もとむら伸子(日本共産党衆議院議員)-
国会質問

質問日:2024年 4月 3日 第213国会 法務委員会

民法等改正案 参考人質疑

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どこが「子の利益」か 虐待やDVが継続する懸念を表明 2024.4.3

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どこが「子の利益」か『子の意思の尊重』を入れてほしい 2024.4.3

議事録

○本村伸子

 日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
今日は、四人の参考人の皆様、お忙しい中、本当にありがとうございます。質問をさせていただきたいと思います。
まず、斉藤参考人にお伺いをしたいというふうに思います。
先ほどのお話の中で、パブリックコメントのみんなの声が消されてしまったというふうに感じているんだというふうにおっしゃられておりました。その点について是非もう一度意見を教えていただきたいというふうに思っております。そして、消さないでほしいということで取組も行われているというふうに思いますけれども、その点、お示しをいただきたいと思います。
また、私も、このパブリックコメント、個人情報をマスキングした上で公開をしてほしいということを何度も求めているわけですけれども、まだ私どもの手元にも来ておりません。法務省の説明では、意見の概要、暫定版というものにまとめたんだからいいんだという話があるんですけれども、その点、当事者としてどのような思いか、教えていただければというふうに思っております。

○斉藤参考人

私のようなDV被害に遭った人たちは、本当に日々隠れて生活しています。なので、少しでもパブリックコメントを書けば、自分たちがこういう部分で苦しんだり、私のように、裁判所でDVや虐待が見抜かれていません、そんな中で、形だけ、親子が一緒に仲よくすることが子供のためだということの一辺倒だけでどんどん話が進んでいくということにすごい恐怖を持って、みんな一生懸命自分の具体的な事例を、パブコメなので、自分の内容が公表されてもいいという覚悟で書きました。
しかし、今おっしゃっていただいたように、公表されておらず、私たちが書いた言葉というのはどこに消えてしまったんだろうという気持ちで、とても落胆しています。
現行法でも、離婚後、共同養育、共同監護できるという内容になっています。親が子供のために責任を持つために、意識を変えるため、共同養育、共同監護できるために共同親権を入れるんだというのがとても納得がいっていません。親権と面会交流と養育費は全く別物です。
戻ってしまいますが、パブコメで約八千件の意見が寄せられて、個人の意見では三分の二が共同親権になるのには反対だ、慎重にしてほしいということを伝えています。
中間試案を読むこと自体がとても難しかったです。皆さん、フラッシュバックを起こしながら、寝る間を惜しんで書いたものを無視することは、国民を無視しているのと同じなので、とても許せません。
以上です。

○本村伸子

ありがとうございます。
今日も、様々な恐怖の中、こうやって、同じ思いをされている方々の声を届けようということで来てくださったことに、本当に心からの敬意と感謝を申し上げたいというふうに思っております。
昨日の法案審議の中でも、法務大臣から、この法律によって、例えば、単独行使、急迫の場合はどういう場合かということも含めて、様々、紛争が多くなるのではないかというふうなことが法務大臣からも認められました。
裁判所がDVや虐待を軽視するという被害当事者の声は今日も聞かれたわけですけれども、そういう現実がある。そして、裁判所の今の体制、施設、全く不十分だと。そして、子供パートナー弁護士制度、公費の弁護士制度ですとか、あるいは、訴えられた側、例えば、経済的に困難な方が訴えられた場合に、民事法律扶助を使ったらいいじゃないかと言われるんですけれども、それは本当にハードルが高い。
こういう中で、今回、この法案によって、拙速な場合、新たな人権侵害、命のリスクが起こってしまうのではないかというふうな私は危惧を抱いているんですけれども、これについては四人の参考人の皆さんにお伺いをしたいというふうに思っております。

 

