2016年12月5日(月) しんぶん赤旗
労働実態報告 義務に バス運行 関連法案など可決
衆院委 本村議員質問
衆院国土交通委員会は2日、バスなどの運転手の健康診断を促すなど健康管理を強化する道路運送法・貨物自動車運送事業法改正案や自転車活用推進法案、無電柱化推進法案を全会一致で可決しました。
採決に先立つ質疑で、日本共産党の本村伸子議員は、重大事故が頻発するバスの安全運行のためには運転手の労働実態把握が急務だと指摘。通常国会で「検討する」と約束していた調査についてただしました。
国交省の藤井直樹自動車局長は「運転者の平均給与月額、平均勤続年数、雇用形態の報告を事業者に義務付ける」と答えました。
本村氏は、自動車運転手の勤務時間などを定めた「改善基準告示」の運用実態調査の結果公表を重ねて要求しました。自転車管理に「情報通信技術等の活用」を掲げている自転車活用推進法案については「マイナンバーと連動させてはならない」と主張。内閣府の向井治紀審議官は「現時点では想定していない」と述べました。
本村氏は無電柱化推進法案について、住民の協力が強制されることがないよう「地域住民の理解と納得、同意を得ることを徹底してほしい」と要請。石井啓一国交相は「地域住民の意向を踏まえ推進に努める」と答えました。
議事録
○本村(伸)委員 日本共産党の本村伸子でございます。
本日採決も予定されております議員立法の三法案について確認させていただきたいというふうに思います。
まず、道路運送法、貨物自動車運送事業法の関係でございますけれども、これは、バス、タクシー、トラックの運転者の方々の健康に関する法の改定だということで認識をしております。
今回の法案というのは、軽井沢バス事故が背景にあり、検討されてきたということですけれども、疾病によって安全な運転ができないおそれがある状態でドライバーの方が運転することを防止するために、事業者が必要な措置を講じなければならないということが書かれてございます。これは、乗客の皆さんの命を預かるわけですから、当然のことだというふうに思います。
一方で、懸念される声として挙げられておりますのが、疾病をお持ちの方あるいは障害をお持ちの方が排除されることになるのではないかというお声でございます。
この法案が通ったら解雇されるとか機械的に排除されるとか、そういうことはないというふうに私は認識をしておりますけれども、国交省としても認識をお聞かせいただきたいと思います。
○藤井(直)政府参考人 お答えいたします。
輸送の安全確保は運送事業における最大の使命であり、運転者の心身の健康管理を初めとした健康起因事故の防止対策は、非常に重要な課題であると認識をしております。
一方で、疾病を抱えた運転者については、医師による継続的な診察等により業務を続けながら快復することもあり、また、運転以外の業務に配転する道もあることから、疾病が発見されたからといって直ちに解雇することは、雇用の安定性や人材確保等の観点から適切でないものと考えております。
この考え方のもとに、国土交通省としては、スクリーニング検査による疾病の早期発見とその治療に努めてまいります。
○本村(伸)委員 この法案が通ったから解雇されたということがゆめゆめないように、法案成立後、ガイドラインなども定められるということを聞いておりますけれども、ぜひ、解雇につながらないように徹底していただきたいというふうに思います。
今回の法案は軽井沢バス事故が背景にあったわけですけれども、事故を起こした株式会社イーエスピーは、事故の発生後の特別監査で、三十三件の道路運送法関係の法令違反があったということです。健康管理に関する違反もあり、定期健康診断が未実施であった、あるいは新たな雇い入れ運転者に対して健康診断が未実施であったということが国交省の特別監査で明らかになっているというふうに思います。
命を預かる貸し切りバスのドライバーの健康診断を確実にやらせなければいけないというふうに思います。今回もこの国会で法改正を議論いたしましたけれども、健康の確保、疾病対策を有効に機能させ、安全運行していくということからしても、健康診断を確実にやらせるということが必要で、国交省としてこの強化をどうしていくおつもりか、お聞かせいただきたいと思います。
○藤井(直)政府参考人 お答えいたします。
運送事業者は、道路運送法令において、乗務員の健康状態の把握に努め、疾病、疲労、その他の理由により安全な運転をできないおそれがある乗務員を乗務させてはならないとされており、これを踏まえ、労働安全衛生法に基づく定期健康診断を受診させることとしております。
国土交通省としましては、運送事業者に対する監査において、健康診断受診の状況を確認し、法令違反が判明した場合には、行政処分を科しているところでございます。
さらに、国土交通省では、健康診断の受診を徹底するため、事業用自動車の運転者の健康管理マニュアルを作成いたしまして、健康診断の適切な受診方法をまとめ、各種セミナーなどを通じて当該マニュアルの普及徹底を図っているところでございます。
加えて、本年八月より、健康診断の未受診について、国土交通省による監査及び厚生労働省による監督において過労運転等の違反事実を確認したときには、当該事案を相互に通報することとし、厚生労働省との連携のもとに受診の強化を図ろうとしているところでございます。
これらの対策を進めまして、運転者の健康診断の受診の徹底を図り、健康起因等による事故の防止に取り組んでまいります。
