もとむら伸子(日本共産党衆議院議員)-
国会質問

質問日:2024年 4月 12日 第213国会 法務委員会

高校無償化除外の懸念

議事録

○本村伸子

日本共産党の本村でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
この法案に関しましては、中間試案のパブリックコメントの段階から大きな懸念の声が多く出されておりました。とりわけ、DV、虐待の被害当事者の方が命の危機、新たな人権侵害のリスクを感じたからだというふうに思います。法案に対してはまだまだ、国民、住民の皆さん、知られていない現実がございます。それでも、反対だという声が急速に広がり、オンラインの反対の署名は十万を超えるなど、急速に世論が動いております。
重大な懸念の声がある中で採決が強行されようとしている、また、先ほども与党の方から、質問したかったけれども、まだ今回できなかったというお話がありましたけれども、審議が尽くされない中で採決はするべきではないということをまず冒頭申し上げたいというふうに思います。
懸念の声に対して、立憲民主党の皆様から出された修正項目案では、父母双方の合意がない場合には共同親権を認めないこと、子供の意見聴取ですとかDV被害当事者の方々が望んでおられた親権者の変更の厳格化、そして、共同親権の場合、必ず父母の一方を監護者とすることなどを定める修正項目案が出されておりました。これは私どもも評価をしていたわけですけれども、この四党提案の修正案の検討条項にはこうした項目は入らなかったわけですけれども、なぜでしょうか。米山議員、お願いしたいと思います。

○米山委員

まず、なぜかということに関しましては、それは各党の折衝の中でということでございますので、何といいますか、まず、全てが入らなかったということではないんですけれども、この結果になったということに関しましては、それは各党の様々な議論の結果ということとお答えさせていただきたいと思います。
その前提で、幾つかの点については私は反映されていると考えております。
まず、父母双方の合意がない場合には共同親権を認めないことということに関しましては、附則の十九条で、これは真意を確認するということで反映させていただきました。
また、必ず父母の一方を監護者とすることということに関しましては、もちろんそのとおりではないんですけれども、附則の十七条におきまして、それぞれ監護者についての周知徹底を図るということで、それをよく分かった上で判断していただくというところで反映されているというふうに考えております。
また、親権者変更の厳格化ということに関しましては、これは確かに明文規定はないところではございますけれども、そこは双方の合意であり、またそれぞれの当事者が様々な趣旨を理解していること、そういったことによって、それは間接的になってしまうかもしれないんですけれども、間接的に反映されるものというふうに理解しております。
修正案というものがもちろん我が党の全ての要望をかなえているものではございませんけれども、それは実は他党にとっても同じことでございまして、それぞれ立場の異なる党が合意したということは、それぞれの党がそれぞれに、自分の思いの中で、それは反映できなかったものもあるということではあると思います。しかし、その中で、我が党としては、この修正案を出し、そしてこの法案に積極的に関与し、その施行をしっかりと見守っていきたいというふうに考えております。

○本村伸子

大きな懸念の声に応える部分が入らなかった、四党協議の中で盛り込まれなかったというのは非常に残念に思っております。
次に、大臣にお伺いをしたいと思います。
この法案の影響を受ける方々は、全ての子供とその子供の父母を始め何人ぐらいいらっしゃるというふうに考えているのか。そして、この民法の改定案は多くの方々に関わる法案であり、国民的議論がやはり必要なのではないかというふうに考えますけれども、大臣の御所見を伺いたいと思います。

○小泉国務大臣

近年では、毎年十数万人の子供が父母の離婚を経験しております。また、子供がいる父母の離婚件数も毎年数万件ございます。
本改正案は、おっしゃるように、父母の離婚を経験する子供に加え、父母が婚姻中の子供にも影響があり、また、父母や親族のほか、子供の生活に関わる方々にも影響がある、そのことは十分認識しております。
ただ、法制審議会においては、子供の意見も含め、国民の様々な御意見に耳を傾けながら、丁寧に議論が行われてまいりました。この間、三年にわたり議論が行われてまいりました。世論調査を踏まえた議論、様々な立場からのヒアリングを実施するパブリックコメント手続における意見募集なども行ってまいりました。国民的な議論、幅広い議論が行われてきたというふうに考えております。
国会の御審議においても、八名の参考人の質疑を含め、十分な時間をかけて御丁寧に御審議をいただいていると受け止めております。

 

○本村伸子

パブリックコメントでは多くの懸念の声が出されておりましたし、もう多くの人が知っているようなお話がありましたけれども、なかなか知られていない実態があるということはつい先日のテレビ報道でもございました。大きな影響があるにもかかわらず、国民的議論も合意もないまま強行ということは絶対に駄目だというふうに私は強調したいというふうに思います。
この法案については様々な影響がございます。
影響の一つですけれども、高等学校等就学支援金、高校の学費への補助の影響もございます。様々な教育、社会保障、税制への影響も懸念をされております。
先日、審議の中で、おおつき議員の質疑に対して、文部科学省はこういうふうに答弁をしております。高等学校等就学支援金については、保護者等の収入に基づき受給資格の認定が行われていますが、保護者の定義は、法律上、子に対して親権を行う者と定めております、そのため、共同親権を選択した場合には親権者が二名となることから、親権者二名分の所得で判定を行うことになりますというふうに答弁をしておりました。
この答弁に関して、共同親権下では、父母の生計は別という証明をしないとやはり両方の所得で判定されてしまうのでは、それ自体が大きな負担、今と変わらないと言えないのではないかとの声や、共同親権になったら教育無償化ではなくなるのという不安の声も出されています。
現状より、子供とともに暮らす一人親世帯への経済的な負担が増えたり、労力が増えたり、こういうことは絶対にあってはならないというふうに考えますけれども、これは文部科学副大臣にお願いしたいと思います。