○犬伏参考人

ありがとうございます。
今の御指摘を非常に重要なことだと思っておりますけれども、私としては、非常に今の現状が不足しているということを訴えておりますけれども、しかしながら、やはり家庭裁判所の人的あるいは物的整備というものについての御理解をいただきたいということで、若干お話をしたという面もございます。
しかしながら、今、家庭裁判所では、やはり安全を非常に重視していると思いますので、取組は進んできております。
今後も、やはり、安全、人の命が危険にさらされるようなことというものについては、今も配慮していますし、今後も一層配慮しなければならない。とりわけ、今、障害を抱えている高齢者の方々も来ておりますし、様々な人たちが来るというところが家庭裁判所である。その家庭裁判所の役割というのを十分に果たせるようにというふうに考えておりますので、裁判所において、危険な状況が発生するということについては、極めて、私どもとしては、そこを防止しなければいけないということを今も十分に心がけておりますし、今後もやはりその点については家庭裁判所の役割を十分果たさなければいけないというふうに思っております。

○しばはし参考人

御質問いただきまして、ありがとうございます。
裁判所の運用のところのお話ではあったかと思うんですけれども、必要に応じて、DVで相手と関わることが難しいというようなときには、適切に支援の利用ということを裁判所の方から御提案いただくというようなこともあろうかとございます。
ですので、裁判所だけ、調停委員だけということではなく、支援団体、そして、私が提言したいのは、弁護士の立場の方が、やはり依頼者ファーストということは、それが責務なので致し方ないなと思うんですけれども、子供を会わせたくないという側についた同居親についている代理人は、できるだけ会えないようにするだとか、一方で、攻撃的と言うと語弊があるかもしれませんけれども、連れ去りは誘拐だと相手を罵るような別居親に対して、いや、もう監護者指定をして、三点セットをして、相手をやっつけましょうみたいな感じで、お互いに火をつけてしまうようなことがより対立構造になって、よりDVが深まってしまう、よって、予期せぬ形でよりお互いが傷つくというか、憤りが増してしまうというような構造になってしまっているのではないかなと思っております。
調停委員の方々も、今おっしゃられたように、できる限りのことをされていると思うんですが、そこだけではなく、司法関係者、そして民間団体、皆さんで取り組むべき課題なのではないかなというふうに考えます。
以上です。

○山口参考人

御質問ありがとうございます。
DVにつきましては、まだまだ日本の制度は足りていないと私も思っております。これは裁判だけではなく、協議中、同居中ですとか別居中においても、被害者が安全、安心に暮らせるようにするには、裁判以外でも何か制度をつくらなければいけないと思っております。
そして、離婚にかかわらず、DVに関して、緊急保護命令ですとか臨時のもの、そして継続的なもの、分けて、裁判所で的確に迅速にされるような制度がつくられるといいと思いますし、シェルターもまだまだ足りていないと思います。
シェルターにおきましても、非常に制限が強くて、スマートフォンなども預けられたりする、非常に厳格な中で生活をしなければいけないというところで、そういう人が生活できるような十分なシェルターというものも造っていただきたいと思っております。
アメリカの例ですけれども、シェルターに行っても親子の面会交流が行われている場合があるようですので、それは、安全を確保して、そして親子の交流を絶やさないようなことというものは、シェルターでもできる人たちもいるのであれば、やっていくことも方策として考えるべきではないかと思います。
それともう一つ、子供の苦悩について、先ほど親教育というものがありましたけれども、子供に特化した、子供の意見を聞く、どうしてほしいとかではなく、子供が今何に悩んでいるだとか、これからどうなるのか不安だとか、日本の制度はどうなっているのかとか、そういうことを知らせたり、子供が自由に語られる場があって、そこでDVなどの発見だとか認定だとかが行われればいいのではないかなというふうに考えております。
以上です。

 

