百人の労働者が働くことになるそうです。その宿舎の予定地も、案内をしていただいて見てまいりました。崖崩れの真下にございました。深層崩壊したような地形で、現在も、そして将来も、工事中に土砂崩れがあるのではないかと大変心配するようなところでございました。この点でも人命軽視じゃないかという点を私は大変思いましたけれども、リニアは働く人が犠牲になるのではというふうに大変心配になりました。
そこで、確認をいたしますけれども、鉄道・運輸機構の事前の審査やあるいはモニタリングの際に、リニア工事についてダンピングがないように、あるいは下請たたきがないように、実際に働いている方々にまともな労働条件が確保されない、こういうことがないように、労働者が社会保険に入るなど品確法が適用されるかどうか、この点、確認したいと思います。
○石井国務大臣 リニア中央新幹線の工事は、建設主体でありますJR東海の責任で行われるものであります。工事の安全性につきましても、JR東海の責任で確保されるべきものと考えております。
国土交通省といたしましては、平成二十六年十月の工事実施計画の認可に際して、当時の太田国土交通大臣より、地域の理解と協力の獲得、環境の保全の措置に加え、安全かつ確実な施工を行うよう、指示を行っているところであります。
これを踏まえまして、国土交通省として、安全かつ確実な施工が行われるよう、引き続き、建設主体であるJR東海を指導監督してまいりたいと考えておりまして、この点は、今回の措置によって変わるものではございません。
なお、鉄道・運輸機構が行います資金の貸付時の審査やモニタリングは、償還確実性や工事の進捗状況の確認等のために行うものでございます。
繰り返しになりますが、安全対策や法令遵守につきましては、国土交通省より、しっかりとJR東海を指導監督してまいりたいと考えております。
○本村(伸)委員 民間の工事のときに、不当に下請の皆さんを買いたたいて、実際に働く人たちが犠牲になっている現場を知っているからこそ、こういう質問をしているわけでございます。償還確実性を審査すると言いますけれども、九兆円に抑えようということで働く人たちが犠牲になるようなことがあってはならないからこそ、こういう質問をしているわけでございます。
質問は、品確法が適用されるかどうかという質問だったんですけれども、いかがでしょうか。
○奥田政府参考人 そういった工事の現場等におきましても、安全性関係の法令を初め各種法令に従った対応がなされるものと思っておりますが、大変恐縮ですけれども、今直ちにちょっとお答えすることができませんので、直ちに調べて御回答いたします。
○本村(伸)委員 労災ゼロ、そして過労死ゼロは当然だというふうに思います。
リニアはトンネルが八六%ですから、じん肺にならないように労働安全衛生がしっかりとされるということ、あるいは、足場を組む場合も公共事業並みの安全対策をしっかりととられるのかという点、先ほど言った宿舎の安全確保の観点、そしてダンプも過積載にならないように、元請が不当にそういうことを下請に要求しないかどうかということもしっかりとチェックをしなければならない。それが確保されるかどうかというのも、とても大切な審査内容だというふうに思っております。
時間がないので先に進みますけれども、リニアの用地取得の進捗状況についてお伺いをしたいというふうに思います。
一都六県、それぞれ用地取得率はどうなっているか、交渉対象者が何人いて、交渉開始が何%で、契約済みが何%か、お答えをいただきたいと思います。
○奥田政府参考人 リニア中央新幹線の用地取得における地権者数につきましては、現在行われております、及び今後行われる予定の用地測量によって定まるものでございます。このため、現時点におきましては、都道府県別の地権者数をお示しすることはできません。
なお、大まかな数字といたしまして、移転をお願いする、もしくは区分地上権を設定させていただく地権者数は、品川―名古屋間の全線で約五千人程度になるというふうに想定されていると聞いております。
○本村(伸)委員 交渉開始などについてはないんでしょうか。わからないわけですか。