○あべ副大臣

委員にお答えさせていただきます。
委員がおっしゃってくださったことの繰り返しになるところでございますが、高等学校の就学支援金に関しましては、保護者の収入に基づいて受給資格の認定が行われるところでございまして、保護者の定義、法律上、先ほど委員がおっしゃってくださったように、子に対して親権を行う者というふうに定めているところでございます。
このため、今回の民法改正後に共同親権を選択した場合においては、その親権者が二名となることから、親権者二名分の収入に基づいて判定を行うことになります。
他方で、委員が御懸念のところでございますが、この就学支援金の受給の資格の認定に当たって、親権者が二名の場合であっても、親権者にある保護者の一方が、DV、ドメスティックバイオレンス、また児童虐待等によって就学に要する経費の負担を求めることが困難である場合においては、親権者一名で判定を行うこととしておりまして、これは、共同親権か否かにかかわらず、同様の取扱いをさせていただくことになります。
これらの判定に当たりましては、個別のケースに応じて判断することになりますけれども、法務省とも連携させていただきながら、適切な認定の事務に努めてまいります。

○本村伸子

やはり、離婚後共同親権ですと、親権者二人分の所得で計算されてしまう場合があるわけです。DV、虐待ケースだけではない、高葛藤で話もしないというような形で離婚をする場合など、二人の親権者の所得で計算されてしまう。やはり現状よりも、子供とともに暮らす親御さん、一人親世帯への経済的負担が増えたり、労力が増えるということになるんじゃないですか。これは副大臣、お願いしたいと思います。

○あべ副大臣

委員にお答えさせていただきます。
繰り返しになるところでございますが、高等学校等の就学支援金の判定に当たりましては、個別のケースに応じて判断する必要があるところでございまして、子の教育費の負担軽減を図ることができるよう、繰り返しになりますが、法務省ともしっかりと連携をさせていただきながら、適切な認定事務に努めてまいります。

○本村伸子

文部科学省と話をしておりましたら、単独親権か共同親権か選べると聞いているので、もめそうなときは単独親権でというようなことを法務省が言っているということですけれども、それは事実ですか。

○竹内政府参考人

 

お答えいたします。
本改正案の理念でございますが、父母が離婚後も適切な形で子の養育に関わっていただくことが子の利益になるというものでございまして、先ほど委員がおっしゃったようなところは、本改正案の理念に入っておりません。

○本村伸子

こういう部分で経済的負担が一人親世帯の方、子供さんと暮らす親に増えたりするわけですよ、この問題は。
それで、高校の学費の補助だけではなく、税金の控除ですとか保育園の費用ですとか就学援助、児童扶養手当あるいは母子父子寡婦福祉資金の貸付け、奨学金、様々な一人親支援の制度、これはどういう影響が出るのか、ちゃんと調べて、ちゃんと検証をしているのか。これは法務省民事局にお願いしたいと思います。

○竹内政府参考人

お答えいたします。
委員御指摘の扶養控除ですとか児童手当あるいは児童扶養手当、保育所の利用申請などにつきましては、これらの制度の根拠となる各法令の規定に基づいて判断されるべきものでございまして、一次的には当該行政手続の根拠となる法令を所管する各府省庁において検討されるべき事項であると考えますが、その上で、御指摘の扶養控除等につきましては、いずれも、親権の有無や民法上の監護者の定めの有無をその要件としているわけではないと承知をしておりまして、こうしたことを踏まえますと、今般の民法改正後に離婚後の父母双方を親権者と定めたことをもって具体的な変更を生ずるわけではないと承知をしております。

 

○本村伸子

様々な一人親支援の制度に関しまして、あるいは税金控除に関しまして、どういう影響があるか、全て網羅的に書いた、それを資料として提出をいただきたいと思いますけれども、大臣、お願いしたいと思います。

○小泉国務大臣

努力したいと思います。

○本村伸子

離婚後共同親権が各一人親世帯へどういうふうに経済的な影響が及ぶのか、労力がどう増えるのか、こうした影響もこの委員会の中ではまだまだ十分に議論できていないのに採決を強行しようとしていることは、私は絶対に駄目だというふうに思っております。
ほかにも様々な懸念が出されております。共同親権の場合、急迫でない手術で、医療機関が双方に合意書を送付すると考えているのか、伺いたいと思います。また、DV、虐待ケースで、別居親にどこの病院に入院するかが分かるということになり、子供、同居親の安心、安全が図れないという心配の声が出されておりますけれども、その点、大臣、いかがでしょうか。

