衆院法務委員会で、4月からの成人年齢引き下げで18、19歳のアダルトビデオ(AV)出演取り消し権がなくなった問題を取り上げ、取り消し権と同等な効果をもつ法整備への早急な取り組みを求めました。
撮影の現場で初めてAV出演と知り、大勢のおとなに囲まれ違約金をちらつかせられて追い詰められ、撮影されてしまう被害者の実態を指摘。「販売・配信を止められる唯一の方法が未成年者取り消し権だった」と強調しました。
2018年6月の日本共産党の仁比聡平参院議員(当時)のAVの不当契約に関する質問に、上川陽子法相(当時)が「法的体制をしっかり検討し、実現したい」と答弁したことを挙げ、「法務大臣の責任で18、19歳の未成年者取り消し権と同等の効果をもつ法的整備を今すぐ行うべきだ」と訴えました。
古川禎久法相は「民法との関係を含め必要な協力は行う」と述べるにとどまりました。
また「性化行動への配慮」の必要を指摘。「年齢、成熟度、発達度、役割、経験に基づき、何をなされるかの理解」や「性行為に賛成・反対の両選択肢が平等に尊重される前提」などを満たす「同意」を考慮した契約無効・取り消しの施策を求めました。
さらに、同人AVや個人配信への対策、AV出演強要被害の発生を防ぐ教育の必要に言及。国連の教育ガイダンスに即した人権尊重に基づく性教育の充実を求めました。
引き続き、実効ある法律をつくるために全力を尽くします!!!!!
議事録
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【質問書き起こし】
◆もとむら伸子
次に、4月から成人年齢が引き下げられ、AV出演契約の18歳、19歳の取消権がなくなってしまいました。
別の委員会でも、私は津島副大臣に質問もさせていただきましたけれども、そのときにも御紹介をしたんですけれども、この18歳、19歳の契約取消権がどれだけ大事だったかということも強調させていただきたいと思います。
撮影の現場に行って初めてAVだ、アダルトビデオだ、撮影だというふうに知り、大勢の大人から囲まれて、もう何十人も動いていると違約金をちらつかせながら、そして後に引けないような状況に追い込んでいくわけです。
追い詰められて撮影をしてしまった、でも、せめて、販売とか流通、配信を止めてほしいと願ったときに、ほぼ唯一、対抗できたのが、この未成年の取消権だった、被害者支援を実際に行っている伊藤弁護士がそういうふうに指摘をされ、これは本当に重い言葉だというふうに私は思っております。
このAV出演契約の取消権に関しましては、2018年6月12日、参議院の法務委員会で、日本共産党の仁比聡平参議院議員が質問をいたしました。
そのときに、上川陽子法務大臣が、AV出演に関し不当な契約をなくすために、法的体制、対策を含めてしっかりと検討し、そして実現をしてまいりたいと法務大臣が答弁をしたんです。法務大臣が答弁をしたその責任を取っていただきたいというふうに、果たしていただきたいというふうに思います。
3月まで使えた18歳、19歳の取消権と同等の行為を持つ取消権の法的整備を今すぐ行っていただきたいと思います。そして、4月の契約の、今日の契約も遡って救済できる法制度をやると今法務大臣が宣言していただければ、AVの制作や販売や流通関係、こういうところに抑止効果になるというふうに思います。
今からすぐに救済できる法整備をしていただきたいと思いますけれども、法務大臣、お願いしたいと思います。
◆古川法務大臣
一般論として申し上げれば、アダルトビデオ出演契約のように特殊な契約類型について、その性質や特徴に着目して、一旦締結した契約について、錯誤、詐欺又は強迫などがなくとも取り消すことができるという特別な制度を設けるとすれば、一般法である民法ではなく、特定の政策目的に基づく特則として、特別法において定められるべきものと考えております。
したがいまして、アダルトビデオ出演契約に限って御指摘のような規定を設けるべきかどうかについては、民事基本法制を所管する法務省としてはお答えをする立場にはございません。
いずれにしても、関係省庁においてそのような特則が検討されるということであれば、法務省としては、一般法を所管する立場から、民法との関係の整理等を含め、必要な協力をしてまいりたいと考えております。