○斉藤参考人

このまま共同親権になると、本当に人権侵害になると思います。子供の利益である子供の安心や安全が損なわれることがとても心配です。
実際に、六年間の間に十六個の裁判を起こされた人がいます。裁判官を訴えたり、診断書を書いた医師を訴えたりすることも珍しくありません。自分自身が訴えられることはもちろん苦痛ですが、助けてくれた人が訴えられることは、そのうち誰も助けてくれなくなるのではないかと思うと、絶望的に苦しい思いだそうです。
誰のための法改正なのかを改めてしっかりと考えてほしいです。
以上です。

○本村伸子

ありがとうございます。
山口参考人にお伺いをしたいんですけれども、私の手元にアメリカ上院下院両院の一致決議というものがあるわけですけれども、そこの中に、アメリカでは二〇〇八年以降、少なくとも六百五十三人の子供が離婚、別居、監護権、面会交流、養育費などの手続に関与した親によって殺害されており、多くの監護親の反対を押し切って家庭裁判所が面会交流を認めた後に殺害されたものであることが分かっているというふうに両院一致の決議の中で指摘をされておりまして、それで、子供の安全は監護権及び面会交流についての司法判断における最優先の事項と決議をされておりますけれども、その後どうなっているのかという点、お示しをいただけたらというふうに思っております。
そして、先ほども被害者の方から濫訴のような形のお話があったんですけれども、その対策についてアメリカではどうなっているのかという点、教えていただければと思います。

○山口参考人

御質問いただきましたけれども、私はそのところは存じ上げておりませんので、申し訳ございません、お答えしかねます。失礼いたします。

○本村伸子

先ほども、被害者の斉藤さんが、世界ではこういう事例があるから、それをしっかりと検証するべきだというふうにおっしゃっておりました。
そういう中で、先ほども資料を斉藤参考人からお示しいただきましたように、日本でも面会交流の中で子供が殺害される、妻が殺害される、あるいは性暴力、性虐待を受け続けていたという事例
があるんですけれども、この点に関して、最高裁などに、やはりこういう点をちゃんと日本としても検証するべきではないかということを申し上げているのですけれども、それはしていないというようなお話を聞いているのですけれども、この点について、日本のこういう事件についてしっかりと検証するべきではないかというふうに思いますけれども、四人の方にお伺いをしたいと思います。

○犬伏参考人

今の御指摘については、受け止めたいと思います。
なかなか、裁判所というのは、裁判所を出た後のアフターフォローまではできにくい部分がございます。しかしながら、他国におきましては、そういった裁判所で合意をした後についての事件、もちろん、日本においても面会交流の再調停の事件といったようなものがありますので、そういった形で関わるということは今後ともありますし、やはり裁判所としてももう少し間口を広げるということの御指摘だというふうに受け止めておりますので、そういった点については、いろいろな意見交換会もありますので、上げていかせていただければと思います。

○しばはし参考人

御質問いただきまして、ありがとうございます。
裁判所内の仕組みについては、私は専門ではないのでお答えできないんですが、DVをされたといったことに対して、大事な根源といいますか、よく虚偽DVなんという言葉があるかと思います。相手はやっていない、でも、こちらはやった、そこにおいて、より葛藤が上がるのは、やられたのに謝ってもらえない、やっていないと言うことなんですね。
ここは、ケースにはよるとは思うんですけれども、明らかに、されてしまってつらかったということを発信をされているのであれば、自分はもしかしてやった覚えはないのかもしれないけれども、そのような思いをさせてしまったんだねということを、きちんと振り返って謝罪なり歩み寄りなりをするというようなことが非常に大事であって、これをされたから最高裁に上げて裁く必要があるというような、結果論といいますか、最後の策というよりは、その前に、やられたことをきちんと伝え、相手がそれを受け止める、そのような仕組みというのも裁判所の中でやれることも大事なのではないかな、ちょっと話がそれましたが、そのようなことも大事だと思ったので、提言させていただきます。

