もとむら伸子(日本共産党衆議院議員)-
国会質問

質問日:2023年 5月 9日 第211国会 本会議

刑法改定案・刑事訴訟法改定案で審議入

 
衆議院本会議で、「不同意性交等罪」規定など性犯罪にかかわる刑法改定案・刑事訴訟法改定案で審議入りし、私も質疑に立ちました。
「強制性交等罪」の名称を「不同意性交等罪」に改め、被害者が「同意しない意思」を形成、表明、全うすることが困難な場合を罪の成立要件とします。
質問では、同意のない性交等が適切に処罰されるようにすべきだと主張しました。
 現行法では、被害者の同意がなくても、被害者の抵抗を著しく困難にさせる程度の「暴行・脅迫」がないと罪と認められないことが問題となってきました。
改正案では、暴行・脅迫に加え▽アルコール・薬物の摂取▽恐怖・驚がく▽地位の利用などにより「同意しない意思」の表明などを困難にさせた場合、処罰できるとしています。
性交同意年齢は13歳から16歳に引き上げますが、13~15歳は加害者が5歳以上年上の場合に限定。
性的目的で子どもを懐柔する(いわゆるグルーミング)罪や、盗撮行為を罰する撮影罪も設けます。
 
 私は、性暴力根絶や同意のない性的行為の処罰を求めるフラワーデモなど当事者、支援者の声が、不同意性交等罪の明記につながったと指摘。適切な処罰には、何を同意とするかを明確にすべきだとして、▽年齢などに基づいた何がなされるかの理解▽性行為をした場合に起こりうる結果と、性行為をしない別の選択肢もあるとの認識▽性行為への賛成、反対の両方の意思の平等な尊重▽自発的な意思決定―などの条件を満たす必要性を主張しました。
 性犯罪の公訴時効の5年延長については、時効の撤廃または大幅延長を要求。斎藤健法相は「困難だ」と背を向けました。
 
 さらに、障がいがある人の意思形成を考慮した規定や地位関係を利用した行為の処罰規定の創設も要求。
録音・録画媒体を証拠として一部認める規定の適用対象は、子どもや障害者、性暴力被害者などに限るべきだと指摘しました。
 

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不同意性交 適切に処罰を 2023.5.9

議事録

 
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以下、質問と答弁の書き起こしを掲載します。
答弁についてはいろいろ突っ込みたいところは多々ありますが、今後の質問していきたいと思います。
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○もとむら伸子
 
私は、日本共産党を代表して、性犯罪に関わる刑法及び刑事訴訟法の改定案について質問をいたします。
 
同意のない性的行為について、暴行、脅迫要件が立証の壁となり、性犯罪の成立が困難であることが長年の課題でした。二〇一九年三月、名古屋地方裁判所岡崎支部の判決は、実の父親による性交に娘が不同意だったことを認定する一方、抗拒不能ではなかったと、父親を無罪にしました。この月に相次いだ四件の無罪判決が衝撃を広げ、性暴力根絶と同意のない性的行為の処罰を求めるフラワーデモが広がりました。被害当事者が検討会、法制審議会の部会に入り、今回の法案で不同意性交等罪が明記されることとなりました。
 
問題は、この法案で、同意のない性交等が適切に処罰されるかという点です。
そのためには、何を同意とするのかを明確にする必要があります。検討会の中では、同意についての以下のような指摘がありました。
◆年齢、成熟度、発達度、役割、経験に基づいて何がなされているか理解していること、
◆性行為をした場合に起こり得る結果と性行為を行わないという別の選択肢もあるというそれぞれを承知していること、
◆性行為に賛成する意思と反対する意思の両方の選択肢が平等に尊重されているという前
提があること、意思決定が自発的になされること、
など。
同意とはこうした条件を満たすものであるべきです。
 
法案は、心身の障がいがあることを、同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難な状態に含めています。しかし、障がいがある人は、特性に応じて自らの意思を示しています。障がいがあることをもって意思の形成が困難とすることは侮辱的との声があります。
障がいがある人の意思形成を考慮した規定に改めるべきです。
 
さらに、教師と生徒、施設職員と利用者など、対等性のない関係は、地位、関係性として、監護者性交等罪と同等の犯罪類型として処罰規定を創設するべきです。
今回の改定に当たり、保護法益を性的自由にとどめず、個人の尊厳、心身の完全性、人格そのものを脅かす性的暴行からの保護と抜本的に改めるべきです。
 