民間のJR東海がやっているということを主張されるわけですけれども、では、用地交渉や事務をやっているのは一体誰かということが問題になります。品川から名古屋まで一都六県、どうなっているか、お示しをいただきたいと思います。
○奥田政府参考人 全国新幹線鉄道整備法の第十三条第四項におきまして、「地方公共団体は、」「新幹線鉄道に関し、その建設に要する土地の取得のあつせんその他必要な措置を講ずるよう努めるものとする。」というふうに規定をされておりますが、リニア中央新幹線では、整備新幹線と同様に、全国新幹線鉄道整備法十三条四項の規定に基づきまして、JR東海が地方自治体に委託をして、地元地権者との交渉などの用地取得に関する事務が行われているところでございます。
○本村(伸)委員 明確に、いろいろ秘密にして進めていくのかなというふうな疑念が出てくるわけです。
民間のJR東海がやるというふうに言っておりますけれども、実際に用地交渉や事務をやっているのは自治体の皆さんです。自治体を手足のように使っている。そして、JR東海のために土地収用法も適用される仕組みになっています。都合がいいところだけ民間と言って、大事なところは公共にやらせるということは、本当におかしいというふうに思います。
私、愛知県内の状況や岐阜県内の状況も聞いてまいりました。名古屋市では、登録簿上の地権者総数が六百八十人。この内訳ですけれども、立ち退き対象の方が百二十名、そして区分地上権の方が五百六十名。今は建物等測量の段階である、実質的にはゼロ交渉だという報告でございました。そして、岐阜県の瑞浪市は、日吉町の非常口ヤードの地権者は二名おりまして、ここでも交渉中で、契約に至っていないと。瑞浪市内の区分地上権の方は、数もわからないし、交渉も未着手だという報告を、名古屋市会議員団、そして瑞浪市会議員団から、行政から聞いていただいて、報告を受けました。こういう状況で、まだまだ全然進んでいないわけです。
次に聞きたいんですけれども、トンネル工事など、工事発注した区間の用地の取得は完了しているのか、聞きたいと思います。
○奥田政府参考人 お答えいたします。
先ほど、工事を発注している区間を申し上げました。第四南巨摩トンネル、南アルプストンネル、伊那山地トンネル、中央アルプストンネル、日吉トンネル、契約が締結されておりますが、これらのトンネルの工事では、工事用作業ヤードのための土地は借地、トンネル坑口、非常口付近の土地は、用地取得または区分地上権設定で、それぞれ確保することが予定をされております。
このうち、JR東海によれば、坑口付近の土地の一部は取得済みというふうに伺っております。
○本村(伸)委員 では、もう一つ確認したいんですけれども、鉄運機構委託区間の工事の進捗状況、下請の施工体系図などは整っているのか、お伺いしたいと思います。
○奥田政府参考人 JR東海は、鉄道・運輸機構に対しまして、小野路非常口他工事、中央アルプストンネル(松川)外工事、中央アルプストンネル(山口)工事の三工区の工事を委託しております。
これらのうち、小野路非常口他工事及び中央アルプストンネル(山口)工事につきましては、鉄道・運輸機構は施工会社と契約済みで、それぞれ、本体工事に向けての準備工事、施工計画の検討が行われております。もう一つの工区、中央アルプストンネル(松川)工区につきましては、現在、契約手続中ということでございます。
また、各工区の施工体系図につきましては、今後、下請業者等が決まった段階で作成される予定というふうに伺っております。
○本村(伸)委員 いろいろ発注が進んで、工事に着手されているということが喧伝されておりますけれども、実際の工事は進んでいないわけです。前提となる用地取得も、まだほど遠いという状況でございます。
そもそもという点で、ちょっと話をかえてお伺いをしたいんですけれども、ルートの線引きは一体誰がどのように決めたのか、ルートの沿線の住民の皆さんにちゃんと相談をしたのか、お伺いをしたいと思います。
○奥田政府参考人 リニア中央新幹線の品川―名古屋間のルートにつきましては、平成二十三年から行われました環境影響評価の中で示されました。
具体的には、平成二十三年六月及び八月にJR東海が作成いたしました計画段階環境配慮書の中で、三キロメートルの幅でルートが公表され、同年六月から八月にかけまして、環境保全の見地から、沿線自治体や住民の方々からの意見聴取が行われました。