○山口参考人

御質問ありがとうございます。
DVや虐待事件、それを講評していくべきだという御質問だったと思いますけれども、私も確かにそのように思います。
離婚にまつわって虐待やDVが出てきた事件、また、離婚はしていなくてもそういう事件もある、また、同居親からの虐待、別居親からの虐待、そういうものも、やはりこれからは双方が親としての養育の責任を果たしていかなければならないというところで、離婚した後も、別居後も、やはり双方が子供に対して関心を持ち続けるということが重要になってくるかと思います。
そして、斉藤参考人が言われましたように、父母以外の親族の監視というか養育というものも非常に重要になってくると思いますので、面会交流にしても、危険性があれば親族がフォローするなり、また全体で見守っていくなり、子供を安心、安全にするために、社会全体で、そして親族全体で守っていくということが、今回の法案でも審議の中で議論されたところだとは思いますけれども、これからも進めていくべきことだと思っております。
お答えになっているか分かりませんけれども、以上です。

○斉藤参考人

まず、交流できる親子と、交流してはいけない親子を分けて議論していただきたいです。全て交流できるんだを前提に話を進めるのはとても問題だと思います。
別居の前から高葛藤が多いです。その中で別居するときが一番大変です。別居してすぐに、連れ去り、誘拐と言われると、更に高葛藤になります。
失礼ながら、親以外の大人が必要だとは思うのですが、監視ではなく、子供にとっての安心が欲しいと思っています。
以上です。

○本村伸子

ありがとうございます。
それで、子供の権利、一人一人の子供にとって何が最善の利益なのかということに関して、私はもう少し丁寧なプロセスが必要なのではないかというふうに考えております。児童心理の方ですとか、児童精神科の専門家ですとか、そうした方々もしっかりと踏まえたプロセスが必要なのではないかというふうに思いますけれども、犬伏参考人と斉藤参考人にお伺いをしたいと思います。

○犬伏参考人

家庭裁判所でやるべきことかということについての御質問ではなかったかと思いますので、やはり法律だけでは解決できない問題というのは多々ございますので、いろいろな、うまくいかないという段階から、当事者は非常に心理的にも疲弊しますし、これからのことについて不安も感じます。そこの中で、激しい言葉をかけられたり、暴力を振るわれたりということがあるかもしれません。そういう意味では、今の御指摘のように、精神的なケアができるような相談体制というのは重要ですし、何よりも、子供の気持ちを理解できるような心理的なケアであるとか、行動科学の知見を持った人たちが関わるということは、十分に重要なことだと思っております。
そういう点では、家庭裁判所も、司法機能だけではなくて、福祉的、後見的機能を果たす裁判所という役割を持っておりますので、そういった点について、どこまで裁判所の中でやれるか、あるいは民間との協力ができるかというようなことについて、より開かれた裁判所という方向性も重要かと思っております。

○斉藤参考人

私たちのような当事者の声をもっと聞いていただきたいです。
こちらの本日参加されている参考人の方々、子の利益に対しても様々な意見がありました。皆さん違う意見を持っているからこそ、しっかりと時間をかけて審議してほしいです。すぐ法案を作るのではなく、本当にみんなのためになるんだという法改正を望みます。
以上です。

○本村伸子

貴重な御意見、本当にありがとうございました。

 

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○本村伸子

日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
先ほども大村参考人の方から、今回の法改定の趣旨はやはり子の利益を確保するということが目的であるということ、御趣旨もおっしゃられたんですけれども、そこで、ちょっとお伺いをしたいんですけれども、岡村参考人と原田参考人にお伺いをしたいと思います。
一人一人の子供の最善の利益に関して、今現状ではどういうふうに判断されているのかという点をまずお伺いをしたいと思います。

