しんぶん赤旗 2016年5月27日(金)
まち壊しにつながる 本村氏 都市再生法改定案を批判
衆院国土交通委員会は20日、都市再生特別措置法等改定案を、日本共産党以外の賛成多数で可決しました。
日本共産党の本村伸子議員は反対討論で、「大手デベロッパー(開発業者)やゼネコンなど大企業を優遇し、住民追い出しや環境破壊、まち壊しにつながる大規模開発事業をいっそう促進する」と批判。企業の用地費を軽減する容積率の緩和、税負担の軽減など、大企業優遇になっていると強調しました。
さらに住宅団地の建て替えについて、合意要件を居住者の5分の4から3分の2に緩和することについて、「本来、団地・マンションの建て替えは、住民全員の合意を得て進めるべきものだ」と指摘。「建て替えに同意できないなど、財産権が縮小、侵害される居住者が増加する恐れがある」と述べました。
再開発 大企業を優遇 本村氏 「都市再生」問題で批判
衆院国土交通委員会で20日、民間都市再生事業による大企業優遇策について、企業への減税総額が142億7000万円(2011~15年度)にのぼることが明らかになりました。日本共産党の本村伸子議員に国交省側が答弁しました。
本村氏は、同事業による税制優遇や容積率(敷地面積に対する建物の床面積の割合)の緩和について質問。国交省の栗田卓也都市局長は、11~15年度の5年間で認定が50件、総事業費は約3兆7659億円にのぼるとし、減税額を示しました。
本村氏は、名古屋鉄道豊田市駅(愛知県豊田市)周辺の再開発事業では、事業費227億円のうち公費(国、県、市)が72%、国費は34・8%に達すると指摘。石井啓一国交相は「民間施設への直接の支援ではない」としましたが、本村氏は、整備されるビルに実際に入るのはイオン系の映画館や三菱東京UFJ銀行、三井不動産レジデンシャルの分譲マンションなどであり、「こうした事業に湯水のように税金を使う社会資本整備交付金のあり方を改めるべきだ」と求めました。
議事録
○本村(伸)委員 日本共産党の本村伸子です。
都市再生法、都市再開発法案にかかわって伺いたいというふうに思います。
最初に、法案の内容の一つであります民間都市再生事業の延長に関連して伺います。
まず、民間都市再生事業はそもそも、大企業の本社ビルの建てかえを初め、民間の大手不動産、建設会社による大型の開発事業に対して容積率を緩和したり税制優遇をしたりするものです。都市の再生といいますけれども、東京を初め、大都市部の大規模再開発事業を推進し、そして超高層ビルを乱立させてまいりました。
まず、どれだけ大企業を優遇してきたかという点を確認したいと思います。最近の五年間で、民間都市再開発事業の計画の認定事業数と総事業費はどうなっているのか、伺いたいと思います。
〔委員長退席、秋元委員長代理着席〕
○栗田政府参考人 民間都市再生事業の実績についてのお尋ねでございます。
二〇一一年度から二〇一五年度の民間都市再生事業の認定件数は、二〇一一年度四件でございます。二〇一二年度十八件でございます。二〇一三年度四件でございます。二〇一四年度七件でございます。二〇一五年度十七件でございます。
また、各年度の総事業費につきましては、二〇一一年度約二千九百三十八億円、二〇一二年度約一兆五千六百三十一億円、二〇一三年度約三千九百三十一億円、二〇一四年度約四千五百四十五億円、二〇一五年度約一兆六百十四億円となっております。
○本村(伸)委員 今おっしゃったのは、五年間で五十件、総事業費は三兆七千六百五十九億円に上る事業ということだと思います。
同じく、近年五年間に優遇された減税相当額は幾らになるか、お示しをいただきたいと思います。
○栗田政府参考人 二〇一一年度から二〇一五年度に認定を行った民間都市再生事業の登録免許税、不動産取得税、固定資産税、都市計画税の減税適用総額、これは見込み額も含めてでありますけれども、二〇一一年度九億八千九百万円、二〇一二年度六億七千九百万円、二〇一三年度十八億九百万円、二〇一四年度六十億八千九百万円、二〇一五年度四十七億四百万円となっております。
○本村(伸)委員 トータルでいいますと、五年間で百四十二億七千万円だというふうに思います。一件当たりの事業費でいいますと、七百五十三億円を超える超大型の民間開発事業になっております。
安倍政権になって、この認定件数というのは近年増加をしております。税金の軽減措置も、五年間でトータル百四十二億七千万円を超えているということで、やはり大手の不動産会社や建設会社による民間大企業の開発事業への優遇が拡大していると言えるというふうに思います。大手メディアでも、企業向け特例減税の恩恵、大企業に集中というふうに書かれておりますけれども、こういう実態になっているというふうに思います。