また、平成二十五年九月にJR東海が作成いたしました準備書の中では、一万分の一の縮尺でルートが示されまして、公告縦覧の上、環境保全の見地から、沿線自治体や住民の方々からの意見が提出されました。
このように、リニア中央新幹線のルートにつきましては、環境影響評価法に基づく手続の中で地元からの御意見を聞きながら、JR東海において定められたものというふうに承知をいたしております。
○本村(伸)委員 住民の皆さんの意見を聞いたというふうに言っておりますけれども、全然知らなかった、突然聞いたという方が沿線地域あちこちにいらっしゃいます。リニアは、本当に人の暮らしを無視して机上で線を引いたということで、沿線地域の皆さんから悲痛な声が各地で上がっております。
例えば、山梨県の南アルプス市、私も二回ほど行ってまいりましたけれども、沿線住民の皆さんから大変悲痛なお声をいただきました。住民の皆さんは、新聞報道で初めて知ったということでございました。
戸田地区というところに行ったんですけれども、この戸田地区は、四角い集落の真ん中を斜めにリニアの高架が通る計画になっております。戸田地区の自治会長さんは、この集落には湧き水も多く出ており、湧き水は大切な地域資源ですというふうにおっしゃっておりました。その地域が壊されるという点で、大きな悲痛な声が出ているわけでございます。
ある方は、突然線を引かれてずっと悩んでいる、騒音、振動、電磁波など本当に大丈夫か、こういうお声もありました。また、狭い地域で肩寄せ合って暮らしてきた大好きなところ、そんな思いを全く無視して本当に許せないというお声。そして、JR東海のいいかげんな説明は承認できない。また、南アルプスの水もおいしく、仲よく平穏に暮らしてきた、こんなやり方は本当に信じられないと。
また、家の敷地も斜めに横切られるが、二十二メートルの幅に入ったところしか買収しないという。こんなことはおかしい。うちは勝手口の一部にかかるが、そこの部分しか買収しないという。それでも、そこに住めという話、こんなことは許せないというお話でした。
JR東海が勝手に線を引いて、そこに住んでいる人たちへの意識が本当にあるのかということを疑問に思わざるを得ませんでした。
また、同じ南アルプス市の荊沢のある女性は、こういうふうにおっしゃっておりました。家の敷地を斜めにリニアの高架が通る計画で、二十二メートルの中に入らなければ買収しないとJR東海が言ってきた。こんな理不尽なことがありますか。家はなくなり、この駐車場の部分だけ残る。買収するなら全部買い取ってもらわないと絶対にだめだ。そういうことでない限り、私の家の敷地には一歩たりとも入らないようにJR東海には言ったというお話でございました。
また、宮沢地区の皆さんのお話では、リニアのルートの発表以降、土地価格の下落が続いている。地価を下回る値段で売り出しても買い手がつかず、沿線の住宅地が売れない。我々は、用地補償幅を百メートルと主張している。この声に対し、JR東海は、地価は社会的、経済的要因で変化するものと、他人事だと。用地交渉幅についても、二十二メートルとJRは主張しております。
こういうJR東海の回答を受けて、宮沢地区の皆さん方は、説明会には応じられないということで、今も事業説明会を拒否しておられます。この宮沢地区では、意見書を添えた署名を地域の九五%の方から集めて、JR東海に提出をしております。まさに、生存権や人格権、幸福追求権を一方的に侵害されている事態だというふうに思います。JR東海の計画がいかに上から目線かということが今御紹介した声からもわかっていただけるというふうに思います。
事業認可をした国土交通大臣は、リニアルートの地域の皆さんのこの切実な声を直接聞くべきだと、私は現地に、一都六県に行ってまいりましたけれども、痛切に思いました。公的資金を入れるというのであれば、国交大臣が、こうした沿線地域の皆さんの声を直接聞くべきではないですか。
ぜひ、沿線各地に行っていただいて、沿線の住民の皆さんの声を直接聞いてください。大臣、お願いいたします。
○西銘委員長 時間が経過していますので、簡潔に御答弁をお願いします。
