もとむら伸子(日本共産党衆議院議員)-
国会質問

質問日:2024年 4月 26日 第213国会 法務委員会

入管法改定案 実態との乖離に懸念表明

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入管法改定案 実態との乖離に懸念表明 2024.4.26

議事録

○本村伸子

日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
私の地元は愛知県でございまして、一番技能実習生が多い地域となっております。有名な大企業がございまして、そこの下請中小企業の社長の方からお話を伺ったことがございます。最上位の大企業が下請単価を引き下げるという下で、下請中小企業の方でいいますと、人件費を削るしかないというふうになりまして、最初、日本人が働いておりましたところ、その後、日系ブラジル人ということになりまして、そして中国技能実習生というふうに変わりまして、その後また下請単価を引き下げる中で、ベトナム技能実習生へと変わっていったというお話をお伺いをいたしました。やはり安い労働力、安い労働力ということで国籍が変わっていったということを私は痛感をいたしました。
この下請単価を上げなければ、賃金は日本全体として上げることは難しいというふうに思っております。やはりこういう形の低賃金構造を変えていかなければいけないというふうに思っております。
今、物価の高騰、原材料費の価格の高騰、エネルギー価格の高騰という下で、じゃ、下請中小企業の皆さんにちゃんとその高騰分を保障されているかといえば、例えば、自動車・自動車部品の産業でいいますと、今、四四・六%しか価格転嫁されていない、また、失踪者が多いと言われております建設でいいますと四五・一%しか保障されていない、こういう状況では、やはり、日本全体として賃金を上げていく、そして技能実習生、育成就労の労働者の方々の労働条件を上げていくということはできないのだというふうに思っております。
やはり、こういう構造を変えていくためにも、公正な取引のルールを強化するですとか、あるいは中小・小規模事業者の方々を本気になって応援して最低賃金を引き上げていくという施策が必要なんだというふうに考えますけれども、全ての参考人の皆様にお話を伺いたいというふうに思っております。

○是川参考人

御質問ありがとうございます。
今の点についてですが、おっしゃるとおり、外国人労働者の受入れという個別の論点を離れて、日本経済全体の問題としてということかと思いますが、それは非常に私も重要だと思います。
当然、外国人の受入れによって社会が分断するかしないかという論点はあるわけですが、やはり重要なのが受入れ社会の側が元々分断しているかということでして、やはり受入れ社会において元々分断があれば、そこに、下の方に入ってしまうということも当然あるわけです。
そういう意味で申し上げると、やはり全体としてディーセントワークを広げていくということは私も非常に重要だというふうに思っております。
以上です。

○上林参考人

賃金を上げることはもう本当に賛成です。
最賃のことを、例えばイギリスでは最賃が全国一律に適用されるということを聞いています。
ただ、地方の中小企業に聞きますと、いつも十月の前にはもうどきどきどきどきして、どれだけうちが上がるんだろう、適用されるんだろうという状態で、一律に全国一緒の賃金に上げるまでには中小企業の体力はないかなと思っています。
徐々に、もちろん格差を縮めるのは賛成ですが、一朝一夕にすぐに全国同一は無理だなと思っています。
以上です。

○岡部参考人

御質問ありがとうございます。
私も、賃金というのは非常に重要だと思いますので、できるだけ多くの方が生活向上を図ることができるようにという努力が必要だと思います。
それとともに、冒頭にも申し述べたように、できれば、外国人、日本人という区別というものも、一方では必要ですけれども、他方では、それを一体化した形での、日本全体としての格差対策というものを考慮する必要があると思います。
以上です。

原参考人 ありがとうございます。
日本経済を豊かにする、賃金を上げる、これは極めて重要であるということは言うまでもないと思います。そのために様々な経済政策が必要だと思います。
一方で、外国人の受入れについては、これを阻害するようなものであってはいけなくて、日本を豊かにする、賃金を上げるということを加速するような外国人受入れをしないといけないということだと思います。
以上です。

