しんぶん赤旗 2016年5月19日(木)
企業任せの検査体制 本村氏 偽装問題で国交省追及
日本共産党の本村伸子議員は13日の衆院国土交通委員会で、三菱自動車の燃費性能偽装問題や 東亜建設工業の羽田滑走路工事偽装問題について、監督官庁の国交省の責任を追及しました。
本村氏は、三菱自動車の燃費性能偽装のもとになった試験で、国交省は同社からの書面のみを検査対象とし、実証実験をしていないと指摘しました。石井啓一国交相が「検査体制の見直しを検討している」と述べたのに対し、本村氏は「自主申告に頼らない方向でなければならない」と強調しました。
羽田滑走路液状化対策工事の虚偽工事・報告問題について本村氏は、計画した施工の達成率がほぼ0%だったことを確認し、施工不良ではなく偽装だと指摘。ずさんな工事・施工を「なぜ見抜けなかったのか。検査したといえるのか」とただしました。国交省の佐藤善信航空局長は「地中工事で書面に頼らざるを得なかった」「今後、検査の手法を検証したい」と答えました。
本村氏は、相次ぐ不正事件は「企業任せ、事後チェックにした国交省の監査・検査体制のひずみのあらわれだ」と指摘。抜本的な対応を検証するため、不正を行った企業幹部の出席を含めた集中審議を求めました。
議事録
○本村(伸)委員 日本共産党の本村伸子です。
よろしくお願いいたします。
三菱自動車燃費性能偽装や東亜建設工業の羽田滑走路液状化対策工事偽装など、深刻な不正、偽装事件が相次いでおります。監督官庁としての国土交通省の監査、検査が形骸化していることの証左だというふうに思います。
昨年来続いております、具体的には軽井沢スキーバス事故、そして東洋ゴムによる免震ゴム偽装事件、そして三井住友建設、旭化成建材、日立ハイテクノロジーズのくい打ち工事偽装、そして二〇〇〇年、二〇〇四年のリコール隠し事件に次ぐ三度目の不祥事となった三菱自動車の燃費性能偽装、そして東亜建設工業による羽田空港の滑走路の液状化対策工事の偽装、虚偽の報告。くい打ち工事データ偽装は、建設業界全体に蔓延をしておりました。
どれもが企業任せ、事後チェックにした監査、検査体制によるひずみのあらわれだというふうに思います。今回の燃費性能偽装は三菱自動車だけなのか、羽田滑走路工事の偽装はほかの工事はないのか、出ないのか、疑問が次々と湧いてまいります。
企業が偽装に走るというのは、モラルの低下、法令遵守意識の欠如など、要因はあると思いますけれども、こう立て続けに起こるということは、何か根本的な問題があるのではないかと思わざるを得ないというふうに思います。
共通しているのは、競争に打ちかつため性能、技術の向上を求めたけれども達成できなかった、にもかかわらず、それを隠して、偽装して商品を販売し、工事を施工した。深刻な事態が相次いでおります。
国土交通大臣にお伺いしますけれども、これは抜本的、根本的な対応が必要になっている、こう思いますけれども、認識を伺いたいと思います。
○石井国務大臣 まず、今回の三菱自動車工業の不正行為に関しましては、これまで同社が国土交通省に対しまして、燃費試験及び排出ガス試験に使用する走行抵抗値に関し、長年にわたり国が定めた方法以外の方法で測定を行っていたこと、また、実測を行わず机上で計算していたこと、さらには、データを改ざんしていたこと等が明らかになっております。
また、東亜建設工業株式会社の施工不良に関しましては、羽田空港C滑走路の耐震化工事のうち、同社が平成二十七年度に施工した延長七十五メーターの区間について、施工不良であったこと、また発注者に対し虚偽の報告を行っていたことについて報告がございました。
こういった不正行為は、我が国の産業への信頼性を根本から損なうだけでなく、国民に大きな不信感を与えるものであります。
委員から、競争が激しくなって、他社との競争の中で偽装が行われたのではないかという御指摘がございました。競争自体は決して悪くはないと思いますけれども、競争に打ちかつためにデータを偽装するなんということはあってはならないことでありまして、私といたしましても断じて許すことはできない、このように考えております。
○本村(伸)委員 私が問いましたのは、抜本的、根本的な対応が必要じゃないかということを問うたわけですけれども、大きな問題の一つとして、安心、安全を確保するべき国交省の監査、検査の体制の問題だというふうに思います。
三菱自動車の燃費性能偽装のもとになった型式認定では、国交省は、三菱自動車が実施した実証実験の結果を書いた書面のみを検査対象にして、国交省そして研究所での実証実験は行っていない、こういう問題がございます。