○石井国務大臣 リニア中央新幹線の建設事業が円滑に実施されるためには、地元の理解と協力を得ることが不可欠と考えます。国土交通省といたしましては、引き続き、JR東海に対しまして、地元住民等に丁寧に説明をしながら、安全かつ確実に施工が行われるよう、指導監督してまいりたいと存じます。
○本村(伸)委員 ぜひ、現地に行って、住民の皆さんの声を聞いていただきたいと思います。名古屋駅前の皆さんも、動きたくないと調査を拒否しておられます。生活を壊し、環境を壊し、採算もとれない、そして住民の声も聞かない、このリニアの計画はやめるべきだ、公的資金投入はやめるべきだということを強く申し述べ、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。
反対討論
○西銘委員長 これより討論に入ります。
討論の申し出がありますので、これを許します。本村伸子君。
○本村(伸)委員 私は、日本共産党を代表して、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法の一部を改定する法律案に反対の討論を行います。
リニア新幹線事業は、安全性、採算性、技術面、自然環境、生活環境など多くの問題を抱え、無謀な計画です。リニア建設に公的資金を投入することは、JR東海が全額自己負担で建設する大前提を覆すものです。大前提が崩れた以上、JR東海の全額自己負担を前提とした整備計画決定、工事実施計画の認可を取り消すべきです。
反対の第一の理由は、そもそも、リニア中央新幹線事業そのものに大義がなく、建設主体であるJR東海のやり方にも多くの問題があるからです。
日本で有数の活断層地帯を通過するにもかかわらず、断層のずれに対する評価も行われていないなど、安全面、技術面でも不安が拭えません。
環境大臣意見書も、本事業の実施に伴う環境影響は枚挙にいとまがないとしており、南アルプスや生態系など自然環境に甚大な被害を与えることは明瞭です。
沿線地域や住民の皆さんからは、今ある暮らしが壊されることや、残土処理、水がれ、騒音、振動、日照、電磁波など、実害に対する不安や怒りの声が上がっています。しかし、JR東海はその声にまともに応えようとしていません。
反対の第二の理由は、今回の財政投融資は、さらなる追加投入への道を開いたことになり、将来、国民、住民の皆さんにツケを回すことになりかねないからです。
リニア事業は、もともと単体では赤字の事業です。一体的な経営を行い事業を遂行すると言いますが、需要予測も生産年齢人口を加味していないなどずさんなもので、建設費九兆円でおさまる根拠はなく、費用が膨れ上がることが懸念をされています。JR東海の財政状況が悪化するおそれは十分にあります。
政府は、リニア新幹線を地方創生の目玉と位置づけ、全線開業により三大都市圏が一時間で結ばれ、人口七千万人の巨大都市を形成し、日本経済全体を発展させるとしています。
しかし、人口が減少する中、大都市圏に人口を集中させれば、地方の衰退はさらに進み、いびつな人口分布にならざるを得ません。さらなる東京一極集中を加速させ、地方を衰退させるだけです。
以上のような問題を初め、十分な審議もすることなく採決することに強く抗議し、反対の討論といたします。
○西銘委員長 これにて討論は終局いたしました。
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○西銘委員長 これより採決に入ります。
内閣提出、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構法の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○西銘委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
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参考資料
https://motomura-nobuko.jp/wp-content/uploads/2017/06/20170607142707909.pdf