本法案は、現行法の公訴時効を五年延長するなどを規定しています。
その根拠となった内閣府の調査では、相談に5年以上かかったが約1割、そもそも、相談もできなかったは、女性では6割、男性では7割もあるにもかかわらず、なぜ5年としたのですか。なぜ相談できなかったケースを切り捨てたのですか。
性暴力被害者・支援者団体スプリングの皆様の2020年被害実態調査では、挿入を伴う性被害を認識するまで26年以上かかったは35件、31年以上かかったは19件ありました。また、長期にわたって被害の記憶を喪失した被害当事者もいます。
なぜ幼少期から性虐待を受けてきた被害当事者の方々の実態調査をしてこなかったのですか。
公訴時効の撤廃あるいは時効停止の大幅延長をするべきです。
 
法案は、一定の事件の被害者の主尋問に代えて、一定の録音、録画記録媒体の証拠能力を伝聞法則の例外として規定しています。
刑事訴訟法における証拠は、事実認定者が法廷において供述者から直接供述を聞き、反対尋問による検証を経るのが基本であり、原則として、公判外供述が証拠能力を持つことはありません。したがって、その適用範囲は本来限定的でなければなりません。
なぜ聴取対象を子どもや障がい者、性犯罪被害者に限定しないのですか。文言上、あらゆる犯罪類型におけるあらゆる関係者に適用することが可能となっています。伝聞例外を拡大するものではないですか。
 
さらに、検察官、警察官など、中立性のない捜査機関が聴取者になることが想定されています。冤罪の危険性がないと言えるのですか。聴取主体は中立的な司法面接の専門家に限定するべきです。
 
以上を申し述べ、質問を終わらせていただきます。
 
 
〇齋藤健法務大臣
 
本村伸子議員にお答え申し上げます。
 
まず、同意のない性的行為の処罰についてお尋ねがありました。本法律案は、現行刑法の強制性交等罪や準強制性交等罪などについて、より明確で、判断のばらつきが生じない規定とするため、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」という文言を用いて統一的に整理をし、その状態の原因となり得る行為や事由を具体的に列挙することとするものであります。
これにより、現行法の下でも本来なら処罰されるべき、同意していない性的行為がより的確に処罰されるようになると考えています。
 
次に、性的行為の同意に関してお尋ねがありました。
性犯罪の本質は、自由な意思決定が困難な状態で行われる性的行為を処罰することにあると考えられます。
そこで、本法律案においては、性的行為に関する自由な意思決定の前提となる能力、具体的には、行為の性的意味を認識する能力や、相手方との関係において性的行為が自己に及ぼす影響を理解し対処する能力が十分備わっているとは言えない年齢として、いわゆる性交同意年齢を13歳未満から16歳未満に引き上げ、性犯罪の本質的な要素を、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」という文言を用いて統一的な要件とすることとしており、これにより、本来処罰されるべき、同意していない性的行為を的確に処罰し得ると考えています。
 
次に、障がいを有する方の意思形成を考慮した規定に改めるべきではないかとのお尋ねがありました。
改正後の刑法第176条第1項、第177条第1項において各号に掲げる行為、事由は、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態かどうかの判断を容易かつ安定的に行い得るようにするため、そのような状態の原因となり得る行為、事由を列挙したものであり、それらに該当することをもって、同意しない意思の形成等が困難な状態であるとする趣旨ではありません。
第2号の心身の障がいがあることという要件についても、これに該当するだけではなく、それが原因となって、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態という要件に該当することが犯罪の成立には必要なのであり、御指摘は当たらないと考えています。
 
次に、地位、関係性を利用した性犯罪の処罰規定に関してお尋ねがありました。
本法律案においては、例えば、経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させることにより、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせて性行為をすることを処罰対象としています。
他方、この状態に陥っていないのに、一定の地位、関係性にある者が性的行為をしただけで処罰対象とするような明確かつ限定的な要件を設けることは困難であると考えられます。
そのため、本法律案においては、ただいま答弁した処罰規定とは別に、御指摘のような規定を設けることとはいたしておりません。
 
次に、性犯罪の保護法益を改めることに関してお尋ねがありました。
強制性交等罪などの性犯罪の保護法益については、一般に、性的自由又は性的自己決定権と解されており、改正後の不同意わいせつ罪、不同意性交等罪についても同様と考えています。
御指摘のように、性犯罪の保護法益を個人の尊厳や心身の完全性などと捉えることについては、それらの内容が明らかでなく、また、それらを侵害するのは性犯罪に限られず、他の犯罪においても侵害し得ることから、慎重な検討が必要であると考えています。
 