◆もとむら伸子
上川大臣が実現をしてまいりたいとおっしゃったのに、しっかりと責任を果たしていただきたいんです。立証の難しい取消権ではいけない。過去に撮ったものも含めて回収、販売中止できるようにするべきだというふうに思います。
今、与野党で協議をするという方向で進んでいるということですけれども、実効あるものにするように、できるように、与党の皆さん、そして政府の皆さん、是非御協力をいただきたいと思います。強く求めておきたいと思います。
このAV出演契約の同意の考え方についても伺いたいと思います。
性的虐待を受けた子供たちに顕著に表れると言われているのが、性化行動と言われるものです。
あるいは、性的自傷、トラウマ再演、深刻な性暴力被害に遭い、こうした行動になってしまうことがございます。
この性的自傷やトラウマ再演、性的虐待による性化行動に関して、これは、医療や福祉につなげなければいけないというふうに思いますし、しっかりと配慮をすること、そして、契約無効、契約取消しができるようにするべきだ。
同時に、同意とは、以下の条件を全て満たすことが大前提だというふうに考えます。
1つは、年齢、成熟度、発達度、役割、経験に基づいて、何をなされるか理解していること。2つ、提案されていることに関する社会的規範を知っていること。
3つ、性行為をした場合に起こり得る結果と、性行為を行わないという別の選択肢もあるという、それぞれ承知していること。
4つ、性行為に賛成する意思と反対する意思の両方の選択肢が平等に尊重されるという前提があること。
5つ、意思決定が自発的になされていること。六つ、知的な理解力を有すること。
同意とは、これらを全て満たすことが大前提だというふうに思いますけれども、大臣の御見解を伺いたいと思います。
◆古川法務大臣
お答えいたします。
法務省は、民法等の民事基本法制を所管しております。お尋ねの、AV出演契約のように特殊な契約類型について、その性質や特徴に着目した特別な無効原因、取消し原因を設けるべきか否かをお答えする立場にはございません。答弁は差し控えたいと存じます。
その上で、一般法である民法を所管する立場から申し上げますと、契約は、一般に、当事者の意思表示が合致することによって成立すると解されております。その前提として、当事者が意思能力、すなわち、自分が行う法律行為の意味を理解する能力を有していることが必要であり、当事者が意思能力を有しない場合には法律行為は無効であります。
また、当事者の意思表示が錯誤、詐欺又は強迫によるものであるときは、その当事者は法律行為を取り消すことができます。
もっとも、意思表示の合致の有無や、当事者の意思表示が錯誤、詐欺又は脅迫によるものであるかなどは、具体的な事実関係を踏まえて個別に判断される事柄であり、一概にお答えをすることは難しゅうございます。
御指摘の性的自傷等を踏まえた法制度の整備について、仮に現行の法制度が不十分であれば、特別な立法をすることが考えられるわけですけれども、関係省庁においてそのような検討が行われる場合には、法務省としては、一般法を所管する立場から、必要な協力をしてまいりたいというふうに考えております。
◆もとむら伸子
ありがとうございます。こうしたこともしっかりと考慮をして施策を進めていかなければならないというふうに思っております。
年齢を問わず、AV出演強要被害に遭った当事者の方、十八歳、十九歳のAV出演契約をした方々から高額な違約金や関係諸費用を支払わせることをやめさせる有効な対策を取るべきだというふうに思いますけれども、お答えをいただきたいと思います。
◆古川法務大臣
ただいまの委員の御指摘は、アダルトビデオ出演契約の性質に着目して、違約金等に関する定めを規制することを検討すべきだというものであったかと存じます。
先ほども申し上げましたとおり、アダルトビデオ出演契約のように特殊な契約類型について、その性質や特徴に着目して、違約金に関する合意を無効とする特別な制度を設けるとすれば、特定の政策目的に基づく特則として、特別法において定められるべき事柄であります。
