もとむら伸子(日本共産党衆議院議員)-
国会質問

質問日:2025年 3月 26日 第217国会 法務委員会

取り調べの録音拡大を 参考人質疑

議事録

〇本村伸子

日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
今日は、お忙しい中、こうして国会に来ていただき、そして、貴重な御意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございます。
まず、島田さんと村木さんにお伺いをしたいというふうに思います。
冤罪という深刻な人権侵害の被害に遭いながらも、それでも、これからの刑事手続や司法を改善していこうということで、本当に、御尽力いただいていることに心からの敬意と感謝を申し上げたいというふうに思います。
今では冤罪ということが明らかになっているわけですけれども、それでも起訴までされてしまったという中で、警察とか検察とかの取調べの様子を、時間帯も含めて、被疑者であるということの立場から逸脱した状況が本当にあったのではないかというふうに思っております。是非具体的にお伺いをしたいというふうに改めて思います。

そして、言っていないことまで調書に書かれてしまったというふうなお話もありましたけれども、具体的にはどのようなことを言っていないのに書かれたということがあるのかという点、教えていただきたいと思います。また、証拠の捏造などありましたら是非お聞かせいただければというふうに思っております。

○島田参考人

私は、輸出した貨物は規制の対象外だ、こうこうこういう理由で規制の対象外だと何回も話しました。ただ、それを許可を得ないで出したんだろう、それを無許可というんだと言葉を変えて、確かに、許可を取っていないから無許可というんだと言われれば、ああ、そうかなと思ってそれにサインしてしまう。
それから、私が話したことをだんだんだんだん誘導されて、まあ、それもそうだなと。あるいは交換条件を出される。こちらは認めるよ、こちらの文言は、でもこちらはそのまま残すからと言われると、仕方がないのかなというふうに、だんだんだんだんそういうふうな、追い詰められていって、最後に仕方なくサインしてしまうという実態がありました。そういうことです。

 

○村木参考人

ありがとうございます。
二十日間、毎日何時間も検事さんと向き合って、しかも、私から見たら全く違う方向で思い込んでいる検事さんと対峙するのは大変だったんですけれども、やはり何度も、どうしてあなただけみんなと違うんですか、あなたがうそをついているか、ほかの全員がうそをついているか、どちらかですよというふうに言われたり、それから、ずっと否定をしていると罪が重くなる、あなたのことを心配して自白を促しているんですよというようなことをずっと言われていく。それから、弁護士さんは無罪を安請け合いする人もいますよというようなことを言われる。だんだんだんだん不安になっていくというのは本当につらいことでした。
それから、調書については、検事さんから、例えば、仮に、仮にあなたの部下がこう思っていたとしたらどうですかとか、仮にこんなことがあったらどうですかといって、そんなことがもしあるんでしたらこうですよねとお話ししたことが、仮にの部分がなくて事実として書かれてしまったりとか。それから、議員案件だと言われていた案件ですので、当時こういう法案を通したくて一生懸命議員根回しをしていましたという調書が幾つも取られているんですけれども、当時というのは事件より後なんですね。でも、当時と書いてしまうと、あたかもその事件の文脈で起こったように読めるように作られているとか、いろいろなことがあって、本当に調書というのは大変怖いものだというふうに思いました。

 

○本村伸子

だからこそ、録音、録画ということが必要だというふうに思いますし、弁護士さんが同席をするということも大切だということがよく分かったというふうに思います。
村木さんは、御自身の被害もあり、法制審議会の部会にも参加されておられたというふうに思います。刑事訴訟法の議論なんかもされてこられたと思うんですけれども、そこで積み残された課題と今後の法改正の在り方についてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。

 