○岡村参考人

ありがとうございます。
子供の最善の利益の今の現状ということですけれども、面会交流に関しては、先ほども申し上げましたとおり、いっとき原則実施論に流れたものの、現在は、安全、子の状況、親の状況、親子関係、親同士の関係、環境の六つのカテゴリーに属する事情を含めて、その一切の事情を的確に把握して、最初は広く浅く、状況が分かってきたら掘り下げて、児童虐待やDVが問題になるような事案では安全の確保を第一に考えようということで、ニュートラルフラット、同居親及び別居親のいずれの側にも偏ることなく、先入観を持つことなく、ひたすら子の利益を最優先に考慮する立場でやっていこうというふうに裁判所が決めて、二〇二〇年から運用が変わって、何となくそれを感じつつあるというところがあります。
子供の最善の利益という言葉を、どちらがというところが、今、共同親権に関しては、今私は面会交流の裁判所の宣言について言ったんですけれども、親権争いに関しても同様に、そういう子供の立場というのを一番最優先して考えていくことが望ましいというふうに思っています。
あと、子供の立場を考えるときに、ちょっと私、今日の議論をずっと聞いていて、子供の最善の利益を考えて計画を最初に立てるのがよいものであるということが、何となく皆さん前提で思っているかもしれませんけれども、紛争の現場にいると、事細かく最初に決めると二つの弊害があって、一つは、それに従わせるのは子供であり、大人の決めた約束によって、例えば、来年の何月何日には父親と過ごし、何月何日は母親と過ごしみたいなものを決めると、それはすごく子供に対して私は虐待行為に近い。しかも、ワラースタインさんというアメリカのたくさんの事案を研究した方が、事細かに決めた面会計画に従って面会を続けた子供は一人残らず親を恨んだというふうに言っています。子供にとって一番よい面会は、会いたいときに会うという子供の意思を尊重するものになりますので、そのことがちょっと、決めればいいということではないというのが弊害の一つ。
もう一つの弊害は、計画と違うと裁判をするみたいなことが、今すごくネットでも勧める人がいますし、裁判というのが、全体的にですけれども、気軽なものだみたいな形で、それは裁判所で決めればいいことだ、そこで子供の利益を図るんだというんですけれども、私は、たくさんの事件を、段ボール一箱、二箱、記録があって、弁護士が引き受けてくれなくて、それが最後のとりでで私に来たような事件を幾つも受けているから思うんですけれども、裁判沙汰というのは、普通のお母さんにとっては極めて苦労するんですよ。だから、裁判所で決めればいいでしょうというのは、お母さんにとっては、お父さんでもそうですよ、シングルで育てている人にとってはかなりの苦労で、それを繰り返すことが子供にとっては養育の質を下げているんですよ。だから、そのことをもうちょっと、子供の最善の利益というときには考えてもいいんじゃないかなと。何となく、裁判所で適切に決めるからいいでしょうと気軽な感じで勧めるのは、非常に違和感があります。

○原田参考人

どの場面で子の最善の利益というのかによって違うと思うんですけれども、今回問題になっている家事事件においては、今、家庭裁判所で、一定の類型においては子供の意見を聞くというふうになってはいますが、実際は、例えば、十五歳以上の子供であれば子供に何か書面を出させるようなことで終わってしまっているというようなこともあって、親権の争いになったときは調査官が子供さんに話を聞くということになっているんですが、小さい子供さんの場合は、一回例えば家庭訪問をして、今度このおばちゃんとかお姉ちゃんがここで聞くからねみたいな話をして、仲よくなってからもう一回聞くというやり方で、多分、小学校高学年ぐらいになったら、最初から家庭裁判所に連れてくる、ほとんど一回ぐらいしか会わない。
だから、そういう意味では、私は、本当に子供さんに、今どういう状況で、何で今日は家庭裁判所に来て、あなたたちがどんなふうなことを思っているのかちゃんと聞きたいよというのをきちんと丁寧に説明して話をするという意味での手続が必要で、そういう手続をされることによって、子供が、親の紛争は自分のせいではない、そして、これから自分はどうなるのかについて不安を持たずに進めるというのが子供の最善の利益なんじゃないか。
もちろん、その前提としても安全、安心というのがありますが、なので、私は、ちゃんと子供の人格ではなくて意思を尊重してほしいということを入れてほしいというふうに言っております。

