もとむら伸子(日本共産党衆議院議員)-
国会質問

質問日:2024年 4月 17日 第213国会 法務委員会

「本法案の施行以前の被害者も救済、支援すべきだ」 

 
衆院法務委員会で、殺人や性暴力などの被害者や遺族を早い段階から一貫してサポートする制度の創設を盛り込んだ総合法律支援法改正案について質問しました。
 
 昨年度の犯罪被害類型別等調査(警察庁)では、加害者からの賠償を受けたとの回答は3.1%にとどまっていることが明らかになりました。
 「損害賠償の判決を受けても支払われず、時効にならないための手続きで経済的負担が生じている」と指摘し、「本法案の施行以前の被害者の方々も救済、支援するべきだ」と迫りました。
 
小泉龍司法務大臣は、予算等が限られているとし、「日弁連委託援助あるいは民事法律扶助等も最大限活用し、連携したい」と述べました。
 
 私は、「日弁連の皆さんの会費で負担されている制度を国が頼るのは本末転倒。国が責任を持って支援するべき」と厳しく追及しました。
 
 さらに、損害賠償請求に意味を与えるために国による賠償金の立替払制度の実現を求めました。
 
併せて「事実婚、同性パートナーの方々も本法案の被害者遺族等の対象に含めいただきたい。前回、大臣から積極的な答弁をいただので、ぜひ進めていただきたい」と求めました。
 
本法案は、翌17日に衆院本会議で全会一致で可決、成立しました(参院先議)。
 

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「本法案の施行以前の被害者も救済、支援すべきだ」 2024.4.17

議事録

○本村伸子

日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
犯罪被害者が民事訴訟などを通じて迅速かつ確実に損害賠償を受けられるようにすることは、被害者の方々が少しでも損害を回復するためにも重要だというふうに考えますけれども、まず大臣の御所見を伺いたいと思います。

○小泉国務大臣

犯罪被害者等基本法においては、犯罪被害者等のための施策の基本理念の一つとして、犯罪被害者等のための施策は、犯罪被害者等が、被害を受けたときから再び平穏な生活を営むことができるようになるまでの間、必要な支援等を途切れることなく受け取ることができるよう、講ぜられるものとすることを掲げております。
このような基本理念を実現するという観点から、委員御指摘の犯罪の被害に遭われた方やその御家族等が損害を回復すること、これは重要であると認識しております。

○本村伸子

重要なんですけれども、犯罪被害者の方が、先ほど来御議論がありましたけれども、損害賠償を受け取ることができない現状がございまして、もう本当に御苦労をされているということですけれども、その点について、大臣、どういう御認識か伺いたいと思います。

○小泉国務大臣

警察庁が実施しました令和五年度犯罪被害類型別等調査によりますと、事件に関連して受領した給付、支給、賠償の内容について、犯罪被害者等の七九・九%がいずれも受けていないと回答しております。また、加害者からの賠償を受けたとの回答は三・一%にとどまっております。また、加害者側との損害賠償に関する訴訟、交渉等の実施状況について、犯罪被害者等の八八・〇%が訴訟や交渉などを行っていないと回答しており、訴訟や交渉などを行った際、弁護士等に頼んだとの回答は一・三%にとどまっております。
こうした調査結果は、犯罪被害者等に対して支払われるべき損害賠償金が十分に支払われておらず、また、弁護士等による援助も受けられていないという現状を示しているものと認識しております。
こういった状況を踏まえ、犯罪被害者等に対し早期の段階から弁護士等による包括的かつ継続的な支援を提供する制度の創設を内容とする本法律案を提出し、その御審議をお願いしているところでございます。

○本村伸子

七九・九%の方が受けていないということですけれども、日弁連の皆さんの二〇一五年アンケートの結果では、金額の回収率、回収割合ですね、回収金額割る債務名義ということで回収割合を出しておられますけれども、殺人の場合は三・二%しか受け取っておられない、殺人未遂の場合は一・四%しか受け取っておられない、傷害致死の場合は一・四%しか受け取っておられないということになりますと、やはり被害者の方の損害の回復ということができていないということになりますし、そもそも、この損害賠償請求に意味を持たなくなってしまうということにこのままではなってしまうのではないかというふうに思いますけれども、その点も是非大臣の御所見を伺いたいと思います。