○村木参考人

ありがとうございます。
その頃の法制審の議論を思い出すと、やはり録音、録画で取調べの機能が損なわれるんではないかという御不安が大変関係者には強かったと思います。ただ、一部の事件とはいえ、この三年間録音、録画をやってみて、録音、録画そのものは非常に中立的なものだということはこの三年ではっきりしたと思いますので、是非、録音、録画の拡大をまずやっていただきたいというのが私の願いです。
当時、それと並んで課題になったのが人質司法の問題、もう少し運用をきっちりとするという、否認しているイコール勾留という運用を変えるということが一つと、もう一つは、証拠開示が、やはり検察、警察側が全部の証拠を持っている中で、なかなか無罪方向の証拠が開示されない問題をどうするかということが議論をされましたけれども、その課題はやはり今日でも残っているので、その辺りが刑訴法の改正の大きな柱になるかなというふうに思っております。
ありがとうございます。

 

○本村伸子

ありがとうございます。
続きまして、裁判官でもありました藤井さんにお伺いをしたいというふうに思います。
先ほども大川原化工機の皆様、島田さんの被害については、裁判所が接見禁止命令などを出しておりました。裁判官が警察や検察の言いなりにならないためにどうすればよいというふうにお考えでしょうか。体制のことも含めて、裁判官が常時二百件事件を持っているですとか、そうしたことも含めて、是非お聞かせをいただけたらと思っております。

 

○藤井参考人

言いなりになっていると言われると嫌になるんですが、私は、罪証隠滅、接見禁止も同じような要件になっていますけれども、その解釈、運用の問題ではないかなと思っておりまして、それが、日本のシステムではキャリアシステムですから、先輩からどんどん伝承がされていくわけでございますが、特に若い、なりたての裁判官というのは実務は全然知らないわけで、これが実務だというふうに言われれば、ああ、そうだろうと思うし、仮に、ちょっとこれは保釈すべきだというふうに判断したら、準抗告が検察官から出されて取り消されたというような経験がありますと、やはり自分が間違っていたのかなというような経験を積むことになってくるのかなというふうに思うわけで、そういうことが連綿と続いてきたところはあるのかなというふうに思います。
体制については、二百件も私は持っていなかったような気がするんですけれども、裁判官が非常に忙しいというイメージをお持ちいただいていまして、確かに忙しいときは忙しいんですけれども、民事の裁判官と比べますと、刑事の裁判官はそんなに忙しくはないと思います。その時々によって大変忙しくなることもあります。大変時間が長くかかる事件が幾つか担当になりますと、私も経験がございますけれども、東京地裁の部の中で一番法廷に入っている時間が長かったということがあって、そういうことはございますが、それにしても、そんなに、それによって何か保釈の判断がおかしくなるとか、そういうふうには思ってはおりません。

○本村伸子

ありがとうございます。
地方でいいますと、兼務の裁判官もいらっしゃるということで、体制整備も必要だというふうに思っております。
そして、次にお伺いをしたいのが、髙橋さんと櫻井さんにもお伺いをしたいというふうに思います。
冤罪だったと分かった事件において、犯罪被害者の方をどういうふうに救済、支援をしていけばいいかという点、また、犯罪被害者の方が損害賠償を受けられないということが多くありますけれども、国が立て替えた上で加害者に求償する制度が必要だというふうに私は考えますけれども、御見解を伺いたいというのと、あと、犯罪被害者の方々、性暴力被害者の方が、PTSDなど中長期にわたって体調を崩して、生活上もかなりの困難を抱え続けておられます。
犯罪被害者の方、また被害届を出していない被害者の方への中長期の経済的、医療的、心理的、精神的、生活上のケアと支援、この点について是非御意見を伺いたいというふうに思っております。

 

