もとむら伸子(日本共産党衆議院議員)-
国会質問

質問日:2023年 11月 10日 第212国会 法務委員会

裁判官の増員不可欠

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裁判官の増員不可欠 2023.11.10

議事録

○本村伸子
 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。  今回の裁判官の報酬と検察官の俸給等の改定については、幹部の方々以外の方々については、物価上昇率に対して極めて不十分だというふうに考えております。また、最高裁長官、最高裁判事、高裁の長官、検事総長、次長検事、検事長などの俸給、報酬に関しましては、政府の特別職に準ずるといいますけれども、私ども日本共産党は、内閣総理大臣あるいは大臣などの特別職の給与の引上げについては反対をしております。もちろん、国会議員の歳費を上げるということにも反対をしております。しかし、幹部の裁判官あるいは検察官は、先ほど来御議論がありましたように、別に考えなければならないということで、この点については反対をいたしません。法案に対する考え方は、そのようなことでございます。  今日は、国民、住民の皆さんのニーズに応えて公正な裁判をできる、この裁判所の体制についてお伺いをしたいというふうに思います。  資料の1、今日、大量の資料を出させていただいたんですけれども、資料の一ページ、見ていただきたいというふうに思います。  日本弁護士連合会の第六十五回人権擁護大会シンポジウム第二分科会の基調報告書の提言の中で、読まさせていただきますけれども、家庭裁判所の人的整備、子供さんや高齢者、障害者の方々、社会的弱者を含む地域の住民が、必要なときにきちんと家庭裁判所を利用できるようにするために、とりわけ裁判官や家庭裁判所の調査官の増員は急務であるというふうに書かれております。  裁判官、判事、判事補の定員は、現在、判事が二千百五十五人、判事補が八百四十二人となっている。なお、判事、判事補とも相当数の欠員があり、二〇二二年十二月一日現在で、判事は八十九名、判事補は百七十六人の欠員がある、欠員を充員するだけでも相当な人的基盤の改善になる。  さらに、本基調報告書で述べているように、裁判官非常駐支部四十四か所を解消し、全ての独立簡易裁判所に家庭裁判所出張所を新設し、現在、家庭裁判所出張所が併設されていない該当箇所は百八か所、その他事件数が多い家裁において、民事事件、刑事事件等と家事事件との兼務を解消させ、裁判官の執務体制を充実させる等、裁判官を増員して対応すべき諸施策を行うために、できるだけ速やかに、数百人単位の裁判官、判事、判事補の増員が不可欠であるというふうに書かれております。  この提言につきまして、法務大臣は、この報告書、分厚い報告書がありますけれども、この報告書と提言についてどう受け止めておられるのか、お示しをいただきたいと思います。
 
○小泉国務大臣
 御指摘の日弁連第六十五回人権擁護大会シンポジウム第二分科会基調報告書の提言の中で、裁判官の増員が不可欠である、数百人単位の裁判官の増員が不可欠であるという提言がなされております。そのことは承知をしております。  一般論として申し上げれば、司法権を担う裁判所において、事件を適正かつ迅速に処理するため、充実した人的体制が構築されることは重要であると思います。  ただ、具体的にこれを実現するに当たっては、裁判所の人的な体制整備の在り方について、事件の動向等、裁判所を取り巻く様々な状況等を踏まえ、最高裁判所において必要な検討がされるべきものと考えております。  法務省としては、裁判所関連の法律を所管する立場から、引き続き、最高裁判所の判断を尊重しつつ、適切に対応していきたいと思います。
 
○本村伸子
 今申し上げましたように、家庭裁判所の裁判官の数が足りないというのが現実でございます。国民、住民の皆様のニーズ、そして弁護士の皆様のニーズに応えられていないというのが現実です。  裁判所がお考えになるというふうにおっしゃるんですけれども、法務省の要求に基づいて、最高裁は裁判官を出向させているのではないですか。
 
○小泉国務大臣
 いわゆる判検交流の御指摘です。  裁判官の職にあった者から検察官への任命及び検察官の職にあった者からの裁判官への任命を始めとする法曹間の人材の交流を行っております。  この交流は、法務省が所掌する司法制度、民事、刑事の基本法令の立案、訟務事件の遂行等の事務において、裁判実務の経験を有する法律専門家である裁判官を任用する必要があることから、その都度、適材者による交流を求めているところでございます。
 
○本村伸子
 法務省の求めに応じて最高裁が出向させているわけです。  家裁などは裁判官が足りない状態なのに、法務省が人を取っていく。法務省が独自に人をちゃんと育成をしていくということが必要だというふうに思うんです。  今、どのくらいの裁判官が中央府省庁に行っているのか。二〇二二年十二月に中央府省庁に出向している判事、判事補、裁判官、何人いるのか、お示しをいただきたいと思います。
 
○徳岡最高裁判所長官代理者
 お答え申し上げます。  令和四年十二月一日時点で行政省庁等に勤務している裁判官は、合計百六十八人でございます。判事九十四人、判事補七十四人でございます。
 
○本村伸子
 十ページから二十八ページの資料を見ていただきたいんですけれども、直近十年間の裁判官の行政府省庁への出向の人数が、そして部署が書かれております。  二〇一三年は百四十六人でした、全体で、出向が。しかし、二〇二二年は百六十八人と増えております。十年間で見てみますと、増えております。  そして、法務省だけを見てみますと、二〇一三年、八十九人。そして、二〇二二年は百人というふうに、これまた増えております、十年間で見ますと。  さらに、大臣所信の中で、大臣は訟務機能の強化というふうにおっしゃいましたけれども、まさか裁判官を、また出向を増やそうとしているということではないのか。増やすのか減らすのか、この点、お示しをいただきたいと思います。
 