○本村伸子

ありがとうございます。
上林参考人の方からは、最賃、全国一律は難しいんじゃないかというお話がありましたけれども、私どもは、大企業に減税をし過ぎてしまったという点がございまして、そのことも踏まえて、大企業の内部留保に一定期限課税をして、そして財源をつくって、中小・小規模事業者の皆さんを応援して、最低賃金を全国で一律に千五百円にという政策提言もさせていただいております。そういう施策が実現すればいいなというふうには思うんですけれども。
続きまして、転籍ができるかどうかということが大事だというふうに思うんですけれども、転籍が確実にできるようにする必要がある。
転籍時の空白期間の問題なんですけれども、この空白期間で生活保障がしっかりとできなければ、転籍というのは結局絵に描いた餅になってしまうというふうに思います。転籍時の空白期間の労働者の保護という点で、諸外国の状況が分かれば是非教えていただきたいというふうに思います。是川参考人、お願いしたいと思います。

○是川参考人

御質問ありがとうございます。
御質問の件につきまして、それに特化して調査したことはございませんが、通常、各国の移民政策についてレビューしている範囲で、そういった政策は基本的にないと思います。

○本村伸子

これは四人の参考人に伺いたいんですけれども、転籍先を確保していくということに関して、御所見があれば、是非それぞれ四人の方にお伺いしたいと思います。

○是川参考人

済みません、今ちょっと、今の自分への質問について考えていまして、済みません、もう一回、ごめんなさい。

○本村伸子

転籍先を確保する方法ですね。

○是川参考人

他国の例に、どういう資格かにもよるんですけれども、技能実習のような期限付の労働、外国人労働者プログラムみたいなものに関して言いますと、基本的に、転籍先の確保というところまでやはり視野に入れたものも、済みません、管見の限り私は気づいたことはないですし、見たことはないです。

○上林参考人

法律で今回、転籍は可能というふうに書いたんですが、割合そこの部分は、先ほど私の説明で申し上げたように、実効性が薄いので、また、技能実習ができた二十五年ぐらい前に、これは国際貢献であるといって労働力を受け入れたという乖離がありましたが、今回も、転籍ができると言っておきながら、転籍できないんじゃないかと言われたら嫌だな、それはまだ分からないですよ、これから、実効性の問題だけれども、いろいろ厳しい規則がありますから、そう簡単にいかないんじゃないかなと思っております。

○岡部参考人

御質問ありがとうございます。
私自身は、転籍のことについては、今般は転籍を希望する人はそれができるというような法改正だというふうに理解しております。ですので、転籍を何が何でもさせてあげなければならないというような施策というよりは、その本人が、自分の労働意欲と、それから社会的なステータスの向上とか、そういったものを目指して、基本的にその自由な労働市場の中でそれを享受するという、その可能性を広げてあげる、そういった施策ではないかというふうに考えています。
以上です。

○原参考人

ありがとうございます。
転籍をしても、また行った先がブラックな職場だったら、これは意味がないんだと思います。したがって、最初に申し上げたように、安価な労働力を求めるような企業にはこの制度を利用させないということが重要だろうと思います。
あとは、より健全な企業が市場に参入してきて、その健全な市場、企業の中から転籍先を選べるような環境にしていくということが重要だろうと思います。

○本村伸子

ありがとうございます。
また転籍についてお伺いしたいんですけれども、転籍に語学や技能のハードルを設けるということの妥当性と、あと、ほかの国の状況が分かれば、教えていただければというふうに思っております。これは是川参考人、お願いしたいと思います。

