言論活動の萎縮招く
本村氏 侮辱罪厳罰化で追及
【赤旗 2022年5月1日】
日本共産党の本村伸子議員は27日の衆院法務委員会で、刑法改定案に盛り込まれた侮辱罪の厳罰化について、北海道警によるやじ排除事件をあげ、政治的言動への不当な弾圧につながる危険性を指摘しました。
本村氏は、2019年に札幌市内での安倍晋三首相(当時)の街頭演説で「安倍やめろ」などと声をあげた市民2人を北海道警が排除した対応は適切だったかと質問。二之湯智国家公安委員長は「北海道警の措置は正しかった」などと述べました。
本村氏は、排除された2人が起こした訴訟で札幌地裁は表現の自由を侵害したとして北海道に損害賠償を命じたと指摘。官僚や国会議員に侮辱的言動をしたら、侮辱罪で逮捕するかという質問に、二之湯氏が「あってはならない。不当な弾圧はない」と述べたことをあげ、「北海道警の動きを不当な弾圧ではないと言われたら、実際には政治的な弾圧につながる危惧を抱く」と追及しました。
二之湯氏は「現場の警察が法律に基づいて必要な判断で措置した」などと繰り返すだけ。本村氏は、政治家を批判した人の現行犯逮捕や、同行者も犯罪をけしかけた教唆犯とされる危険を指摘し、「仮に不起訴となっても現行犯逮捕のインパクトは自由な表現への脅威となり、言論活動の萎縮を招くのは明らかだ」と批判しました。
札幌地裁判決で違法・違憲と断罪された北海道警察のヤジ排除事件は「正しかった」と豪語する二之湯国家公安委員長に衝撃!!!!!
前回の参議院選挙の際、「安倍やめろ」「増税反対」と発言した市民の方々が、北海道警察によって排除された事件は、札幌地裁で、北海道警察の行為は、違法、違憲と判断されました。
にもかかわらず、警察全体を管理する国家公安委員長が、「正しかった」と豪語したのです。
侮辱罪の厳罰化を含む刑法改定案の審議。
侮辱罪の法定刑が引き上げられれば、現行犯逮捕が、なんの限定もなくできるようになります。幇助犯、教唆犯なども問われることになります。
大臣や国会議員などを批判すると「侮辱した!」と現行犯逮捕されることを恐れて、言論の自由が脅かされ、萎縮することになるのではないかと危惧されています。
「不当な弾圧はしない」と二之湯国家公安委員長は、委員会の中で答弁しましたが、一方で、北海道警察のヤジ排除事件は「正しかった」「適切だった」というのでは、私たちにとっては「不当な弾圧」がなされる危険性があります。
インターネットの誹謗中傷対策としては、効果が薄いと指摘されている侮辱罪の法定刑の引き上げ。
とりわけ権力への言論の自由を守るために廃案に追い込みましょう!!!!!
議事録
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質問書き起こし
衆議院法務委員会 4月27日
刑法改定案(侮辱罪・拘禁刑)
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◆もとむら伸子
日本共産党の本村伸子でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。
刑法の改正案について質問させていただきますけれども、今日、皆様方のところに資料をお配りをさせていただいております。
これは、刑罰の基本政策の変更について慎重な審議を求めるという、刑事政策学の研究者の皆さんの声明です。そこでは、衆議院法務委員会の委員様ということで宛先が書かれておりまして、日本国の刑法の根幹をなす自由剥奪を伴う刑罰体制を改変する法律案が上程されているということで、「わたくしたち刑事政策学の研究者有志は、このような事態を憂い、日本の刑罰政策の根幹を揺るがしかねない同法案について、真摯かつ慎重な議論を切に要望し、本声明を公表します。」ということで、要望一、国会においては、本法律案を真摯かつ慎重に審議すべきである。要望二、刑罰制度に関して、関連学界における科学的かつ真摯な検討及び国民的議論を踏まえて、変更の可否を検討するべきであるというふうに書かれております。
委員長にお願いしたいというふうに思いますけれども、慎重な審議、これからも続けていただきたいと思いますけれども、お願いしたいと思います。
◆鈴木委員長
ただいまの件、後刻改めて理事会にて協議いたします。
◆もとむら伸子
この議論についてはまた後ほどしたいというふうに思うんですけれども、侮辱罪につ
いて質問をさせていただきたいと思います。
昨日も、木村響子さんが国会に来てくださり、そしてお話をしてくださいました。
木村花さんをはじめ、誹謗中傷で心を痛め、そしてお亡くなりになった方々に私からも心から哀悼の意を申し上げたいというふうに思います。