大企業には、今回の税金の軽減措置もその一つですけれども、幾重にもわたって優遇税制がある。一方で、生活が苦しい方々にこれから消費税の増税、これは本当に政治のあり方として私は間違っているというふうに思います。
もう一つ確認をしたいんですけれども、民間都市再生事業で容積率が緩和をされた事業は二〇一五年度で何件あるかというのと、その敷地の土地代、用地代は総額幾らか、お示しをいただきたいと思います。
○栗田政府参考人 二〇一五年度に認定を行った民間都市再生事業のうち、都市再生特区の適用を受けた事業で用地取得を行ったものが六件、その用地取得に要しました総額は約一千百五十一億円でございます。
○本村(伸)委員 それで、具体的にお伺いをしたいんです。
名古屋駅前の名駅一丁目一番計画南地区の建設事業ですけれども、これはJR東海が実施をする事業で、名駅一丁目一番計画南地区の建設事業は、リニア駅を見込んだ民間私企業のビルの建設でございます。この事業の総事業費、うち用地費、容積率は幾らになるか、お示しをいただきたいと思います。
○栗田政府参考人 名古屋一丁目一番計画地区の、まず容積率のお尋ねでございます。(本村(伸)委員「事業費も。事業費、用地費」と呼ぶ)大変申しわけございません。事業費につきましては、ちょっと通告を頂戴しておらないと認識しておりまして、手元にございません。
○本村(伸)委員 昨日、通告をさせていただきましたけれども。容積率もお願いします。
○栗田政府参考人 失礼いたしました。
お尋ねの名駅一丁目一番計画南地区、この総事業費一千二百億円ということでございます。
それから、容積率についてのお尋ねでございます。これも、ちょっと複雑な説明をお許しいただきたいと思います。
この建物につきましての建築基準法の容積率の数値でございますが、この建物自体はJR名古屋駅と一体的に建築されます。したがいまして、駅を含む敷地に対しまして、駅などの建築物の延べ面積を含めた割合で容積率を算定することになります。その結果、これにつきましての容積率は約八一〇%というようになるところでございます。
これに関連いたします資料で、私たち、二〇〇〇%を超える数字を拝見することがございます。この数字は、当該高層建築物が建てつけられている土地の面積に対します床面積の延べ面積の割合でございまして、いわゆる建築基準法で申します容積率とは別途の数字でございます。建築基準法で申します容積率の数値につきましては、約八一〇%ということでございます。
○本村(伸)委員 ビルだけで見ますと四十六階建てで、容積率は二一二〇%ということになるというふうに思います。
容積率というのは、御承知のとおり、敷地面積に対する建築延べ床面積の割合のことでございますけれども、容積率を二倍、二〇〇%に緩和をすれば建築延べ床面積も二倍になるというものでございまして、それだけ大きな建築物が建てられるということだというふうに思います。この名駅一丁目一番計画南地区の建設事業、JR東海のビルというのは、ビルだけで見ますと容積率が二一二〇%ということで、やはり大変大きなメリットを大企業に対して与えて優遇しているというふうに思えてなりません。
認定制度によって超高層ビルが建てられているわけですけれども、どれくらい超高層ビルがふえたのかという点、そして超高層ビルのまちづくりというのは、防災の観点から、本当に安心のまちづくりなのかという疑問がございますけれども、その点を伺いたいと思います。
○栗田政府参考人 超高層ビルというお尋ねでございます。
お答えの中では、この超高層ビル、二十階建て以上のビルというように考えてお答えを申し上げさせていただきますと、二〇一一年度から二〇一五年度に認定を行った民間都市再生事業のうちで二十階以上の建築物を整備した事業は三十七件でございます。
これらの事業につきましては、災害時の一時滞在施設、防災備蓄倉庫、こういったものの整備がされておるものが多うございます。非常用電源の設置、そういったものもあります。大規模な災害発生への配慮がなされておるところでございまして、今申し上げましたような施設、設備の全てあるいは一部が備えられているということでございます。
○本村(伸)委員 次に、市街地再開発事業について具体的に伺いたいというふうに思います。
私の地元の愛知県豊田市では、この市街地再開発事業が行われているわけですけれども、豊田市駅前通り北地区第一種市街地再開発事業が今進められております。
資料でお示しをしておりますけれども、この豊田市駅周辺の市街地再開発事業というのは、過去においても幾つもやっておりまして、その特徴なんですけれども、年を追うごとにどんどん公費の割合がふえているという問題がございます。