○髙橋参考人

まず、一点目の冤罪になったときの被害者の支援ですけれども、私はやったことはありません。というのは、三十年、四十年たってから冤罪になっていますから、もう被害者に接触しようもないし、接触すること自体が事件を思い起こさせて、それが間違っていたというふうに思っているわけですから、私が接すること自体が苦しめることになってしまうわけです。ですから、接しようがないんですね。だから、こう言ったら元も子もないんですが、支援のしようがないんです。ですから、冤罪は起こさないでください、もうそれしかないんです。
次に、経済的支援ですけれども、ここは先ほど先生がおっしゃられたのと私は見解がちょっと違うんです。
私は立替え払い制度は反対です。というのはなぜかといいますと、立替え払いというのは、結局のところ、裁判になったときにどのくらいの金額が賠償されるか、それを立替え払いする、そういう文脈で言われていると思うんです。こういう例を出したら失礼かもしれませんけれども、安倍総理が亡くなりました、その奥さんに何億という金額を補償することになってしまいます。あれは裁判になったらば逸失利益は莫大です。ですから、別に安倍さんに限らず、大企業の社長が亡くなったら、それこそ何億と賠償するわけです。果たしてこれは国民が納得するでしょうか。
ですから、私は、立替え払いではなくて、本当に被害を被って生活が苦しくなった人、例えば一家の大黒柱を亡くしたとか、そういう人に対して厚く補償をするというものが私が一番いいと思っているんです。
そして、立替え払いというのは、言ってみれば、本当は加害者が負担すべきものを私たちの税金で負担することになる。何で加害者が負担しなきゃいけないことを私たちが負担しなきゃいけないんですか。ですから、その理念自体が私は国民の理解が得難いと思っているんです。
ですから、そういう理念ではなくて、本当に被害を受けて困った人に対して社会の連帯共助の精神で厚く保護していく。医療費も全てそれは無料にするとか、そして、生活が自立できるまで毎月毎月、年金という形でもどういう形でもいいですから、そういう形で払っていくというのが私が一番いいと思っているんです。
ドイツが実はそういう制度なんです。ドイツは非常に合理的でありまして、そういうふうに毎月毎月分割で年金で払っていけば、仮に、亡くなった被害者とか、御遺族の方が亡くなれば、そこでもう払わなくて済むわけなんですね。ですから、
国家の予算の観点からいっても有益なわけです。
ですから、私の考え方としては、本当に困っている人に厚く補償する、そして、こう言っては失礼だが、お金をたくさんお持ちの方のところにはちょっと余り補償はしないように予算をうまく配分していくということによって国民の理解が得られるんじゃないかな、私はそう考えております。

 

○櫻井参考人

ありがとうございます。
先ほども冤罪への支援ということをちょっと考えておりまして、私自身は、恐らく冤罪を受けた方々、実は今日御発表されていた二人のお話を聞いて私自身も大変勉強になって、大変なやはり心理的な負担だということは私自身も勉強になりましたので、支援があってもよいというふうには感じています。
ただ、冤罪ということを考えたときに、被害者支援の考え方として、やはり支援も必要ですけれども、いかに被害を防止するかという観点も必要だとは思っておりますので、この場合には、やはり、被害をどういうふうに防止するのか、そこに力を注いで制度をしっかりとつくっていくということが大事じゃないかなというふうには考えました。
先ほどもう一つ御質問いただきました性犯罪被害者への例えばPTSDの問題ですとか、大変傷つきが大きくて、中長期にケアが必要になります。先ほどの冒頭でも私申し上げましたように、私としましては、全国同じように支援が受けられるという、そこに是非力を入れていただきたいというふうに考えています。
例えば、条例のあるなしによって、カウンセリングが、十回、無料で受けられる回数が増えるということもあるんですね。これがないところとあるところでは違います。十回あったら随分違います。ですので、こういった、全国、例えば、ここの地域で被害を受けたらカウンセリングはいっぱい受けられるけれども、ここで被害を受けたらカウンセリングが受けられないというようなことはやはりあってはいけませんし、被害者というのは元の生活に戻りたい、そこで生活をしたいということがあると思うんですね。
例えば、子育て支援だってそうだと思うんです。子供を産んだらそこの地域で育てていきます、それが自然です。そして、それに対しての手厚い支援があるはずなんです。ところが、被害者というのは地域地域によって随分違います。ですので、私は、全国ある程度同じレベルで支援が進んでいくということを願っています。
以上になります。

 

○本村伸子

貴重な御意見、本当にありがとうございました。

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