○本村伸子

ありがとうございます。
子供の意見表明、意思の尊重ということで、非常に重要な点だというふうに思います。この点に関して、岡村参考人はどのようにお考えでしょうか。

○岡村参考人

お尋ねいただいた子供の意思の聞き方というのは、今、原田参考人がお答えになったことに全く異存がないことです。
基本的には、子供に一度会うだけで意思の把握について十分されているというふうには、私は余り思いませんし、今回の改正で子供の人格を尊重するという言葉が入ったんですが、法制審議会の議論を見ておりますと、それは意思を尊重するという、特に弁護士を中心とした意見が出ていたにもかかわらず、それを切り捨てる形で人格を尊重する、その人格の尊重の中には当然意思の尊重も入っているんだみたいなことになっていたので、それは非常に問題があるというふうに思います。
子供は理路整然としゃべれる子ばかりではありません。そういう子供の声が切り捨てられないかがとても心配です。
私の経験でも、幼少の子供が大変かわいがられていて、すごく面会をしたがるんじゃないかとほかのきょうだいは思っていたけれども、すごくかたくなに拒んでいた。たまたまですけれども、半年たった時点で、親しくしゃべるようになった心理士の人に話ができたからよかったんですけれども、実は同居中に性虐待に遭っていたことが発覚した。でも、それはすぐには言えない、別居して大分たってからようやく言えたというようなこともあります。その子からしてみると、大人が寄ってたかって、会いたくないと言っているのに、何で、かわいがられていたじゃん、こんな写真もあるよとか言われたことが恐怖でならなかったと。
だから、何で会いたくないかとか、そういったことを理路整然としゃべれる、そんなに合理的にしゃべれる子ばかりではないということをやはり考えますと、子供の意思を尊重するということは非常に重要なことだというふうに思っています。

○本村伸子

ありがとうございます。
原田参考人にお伺いしたいんですけれども、原田参考人は家族法制部会の最後のところ、棄権ということがございましたけれども、その理由について教えていただければというふうに思っております。
もしよろしければ、ほかの反対された方の理由についても教えていただければというふうに思っております。

○原田参考人

やはり、反対された方は共同親権ありきの議論だったというふうに、大村先生に申し訳ないですけれども、共同親権に今導入することはやはり時期尚早だ、反対だということだったと思います。私もそれは同じ思いでした。
ただ、やはり、あそこで議論をして、この法文上、要綱の解釈について、議事録できちんと残せばそんなふうになるんだというふうに説明を受けて、それで私は、ここはこう解釈するんですね、こういう意味ですねと何回も言いました。それに対して、余り反論されることもなかったです。そうすると、ここで私が反対すると、その議事録に残ったことにも反対したことになってしまうのではないかという懸念がありまして、でも賛成はできなかったので棄権しました。
以上です。

○本村伸子

ありがとうございます。
続きまして、岡村参考人にお伺いしたいんですけれども、DV被害者の方が子供さんを連れ去られてしまったケースに関しまして、今回の法案、共同親権との関係について御見解を伺いたいと思います。