○本村(伸)委員 ぜひ確実に健康診断していただくということを徹底していただきたいと思います。
安全運行にかかわってもう一つお伺いをしたいんです。
三月九日の審議の際に、私、質問をさせていただいて指摘をさせていただいたんですけれども、国交省が、圧倒的多数の中小零細企業のバス会社のドライバーの雇用状態を調べていないということを指摘させていただいて、貸し切りバスのドライバーというのは、雇用契約の期間が二カ月以上ないといけないというふうになっておりますけれども、これですと、二カ月、二カ月、二カ月と転々とするドライバーであれば、そのドライバーの資質ですとか、あるいは健康状態を見抜くというのは困難になるわけでございます。そういうことは、結局、安全運行を確保することが困難になるということにつながっていくというふうに思います。
安全を確保するという観点から、貸し切りバス会社の労働実態調査、賃金、雇用形態、非正規の割合はどのくらいなのか、あるいは雇用契約期間はどのくらいなのか、派遣の人はどのくらいいるか、社会保険にどのくらいの人が加入しているか、こういう具体的な調査を行うべきだということを質問させていただき、そのときに、自動車局長が、「御指摘を踏まえて、可能なものにつきましては、調査ができるところを検討してまいりたいと考えているところでございます。」と回答をいただきました。
その後、何を調査することになったのか、あるいは調査したのか、答弁をお願いしたいと思います。
○藤井(直)政府参考人 お答えいたします。
軽井沢のスキーバス事故を受けまして本年六月に取りまとめられました「総合的な対策」において、貸し切りバスの安全性に関連する情報を利用者に的確に提供するため、見える化を推進することというのを基本的な考え方の柱の一つとして掲げたところでございます。
このため、国土交通省においては、貸し切りバス事業者に対して、安全情報の報告を義務づけることとしております。貸し切りバス事業者から報告を求める内容としましては、その一つとして、運転者の平均給与月額、平均の勤続年数、あるいは雇用形態ごとの人数、そういったものを想定しているところでございます。
国土交通省といたしましては、こういった情報を活用しながら、貸し切りバス事業者の労働実態を把握し、安全、安心な運行の確保のために活用してまいりたいと考えております。
○本村(伸)委員 ぜひ、雇用形態については詳細に注視をしていただいて、本当に安全運行を確保できる、そういう雇用形態を確保していただきたいというふうに思っております。
もう一つお伺いをしますけれども、バス、タクシー、トラックのドライバーの方の安全基準の中で改善基準告示というものがありますけれども、これは、罰則もなく、睡眠時間が十分確保されていないことを容認しているような改善基準告示で、本当に安全運行が担保できるのかという問題を抱えております。今回の法改正は、疾病対策を書き込む法改正ですけれども、疾病を予防するという観点からも、やはりドライバーの方の人間らしい働き方が大事だというふうに思います。
十一月十八日の道路運送法の質疑の際に清水忠史議員が取り上げましたけれども、この改善基準告示等に係る運用実態調査として、事業者のヒアリング、運転者のアンケートを実施した、その結果を出して検証するべきだと質問をいたしました。その際に、石井大臣は、この実態調査の結果につきましては、本年度内の開催を予定しております次回の軽井沢スキーバス事故対策検討委員会に報告した上で公表したいというふうに答弁をされましたけれども、これは大分前の調査ですから、結果がもう出ているはずです。すぐに国会に出して、施策にすぐに生かすべきだと思います。
大臣、すぐに公表していただきたいんですけれども、お願いいたします。
○石井国務大臣 改善基準告示等の実態調査につきましては、平成二十六年六月に開催されました関越道高速ツアーバス事故を踏まえた対策に関するフォローアップ会議の第三回において調査内容を決定いたしまして、同年の夏に、地方運輸局の職員により、事業者ヒアリングと運転者アンケート調査を実施したところでございます。
この調査は、貸し切りバスの事故を踏まえた対策の内容の検討や実効性の向上のために活用することを目的としたものであることから、今後予定される軽井沢スキーバス事故対策検討委員会における再発防止対策の包括的なフォローアップの際に調査結果を資料として提出し、検討委員会における議論を経た上で対外的に公表することが適切であると考えております。
○本村(伸)委員 軽井沢スキーバス事故対策検討委員会は次にいつ行われるのかと、なぜ国会に先に出せないのか、理由をお示しいただきたいと思います。
○石井国務大臣 次回の軽井沢スキーバス事故対策検討委員会は、本年度内の開催を予定しているところでございます。
理由につきましては、先ほど申し上げたとおりでありますが、もともとこの調査が、貸し切りバスの事故を踏まえた対策の内容の検討や実効性の向上のために活用することを目的としたものでございますので、次回の軽井沢スキーバス事故対策検討委員会における再発防止対策の包括的なフォローアップの際に調査結果を資料として提出いたしまして、検討委員会における議論を経た上で対外的に公表することが適切であると考えているところでございます。
○本村(伸)委員 委員長にお願いしたいんですけれども、国交省に、この改善基準告示等に係る運用実態調査の結果をこの委員会に提出していただきたいということで、お諮りをいただきたいと思います。