○竹内政府参考人

お答えいたします。
現行民法の下におきましても、父母が親権を共同して行使する場合において、子が医療行為を受ける際に、医療機関が父母に求めている手続は、個別具体的な事案において様々でありまして、別居親への合意書の送付が一律に行われているわけではないと承知をしております。
この点は本改正案においても同様でありまして、現状と異なる対応を必要とするものではありません。
また、本改正案によれば、例えば裁判離婚をする場合において、御懸念のようなDV、虐待を受けるおそれがあるときには、裁判所が父母の一方のみを親権者と定めることになります。
本改正案が子や同居親の権利利益を不当に侵害する危険を生じさせるようなものではないということについて、引き続き丁寧に御説明してまいりたいと考えております。

○本村伸子

DV、虐待ケースで逃げている場合、今、婚姻中で逃げている場合も大丈夫ですね。

○竹内政府参考人

お答えいたします。
現行の取扱いに大きな変更を生ずるものではないと考えております。

○本村伸子

現場にどうやって徹底されるのかも不安でございます。
そして、もう一つ、急迫かどうか、日常行為かどうか。進学、医療などの、共同親権の父母が合意しない場合、家庭裁判所に持ち込まれることになります。そうしますと、調査報告書が製作をされて、それが相手方に開示をされ、子供の現状が別居親に伝わることになるのではないか、特にDV、虐待ケースの被害者の方々が非常に心配をしております。
ここは大丈夫なのか、大臣にお答えをいただきたいと思います。

○小泉国務大臣

家庭裁判所の調査官に事実の調査をさせるか否かについては、個別の事案の具体的な事情に即して、裁判所において適切に検討されるものと思います。
その上で、現行法においても、当事者が家庭裁判所調査官が作成した調査報告書を閲覧するには、家庭裁判所の許可を要するものとされております。
例えば、家事審判手続に関しては、家事事件手続法第四十七条第四項で、家庭裁判所は、事件の関係人である未成年者の利益を害するおそれ等があると認められるときは、記録の閲覧を許可しないことができると定められております。
このような規定に基づいて、家庭裁判所においては、記録の閲覧許可について、個別具体的な事案の内容を考慮した上で適切な運用がなされていると承知しております。

○本村伸子

DV、虐待が家庭裁判所の中で軽視をされているということは、参考人質疑の中でも明らかだというふうに思います。ここでも家庭裁判所の判断次第ということです。
今でも心配なわけですけれども、家庭裁判所に持ち込まれるものが多くなるということで、さらにその心配が増えていくわけです。様々訴えられるリスクも高まってまいります。六年間で十六件もの裁判を抱えるDV被害者の方々、これはもっと激烈になるのではないかという懸念があるわけです。
福岡県の弁護士会の会長声明、離婚後共同親権の導入について、十分に国会審議を尽くすことを求める会長声明がございますけれども、その中で、どこまで単独で決定できるのかが明確でなければ、後に親権行使の適法性が争われる等の心配により、適時適切な意思決定ができず、かえって子の利益を害するおそれがあるということが指摘をされております。
どこまで単独決定できるのか、単独行使できるのかを明確にする必要性については、大臣、どうお考えでしょうか。

○小泉国務大臣

現行民法においては、父母双方が親権者である場合は、親権は父母が共同して行うこととされており、親権の単独行使が認められる範囲については明文の規定がなく、解釈に委ねられているんですよね、現行民法では。
本改正案は、このような現行民法の解釈も踏まえて、親権の単独行使が許容される場合を明確化するものであります。これまで定められていなかったものを明確化する、そういう改正でございます。
こういった本改正案の内容については、国会における法案審議の中で明らかになった解釈等を含め、関係府省庁等と連携して、適切かつ十分な周知に努めてまいりたいと思います。

○本村伸子

それで、採決しようとしている附帯決議案では、この明確化についてガイドラインというふうに書かれておりますけれども、国会審議の中でしっかりと議論しなければいけないというふうに考えております。それがまだまだできておりません。
今日、資料を出させていただいておりますけれども、どういう場面で、これが日常行為なのか、日常行為以外だけれども急迫の事情なのか、こういう一覧表がなぜ今の段階で出ていないんでしょうか。大臣。

○小泉国務大臣

これはいろいろな、様々なケースがやはりありますので、どれほど精査してみても全体を押さえるということはなかなか難しいと思っています。
基本的な考え方の御議論を国会でしていただいて、その考え方に沿って具体例を下に下ろして考えていくという順番だと思うんですよね。議論をここでしていただいて、方針が決まれば、それに見合う個別例というものを我々は提示することができます。そういう一番根幹の部分を御議論いただいているのがこの委員会だと私は思います。

○本村伸子

先ほど中絶の話がありましたけれども、中絶は日常の行為ではなく、急迫の事情がある場合にこれは単独行使が認められるということですので、その点も申し上げておきたいというふうに思います。
まだまだ審議は尽くされておりません。採決を強行することなく審議を続けていただくことを委員長に強く求め、質問を終わらせていただきます。

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