○小泉国務大臣

今御指摘いただいたこと、私が述べましたこと、全部踏まえて、今回の法案、まずは成立をお願いしたいと思います。

○本村伸子

一般社団法人犯罪被害補償を求める会の皆様からお話を伺ったことが私もございます。余りにも損害賠償を受けていないという方々が多く、そして本当に御苦労されているという状況をお伺いいたしました。
愛知県で起きた事件なんですけれども、犯罪被害者の方の事例なんですけれども、加害者に殴られ、そして重傷を負い、そして半身不随という状況になっております。労働能力の喪失ですとか治療費ですとか後遺症関係などなどの損害賠償は一億六千万円ということで判決が出ました。加害者は、刑を終え出所したわけですけれども、逃げて一円も支払っていないということでございます。
犯罪被害者の方が民事訴訟で損害賠償の判決を受けても支払われないということが続くために、時効にならないように手続をする必要がある、そういう費用も物すごくかかるんだというお話を聞いております。
犯罪被害者の方はどのような手続あるいは経済的な負担が必要で、時効にならない手続が、そういう経済負担が必要なのかという点もお伺いしたいんですけれども、例えば賠償金が一億六千万円の場合、どのくらいの費用が必要になるのか、これは大臣にお答えをいただきたいと思います。

○小泉国務大臣

損害賠償請求権が判決によって確定した後に時効の更新の効力を生じさせるためには、再度の訴えの提起や加害者の財産に対する差押え、債務者による財産開示手続などの手続が必要となります。これらの手続については、手数料等のほか、弁護士に委任する場合には弁護士費用も必要となるものと承知しております。
なお、例えば、再度、請求額が一億六千万円の訴えを提起する場合、その手数料は五十万円となるということでございます。

○本村伸子

それに加えて弁護士の費用で何百万と支払っているというお話も、支払われない期間が続けば続くほど、そういう経済負担が増えていくということになってまいります。
この弁護士費用も含めた、被害者の方が時効にならないようにしていく、そういう場合に幾らぐらい御負担があるのかという点を実態調査したことがあるのかという点について、法務省に伺いたいと思います。

○坂本政府参考人

お答えいたします。
民事裁判で勝訴判決を受けた犯罪被害者の方が消滅時効の更新をするために必要な弁護士費用については、個々の弁護士との間の契約によって定まるものでございまして、法務省としては、これを網羅的に把握しておりません。
また、個々の犯罪被害者にとってどれほど負担になるかという点については、被害者の資力、被害者に対する各種制度による支援の状況、委任した事案の内容等によって様々であることから、実効的な調査をすることが難しいものと考えられます。
もっとも、御指摘の、弁護士費用等が犯罪被害者の方にとって負担となり得るということは考えておりまして、法務省といたしましては、この制度施行後、様々な声に真摯に耳を傾けまして、犯罪被害者の方々を支援するための適切な制度の在り方について、不断の検討を行ってまいりたいと考えております。

○本村伸子

大臣にお伺いしたいんですけれども、被害を受けて、損害賠償の判決をかち取っても支払われず、その上、こういう時効にならないようにという手続などで様々費用が、負担が生じているという点、やはり私は、犯罪被害者の方に更なる経済負担が生じるというのはおかしいというふうに思います。その御苦労をやはり国としてもしっかりとつかむ必要があるというふうに思います。その点、実態調査、是非やっていただきたいというふうに思いますし、そういう皆さんのお声を是非聞いていただきたいというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

○小泉国務大臣

犯罪被害者の方々に対する経済的補償の枠組み、内容については、政府の有識者会議で、警察庁が事務局になって検討を進めています。給付の抜本的強化という方向性が出ているわけであります。
その中で様々な議論がされていると思います。先生の御指摘も、現場の様々なそういう御苦労、そういった御指摘があったことも、この警察庁の事務局にはしかとお伝えをしたいと思います。