一九八八年にオープンをしました駅西口の再開発では公費負担は一八%でございました。国、県、市で一八%でございました。一九九五年にオープンをしました駅東口再開発事業では二七%でした。そして、二〇〇六年にオープンをした駅南地区の再開発は五一%。そして、今着工しております駅北地区の再開発事業では、国と県と市で七二%にもなっております。
この北地区の再開発事業というのは総事業費が二百二十七億円で、国、愛知県、豊田市でお金を出しているのが七二%ということです。
公費の中で国費はどうなのかということを資料二で示しておりますけれども、公費の七二%のうち、国費は七十九億円を見込んで三四・八%が国費になっております。
資料二の裏のページですけれども、その前の事業の南地区の再開発事業では、国費は一六・五%でございました。
資料三を見ていただきたいんですけれども、このビルに一体何が入るのかということなんですけれども、写真のようにビルを三つ建てて、その中に入るのが、イオンエンターテイメントのシネマコンプレックス、そして三菱UFJ銀行、三井不動産レジデンシャルの分譲マンションなどが入る予定になっております。特別養護老人ホームも入りますから、そういう意味で公費が多いのかなというふうに私は思ったんです。
しかし、豊田市の方に聞いてみますと、この七二%の公費とは別に特別養護老人ホームの分は厚生労働省から社会福祉法人に対してお金が出るから、特別養護老人ホームのお金とはこの七二%は別なんだというふうに説明を受けました。
大臣に認識を伺いますけれども、イオンの映画館ですとか三菱UFJ銀行ですとか三井不動産の分譲マンション、こうしたものは、国土交通省のお金を使って、公費を使ってつくるべきものなんでしょうか。
〔秋元委員長代理退席、委員長着席〕
○石井国務大臣 豊田市駅前通り北地区の市街地再開発事業は、中心市街地活性化に資するよう、豊田市駅に通じる都市計画道路の整備を行うとともに、にぎわい創出のための商業、業務、高齢者福祉施設、住宅等を整備するものであります。
この地区におきます国、県、市の支援は、都市計画道路の整備費、再開発ビルのエレベーター等の共同施設に対する整備費等が市街地再開発事業に対して行われております。さらに、市の単独費により再開発事業の保留床である地下駐車場を取得し、広く公共の用に供することとしております。今委員が提出いただいた資料の中の公費負担額百六十四億円には、市の単独費も含まれているというふうに理解をしております。
都市計画道路や公共の用に供する地下駐車場の整備を伴う事業であるため、一般の地区より支援の割合が高くなっておりますが、それぞれ公共性の高い施設への支援であると考えております。今委員が御指摘されたような、民間の施設に対する直接の支援ではございません。
○本村(伸)委員 でも、実際に入るのは、イオンの映画館でしたり、あるいは三菱UFJ銀行でしたり三井不動産の分譲マンションというものでございます。私は、税金の使い方、優先順位がやはりおかしいというふうに思うんです。
豊田市は四十二万人以上の人口があります中核都市ですけれども、トヨタ自動車さんの本社ですとか工場ですとかございますけれども、しかし、この豊田市には、例えばの話ですけれども、知的障害を持った子供たちが通う特別支援学校は一校もないわけです。遠い子供さんですと、小学校一年生のときから片道一時間半かけてバスに乗って特別支援学校に通わなければいけません。そして、その三好特別支援学校は、ぼろぼろで、壁にはひびが入って、廊下は継ぎはぎだらけで、そして雨漏りがする。冬は外気がマイナス五度のときは教室の中はマイナス四度ですとか、夏は四十度、そういう劣悪な環境の中で子供たちが過ごしております。
駅前にはぴかぴかのビルが幾つも幾つも建つわけですけれども、そのために国も県も豊田市もお金を出すわけですけれども、どうして障害を持った子供たちの学校の方には回らないんだろうかと物すごく私は疑問に思います。豊田市では、病院のベッドの数も足りません。そして、特別養護老人ホームの数も足りません。本当にやらなければならないことがやられていないわけでございます。
予算の使い道というのは省庁をまたがる話ですけれども、やはり公費を使うべきはまずは子供たちやお年寄りや障害を持っている方々や困った方々のために使うのが私は当然だというふうに思います。イオンの映画館とか三菱UFJ銀行とか三井不動産の分譲マンションのために豊田市の駅前地区の再開発事業、七二%が公費負担なんですけれども、これはやはりおかしいというふうに大臣は思いませんでしょうか。
○石井国務大臣 シネマコンプレックスとか分譲マンションだとかに支援をしているわけではございません。御指摘の市街地再開発事業につきましては、都市計画道路の整備費や再開発ビルのエレベーター等の共同施設に対する整備費、これに対して整備支援を行っているものでございます。それから、先ほど申し上げました、市の単独費で保留床である地下駐車場を取得しているという費用もここに入っているというふうに理解をしておりまして、特に、再開発事業に対する支援ということでは公共性の高い施設への支援であるというふうに考えております。