○西銘委員長 理事会で協議したいと思います。
○本村(伸)委員 次に、無電柱化の問題についてお伺いをいたします。
無電柱化については、大抵のケースだというふうに思うんですけれども、地域のまちづくりと一体として行われるケースが多いのではないかと思います。住民の皆さんの合意形成を何よりも優先しなければいけないというふうに思います。
例えば、無電柱化の実施では、道路の歩道の拡幅工事と一体的に整備をするということがやられるとか、あるいは道路の拡幅と一体的にやられるケースがあるというふうに思います。拡幅をする場合に、やはり民有地など地権者の方の同意を得なければできないというふうに思いますし、周辺の住民の皆さんの合意形成の手続が大切だというふうに思います。
この無電柱化の事業実施に当たっては、住民の皆さんの理解、そして納得、同意が大切にされなければならない。そして、今回の法改正については、無電柱化法案の中に無電柱化推進計画をつくるということも書かれておりますけれども、この計画をつくるに当たっても、住民の皆さんの声を十分に反映させることが大切だというふうに思います。
この無電柱化実施に当たっては、あらゆる段階で住民の皆さんの理解、納得、同意、そして住民の皆さんの意見が反映される、このことを徹底していただきたいんですけれども、大臣の答弁をお願いいたします。
○石井国務大臣 無電柱化を進めるためには、トランスなどの地上機器の設置場所や各住戸等への引き込み線工事などについて、地域との合意形成や調整が課題でありまして、地域住民の御協力が不可欠であります。
このため、無電柱化を進めるためには、地域が目標とするまちづくりと一体的に計画を立てて事業を進めることが重要であり、地域ごとに協議会を設置し、地域の要請も踏まえた取り組みを進めていく必要があると考えております。
例えば、金沢市におきましては、地域住民、行政、関係事業者、学識経験者から成る協議会を設置して合意形成を図り、一部の地上機器を歩道以外の民地や公共の空き地に設置しております。
国土交通省といたしましては、無電柱化を進めるに当たり、地域住民の意向を踏まえつつ、関係事業者とも調整を図りながら、さらなる無電柱化の推進に努めてまいります。
○本村(伸)委員 今御答弁いただきましたように、住民の皆さんの理解、納得、同意、そして意見をしっかりと反映した進め方でやっていただきたいというふうに思います。
次に、自転車活用推進法の問題で質問をさせていただきます。
自転車は、化石燃料を使用しないということ、そして温室効果ガスを発生させない、環境に優しい乗り物で、やはり健康にとってもよいということで、活用を推進することはとてもよいことだというふうに私どもも認識をしております。自転車の専用道路ですとか駐輪場の整備ですとか、ハード面を進めていくこと、そしてソフト面でも、自転車の交通安全教育ですとか自転車の管理などを進めて、安心して活用できる環境を進めていくことが大切というふうに私どもも認識をしております。
そこで、まず内閣府にお伺いをしたいんですけれども、自転車の活用推進法が今度つくられようとしておるんですけれども、そこの基本方針の中に、情報通信技術等の活用による自転車の管理の適正化ということが盛り込まれております。自転車の活用推進に当たって、今後、自転車の管理とマイナンバーがリンクされるということがあってはならないというふうに思いますけれども、その点、確認をしたいと思います。
○向井政府参考人 お答えいたします。
マイナンバーの利用事務は、現在、社会保障、税、災害対策の分野に関する事務に限定されておりまして、現行法上、自転車の管理にマイナンバーを利用することは認められておりません。
また、仮に将来的に自転車の管理にマイナンバーを利用する場合には法改正が必要となりますが、そのようなことは現時点では想定しておりません。
○本村(伸)委員 マイナンバーとリンクさせないということを確認させていただきたいと思います。
もう一つ、今度は経産省の方にお伺いをいたします。
同じく基本方針の中に自転車競技施設の整備なども書かれておりますけれども、これが競輪、公営ギャンブルの推進であってはならないというふうに思います。その点、確認をさせていただきたいと思います。
○三田政府参考人 お答えいたします。
自転車活用推進法案により自転車競技のための施設を設置した場合に、当該施設を競輪場として活用するかにつきましては、競輪の施行者である地方公共団体が判断される、このようなものと考えております。
仮に競技場の設置許可申請がなされた場合には、経済産業省といたしましては、自転車競技法に基づいた厳正な手続を実施することになると考えております。
○本村(伸)委員 競輪場など、公営ギャンブルの推進にならないようにということを求めておきたいというふうに思います。
自転車の活用を進める上でも、今、地域で起こっておりますことは、駅の駐輪場などがどんどん有料化されているということで、収入のない学生さんにも負担増になっている、これを何とかできないかということも思っております。駐輪場の整備に関しましては、社会資本整備交付金など国の予算も使われているわけですから、駐輪場を無料にして自転車の活用を推奨するということもぜひ考えていただきたいということも申し述べ、質問を終わらせていただきたいと思います。
ありがとうございました。