また、報道ではこう書かれております。三菱自動車は、二十五年前から法令と異なる方法で燃費データをはかり続けるなど三段階で不正を行っていたが、国交省は、いずれの段階の不正も見抜けず、三菱自動車側の提出した最終的なデータだけをうのみにしていた、こういうふうにも報道されております。
さらに、羽田の事件では、液状化対策工事では、工事の進捗状況について、国交省は、中間検査、完了検査を実施し、東亜建設工業の下請業者が実施する工事に立ち会っていたというわけですけれども、施工不良を見抜くことができず、気づくことができず、業者が提出した施工状況データをうそだと見抜けなかったわけでございます。
国交省の監査、検査のやり方、全く不十分だというふうに思いますけれども、大臣の認識を伺いたいと思います。
○石井国務大臣 自動車の型式指定に関する国土交通省の審査におきましては、一定の気象条件のもとで測定する必要があるもの、また複数回にわたり測定する必要があるものなどについて、自動車メーカーから提出されたデータを使用しております。
これらのデータにつきましては、自動車メーカーとの信頼関係を前提に、これまでは特段のチェックを行わず使用してきたところでございますが、今回の三菱自動車工業の不正行為を踏まえ、この点について所要の見直しを行う必要があると考えておりまして、今具体的に検討を開始したところであります。
また、東亜建設工業の施工不良に関しましては、発注者である関東地方整備局から、契約図書に基づき、工事途中段階における立ち会いを含めた監督、工事完了後における受注者から提出される資料等の検査を実施しておりましたが、一方で、この工事は地中工事であり、かつ、滑走路を供用しながらの施工であったため、監督、検査においては書面に頼らざるを得ない部分が多いということもございました。
今回このような事案が起こったことから、今後、同様の工事の監督、検査の手法を検証していきたいというふうに考えております。
○本村(伸)委員 運輸、建設の分野でのうそ、ごまかし、そして詐欺的な行為は、国民の皆さんや住民の皆さんの命に直結する問題が多いわけでございます。国会としても、これを看過してはならないというふうに思います。
この運輸、建設分野での虚偽、偽装の問題について、この国土交通委員会での集中審議を求めたいと思います。
委員長、お願いいたします。
○谷委員長 ただいまの件につきましては、別途、理事会で協議いたします。
○本村(伸)委員 とりわけ、三回目の不正を行いました三菱自動車の役員には、参考人としてこの委員会に出てきてもらわなければいけないというふうに思っております。
今回の三菱自動車の燃費不正で、三菱側から国交省へ二回の報告がされているというふうに思いますけれども、まだ不十分ということで再報告を求められております。
不正を行った三菱自動車の責任追及は当然のことだというふうに思います。一方で、国交省がなぜ不正を見抜けなかったのかということが、国民の皆さんの、住民の皆さんの大きな疑問でございます。先日も答弁の中で、きょうも、先ほど言われましたけれども、メーカーの数値を信頼して審査をしてきた、この点がデータ改ざんの背景にあったというふうに答弁をされております。また、大臣も記者会見の中で、検査方法の見直しにつきましてはタスクフォースにおいて速やかに検討するというふうに述べられております。
そこで、確認をしたいんですけれども、自動車会社からの自主申告頼みの検査体制に問題があったと反省をしているのか、そして、検査体制の見直しは自主申告に頼らない方向で見直しを行うというふうに考えているのか、大臣、お示しいただきたいと思います。
○石井国務大臣 法令を遵守してデータの測定等を行うことは自動車メーカーの当然の責務でありまして、特に三菱自動車工業のような大企業がこういった不正を長年にわたり続けてきたことは、大変ゆゆしき問題であるというふうに考えております。
国土交通省といたしましては、今回の事態を踏まえまして、四月二十八日にタスクフォースを省内に設置いたしまして、自動車の型式指定に関する国土交通省の審査に当たって、自動車メーカーが提出するデータに関する不正を防止するために、必要な措置につきまして速やかに検討を行っているところでございます。
○本村(伸)委員 先ほども申し上げましたように、企業の自主申告に頼らない方向で、第三者がしっかりとチェックする方向で見直さなければならないということを強調させていただきたいと思います。
そして次に、羽田の問題ですけれども、液状化対策工事の偽装工事、そして報告の問題について、少し具体的に伺いたいと思います。
施工不良の概要について、計画数量に対する達成度はどうだったのかということをお示しいただきたいと思います。
○佐藤政府参考人 お答え申し上げます。