○小泉国務大臣
 大臣所信をしたためましたときに、私が、出向者を増やす、減らす、そういう検討をした上で書いた表現ではございません。様々な訴訟ニーズが増えているので、それに対してしっかりと訟務機能を強化して対応していくべきだという趣旨で申し上げたわけでございます。
 
○本村伸子
 裁判官の出向の求めは、増やすのか、減らすのか、どうしていくおつもりでしょうか。
 
○小泉国務大臣
 国を当事者等といたします訴訟、これは増加傾向にあります。これらの訴訟に迅速かつ適正に対応していくために訟務の体制を充実強化していくことは重要なことであると認識しております。  そのような中にあって、国を当事者等とする訴訟において、法律による行政の原理を確保して、適正な訴訟追行を行う観点からは、訟務部局に裁判官出身者をも人材として配置することも重要な意義を有していると考えております。  令和五年四月時点で、訟務検事に占める国の指定代理人として活動する裁判官出身者の割合は約三割でございますが、その数や割合を減らせば減らすほどよいとは考えておりません。様々な観点から見たバランスを重視して、適材適所に人材を配置していくことが国民のニーズに応えていくためにも相当であると考えております。
 
○本村伸子
 行政にとって複雑な案件というのは裁判所にとっても複雑な案件であり、そうした人を取っていくというのはあり得ないというふうに思います。  また、大臣は、裁判所の独立性の重要性についてどう考えているのか、時の権力から人権を守る上でも、この独立性というものは非常に重要であり、人権を守る上でも、権利と自由を守る上でも、裁判所の独立性というものは物すごく大切な問題です。  資料の3を見ていただきたいんですけれども、三十二ページになります。  これは、東京地裁の民事二部裁判長の春名茂裁判官、今の訟務局長ですけれども、昨年二〇二二年九月一日に、間を置かずに、前日まで裁判官をやっていた、その翌日には訟務局長になっているという異例な人事が行われました。  これに対して、二〇二二年十月三十一日、三百人を超える弁護士、三十五の弁護団、十の弁護士団体などから連名で、裁判の公正、裁判所の独立を害するなどと、最高裁判所、そして法務省に対して抗議の声明が出されております。これをどう大臣は受け止めておられるんでしょうか、反省しているのでしょうか。
 
○小泉国務大臣
 お尋ねの申入れ書の送付がありましたことは、承知をしております。  ただ、個別の人事に関することでございますので、お答えは差し控えたいと思います。  その上で、一般論として申し上げれば、法曹は、法という客観的な規律に従って活動するものであり、裁判官、検察官、弁護士のいずれの立場においても、その立場に応じて職責を全うするところに特色があると思います。  したがって、裁判所において国を当事者等とする訴訟を担当していた裁判官が訟務局長に異動し職務を行うことについて、直ちに職責上問題があるとは考えておりません。
 
○本村伸子
 資料の三十三ページ、上から四行目の部分から、弁護士の皆さんの御指摘を読まさせていただきます。  本件人事案件によって、現時点で、係争中の行政事件について裁判官合議体が行ってきた評議の内容を訟務局長が知っているという、異常な事態が生じています、評議内容を口にすることはもちろん、評議内容を踏まえて国側の訴訟活動に関与し得るだけで、裁判所法第七十五条が定める評議の秘密保持との関係で問題があることは明らかだと。  最後の行ですけれども、私たちは、同行政部で、前裁判長の異動前後に判決を言い渡された事件や、現在同行政部に係属している事件を、原告訴訟代理人として直接担当し、又は行政訴訟、国を相手とする訴訟に関わる弁護団、弁護士団体、弁護士として、本件人事案件が裁判所の独立と裁判の公正に悪影響を及ぼすことを危惧しています、私たちは、本件人事案件に関与した最高裁判所事務総局と法務省に対して抗議し、同行政部で前裁判長が関与した裁判の評議の秘密が害されないことが保障される措置を求めるとともに、裁判所の独立と裁判の公正の確保のため、今後は行政訴訟分野における人事交流についても廃止することを求めますというふうに語られております。  裁判所の独立性、先ほども申し上げました、人権を守る上でも非常に重要です。国会と行政府と、そして裁判所、三権分立という権力の集中を防ぐ制度に対して、大臣は矜持を持つべきではないですか。
 
○武部委員長
 申合せの時刻が経過しておりますので、答弁は簡潔にお願いします。

 

 
○小泉国務大臣
 まず、法曹は、先ほど申し上げましたとおり、立場に応じて職責を全うするものであることから、職責上問題があるとは考えておりません。  もっとも、国を当事者等とする訴訟の遂行に当たっては、裁判の公正性や職務の中立公正な遂行に疑問が抱かれることのないよう、適切に対応しているところでございます。  三権分立とは一般に、国家の作用を立法、司法、行政の三権に分けて、各々を担当する機関を相互に分離独立させて相互に牽制させる統治組織の原理をいうものであると承知しております。  その上で、繰り返しになりますが、法曹は、裁判官、検察官、弁護士、いずれの立場であれ、その立場に応じて職責を全うするものでございます。  したがって、法曹間の人材交流は、三権分立の意義を損なうものではないと考えております。
 
○本村伸子
 裁判の公正性が問われております。こうした人事交流はやめるべきだということを強く求め、質問を終わらせていただきます。

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