○是川参考人

転籍に技能や語学のハードルを設けることですが、ここはすごく難しい問題です。
というのは、例えば全く要件を課さずに自由にといった場合、来日直後の、非常に日本社会もよく分かっていないし、本人のスキルレベルも低いし、日本語も余りできないといったような人が、悪い事業者等に搾取されてしまう可能性がある、そういったパターナリスティックな視点というのももちろんございます。一方で、技能や語学のハードルを高くし過ぎますと、それ自体が転籍の足かせになってしまうという問題もございます。
ここは非常にそういう意味で難しい問題でして、ある意味、中庸というか適正な水準というのが非常に重要なんですけれども、それは多分、実際に運用などをしながら調整していく必要があると思います。要するに、ゼロか百かという話ではどちらも多分結論は一緒で、どちらも多分困るのは外国人労働者本人ということになると思います。
ですので、ここは、一年や二年とかいう、そこは非常に難しいところでして、現状においては、そこはやはり運用を見極めながら調整していく必要があるんじゃないかというのが、やはり、研究者の視点から見ると、そういうことかなと思います。
諸外国の例でいきますと、当然、高度人材に該当するような方々というのは、日本もそうですが、特にそういった要件はございません、自由に雇用先を変えることができるわけです。
一方で、こういったマニュアルワークの労働者に関して、期限付といった場合に、転籍要件、無条件に認めますよと言っているように見える国であっても、雇用期間が六か月であるとか三か月であるとか、実質的に転籍の必要性がないようなケース、実際、その期間で転籍というのは余りないですよねというような場合、これは、条件、一見、非常に緩く見えますが、実際は多分起きにくい。
期間が長くなる場合は、韓国の雇用許可制と日本の技能実習はどちらも長いわけですが、期間が数年単位に及ぶわけですが、それは、どちらの場合も、一応、回数や条件等を付されている。
そういった意味でも、国際的に見ても、ここは正解というものはなかなかなく、条件に応じて、要するに、適正な水準をしっかり見ていく必要があるということになるのかなと思います。

○本村伸子

ありがとうございます。
今、是川参考人から韓国の雇用許可制度の話がございましたので、お話を伺いたいんですけれども、失踪者が多いというふうに伺いますけれども、失踪者、失踪する理由ですね、これが日韓で違いがあるかという点を教えていただければと思います。

○是川参考人

ありがとうございます。
韓国の雇用許可制は、先ほど申し上げたように、日本と比べると失踪率は三倍から八倍程度と水準は非常に高いんですが、ただ、韓国内での制度の変化の前と後で比べますと、失踪率は落ちているということになります。
また、失踪の理由ですが、こちらは、韓国政府が調査した結果などを見ますと、基本的に日本と一緒です、来韓前の借金等が返せないのでより賃金の高いところに移ったというような理由が多数を占めておりまして、構造的に変わりません。
また、やはりベトナムからの失踪率が高い。受入れ停止など、この間、近年ございましたが、やはり、直近で申し上げますと、ベトナムからの失踪率が四〇%程度と高いといったような結果が出ております。そして、その理由はやはり、ベトナムで高い借金を負って韓国に来ているので賃金が高いところに移りますということで、そこは非常に酷似していると言えるかと思います。
以上です。

○本村伸子

今の、二国間の覚書でいいますと、失踪問題を解決していくんだというふうなことも書いてあるんですが、日本も、この三年間で見ると、コロナもありまして増えているという現状がございまして、二国間の協定にするべきだというふうに思うんですけれども、ここに何を明記したらいいかというふうなお考えがあれば、四人の参考人にお願いしたいと思います。

○是川参考人

ありがとうございます。
失踪率自体、件数は増えているところですが、母数となる技能実習生自体が増えているところもありまして、率で申し上げますと二、三%のところで、特に顕著に上昇しているということはないかと思います。
また、国際比較の観点からいきますと、こういった期限付労働プログラムの中で、失踪率二、三%というのは非常に低い水準ということになりまして、実務的にも、これ以上すごく下げていくというのは、かなりぎりぎりのところを、限界を超えて行政が能力を上げていく必要があるのかなと思います。
また、MOC等で防ぐという点につきましては、既にそういったMOCの協定もなされているかと思いますが、こういった場合は、一般的に重要と言われておりますのが、罰則を強めるというよりは、むしろ、そういったことをしてしまった場合もきちんと救い出す、セーフティーネットになるようなことを考えていくことの方が、恐らく、ここから先、日本が取るべき方向としては重要なのかなと思います。
厳しくして下げられるところまではもう十分下がっているのかなと思いますので、失踪しても隠れ続けなくてもいいようなこととか、何らかのそういう救済策みたいなことを考えていくという方がより現実的かなと思います。