そして、現在も、この誹謗中傷によって苦しまれている方々が実際にいらっしゃいます。被害を受けた方々が泣き寝入りをしなくてもいいように、相談しやすい体制ですとか、有効な対策を打たなければならないというふうに考えております。
侮辱罪の法定刑の引上げのために、その契機となったのが、SNS上の誹謗中傷による木村花さんの自死ということでございます。この事件の検証というものが必要だというふうにまず考えますけれども、大臣はどのようにお考えでしょうかという点、そして、木村花さんが自ら命を絶たなければならなかったこの事件の検証をしっかりやってこそ、総合的な有効な対策を取ることができるというふうに考えますけれども、大臣、お答えをいただきたいと思います。
◆古川法務大臣
木村花さんが亡くなられたのは、これは本当に大変痛ましい出来事でありまして、
心からお悔やみを申し上げます。
今般の法整備は、御指摘のこの事案を含む、近年における公然と人を侮辱する犯罪の実情などを踏まえて行うものでございます。
すなわち、近時、SNSなどのインターネット上の誹謗中傷が特に社会問題化していることを契機として、インターネット以外のものも含めて、誹謗中傷全般に対する非難が高まってきているとともに、これを抑止すべきだという国民の意識も高まってきているというふうに承知いたしております。
こうしたことに鑑みますと、公然と人を侮辱する侮辱罪について、厳正に対処すべき犯罪であるという法的評価を示して、これを抑止するため、その法定刑を引き上げることが必要である、このように考えまして、今回の法律案を提出いたしたところでございます。
このように、今般の法整備は、特定の個別事件の対応のみを目的とするものではございません。
近年におけるこの種の犯罪の実情等を踏まえて行うものでございますから、個別事件の検証が必要だとまでは考えておりません。
◆もとむら伸子
個別事件の検証は必要ないと言われたこと、私は大変ショックに感じております。個
別事件だからこそ見えてくることが様々あるというふうに考えております。
先ほど鎌田議員も言われましたけれども、テレビ局の制作会社の同意書兼誓約書の問題や、あるいは海外を含むプロバイダー、プラットフォームの問題、あるいは、警察に行くと、具合が悪くなるぐらい警察が高圧的な態度だったというふうにおっしゃっておりました。こういう検証や、あるいは加害者を生まないためにどうすればいいかということ。裁判では、二年かかって二十件近く裁判をして、侮辱罪は三人なんだと。この判決の分析ですとか、これもやらないといけないというふうに思っております。
また、必要な経費。裁判だけでも総額一千万円近くかかったというふうに木村響子さんがおっしゃっておりましたけれども、こういう経済的な負担がある状況では、被害者は救済されないというふうに思います。
民事で、加害者に百三十万円の損害賠償の判決が出たけれども、一円も支払われていないということも言われました。これもやはり、国が代理で、まず被害者の方に支払って、そして、国が加害者の方から請求をする仕組みなんかもつくる必要があるんじゃないか。こういう総合的な対策を取らなければ、やはり、被害者の方の救済にもならないし、早期発見にもつながらないというふうに思っております。
こういう検証をして、個別事案だけれども、重要な社会的な影響を与えた事案でございます。個別事案ではあるけれども検証して、全体に、総合的に対策を打たないといけないと思いますけれども、大臣、改めてお願いしたいと思います。
○古川法務大臣
近時におけるインターネット上の誹謗中傷、こういうことに対する国民一般の問
題意識というのも非常に高まってきております。
委員御指摘のように、やはり事態を根本解決するためには、様々なアプローチが必要になってこようと思いますし、そこは、政府を挙げて、関係省庁も連携を取りながら、これをやったから大丈夫だ、解決したということにはなかなかならないというふうに思いますので、様々協力をし合って、この問題の解決を図るという姿勢が、やはりこれは大事なことだというふうに思います。
その中で、今般の法整備というものは、法定刑の引上げ、下限は維持したままですけれども、上限を引き上げるということをもって、そこにやはり迫ろうという一つの施策、アプローチの仕方であるというふうに御理解をいただきたいと思います。
◆もとむら伸子
残念ながら、侮辱罪については効果が薄いというふうに言われております。やはり根
本的に考え直さないといけないというふうに思っております。
少し確認なんですけれども、単純な確認でございます。ダイレクトメールなどは、侮辱罪の適用範囲にはならないですねという点、そして、脅迫罪や強要罪の適用は、具体的にどのような言動を対象にしているのか、伺いたいと思います。