○本村伸子

損害賠償を受けられず、そして時効にならないようにする部分ですね、この法案の犯罪被害者等支援弁護士制度で、これは過去の犯罪被害者の方々も救済、支援するべきだと思いますけれども、大臣、是非、範囲、入れていただきたいと思います。

○小泉国務大臣

これは、限られた予算であり人員でありますので、どこかで線を引かざるを得ないということは御理解いただきたいと思います。本法施行後の犯罪についての適用を前提としております。
しかし、その間、我々ができることはベストを尽くしたいというふうに思います。まず一つは、施行日を極力早くすること。全力を尽くしたいと思いますし、また、その間、日弁連委託援助あるいは民事法律扶助等も、現行のその仕組みを最大限活用するべく、しっかりと法テラスとも緊密な、緻密な連携をしたいと思っております。

 

○本村伸子

日弁連の皆様の犯罪被害者法律援助制度というのは、先ほど来御議論がありましたように、日弁連の皆様の特別会費の方のお金ということで、それに国が頼るというのはやはりおかしいというふうに思うんですね。そして、民事法律扶助は立替金を返さないといけないという制度になっておりまして、それは犯罪被害者の方のまた御負担になってしまうということになってまいります。
是非真摯に検討していただきたいというふうに思いますけれども、せめて損害賠償請求権のある犯罪被害者の方は過去の事例でも支援の対象にするべきだというふうに考えますけれども、大臣、もう一度お答えをいただきたいと思います。

○坂本政府参考人

お答えいたします。
民事裁判で勝訴判決を受けた犯罪被害者であっても、強制執行等の手続により、その権利を実現するために様々な支援を要する場合があるということは認識しております。
この法律施行日後の犯罪行為による被害につきましては、勝訴判決後の手続も、必要に応じてこの制度による支援の対象となり得るものでございます。
もっとも、先ほど大臣も御答弁申し上げましたとおり、施行日前の犯罪行為による被害につきましては支援の対象とはしておりません。施行日前の犯罪行為による被害につきましては、これも先ほどの御答弁のとおりでございますけれども、日弁連の委託援助でございますとか民事法律扶助等を活用することによって最大限援助を図ってまいりたいというふうに考えております。

○本村伸子

日弁連の皆様を国が頼るというのはやはり本末転倒で、国が責任を持って支援をするべきだというふうに思っております。
先ほどもお話がありましたように、犯罪被害者が損害賠償を受けられるように、やはり国が立て替えた上で加害者に求償する制度が必要だというふうに思います。
二〇二三年七月二十六日、全国知事会の提言がございます。「犯罪被害者等の負担を減らし、実効性のある損害の回復が図られるよう、消滅時効期間の伸長を認めるとともに、国による賠償金の一時的な立替払制度や、その後の国による加害者への立替払金の求償措置等の支援施策を検討すること。」というふうに、全国知事会の皆さんも昨年提言をされております。
是非、こういう制度、実現するべきだというふうに思いますけれども、まずは警察庁、そして法務大臣、お願いしたいと思います。

○江口政府参考人

お答えを申し上げます。
警察庁におきましては、現在、犯罪被害給付制度の抜本的強化に関する有識者検討会を開催をしているところでございまして、本検討会におきましては、御指摘のようないわゆる立替え払いも含めまして、様々な御意見をいただいているところでございます。
具体的には、例えば、民事訴訟で苦労して債務名義を得たとしても、実際に加害者から賠償を受けることができていないことから、立替え払いを考えるべきという御意見がある一方で、様々な犯罪、様々な被害原因や履行を得られない債権がある中で、賠償責任がない国がなぜ民事上の損害額そのものを支払うこととなるのかなどの御意見もあるところでございます。
いずれにいたしましても、有識者検討会の取りまとめも踏まえまして、犯罪被害者等の損害回復、経済的支援等につきまして、法務省を始めとする関係府省庁とも連携をして取り組んでまいりたい、このように考えているところでございます。