○上林参考人

非常に難しい問題なんですが。
失踪の問題については、ヨーロッパは多いので、それは、政府の責任ではない、政府がどうこうしたから失踪したわけではない、だから、基本的に問わないでくれ、そういう、そこまで言っています。
日本は、やはり受け入れた国の責任であるというので、非常に良心的だと思っております。
以上です。

○岡部参考人

御質問ありがとうございました。
今の上林参考人がおっしゃるとおりで、本当にヨーロッパはそういう意味では個人主義が徹底しておりまして、政府レベルでも同様だというふうに思います。
日本式のやり方を徹底するのであれば、先ほどの御指摘にもあったように、やはり最初の段階でできるだけ情報を開示して、本人にも分かりやすいように、抑止の意味も含めて、不正があった場合にはこういったことになりますよというような説明をしてあげるということが必要なのかなと思います。
以上です。

○原参考人

外国人行政については、厚生労働省がもうちょっと前に出てもいいんじゃないかと思います。入管庁に依存し切りになっている面が強いように思います。厚生労働省は、労働行政の観点でもっと前に出て、国際連携も含めてより政策を強化したらいいんじゃないかと思います。
以上です。

○本村伸子

ちょっと、これも大きいテーマなんですけれども、移住労働者の地域包摂の成功例と要因について教えていただきたいと思います。四人の参考人の方、お願いしたいと思います。

○是川参考人

御質問ありがとうございます。
移住労働者の地域社会における包摂ということにつきましては、海外の事例といたしましては、移住労働者といった場合、基本的に、先進国においては、期限付の労働移民プログラムで受け入れるケースが大半です。そのため、数か年にわたる在留ということはなく、基本数か月で帰ってしまう。ですので、包摂という視点は非常に弱いのかなと思います。
一方、移民の社会統合という視点で統合の対象になっておりますのは、移住労働者ではなく、主に家族呼び寄せで来た家族移民、あるいは庇護申請等の人道的移民、こういった方々は長期滞在を前提としておりますのでインテグレーションということになりますが、基本労働、要するに就労ビザという形では期限付が専らでございますので、なかなか、ベストプラクティスというものをぱっと思いつくのは、ちょっと今難しいかなと思いました。
国内であれば、既に自治体、外国人集住都市会議など、働いてもいる住民としての外国人の包摂という取組が既にございますが、そういったところの成果、実績等につきましては、もう既に広く御存じかと思いますので、割愛させていただきます。
以上です。

○上林参考人

成功例、ないです。
多文化共生とか国内に統合という国内の社会はうまくいっているんですが、出入国のコントロールについてはうまくいっていなくて、どうやって移民をコントロールするのかという教科書があって、毎年毎年というか何年ごとに改版していく、それぐらい世界の関心事だと思います。
以上です。

○岡部参考人

御質問ありがとうございます。
私も、ないなという結論で聞いておりました。
二つの意味がありまして、一つは、今御指摘があったように、なかなか実態として成功例を見出すのが難しいということと、もう一つは、どのような観点から成功とみなすかということについて、非常に多様な視点があって難しい。
多くの研究者が取り上げる事例として、以前のアメリカにキューバからのボートピープルがマイアミにやってきたという、マリエルズという実質的に労働者となって移民になるわけですけれども、彼らが結果的にマイアミのGDPを引き上げたということでよく成功例として語られるということがあるんですが、これも内訳を見ていくと、彼らと労働市場でバッティングしたアメリカ白人の高卒の人たちに階層を限って効果を見ると、彼らは失業あるいは賃金が下がるという結果が出たということで、どこの角度から実態を見るかということによって、成功、失敗という見え方も変わってくるということで非常に難しい問題だと思います。
以上です。

○原参考人

ありがとうございます。
アメリカにおいてもヨーロッパにおいても、残念ながら成功はしていないということなんだろうと思います。
これがどこの国においても安価な労働力が欲しいという産業界が一方でいる。その一方で、かわいそうな外国人を受け入れてあげよう、助けてあげようという方々がいらっしゃる。
全然お立場が違うんですけれども、実は、結論としては同じ方向を向いて、社会が悪くなったということが起きてきたんじゃないかと思っています。

○本村伸子

どうも本当に貴重な御意見ありがとうございました。

 

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