◆川原政府参考人(法務省)
お答えいたします。
まず、ダイレクトメール等の関係でございます。
犯罪の成否は、収集された証拠に基づき個別に判断されるべき事柄であることから、お尋ねの行為が侮辱罪の公然性の要件を満たして、侮辱罪が成立するかどうかということについて、一概にお答えすることは困難でございます。
その上で、あくまで一般論として申し上げれば、侮辱罪における公然とは、不特定又は多数人が認識できる状態をいい、相手方が特定少数人であったとしても、伝播して間接的に不特定多数人が認識できるようになる場合も含まれると解されていることから、公然性の要件を満たすか否かは、そのような状態にあると認められるか否かによるこ
ととなるところでございます。
それから、脅迫罪、強要罪の関係でございます。これも、犯罪の成否は、収集された証拠に基づき個別に判断される事柄でありますので、一概にお答えすることは困難でありますが、その上で、一般論として申し上げれば、脅迫罪は、生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した場合に成立し得るものでございまして、また、強要罪は、生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した場合に成立し得るものと承知しております。
◆もとむら伸子
脅迫罪、強要罪については、もう少し具体的に言っていただきたかったんですけれども、法文を読まれたということなんですけれども、誹謗中傷であっても脅迫罪や強要罪に当たるもの
もあるというふうに思います。今回、先ほど来御議論がありましたので、質問は省かせていただきますけれども、侮辱罪は、今は現行犯の逮捕はできないけれども、法定刑の引上げで、この法案が施行されたら現行犯逮捕ができる、そして、教唆犯や幇助犯の処罰もできるということになってまいります。
先ほど階さんもお話をされていたんですけれども、どのような言動が侮辱とされているのでしょうかということで、判例の積み上げについてお示しをいただきたいというふうに思います。また、通常逮捕あるいは現行犯逮捕などのときに、誰がどのような基準で判断をするのか、明確にお答えをいただきたいと思います。
◆川原政府参考人
お答えいたします。まず、どのような言動が侮辱に当たるかということでございますが、侮辱罪により処罰された近時の裁判例を申し上げますと、例えばインターネット上において、整形その他で見た目をごまかし、名前なども成り済ます習性が極めて強い性質は攻撃的かつ凶暴で、人類との協調性、人間モラルなどの持ち合わせなしなどと書き込んだ事案につきまして科料九千円に処された例、あるいは、被害者のツイッターアカウントに、てか、死ねや、くそが、きもいなどと投稿した事例について科料九千円の略式命令が発付された例などがあるものと承知をしております。
次に、現行犯逮捕の関係でございます。
侮辱罪による現行犯逮捕につきましては、今般の法定刑の引上げがなされますれば、住居不定であることなどの制限がなくなることとなりますが、それ以外の要件は変わりはないところでございます。したがいまして、従来どおり、現に罪を行い又は現に罪を行い終わった者が対象となるものでございまして、他の罪と同様に、犯人による特定の犯罪であることが明白で、かつ犯人も明白である場合に該当するか否かを逮捕者が判断することとなるものでございます。
◆ もとむら伸子
逮捕者が、犯人ということ、判断するということですね。
また、もっと基準を示さないといけないというふうに指摘がありましたけれども、私もそのように思っておりますので、次の機会に出されるということを期待しております。
少し具体例に移りたいと思うんですけれども、いわゆる北海道警察のやじ排除事件の全容について、詳細な事実経過とそれに対する北海道警の対応が適切であったのか、国家公安委員長にお願いをしたいというふうに思います。
◆二之湯国家公安委員長
お尋ねの事案は、令和元年七月十五日、札幌市におきまして、参議院通常選挙に係る街頭演説が行われた際、警護、警備を行う中で、北海道警察の現場の警察官がトラブル防止の観点から一部の方々を移動させるなどした事案であると承知いたしております。
本件に関しましては、街頭演説中に北海道警察がやじを飛ばした男女を移動させたことなどについて国家賠償請求訴訟が提起されているところですが、北海道警察からは、いずれも現場の警察官がそれぞれの状況を踏まえ、法律に基づき必要と判断した措置との報告を受けております。今後とも、各種法令に基づき適切に職務を遂行していくように警察を指導してまいりたいと思っております。