○小泉国務大臣

犯罪被害者の方々に対する経済的な救済、これは政府全体の方針決定が行われています。改めて申し上げることもないと思いますが、犯罪被害者給付制度の抜本的強化を行う、そのための検討会をつくる、そして警察庁が有識者検討会を設置をしております。その結論を我々もバックアップしていこう、こういう考え方でいるわけでございます。

○本村伸子

是非進めていただきたいというふうに思います。
先ほども申し上げましたけれども、損害賠償請求に意味を与えるということにもつながっていくというふうに思いますので、是非、この点、やっていただきたいと思います。
今回の制度拡充というのはいいことだというふうには思いますけれども、しかし、損害賠償請求をしたとしても、それが支払われなかった、判決が出ても支払われないということになれば、その損害賠償請求自体の意味がないということになってしまいますので、是非、その点も含めて、知事会も検討してほしいんだというふうに言っているわけですから、検討を是非積極的に進めていただきたいと思います。
もう一度、大臣、お願いしたいと思います。

○小泉国務大臣

そういった問題も当然この有識者検討会では話し合われるものと承知をしております。そこで出された結論、我々はまたその実行をしっかりと受け持っていきたいと思います。

○本村伸子

是非進めていただきたいと思います。
それで、損害賠償の判決を受けて、加害者が逃げてしまったり、財産を隠してしまったり、そういうことがあるわけですけれども、損害賠償を確保するために、国が、加害者の財産情報ですとか、どこに逃げたかということを捜すということも含めて、調査する制度があるというふうに思いますけれども、その点、お示しをいただきたいと思います。

○竹内政府参考人

お答えいたします。
確定判決等の債務名義を得た犯罪被害者が民事執行の手続により債務者である加害者の財産を差し押さえるためには、その対象となる債務者の財産を特定する必要がございます。民事執行法には、犯罪被害者のために特化したものではないのですが、債務者の財産状況を調査する制度として、まず、執行裁判所が債務者を呼び出し、その財産について陳述させる財産開示手続と、金融機関等の第三者から債務者の有する財産に関する情報を取得する手続が設けられているところでございます。

○本村伸子

こういうことも含めて、手続に関する支援を是非していただきたいというふうに思います。
先ほど来お話がありましたけれども、事実婚、前の委員会でもやらせていただきましたけれども、今回の制度なんですけれども、事実婚、同性パートナーの方の支援に関しては対象外になっているということですけれども、法務省は、事実婚や同性パートナーの方の犯罪被害者の方については日弁連の委託援助事業の支援を利用してくださいというふうに言っていますけれども、今回の法案の支援の内容と日弁連の委託援助事業、これはやはり支援の内容が違うわけです。その違いについてお示しをいただきたいと思います。

○坂本政府参考人

お答えいたします。
日本弁護士連合会の委託援助事業におきましては、同連合会の負担において、生命、身体、自由に関する罪等を対象といたしまして、同性のパートナーを含めまして、いわゆる事実婚の状態にある被害者等に対しても、刑事手続、行政手続を中心に援助を行っているものと承知しております。
他方、国費を用いて援助を行うこの制度におきましては、同性のパートナーを含めて、いわゆる事実婚の状態にある者は対象とはしておりませんけれども、被害者等が刑事手続への適切な関与に加え、民事手続等による損害、苦痛の回復や軽減を図るために必要となる法律相談を法テラスが実施し、契約弁護士等に法律事務を取り扱わせることといたしまして、早期の段階から民事、刑事、行政に関する包括的かつ継続的な援助を行っているものとなっております。

○本村伸子

何か違いをおっしゃっていただけないんですけれども、例えば損害賠償請求の訴訟における訴訟代理、そういうものは日弁連の方の支援にはないわけでして、やはり、この法律の制度の中に事実婚、同性パートナーの方々の支援も是非含めていただきたいということを最後に申し上げたいと思います。先回の質問の中で、大臣は少し積極的な答弁をいただいたんですけれども、是非前に進めていただきたいということを強く求め、質問を終わらせていただきます。

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