このため、アダルトビデオ出演契約に限って御指摘のような規定を設けるべきかどうかということについては、法務省としての立場からお答えすることは困難でございます。
いずれにしても、関係省庁においてそのような特則が検討されるということであれば、法務省としては、一般法を所管する立場から、必要な協力をしてまいりたいと考えております。
◆もとむら伸子
もう一つ、AVを配信して収入を得ているのに風営法の届出を行っていない事業者もあります。また、同人AV、個人配信など、大手のものだけではないものがかなり流布をし、そしてシェアを占めているというふうに言われております。
加害を防止するための対策が必要だというふうに思いますけれども、これは警察庁、お願いしたいと思います。
◆住友政府参考人(警察庁)
お答え申し上げます。
風営法においては、映像送信型性風俗特殊営業、これを規制の対象とし、都道府県公安委員会への届出を求めるなどしておるところでございます。
映像を送信する者が個人であるか法人であるか、また、映像の内容が個人的なものであるかどうかにかかわらず、風営法に定める映像送信型性風俗特殊営業に該当する営業を届出を行わずに営んだ場合は、風営法違反として取締りの対象となるほか、送信する映像の内容等に法令違反があれば、所要の取締りを行ってきたところでございます。
警察といたしましては、引き続き、風営法の無届け営業も含め、法令に違反する行為については厳正に取締りを行ってまいります。
◆もとむら伸子
内閣府の男女共同参画局の方が総合的なパッケージを出しているとは言うんですけれども、AV出演強要など被害を発生させないための教育を、大学だけではなくて、中学校、高校まで拡大をさせること、そして、個人の尊厳を大切にし、容姿に関わることを評価することはハラスメントであるということ、ルッキズムの意識をなくす教育の徹底を図ることが必要だと思いますけれども、政務官、来ていただきまして、ありがとうございます。よろしくお願いします。
◆鰐淵文部科学大臣政務官
お答えいたします。
今、二つ御質問いただいたかと思います。まず、AV出演強要等の被害に遭わないための教育の取組につきましてお答えをいたします。
成年年齢の引下げに伴いまして、18歳及び19歳には、契約における未成年者取消しが適用されなくなることにより、御指摘のようなAV出演強要などが懸念されております。このことにつきまして、本年3月11日に、文部科学省から各都道府県教育委員会等に集中的に啓発を図るよう依頼をしております。
また、18歳から1人で有効な契約ができるようになることを踏まえ、例えば、高等学校の新学習指導要領等では、家庭科で新たに契約の重要性に関する内容を盛り込み、未成年と成年の法律上の責任の違いについて理解をさせるとともに、新たに必履修科目、公共で多様な契約について学ぶ中で、詐欺、脅迫など、不完全な意思表示に基づいて契約が行われる場合は取り消すことができること等を理解させることとしております。
さらに、卒業直前の高校生向けの生命の安全教育の啓発資料では、AV出演強要等の性産業への望まない従事等は性暴力であることや、町中のスカウトやインターネット上のモデル応募等をきっかけにAV出演強要等の被害が生じていること等を記載し、性暴力の被害者にならないよう指導をしております。
次に、人権教育の取組についてお答えをさせていただきます。
自分自身も含め、個人の尊厳を大事にするよう指導することは大変に重要であり、生徒指導や人権教育等を始め、学校教育活動全体を通じまして、人権尊重の精神に立った学校づくりに取り組むよう、各教育委員会等に周知をしてまいりました。
引き続き、人権教育を始め、学校教育のあらゆる場面を通じまして、AV出演強要を含めた性被害の予防に努めてまいります。
○もとむら伸子
日本は、大変、包括的な性教育という点で遅れております。
改訂版の国際セクシュアリティー教育ガイダンスも、ユニセフですとかユネスコですとか、そういうところが出しているんですけれども、遅れた学習指導要領を変えて、日本でも、国際スタンダードな包括的な性教育をやるべきだということも強く求めておきたいというふうに思います。