◆もとむら伸子
確認ですけれども、北海道警察の対応は適切ではなかったということですね。
◆二之湯国家公安委員長
本件に関しては、いずれも現場の警察官がそれぞれの状況を踏まえて、法律に基づいて必要な判断だ、私はそのように報告を受けておりますし、何遍も申し上げますように、北海道警察の措置は正しかった、このように思って
います。
◆もとむら伸子
国家公安委員長が正しかったというふうにおっしゃるのは衝撃でございます。
札幌地裁の判決の中では、JR札幌駅及び札幌三越前で参議院議員選挙の応援演説を行う当時の安倍晋三内閣総理大臣に対して、安倍辞めろ、増税反対などと発言したことによって警官らに排除された原告二名が北海道警察を訴えた国家賠償請求事件で、北海道の方に合計八十八万円の支払いを認める判決が言い渡されました。この判決は北海道警察による表現の自由の侵害を正面から認めた歴史的な判決だというふうに思います。
市民の方が撮影した動画やあるいは関係者の証言から、原告のお二人が危険な事態にあったとは言えず、警察が体をつかんで移動させた行為などは警察官職務執行法の要件を満たしておらず、違法と認定をされております。
また、判決は、憲法二十一条で保障された表現の自由について、立憲民主制の政治過程にとって不可欠の基本的人権であって、民主主義社会を基礎づける重要な権利と位置づけ、二人が声を上げたことは、重要な権利の中でも特別に尊重されなければならない公共的、政治的事項に関する表現行為に当たるということで、北海道警察の行為が違憲であり、そして違法であるというふうに判決で指摘をされております。
それが正しかったというふうに、北海道警察の対応が正しかったというふうに二之湯委員長は言われるんでしょうか。
◆二之湯国家公安委員長
その時点での北海道警察の措置は、北海道警察のこの判断を私は正しい判断だと思いますけれども、札幌地裁で八十八万円の損害賠償を命じる判決が出ました。これについて、私は国家公安委員長の立場としてコメントする立場にございませんし、そして、道がただいまそれを控訴中でございますから、これはもう司法の場に移っておりますから、私の答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
◆もとむら伸子
先ほど二之湯国家公安委員長は、閣僚や国会議員を侮辱したら逮捕するのかという質問に対して、あってはならない、不当な弾圧はないんだというふうに明言をされました。
今回の札幌地裁の事例でも、私たちは、この警察の働きは、行為は不当だというふうに思っておりますけれども、委員長はそうじゃないということですよね。そうしますと、先ほどの、不当な弾圧はあってはならないというふうに、不当な弾圧はないんだというふうに言われましても、価値判断が違うということで、実際には政治的な弾圧にもつながっていくんじゃないかという危惧を抱くわけですけれども、その点、お答えいただきたいと思います。
◆二之湯国家公安委員長
当日のその場にいた現場の警察官が、それぞれの状況を踏まえて、法律に基づいて必要とした判断を措置したものと私は報告を受けております。
なお、一般として申し上げれば、警護、警備の現場では、要人や聴衆の安全確保、雑踏事故の防止などのため所要の措置を講じる必要があり、今後とも、各種法令に基づいて適切に職務を遂行していくよう警察を指導してまいりたい、このように思っております。
◆もとむら伸子
安倍辞めろということや増税反対と言って、十秒程度で排除をされているそうです。これは不当な弾圧に当たるというふうに私は考えますけれども。
この北海道警察のやじ排除事件のような場面で、政治家に対する批判をした者に対して現行犯逮捕が可能になり、同行していた者も教唆犯などで逮捕され得るのではないかというふうな危惧を抱くわけです。仮に不起訴となったとしても、現行犯逮捕などのインパクトというのは、やはり自由な言論や表現に対する脅威となり、言論活動の萎縮を招くというのは明らかだというふうに思いますけれども、大臣、お答えをいただきたいと思います。
◆古川法務大臣
侮辱罪の法定刑の引上げにより、委員が御指摘をされているような言論弾圧的な逮捕が可能となるものではなく、政治的な批判に対する萎縮効果が生じるとの御懸念は当たらないものと考えております。
◆もとむら伸子
恣意的な現行犯逮捕があるのではないかという危惧を抱くわけでございます。やはり、この侮辱罪、撤回を強く求め、時間が来ましたので質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。