○本村(伸)委員 国土交通省さんに伺いますと、この豊田市駅北地区の再開発は、国費は七十九億円を見込んでおりますけれども、全体事業費の三四・八%が国費なわけです。これは、全国的に見ても、このくらいの割合で国が出している事業は結構あるというお話でございました。全国でこういう税金の使い方が行われれば、税金が幾らあっても足りなくなる、借金が膨らむのは当然であるというふうに思います。
これからこの豊田市も高齢化が進んでまいります。そして、人口は減っていきます。そうしたときに、何度も申し上げますけれども、こうした、イオンの映画館とか三菱UFJ銀行とか三井不動産の分譲マンションなどのために湯水のように税金が使われていくというあり方、そして社会資本整備交付金のあり方、改めるべきだというふうに思います。本当に税金投入が必要なのかちゃんと精査をする制度に変えるべきだと思いますけれども、大臣の答弁をお願いしたいと思います。
○石井国務大臣 重ねて申し上げますが、イオンのシネマコンプレックスですとか三井不動産レジデンシャルの分譲マンションですとか三菱UFJ銀行のために公費を投入しているわけではございません。
○本村(伸)委員 制度を見直していただきたいというふうに思います。
次に、団地再生、建てかえについても伺いたいと思います。
団地を再生するために新しく建てられたり大規模修繕したりするには、居住者など区分所有権の全員が合意することが理想であり原則だと思いますけれども、その点、確認をしたいと思います。
○由木政府参考人 お答えいたします。
多くの方が居住されている住宅団地の再生に当たりましては、より多くの関係する権利者の合意をいただいて進めることが望ましいというふうに考えております。
したがいまして、今回御提案申し上げております市街地再開発事業を活用した住宅団地の再生に当たりましては、できるだけ多くの方に御理解をいただきながら事業が進められるように、丁寧な事業進捗に努めてまいりたいと考えております。
○本村(伸)委員 先ほど来議論がありましたけれども、区分所有法では五分の四以上の合意で建てかえができるようになっておりますけれども、この法案の再開発事業ですと三分の二以上の同意で建てかえができるというふうになっております。これまでは百人中八十人の賛成で建てかえができるというふうになっていたものが、百人中六十七人の同意でできるというふうに緩和をされておるわけでございます。
これはやはり、今よりも居住者の財産権、居住権が侵害、縮小されることになるのではないかと思いますけれども、答弁をお願いしたいと思います。
○由木政府参考人 お答えいたします。
民法の特別法でございます区分所有法に基づく建てかえは、区分所有者の意向に基づく民事上の手続として定められたものでございます。
一方、今回御提案申し上げております市街地再開発事業は、地方公共団体が都市全体のまちづくりの観点から必要な事業として都市計画に位置づけた場合に活用が可能となる事業手法でございます。一定の施行区域要件を満たすことが必要になります。
このように、市街地再開発事業は公益性、公共性のある事業として実施をされるものでございまして、先ほど申し上げました、民事上の手続として定められました区分所有法に基づく建てかえとは基本的に位置づけが異なるものであるというふうに考えております。
今回の改正は、市街地再開発事業につきまして、住宅団地の共有土地のみで実施をする場合に全員の合意が必要となっていたものを、市街地再開発事業の一般的なルールでございます三分の二の合意要件が適用されるように必要な改正を行うものでございまして、御指摘ございましたような、居住者の財産権や居住権を縮小するというふうなものであるとは考えておりません。
○本村(伸)委員 どう考えても、やはり居住権、財産権の侵害、縮小になるというふうに言わざるを得ないと私は思っております。
再開発の手法、やり方についても伺いたいというふうに思いますけれども、第一種市街地再開発事業の権利変換の問題です。
権利変換は、従前物件の資産額と再開発物件、新しい建築物の資産額は同じでなければならないわけですけれども、再開発後の新しい建物の権利床の床面積は従前物件の床面積よりも大体大きくなるのが通常だというふうに思います。しかし、実際には、居住者の方々にとっては、従前の床面積に対して新しい再開発物件の床面積は小さくなるケースもありまして、同じ床面積を得ようと思えば積み増しのお金が必要になってくる、あるいは、新しい再開発物件の床面積は従前の床面積よりも小さくならざるを得ないというふうに思いますけれども、その点、確認をしたいと思います。