羽田空港C滑走路の耐震化工事のうち、東亜建設工業が平成二十七年度に施工した延長七十五メートルにおきまして、施工不良があったこと、発注者である関東地方整備局に対して虚偽の報告を行っていたことについて報告を受けているところであります。
その報告によれば、施工不良の状況については、契約で指定した位置どおりに地盤に穴をあけた割合、それと契約で指定した大きさどおりに地盤をボール状に固めることができた割合はいずれもゼロ%ということでございました。また、薬液の注入量につきましては、契約で指定した量の五・四%しか実際には注入をされていなかったということでございます。
○本村(伸)委員 管もバルーンも達成率ゼロ%。達成率ゼロ%ということは、計画した施工が全くできていないということで、施工したとは言えない。そして、薬液も五・四%ということは、誤差の範囲だと言えるというふうに思います。これは施工不良ではなく、施工の偽装だというふうに思います。
そうした工事、施工を見抜けなかったというのは、どういう検査なんでしょうか。これは検査と言えるんでしょうか。
○佐藤政府参考人 発注者であります関東地方整備局から、契約図書に基づきまして、工事完了後に受注者から提出される資料等の検査を実施しており、その際の手法は基本的に問題はなかったと聞いております。
一方で、本件工事は地中工事であり、かつ、滑走路を供用しながらの施工であったため、検査は書面に頼らざるを得ない部分が多いということがございました。
今回、このような事案が起こりましたことから、今後、同様の工事の検査の手法について再検証していきたいと考えております。
○本村(伸)委員 工事中、複数回あった整備局の検査のたびに、薬液の注入量や地盤強度の数値を仕様書どおりに報告書類に記載していたと言われておりますけれども、報告書を見るだけなのか、現場に立ち会って監視するのではないか、確認をしたいと思います。
○佐藤政府参考人 お答え申し上げます。
発注者である関東地方整備局の事務所におきましては、週一回から三回、現場に立ち会って施工状況を確認しておりました。
例えば、薬液を注入するために掘削した穴の長さにつきましては、掘削するために使用するパイプの長さ、それから掘削後に地表からはみ出しているパイプの長さを確認し、この差をはかることにより、計画どおりの長さの穴を掘削できているかを確認しております。また、薬液注入工につきましては、注入位置、注入速度、注入量を現場立ち会いにより確認しております。
しかしながら、今回このような事案が起こったことから、今後、同様の工事の検査の手法について再検証していきたいと考えております。
○本村(伸)委員 また、今回バルーングラウト工法というものが採用されたそうですけれども、地中にはコンクリート片や古タイヤなどがあったとの報道もありますけれども、地中に想定外の障害物があったことなどから掘削がうまくいかずというふうにも報道されております。
とすれば、この工法が羽田C滑走路の地盤に適正だったのか疑問が湧いてまいります。管もバルーンも達成率ゼロ%ですから、この工法に無理はないというふうに考えているのか、お示しいただきたいと思います。
○佐藤政府参考人 お答え申し上げます。
今回の工事において、このバルーングラウト工法を採用するに当たり、類似した工法の施工実績が過去、羽田空港においてあり、加えて、東亜建設工業を含む民間事業者の研究会が試験施工を行い、所要の延長の穴を精度よく掘削できることが報告されたため、同工法を採用したところであります。
また、仮に、地中において障害物が発見された場合や薬液が地盤に浸透しない場合など、契約のとおりに施工することが難しいと判断される場合には、施工方法の変更について、契約に基づき、受注者から発注者に協議がなされることとなっております。ただ今回、実際には、この受注者から発注者への協議はなされませんでした。
しかしながら、今回このような事案が起こったことから、採用された工法が適正であったか否かについて、今後、再検証してまいりたいと考えております。
○本村(伸)委員 運輸、建設分野での国交省の監査、検査のあり方を抜本的に変えていかなければいけないというふうに強調させていただきたいと思いますし、安全のために、必要な国交省の人員も強化しなければいけないというふうに思います。
そして、この国会では、この運輸、建設分野での国交省の監査、検査のあり方の検証、そして規制緩和政策についての検証、安全、安心確保の取り組みへの検証、不正を行った企業のトップや有識者や現場の方々なども呼んで、国会としても集中審議をして責任を果たすことを求めて、質問を終わらせていただきます。
ありがとうございました。