○岡村参考人

私はDV事件を中心的にやってきましたので、子供を連れ去られてしまったりとか、あと追い出されてしまって別居親になっているDV被害者の事件を幾つもやっています。別居親となってしまったDV被害者というのは、これは一番激烈なDV加害、子供と引き離されるということになります。
ただ、私の依頼者は共同親権を望んでいるかというと、共同親権の導入に反対している私の活動をすごく賛成してくれています。というのも、結局、監護者指定の申立てをすることになるんですよ。子供を連れ去られたり、追い出されたときに自分で育てたいと言ったら、それはむしろ単独親権を求めるんですよ。そんな人と共同でやっていけないんですよ。
それを功を奏しない場合というのは、私が見たところ、主に一つ、子供の意思に反する場合です。子供の意思に反するという場合は、当然ですけれども、同居親に忖度している場合もあります。ただ、同居親と全く一体化して、加害的になっている子供もいます。DVというのはすごく深いので、子供に与える影響というのは非常に大きいというところがあります。それを、共同親権にしても、全然救えません。
面会交流を、私は小さく産んで大きく育てるというふうに言いますけれども、子供との一点の関わりを確保したいというふうにDV被害者の多くは言っています。面会もできないのに共同親権が与えられて、同居親と子供が決めたことにノーと、私の意見を伝えられるのかといったら、そんな権力関係はないんですよ。拒否権の発動なんてできないです。何なら、同居親から、判こが要るから、これに同意してくれということで、説明を聞かされることもなかなか苦痛だろうということが多いです。
一人の依頼者が、私は子供に拒否されている状態で、私は、何とかちゃんに、ずっとあなたの味方だよ、応援するよと言ってきた、その子が今私を拒否しているなら、その拒否しているあなたに寄り添いたいということで、身を引くということがあります。とても悲しいことだけれども、では、そこで、連れ去りだ何だかんだ、刑事罰だというふうにやってみたところで、子供の意思に反する
ことを続けたら、子供の気持ちはどんどん離れて、断絶する一方なんですよ。だから、それは、今何々ちゃんはそう思うんだねというところで、ぐっと、一点、ここだけというところを守って、そこから、必ずチャンスはあります。
私は、すごく長く寄り添って、そういう人たちの事件を本当にやってきた。弁護士は私以外にもいるんだけれども、そういう弁護士に対する攻撃がすごいから、もう本当に、みんな続けられない。どうか、きれいごとじゃなくて、弁護士も生の人が動いていて、どういう人が連れ去りの弁護士だとか言われているかというのも、本当によく調べてほしいし、すごくそれはそう思います。
DV被害者にとって、共同親権というのはほとんど役に立たないし、むしろおびえています。そのことだけは申し上げたい。

○本村伸子

続きまして、DVは除外できるという話がありますが、その点、どうかという点、これも岡村参考人にお伺いしたいと思います。
ポスト・セパレーション・アビューズということで、日本語で言うと、離婚、別居後の様々な嫌がらせとか虐待行為ということなのでしょうか。そういう実態、どのような今扱われ方になっているかという点、御教示をいただければと思います。

○岡村参考人

共同親権をやっていこうという場合で、除外すべき事案が、まず、DVを除外するという話が当たり前みたいに出てくるんですけれども、一番除外した方がいいのは、DVじゃなくて、話合いができない関係性のケースです。DVがあっても、そのDVをすごく悪かったなと思って、被害者の方も、そうかそうか、では、今から関係をやっていこうということであれば、共同はできるんですけれども、話合いがもうほとんどできないということが一番問題かなというふうに思っています。
そんなところで、DVを除外すると言ってみたところで、DVが何なのかによって、共同親権を推進したい人は、DVをすごく狭く理解するところがあります。やはり、共同することが一番いいことだと思っていると、それに邪魔なものはなるべくない方がいいかなというところで、軽視するというのが問題だというふうに思います。
ポスト・セパレーション・アビューズというのは、結局、DVの中の、バイオレンスというVの部分も、ドメスティックの、家庭内という部分もなくて、離れてもずっと暴力が続くんだというものです。それについて、全然DV防止法では全く手当てもされていませんし、この問題の解決、対応なく共同親権制度を導入することにすごく懸念を持っています。

○本村伸子

先ほども、岡村参考人から、弱者側が説得されやすい実態があるということで、そこで、DV事件などを含めて、担当する弁護士の皆様の力が必要だというふうに思うんですけれども、そこの弁護士さんは十分足りているのかという点、あるいは、法テラスの実情について御教示をいただければと思います。