○由木政府参考人 お答えいたします。
住宅団地の再開発に限らず、市街地の再開発事業では、権利変換計画を定めるに当たりまして、従前権利者に与えられる建物や土地の価額と、それらの者が施行前に有していた建物や土地の価額との間に著しい差額が生じないように定めるという原則がございます。
この原則に従って権利変換計画を策定いたします際には、住戸の面積が場合によっては従前よりも狭くなるということはございます。ただし、その場合でも、居住環境は必ずしも住戸の面積だけではかられるものではございませんので、施設や設備の更新とあわせて、建物のバリアフリー化等がなされることによりまして、居住者にとっては従前よりも住みやすくなるということに加えまして、例えば介護施設あるいは子育て施設等が導入される場合には、さらに居住環境の向上が図られるものというふうに考えております。
また、市街地再開発事業では、このような建てかえを行うことによりまして居住環境の向上が図られるものではございますが、事業に反対をされる方もおります。そういった方々は申し出によりまして地区外への転出を希望されるわけでございますけれども、こういった方々に対しましても、従前の建物や土地の価額に応じた補償金が支払われるという仕組みになっております。
このような地区外転出者との間の公平性の観点からも、先ほど申し上げました御説明の原則を変えて従前の土地や建物の価格とは関係のない支援を行っていくということは、なかなか難しい点があるというふうに思っております。
なお、市街地再開発事業では、先ほど申し上げました原則どおりに権利変換計画を定めた場合に、防災やあるいは衛生上の観点に照らしまして、一定の基準よりも床面積が過小というふうになりますときには、床面積を増して適正なものとすることができるという制度がございます。こうしたものを活用することによりまして、居住要件にも配慮した事業を行うことができることとなっているところでございます。
こうした制度を活用いたしまして適切な事業が行われるように、制度の周知を図ってまいりたいというふうに考えております。
○本村(伸)委員 もう一つ確認をしたいんですけれども、再開発事業は、マンション建替え法による建てかえに比べて、道路や公園など公共施設への拠出など、負担がより大きくなるのではないかと思いますけれども、確認したいと思います。
○由木政府参考人 お答えいたします。
老朽化した住宅団地の多くは、建物自体の老朽化が進んでおりますだけではなくて、現在の居住ニーズに合ったような必要な公共施設あるいは福祉施設等の都市機能が確保されておらず、居住環境が非常に低下しているという傾向がございます。
このため、今般の改正によりまして市街地再開発事業を活用しやすくすることで、そういった公共施設や福祉施設等の都市機能を導入しつつ、地域の拠点として住宅団地の再生を図ることを目指しております。
したがいまして、再開発事業を活用する場合には、任意のマンション建てかえ事業に比べまして道路や公園等の公共施設の整備を伴う場合は多くなる可能性もあり、また、そういう傾向もございます。
しかしながら、こういった公共施設整備にかかる費用につきましては、法律の規定に基づきまして、その公共施設を管理いたします者、あるいは管理することとなるべき者に対して負担を求めることができることとされております。住宅団地の再生に再開発事業を活用したとしても、権利者の負担が大きくなるということは考えておりません。
○本村(伸)委員 やはり、この再開発事業による建てかえは、場合によっては、これまでの建てかえよりも従前居住者の負担が増大する、あるいは権利が縮小されるというケースがあるということだというふうに思います。
そして、次に伺いたいんですけれども、再生の方法はいろいろあるというふうに思うんです。建てかえの場合だけではなく、長寿命化、リフォーム、修繕ですとか、大規模団地など、棟ごとに方法を変える、建てかえをする棟と修繕する棟など、工夫する余地があるというふうに思います。
今回の法改正では、建てかえを前提に、その要件緩和だけが提案をされていますけれども、それでは真の団地再生にはならない、難しいのではないかというふうに思います。もっと多様な方法を提示するなどして住民の皆さんが納得できる形にするべきじゃないか、住民の皆さんの合意形成ができる形にするべきじゃないかということを申し上げたいと思います。
そして、今まで質問をさせていただきましたけれども、民間都市再生事業や市街地再開発事業などには、補助や税金の優遇など、さまざま大企業向けの支援がありますけれども、一方で、熊本、大分などの地震の被害に遭われた方々はマンションも含めて被害に遭っております。被災者の生活再建支援金、全壊でも三百万円しかない、資材の高騰、人件費の高騰、こういう中で、せめて五百万円に引き上げてほしいというのが切実な声だというふうに思います。