次に、性犯罪に係る公訴時効期間を延長する期間についてお尋ねがありました。
本法律案においては、性犯罪について、一般に、その性質上、被害申告が困難であり、類型的に被害が潜在化しやすいことを踏まえ、公訴時効期間を延長することとしています。
そして、延長する期間については、一般的、類型的に、被害に遭ってからどれだけの期間がたてば被害を外部に表出できるようになるかを可能な限り実証的な根拠に基づいて定めるという観点から、内閣府の調査において、無理やりに性交等をされたことがあり、被害を誰かに相談した方のうち、被害に遭ってから相談するまでにかかった期間が5年以内であった方が大半であったことを踏まえ、5年としています。
次に、性犯罪に係る公訴時効期間の延長に関する実情調査についてお尋ねがありました。
本法律案においては、先ほど答弁したように、内閣府が実施した調査の結果を踏まえて公訴時効期間を延長することとしていますが、この調査の回答者には、被害に遭った当時に若年であった方も含むものと承知しています。
また、法律案の作成に先立って行われた性犯罪に関する刑事法検討会や法制審議会の部会においては、幼少期における性的虐待の実情について知見を有する有識者が委員として参画したほか、若年時に被害に遭った性犯罪の被害当事者の方や性犯罪被害者に関する知見を有する専門家等からヒアリングを実施したものと承知しています。
本法律案は、それらを通じて得られた知見を十分に踏まえつつ、立案したものであります。
 
次に、性犯罪に係る公訴時効を撤廃し又は公訴時効期間を大幅に延長することについてお尋ねがありました。
現行法上、公訴時効の対象とならない罪は、侵害されると回復の余地のない、人の生命という究極の法益が侵害され、かつ、罪の重さを示す法定刑として最も重い死刑が定められている殺人罪等に限られています。
性犯罪は、被害者の尊厳を著しく侵害し、その心身に長年にわたり重大な苦痛を与え続ける悪質な罪ですが、侵害されると回復の余地がない生命を侵害する罪とは異なり、罪の重さを示す法定刑に照らしても、死刑が定められている殺人罪等と同等とまでは言い難いことから、性犯罪に係る公訴時効を撤廃することは困難であると考えています。
 
また、性犯罪に係る公訴時効期間をどの程度延長するかについては、先ほど申し上げたとおり、実証的な根拠に基づいて5年としているものであり、現時点において、これを超える期間延長を相当とすることの実証的な根拠が示されているとは言い難いことから、お尋ねのように大幅に延長することは困難であると考えています。
 
次に、改正後の刑事訴訟法第321条の3の要件に関してお尋ねがありました。
いわゆる伝聞証拠には原則として証拠能力が認められないこととされており、その理由については、一般に、伝聞証拠が供述内容の真実性を吟味、確保するための要素を欠くことにあるとされていますが、現行の刑事訴訟法においても、証拠としての必要性と信用性の状況的保障の強弱の兼ね合いにより、伝聞例外として証拠能力を認める要件が定められています。
改正後の刑事訴訟法第321条の3において、性犯罪の被害者等の供述であるという証拠としての必要性に関する要件と、司法面接的手法の中核的な要素である所定の措置が特に取られたこと、聴取に至るまでの状況その他の事情を考慮し相当と認められること、聴取の全過程を録音、録画すること、訴訟関係人に証人尋問の機会を与えることという信用性の状況的保障に関する要件を定めることとしており、これらの要件の兼ね合いにより、証拠能力を認める要件として十分なものになっていると考えています。
 
次に、改正後の刑事訴訟法第321条の3第1項の対象者の範囲についてお尋ねがありました。
同条は、聴取を受けた者が更に公判期日において供述する場合に生ずる心理的、精神的負担の軽減を図るため、いわゆる司法面接的手法による聴取の結果を記録した録音、録画記録媒体を公判に顕出するための新たな伝聞例外を設けるものです。
そして、このような負担軽減の必要性があり、かつ、司法面接的手法を用いることにより信用性が担保されるのは、性犯罪の被害者に限られるものではないと考えられます。
そのため、対象者の範囲については、性犯罪の被害者に限らず、更に公判準備又は公判期日において供述するときは精神の平穏を著しく害するおそれがあると認められる者も対象とすることが必要かつ相当であり、これによって伝聞例外を不当に拡大するとの御指摘は当たらないと考えています。
 
最後に、改正法の刑事訴訟法第321条の3第1項の聴取主体についてお尋ねがありました。
司法面接的手法による聴取の結果を記録した録音、録画記録媒体の証拠能力の要件としては、聴取主体が誰であれ、司法面接的手法において求められている措置が取られたことこそが重要であり、かつ、それで足りると考えられます。
その上で、お尋ねの冤罪の危険性の意味するところが必ずしも明らかではありませんが、その趣旨が捜査機関は中立でないため誘導的になりがちであるということであれば、供述の内容に不当な影響を与えないようにするために必要な措置が取られたかどうかは、録音、録画記録媒体を確認することによって判別可能であると考えられます。
そのため、御指摘のように聴取主体を限定することは必要でなく、かつ、相当でもないと考えています。

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