○岡村参考人

先ほども言いましたけれども、弁護士がDV被害者側につく障壁は、やはり非常に値段が安くて経営が困難になりがちであるという点と、それからやはり業務妨害です。
業務妨害については、SNSなどで実子誘拐ビジネスモデルの弁護士だみたいなことを言われて、非常にそれにたきつけられた人が苦情を言ったり懲戒請求をしたりということもやはりある中で、それにおびえて、なるべくそういう事件を受けたくないなと、真面目な弁護士ほど、もし共同親権制度が導入されたらもう撤退しようと、離婚事件から。そういう声がすごくたくさん上がっていて、やはり加害的な人を何とかしてもらわないと、私はそういうことがきちっとやっていただけるのであればこんなには反対しないんです。やるべきことがやれていないのに、それで結局、共同親権制度がもし導入されて一番頑張るのは誰ですか。そのことを考えていただきたいなというふうに思っています。
お答えになったかどうか。

○本村伸子

もう一つ岡村参考人にお伺いいたします。
海外では共同親権がスタンダードだというふうに言われることについて、御教示をいただきたいと思います。

○岡村参考人

海外が共同親権制度であると言われることについては、最近、現代思想という四月号に掲載された憲法学者の木村草太先生の指摘を見て、なるほどなと思った部分がありました。
一つは、日本は子供を産むときの婚姻率が非常に高い。授かり婚という言葉がある、これをフランス人の人としゃべったら何それと言われました。子供ができたから結婚する、子供のためにならな
いから離婚するという考えがなくて、フランスでは愛が冷めたら離婚するという、私から見ると驚愕な、そんなことを言ったら離婚家庭だらけになっちゃうんじゃないと思ったら、そうしたら、フランスは離婚家庭だらけだ、何なら結婚もしませんと言われたんですよ。
木村先生が何とおっしゃっているかというと、日本は非常に婚姻共同親権率が高い国である、そして子供が十八歳になるまでに離婚する人が他国に比べてすごく少ないのである、そうすると、子供の立場になって考えたときに、親が共同親権であるという確率は世界に比べてむしろ高いんだと。なるほどなと思いましたね。
だから、他国は離婚が結構たやすく、一人が、嫌よ、あなたの愛が覚めたのと、嫌いじゃないんですよ、愛が冷めて離婚している。だから、あなたの子供のためにやれる人はいっぱい残っていて、でも日本は、そんなことでは余りみんな離婚しなくて、何とか子供が大学卒業するまでは離婚せずに頑張るのとかいう人がいますと言ったら、フランス人の人が、何それ、本当に話が通じないねというふうになったんですよ。
だから、何かパッチワーク的に離婚後共同親権というものを当てはめられても、海外と婚姻の状況も制度も文化も違う、離婚に対する考えも、日本では、お互い丸と丸で結婚して、ペケとペケがそろわないと離婚できないんですよね、基本的には、よっぽど何か事情がないと。だけれども、海外では、一人が嫌と言ったら、丸と丸の、丸の一個がペケになったから離婚できるという、そういう状況で、共同で子育て、共同親権で子育てできる人たちの割合というのは、日本でいう婚姻中共同親権の割合と似てくるというふうに思いますし、例えばフランスなんかだと、親権制限の割合が、人数が十万件ある。日本なら二十万件ないといけないということなんですけれども、日本の場合だと百件とかそれぐらいしか親権制限なんてないわけで、離婚件数が二十万件だと。
なので、各国の制度でそれぞれ、子供が共同親権の下でできる人とできない人の割合というものがあって、それを日本は婚姻というものでやっているという面があるので、世界は共同親権というからには、共同親権状態で育てられている子供の割合で見るという視点も必要なんじゃないかなというふうに思いました。

 

○本村伸子

貴重なお話、本当にありがとうございました。審議に生かしていきたいというふうに思っております。聞けなかったお二人、大変申し訳ありません。ありがとうございました。

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