まずは、大分や熊本の地震で被害に遭われた方々の個人住宅、マンション、こういう生活再建ができるように支援を強めるべきだということ、また、被害に遭った方々に支援をするのは当然ですけれども、被害に遭う前に、住宅、マンションの事前の災害の予防に対する支援を強めるべきだというふうに思いますけれども、最後に伺って、質問を終わらせていただきたいと思います。
○石井国務大臣 今回の熊本地震における被害の状況を見ましても、マンションを含む住宅の耐震化を促進することは大変に重要な課題と考えております。
今回の熊本地震における分譲マンションの被害については、一般社団法人マンション管理業協会技術センターの調査によりますと、熊本市における大破一件を含む四百六十一件の被害が報告をされております。
マンションを含めた住宅の耐震化を促進するために、地方公共団体と連携をいたしまして、耐震化の必要性についてパンフレット等を通じた周知を積極的に進めるとともに、コスト負担の軽減のための施策を推進しております。
具体的には、防災・安全交付金等を活用し、地方公共団体を通じた耐震診断及び耐震改修に対する助成を進めております。
耐震改修に対する補助率につきましては、国と地方を合わせて約一五%だったものを二三%に引き上げる特別措置を五年間延長することを平成二十八年度予算に盛り込んだところでございます。
さらに、税制につきましても、耐震改修を行った場合に所得税や固定資産税を減税する措置等を講じることによりまして耐震化を促進してございます。
今後とも、地方公共団体との連携のもと、これらの施策を積極的に推進し、マンション、住宅の耐震化に努めてまいります。
また、今回の地震で被害のあったマンションにつきましては、国土交通省において相談体制を整備するとともに、財政的な支援を推進していくこととしてございます。
具体的には、被災したマンションの補修、再建等に関する相談に対応するために、公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターが主体となりまして、建築士が電話や窓口、現場で無料の相談を行う体制を整備しております。
被災したマンションの耐震改修や建てかえを行う場合には、防災・安全交付金等による助成を行うこととしておりまして、被災したマンションの建てかえについては補助率を特別に引き上げる措置を講じております。
また、被災したマンションにおきまして耐震改修や補修を行う場合には、独立行政法人住宅金融支援機構の災害復興住宅融資制度による支援の対象としているところでもございます。
地元の地方公共団体と連携をいたしまして、これらの施策を活用して、熊本地震で被害を受けたマンションの補修、再建等に積極的に取り組んでまいりたいと存じます。
○本村(伸)委員 ありがとうございました。
○本村(伸)委員 私は、日本共産党を代表して、都市再生特別措置法等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
反対の理由の第一は、都市再生特別措置法改正案で、期限が延長される民間都市再生事業が、大手ディベロッパーやゼネコンなどの開発大企業を優遇し、住民追い出しや環境破壊、町壊しにつながる大規模開発事業を一層促進するものだからです。
民間都市再生事業計画は、これまで九十一件の大臣認定を行っています。容積率の緩和や、最近五年間だけでも百四十二億円を超える税金の軽減まで行っており、大企業優遇となっています。
反対の理由の第二は、都市再開発法改正案が、住宅団地の建てかえを市街地再開発事業とすることで、建てかえの合意要件を五分の四から三分の二に緩和するものだからです。
本来、団地、マンションの建てかえは住民全員の合意を得て進めるべきものですが、区分所有法に基づく建てかえは、区分所有者の五分の四以上の合意で建てかえが可能とされています。今回はさらに、この要件を三分の二に緩和するものです。これでは、建てかえに同意できないなどにより、財産権が縮小、侵害される居住者が増加するおそれがあります。
以上の理由から反対とする旨を申し述べ、討論といたします。(拍手)
○谷委員長 これにて討論は終局いたしました。
―――――――――――――
○谷委員長 これより採決に入ります。
内閣提出、都市再生特別措置法等の一部を改正する法律案について採決いたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○谷委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。